1. 志賀十五の壺【10分言語学】
  2. #206 森鷗外『舞姫』朗読 4/9 ..
2020-11-08 05:35

#206 森鷗外『舞姫』朗読 4/9 from Radiotalk

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#落ち着きある #朗読
00:01
彼はすぐれて美なり。血の如き色の顔は、ランプにえいじて、薄紅をさしたり。手足のかそぼく、たおやかなりは。貧下の御身なに煮ず。大名の部屋を入れし後にて、少女は少し怠りたる言葉にて云ふ。
許し給え、君をここまで導きし、心なさを。君は良き人なるべし。我をば世も恨み給わし。
明日に迫るは父の法令。頼みに思いししやウミベルヒ。君は彼を知らでや終わさん。彼はウィクトリア座の座頭なり。彼がかかえとなりしより、はや二とせなれば、ことなく我らを助けんと思いしに、人の憂いにつけ込みて身勝手なる言いがけせんとは。
我を救い給え君。金をば薄き窮金を裂きて返し参らせむ。よしや我が身は喰らわずとも。それもならずは母の言葉に。彼は涙ぐみて身を震わせたり。その見上げたるまみには、人に否とは云わせぬびたいあり。この眼の働きは知りてするにや、また自らは知らぬにや。
我が隠しには二三丸九の銀貨あれど、それにたるべくもあらねば、与は時計をはずして机の上に置きぬ。これにて一時の急をしのぎ給え。七夜の使いの門尾市雄貝三番地にて、太田と尋ねこん折には値をとらすべきに。
少女は驚き観世世史様見えて。我が別れのために居出したる手を唇に当てたるが、はらはらと落つる熱き難打を我が手のそびらに注ぎつ。ああ何らの悪因ぞ。この恩を謝せんとて。
自ら我が恐懸に越し少女は、小ペンハウエルを右にし、シルレルを左にして、ひもねす骨座する我が読書の草花に一輪の銘花を咲かせてけり。この時をはじめとして、与と少女との交わりしばらく茂く成りもてゆきて、同行人にさえ知られぬれば、彼らは即両にも、与をもって色を舞姫の群に御するものとしたり。
我ら二人の間には、まだ違いなる歓楽のみ損したりしよう。
その尚ささんは、はばかりあれと、同行人のうちに事を好む人ありて、与がしばしば芝居に出入りして、女優と交わるということを館長の下に報じつ。
さらぬだに、与がすこぶる学問の軌路に走るを知りて、憎みをもいし館長は、ついに胸を孔子館に伝えて、我が館を免じ、我が職を解いたり。
孔子がこの命を伝うる時、与に云いしは、御身もし即時に郷に帰れば、与を求すべけれど、もし尚此処に在らんには、公の助けをば、仰ぐべからずとの事なりき。
03:06
与は一週間、日の猶予をこいて、戸や甲と思い煩ううち、我が生涯にて最も悲痛を覚えさせたる二痛の所情に接しぬ。
この二痛は、ほとんど同時に出ししものなれど、一つは母の自筆、一つは親族なる何がしが母の死を、我が又なく慕う母の死を報じたる不見なりき。
与は母の書中の言を此処に反復するに絶えず、涙の迫りきて、筆の運びを妨ぐればなり。
与とエリスとの交際は、此時まではよそ見に見るより清白なりき。
彼は父の貧しきがために十分なる教育を受けず、十五の時、毎の死の募りに応じて、此の恥ずかしき技を教えられ、クルズス果てて後、ウィクトリア座に入れて、今は城中第二の地位を占めたり。
されど詩人、初クレンデルが、当世の奴隷と言いし如く、儚きは舞姫の身の上なり、薄き宮巾にて繋がれ、昼の音集、夜の舞台と厳しく使われ、芝居の化粧部屋に入りてこそ、香分をもよそい、美しき衣をもまとえ。
城外にては一人身の衣食も足らずがちなれば、親腹からを養う者は、その身苦いかにぞや。
されば彼らの仲間にて、癒しき限りなる業に落ちぬは稀なり、とぞ言うなれ。
エリスがこれを逃れしは、おとなしき性質と豪気ある父の仕事によりてなり。
彼は幼き時より物読むことをばさすがに好みしかど、手に入るは癒しきコルポルタージュと唱うる歌詞本屋の小説のみなりしを、
よと愛しる頃より、よが歌詞つる書を読み習いて、しばらく趣味をも知り、言葉の鉛をも直し、幾ほどもなく、世に気する文にも誤りじ少なくなりぬ。
書かれば世ら二人の間には、まず詩程の交わりを生じたるなりき。
我が藤の面感を聞きし時に、彼は色を失いつ、
世は我が身のことに関わりしを包み隠しぬれど、
彼は世に向いて、母にはこれを秘め給えと言いぬ。
子は母の世が学費を失いしを知りて、世を愚鈍然を恐れてなり。
05:35

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