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始まりました、志賀十五の壺。
みなさんいかがお過ごしでしょうか。志賀十五です。
この番組は言語学ラジオということで、よく言語学の話をしています。
今回のトークはですね、まさに言語学の入門編っていうか、
言語学に興味はあるけど何から手をつけていいかわからんとかね、あるいはそもそも言語学って何なのかとかね、そういった方に向けたトークとなっています。
まあでもこの番組のコンセプト自体がね、そういった側面はあるんですけど、
今日は特に入門編っていうね、そういった感じでやっていこうと思います。
トークタイトルにもあるようにですね、今日はまぶたっていうね、この一つの単語を通して言語学の面白さっていうのが伝わればいいなぁとね、思っています。
まぶた。
皆さんお持ちのあれですけど、
まあ語源としては目のふたっていうことなんですね。
もしかしたらそれさえ知らない方もいらっしゃるかもしれません。
目のふたがまぶたとなっているんですね。
だからまあ2つの語が1つにまとまっているっていうかね、単語の足し算で出来上がっているものということができます。
ただその2つの単語が1つになるときに、2つのね、少なくとも2つの音変化がありますよね。
1つは目っていうのがまっていう音に変わっていると。
2つ目はふたっていうのがぶたっていう濁る音に変わっています。
前の要素も後ろの要素も音が変わっているっていうことですよね。
本当はね、もっと細かく言うとアクセントも変わってるんですけど、ちょっとアクセントの話は時間の関係上割愛したいと思います。
こういうふうに目ふたという2つの単語が1単語になるとき、前の要素の音が変わる、もっと正確に言うと母音が変わることですよね。
この現象を転ぶ音と書いて転音っていう言い方をします。
一方ふたがぶたになるように、音が濁ることを連濁と言いますね。
連濁の方は皆さん聞いたことあるんじゃないかなと思います。
というわけで、これから転音と連濁それぞれ詳しく見ていこうと思います。
目が何かの単語の一部になるときにまぶたのまみたいに音が変わるのは他にもあって、
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例えばまつげとかまなことか、こういった単語のまも全て目の変化形ということになっています。
こういった現象つまり転音が観察されるのは目だけではなくて手もそうです。
手が単語の一部になるときはたずなみたいにたという音になるし、
この辺はちょっと分かりづらいですが、もっと分かりやすいので言うと、
船がふなよいになったり、酒がさかだるとかさかやになったり、
雨があまやどりとか、風がかざぐるまとか、
こういった転音というのは結構いろんなところで観察されるものです。
で、勘のいい方だったらもしかしたら気づいているかもしれませんが、
すべて母音がえからあに変わってますよね。
目からまぶた、てからたずなみたいに。
こういうふうに転音というのはかなり規則的なものなんですよね。
で、今の話だと単独で使うときはえっていう音で、
ある単語の一部になるときはあっていう母音に変わるみたいな言い方をずっとしてますけど、
歴史的に見ると本当は逆だったんじゃないかっていうのが、
まあこれはもう定説だと言っていいと思います。
つまり、まっていうのがある意味デフォルトの形で、
単独で使うときはめっていう音に変わるっていうことですね。
もっと細かく言うと、まにいっていう母音がくっついて、
まいっていうのが縮まってめっていう音になってるっていうような説明がよくされます。
ただまあ現代日本語では単純に音が変わってるっていうような言い方をすると思います。
ただこの転音っていうのがどれだけ現代に生き残ってるかっていうのは、
結構微妙なとこはあるんじゃないかなと思います。
というのもまぶたって聞いたときに、めのふただって思う人は結構少ないと思うんですよね。
もうまぶたで一単語だと思っていると思います。
あるいはめがねっていうのがありますよね。
まあ書けている方いらっしゃると思いますけど、
このめがねっていうのも今の話で考えると、
まがねになってないとおかしいですよね。
ある単語の一部なんだからめはまっていう形に変わって、
まがねとなりそうなんですが、
めがねになっていると。
これはおそらくめがねっていうのが発明されて、
日本にやってきた頃には、
すでに転音っていう現象が衰退していたんではないかなとね、
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まあ推測できますね。
転音に対して連濁、つまり後ろの音が濁るっていうのは、
現代日本語でも十分生きていると思いますね。
つまりふたっていうのがまぶたになるようなものです。
ただ、このふたがぶたになるのも、
よくよく考えてみるとおかしいんですよね。
確かに文字を見ると、
ふっていう仮名に点々がついてぶになっている。
規則的じゃないかと思われるかもしれませんが、
例えばさっきあげた例で逆だるっていうのがありましたけど、
これはたるっていうのが、
ある単語の一部になるときにだるっていう音に変わっている、
同じ連濁ですよね。
このたるがだるに変わるのは、
これは納得できるんですよ。
なぜかというと、
両方はぐきを使う破裂音という音だからです。
たーとだーっていうのは、
口の同じところで、同じやり方で発音しています。
一方、ふたがぶたになっているのは、
ふーの方は摩擦音と言われる音で、
口を閉じないですよね。
一方、連濁したぶたっていうのは、
口を閉じる破裂音で発音しています。
つまり、はひふへほーの音が、
連濁でばびぶべぼーになるのは、
本当はイレギュラーなんですね。
なぜなら摩擦音が破裂音に変わっているからです。
他のか行がが行とか、
た行がだ行に変わるのは両方破裂音だし、
さ行がざ行に変わるのも、
これはちょっと細かい話があるんですけど、
大まかに言って、同じ発音の仕方になっています。
このことからですね、
連濁でぶたっていう音が出るんだったら、
連濁しない音、つまり単独で使うときの音は、
ふたではなくて、
ぷたっていう発音だったと考えられています。
まあ、ぷとぶーだったら、
同じ発音の仕方なので辻褄が合うんですよね。
はひふへほーの発音は、
昔パピプペポだったっていう証拠は、
連濁以外にも実はあるんですね。
詳しい話は、
関連トークを聞いていただけたらと思います。
というわけで、
今日のトークは、
まぶたっていうこの一つの単語を通してですね、
転音と連濁のお話をしました。
まあどちらも、
単独で使うときと、
ある単語の一部になるときで、
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音が変わるっていう話でしたね。
この連濁の方はね、
例えば、
駅で転んじゃった話みたいに、
単語の足し算以外にも観察されるので、
そこもまた面白いとこではないかなと思います。
駅で転んじゃった話じゃなくて、
駅で転んじゃった話っていうことができるんですよね。
というわけで、
今日のトークはここまでということで、
最後まで聞いてくださってありがとうございました。
また次回のトークでお会いいたしましょう。
ごきげんよう。