1. 志賀十五の壺【10分言語学】
  2. #209 森鷗外『舞姫』朗読 7/9 ..
2020-11-09 07:53

#209 森鷗外『舞姫』朗読 7/9 from Radiotalk

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#落ち着きある #朗読
00:01
太陽に火事を失いし船人が、はるかなる山を覗くごときは、藍沢が世に示したる善との方針なり。
されどこの山はなお十有無の間にありて、いつ行きつかんも否、果して行きつきぬとも、我中心に満足を与えんも定かならず。
貧しきが中にも楽しきは今のなりわい、捨てかたきは衿すがあい。
我が弱き心には思い定めんよしなかりしが、しばらく友のことに従いて、この上演を絶たんと約識。
世は守るところを失わじと思いて、己に適する者には抵抗すれども、友に際しては否とはえ答えぬが常なり。
別れていずれば風、表を打てり、二重の硝子窓を厳しく閉ざして、大いなる灯炉に火を焚きたるホテルの食堂をいでしなれば、
薄き街灯を通る午後四時の寒さは事さらに堪えがたく、肌へ泡立つとともに、
世は心の内に一種の寒さを覚えき。
翻訳は一夜になし破てつ、カイゼル豊富へ通うことは、これよりしばらく刺激なりもてゆくほどに。
はじめは博の言葉も用事のみなりしが、後には近頃故郷にてありしことなどをあげて、世が意見を問い、
折に触れては道中にて人々の失策ありしことどもを告げて、内笑い給いき。
一月ばかり過ぎて、ある日、博は突然我に向かいて、
世はあす、ロシアに向かいて出発すべし。
従いてくべきか?と問う。
世は数日間、かの公務にいともなき合座を見ざりしかば、
この問いは不意に世を脅かしつ、
いかで名言に従わざらむ。
世は我が恥をあらわさん。
この答えは、
いち早く決断していいしにあらず。
世は己が信じて頼む心を生じたる人に、
率然ものを問われたる時は、
とっさの感、その答えの範囲をよくも計らず、
直ちにうべなうことあり。
さて、うべないし上にて、そのなしがたきに心づきても、
しいて当時の心を今日なりしを覆い隠し、
退任してこれを実行することしばしばなり。
この日は本役の城に、
女婿さえ添えて玉割しを持て帰りて、
本役の城をばエリスにあずけつ。
これにてロシアより帰り込むまでの追栄をば支えつべし。
彼は医者に見せしに、
常ならぬ身なりという、
貧血の差がなりしゆえ、
いく月か心づかでありけん。
座頭よりは、
03:01
休むことのあまりに久しければ、
責をのぞきぬと言い起せつ。
まだ一月ばかりなるに、
かく厳しきはゆえあればなるべし。
旅立ちのことには、
痛く心を悩ますとも見えず。
偽りなき我が心を厚く信じたれば、
鉄路にては遠くもあらぬ旅なれば、
用意とてもなし。
身に合わせて借りたる黒き礼服、
新たに買い求めたる五多万の露呈の貴族服、
二三種の辞書などを消化盤に入れたるのみ。
さすがに心細きことのみ、
大きこのほどなれば、
入りゆくあとに残らんももの受かるべく。
また停車場にて、
涙こぼしなどしたらんには、
後ろめたかるべければとて。
翌朝早くエリスをば、
母につけて知る人がり、
いらしやりつ。
与は旅草を整えて塔を閉ざし、
鍵おば入口に棲む靴屋の主人に預けて居でぬ。
露呈に行きつきては、
何事をか除すべき。
我が絶人たる勤めは、
たちまちに要らしさりて、
西雲の上に落したり、
我が大臣の一行に従いて、
ベーテルブルクに有島に、
要イネウセ氏は、
パリ絶頂の強者を、
氷雪の内に移したる王城の装飾、
ことさらに王朗の職を、
幾つともなく灯したるに、
育成の勲章を、
幾しのエポレットが栄写する光、
調衣の巧みを尽くしたる、
家民の日に寒さを忘れて使う、
旧女の扇のひらめきなどにて、
この間フランス語を最も円滑に使う者は我なるがゆえに、
品種の間に終戦して、
ことを弁ずる者も、
また多くはようなりき。
この間余はエリスを忘れざりき、
否、彼は日ごとに風味を寄せしかば、
得を忘れざりき。
余が立ちし日には、
いつになく一人にて、
十日に向かわんことの心うさに、
知る人のもとにて、
余に入るまで物語し、
スカルルを持ちて家に帰り、
直ちにいねつ。
次のあした目覚めし時は、
なお一人あとに残りしことを、
夢にはあらずやと思いぬ。
起き入れし時の心細さ、
かかる思い余は、
たっきを苦しみて、
今日の日の食なかりしおりにもせざりき。
これ、彼が第一の風味のあらましなり。
またほどへての風味は、
すこぶる思い迫りてかきたるごとくなりき。
風味余は、
否という字に手を越したり、
否、
君を思う心の深き底余は、
今ぞ知りぬる。
君はふるさとに、
頼もしきやからなしとのたまえば、
この地によき夜あたりの立つきあらば、
06:01
とどまりたまわぬことやはある。
また我が愛もて、
つなぎとどめではやまじ。
それもかなわでひんがしに帰りたまわんとならば、
親とともにゆかんはやすけれど、
かほどに大きい露養をいずくよりかえん。
いかなる行をなしてもこの地にとどまりて、
君が世にいでたまわん日をこそまためと
常には思いしが、
しばしの旅とて立ちいでたまいしより、
この二十日ばかり。
別離の思いは日にけにしげりゆくのみ。
たもとを分かつはただ一瞬の苦言なりと思いしは、
迷いなりけり。
我が身の常ならぬが、
ようやくに知るくなれる。
それさえあるに、
よしやいかなることありとも。
我をは夢なすってたまいそう。
母とはいたく争いぬ。
されど我が身の過し頃には二で、
思い定めたるを見て心折れぬ。
我が貧下しにゆかん日には、
すてっちんわたりの農家に、
遠き縁じゃありに、
身をよせんとぞゆうなる。
かきおこりたまいしごとく。
大人の君に重く持ちいられたまわば、
我が露養の金はともかくもなりな。
いまはひたすら君がベルリンに、
かえりたまわん日を待つのみ。
ああ、
よはこの文を見てはじめて、
我が地位を名刺し得たり。
恥かしきは我が鈍き心なり。
よは我が身一つの身体につきても、
また我が身にかかわらぬ、
人のことにつきても。
決断ありと自ら心に誇りしが、
この決断は順境にのみありで、
逆境にはあらず。
我と人との関係を照らさんとするときは、
頼みし鏡中の鏡は曇りたり。
07:53

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