1. 志賀十五の壺【10分言語学】
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2020-11-09 07:01

#210 森鷗外『舞姫』朗読 8/9 from Radiotalk

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#落ち着きある #朗読
00:00
大人はすでにわれにあつし、
されどわが金眼は、ただ己が尽くしたる植物を飲みみき、
与はこれに未来の望みをつなぐことには、神も知らん。
絶えて思いいたらざりき。
されど今ここに心づきて、
わが心はなお冷然たりしか。
先に友のすすめし時は、
大人の信用は屋上の鳥のごとくなりしが、
今はややこれを得たるかと思わるるに。
相沢がこのごろの言葉のはしに、
本国に帰りてのちも、
友にかくてあらわしかじかといいしは、
大人のかくのたまいしを、
友ながらもこうじなれば、
あきらかには告げざりしか。
今さら思えば、
与は軽率にも彼にむかいてエリスとの関係をたたんといいしを、
早く大人に告げやしけん。
ああどいつに越しはじめり、
みずからわが本領を悟りきと思いて、
また機械的人物とはならじと近いしが、
子は足を爆して花垂れし鳥のごとし、
羽を動かして自由を得たりと誇りしにはあるずや、
足の糸は特によしなし。
先にこれを操りしは、
わが何が師匠の館長にて、
今はこの糸、
穴あわれ、
天形箔の支柱にあり、
与が大人の一行とともにベルリンに帰りしは、
あたかもこれ新年の明日なりき、
停車場に別れを告げて、
わが家をさして車を借りつ、
ここにては今も徐やに眠らず、
元旦に眠るが習いなれば、
晩子弱然たり、
寒さは強く、
路上の雪は涼快ある氷片となりて、
晴れたる日にえいじ、
きらきらと輝けり、
車はクロステル街に曲りて、
家の入口にとどまりぬ、
このとき窓を開く音せしが、
車よりは見えず、
御邸に鞄もたせて、
はしごをのぼらんとするほどに、
エリスのはしごをかけおりるにあいぬ、
彼が一声叫びて、
わがうなじを抱きしを見て、
御邸はきれたる表持にて、
何やらん、
ひげのうちにていいしがきこえず、
よくぞ帰りきたまいし、
帰りしたまわずば、
わがいのちは大難を、
わが心はこのときまでも定まらず、
故郷を思う念と、
栄達を求むる心とは、
ときとして愛情をあせんとせしが、
ただこの一刹那、
帝海一郎の思いは去りて、
よは彼を抱き、
彼の頭はわが肩によりて、
彼がよろこびの涙は、
はらはらと肩の上に落ちぬ、
いくかいか持ちてゆくべき、
とどらのごとく叫びし御邸は、
いち早くのぼりてはしごの上に立てり、
戸の外に出むかえしエリスが母に、
03:00
御邸をねぎらいたまえと銀貨を渡して、
よは手をとりいてひくエリスに伴われ、
急ぎて部屋に入りぬ、
一別してよは驚きぬ、
机の上には白きもめん、
白きレースなどをうずたかく積み上げたれば、
エリスはうちえみつつこれを指さして、
何とか見たまうこの心構えを、
と云いつつ一つのもめんぎれを取りあぐるを見れば、
むつきなりき、
わが心の楽しさを思いたまえ、
生れん子は君に似て黒き瞳をや持ちたらん、
この瞳、
ああ夢にのみ見しは君が黒き瞳なり、
生れたらん日には君が正しき心にて、
よもあだしなおば名乗らせたまわじ、
彼は神戸をたれたり、
幼しと笑いたまわんが、
寺に入らん日は、
いかにうれしからまし、
見上げたる眼には涙みちたり、
二三日の間は大順思、
旅の疲れはおわさんとて、
あえてとぶらわず、
家にのみこもりおりしが、
ある日の夕暮れ、
使いしてまぬかれぬ、
行きてみれば大偶ことにめでたく、
ロシアゆきのろうを問いなぐさめてのち、
われとともにひんがしに帰る心なきか、
君が書くもんこそ、
わがはかり知るところならね、
語学のみにて、
世の用には足りなむ。
大流のあまりに久しければ、
さまざまの経路もやあらんと、
相沢に問いしに、
去ることなしと聞きて、
おちいたりとのたまふ、
その景色、
いなんべくもあらず、
あなやと思いしが、
さすがに相沢のことを、
ぎいなりともいいがたきに、
もしこの手にしもすがらずば、
本国をもうしない、
名をひきかえさんみちをもたち、
みはこのこうばくたる、
欧州タイトのひとの海に、
ほうむられんかと思うねん、
信徒をついておこれり、
ああなんだの特そうなき心ぞ、
うけたまわりはべりと答えたるわ、
黒金のぬかはありとも、
かえりてエリスに何とかいわん、
ホテルを入れしときのわが心のさくらんは、
たとえんにものなかりき、
弱みちの東西をもわかず、
思いにしずみてゆくほどに、
ゆきあう馬車のだちょうにいくどかしっせられ、
おどろきてとびのきつ、
しばらくしてふとあたりをみれば、
十円のかたわりにいでたり、
たおるるごとくにみちのべのこしかけによりて、
やくがごとくあつし、
つちにてうたるるごとくひびく、
かしらをとうはいにもたせ、
ししたるごときさまにて、
いくときをかすごしけん、
はげしきさむさ、
ほねにてっすとおぼえてさめしときは、
よるにはいりてゆきはしげくふり、
ぼうのひさし、
がいどうのかたには、
06:01
いっすんばかりもつもりたりき、
もはやじゅういちじおやすぎけん、
モハビットカルルガイどおりの
てつどうばしゃのきどうもゆきにうもれ、
ブランデンブルゲルモンのほとりのがらすとうは、
さみしきひかりをはなちたり、
たちあがらんとするにあしのこごえたれば、
りょうてにてさすりて、
ようやくあゆみうるほどにはなりぬ、
あしのはこびははかどらねば、
クロステルガイまでこしときは、
はんやおやすぎたりけん、
ここまでこしみちおば、
いかにあゆみしかしらず、
いちがつじょうじゅんのよるなれば、
ウンテルデンデンデンのさかや、
さてんはなお、
ひとのでいりさかりにて、
にげはしかりしならめど、
ふつにおぼえず、
わがのうちゅうには、
ただただわれはゆるすべからぬざいにになりと、
おもうこころのみみちみちたりき、
07:01

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