1. 志賀十五の壺【10分言語学】
  2. #463 「象は鼻が長い」は日本..
2022-07-26 10:17

#463 「象は鼻が長い」は日本語特有か? from Radiotalk

主要参考文献
“External possession” (Payne, D. L. and I. Barshi (eds.), John Benjamins)

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#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育
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始まりました、志賀十五の壺。 皆さんいかがお過ごしでしょうか。ドクター桐子です。
今回はタイトルにもあるように、「象は鼻が長い」 こういった日本語の表現を中心にね、考えていこうとお話ししていこうと思います。
よくね、日本語の話で話題になるんですよね。 象は鼻が長い、なんでかっていうと、主語が2つあるように見えるからなんですね。
この辺の話面白いんですけど、今回はこの象は鼻が長いっていうのを
外的所有者口文、外的所有者口文という
現象と見なしてですね、考えていこうと思います。 つまり、世界の言語を見回すと意外と似たような現象があるっていうことですね。
日本語特有の表現というわけではなく、 この所有者っていうか持ち主っていうのが
端的に言うと、名詞句の中から飛び出してるんですよね。 端的に言うとって、あんま端的になってないかな。
どう考えるかというと、 元の文というか
元の文ですね。象の鼻が長い こういう文があって
象の鼻っていうのが一つのまとまり、 名詞句となっているわけなんですよね。
その名詞句の中から持ち主、所有者である 象っていうのを取り出して
ここでは 主題っていうものにしてるんですね。
日本語だとはっていうのをつけると主題になります。 で、象は鼻が長いになっていると
こういうふうに名詞句の中から 所有者、持ち主の名詞を取り出すというかね
引っこ抜くことを外的所有者口文ということがあります。 英語だとエクスターナルポゼッションとか言うんですね。
まあインターナルじゃない。 名詞句の外にあるという意味でエクスターナル
ということです。 こういうふうに持ち主の名詞を引っ張り出してるっていう現象は
日本語でも他にあるんですよね。 これは持ち主の受け身と言われるもので
具体的に言うと、私は隣の人に足を踏まれた。 日本語母語話者にとっては何の偏徹もない文ですけど
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受け身文受動帯という観点から言うとこれって結構変わってて というのが足を踏まれたっていうふうに
受動帯受け身文なのに目的語があるからなんですね こういった表現は英語ではできなくて
普通受動帯っていうものは目的語が主語になるので 私の足は隣の人に踏まれた
これが劣気としたというかねちゃんとした受け身文です ただ日本語の場合はこの所有者の名詞が
いわば受動帯の主語となって 私は隣の人に足を踏まれたと言えるんですね
こういうふうに日本語の持ち主っていうのは名詞句の中から取り出されて
今のだと私のっていうのから私はっていう表現になるということがよくあります これは象は鼻が長いっていうのと平行的に考えられるし
私はお腹が痛いとか私は頭が痛いとか こういった場合もやっぱり持ち主の名詞が主題になっているんですね
以上お話ししたように日本語の象は鼻が長いっていうのは外的所有者口文 まあ硬い言い方ですけどそういう構造であるということができて
所有者の名詞が主題になっているっていうことだったんですけど 英語にも少し似たものがあります
ただ英語の場合は主題になるんじゃなくて 所有者の名詞が
目的語になるんですね 例えば
犬が彼の足を噛んだっていうのは
the dog bit his leg まあこれがいわゆる普通の他動詞の文なんですけど
このhis 彼のっていうのを目的語にして the dog bit him in the leg みたいな言い方ができます
his leg の his のとこが 直接目的語の him になっているということなんですね
そういった意味で外的所有者口文であると言えるかもしれません あるいは英語にはないんですけど他のヨーロッパの言語で
所有の余格と言われるような現象もあります 所有の余格、余格っていうのは
簡単に言えば間接目的語の形ですかね 日本語で言うとこのにに当たるようなものです
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こういった現象は例えばドイツ語にあって 所有の余格っていうのは所有者の名詞を余格で表すので
母親は子供の髪を洗った というのをこの子供のっていうのが余格の形になるので母親が
子供に髪を洗ったみたいな言い方になるんですね これもやっぱり子供の髪っていう一つの名詞句の中から
その所有者の名詞 子供っていうのを取り出して
この場合は余格という形で表しているということです で似たような表現はドイツ語のほかにもフランス語とか
ロシア語にもあるみたいです だからヨーロッパの言語でもゲルマン系にもロマンス系にもスラブ系にもあるって
いうことで まあ英語には見られないんですけど結構見られるもののようです
今までの例は全部ヨーロッパの言語でしたけど 他の全然関係ない言語
例えばモフォーク語っていう言語でもこの外的所有者公文っていうのはあるんですね モフォーク語っていうのは
まあ北米のネイティブアメリカンの言語で イロコイ語族っていう言語のグループに属すんですけど
ここでもやっぱり 所有者っていうのを
名詞句の中から引っ張り出すっていうような現象があるんですね これは名詞方語とか言われる現象で
例えば魚の喉を切るっていうような文を この所有者の名詞魚っていうのを目的語にして
でこの喉っていう名詞は動詞と一緒くたになっちゃって 魚を喉切りするみたいな言い方になることがあるんですね
でこれもやっぱり所有者の名詞が 名詞から引っ張り出されているということです
以上いろんな言語の外的所有者公文の話をしました 日本語の象は鼻が長いとか
英語のthe dog bit him in the leg とか あるいはゾイツ語フランス語ロシア語の所有の余格とか
もフォーク語の名詞方語とかいずれにせよ 誰々の何々この誰々のっていう名詞が名詞句から引っ張り出されて日本語だと
主題になったりとか 英語やもフォーク語だと目的語になったりとか
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しているということなんですね でなんでこういう現象が起こるかというと
誰々の何々っていうふうに言った場合 この所有者の名詞っていうのは人間とかあるいは生物名詞のことが多いんですよね
そういう人間名詞とか あるいは生き物とかその人間の関心度が高いっていうかな
ある意味重要度の高い名詞を特別扱いするために 名詞句から取り出してるっていうような説明ができるんじゃないかなと
思います 特に日本語の場合は主題になっているので
その象の鼻が長いって言ってるだけでは象っていうのは主題になれないんですよね なので主題にするために
名詞句の中から引っ張り出してるっていうのが外的所有者口文と言えるかなと思います というわけで今回のお話はここまでということでまた次回のトークでお会いいたし
ましょう お相手はシガー15でした
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