1. 志賀十五の壺【10分言語学】
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2021-11-05 10:21

#382 「映える(ばえる)」を言語学しよう! from Radiotalk

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00:04
始まりました。志賀十五の壺。皆さんいかがお過ごしでしょうか。志賀十五です。
今日のトークのテーマは、「映える」っていう日本語について、当然というかね、言語学的に考えていこうと思います。
映える。どうですかね。この単語が使われるようになってもだいぶ経つんじゃないかな。
いわゆる流行り言葉としてはかなり長持ちしている方だと思うし、若い子の間だったらもうかなり市民権を得ていると言っていいと思います。
ただ、日本語母語話者全体に広がっているかと言われると、かなりそれは厳しいんじゃないかなと思います。
当然これは今言ったように新しくできた日本語の表現なわけですけど、インスタ映えから来ているわけですよね。
このインスタ映え自体が新しい表現なわけですよね。インスタで映えるっていうことで、2つの単語の足し算って言えばいいんですかね。
インスタ映えと。これ自体は名詞なわけなんですけど、そのインスタ映えから逆輸入的に映えの部分だけ持ってきて、動詞にして映えるになっているわけですよね。
だから映えるっていう動詞がある単語の一部、インスタ映えっていう名詞の一部になって、さらにそれが動詞に戻って映えるとなっているわけですよね。
これ自体非常に面白い変化だと思います。
これは世の常ですけどね、新しい表現が出てきたりすると、日本語の乱れだなんだって眉を潜める人もいると思います。
その気持ちはわからんでもないですけど、この番組はあんまりそういう正しい日本語とか言葉の乱れみたいなのは議論せずにですね、その現象自体を言語学的に見るとどういったことが言えるかっていうのをやっていくということになっています。
語源としては当然インスタ映えからなんですけど、今の映えるはおそらく僕はあんまり積極的に使う話者ではないのでわかんないんですけど、インスタに乗っける目的以外にも映えるっていうのは使えるはずですね。
どっちかっていうと形容詞っぽく使われるんじゃないかなと思うんですけどね。
この景色映えるわとか、この料理映えるみたいにそのものの性質を表してるっていう感じじゃないかなと思うんですよね。
そういう意味でも元の語源となったインスタ映えからは意味の拡大というか拡張が見られますよね。インスタに特定せず使うことができるということです。
03:12
このインスタ映えから映えるっていう新しい単語ができたのは逆声というね、専門用語で説明できるんじゃないかなと思います。
ちょっと違うかな多分いけると思うんですけど逆声っていうのは英語でback formationって言って、これ言語学の用語なんですね。
どういうものかっていうと、Wikipediaによると逆声とは増語法の一つ、つまり新しい単語を作る方法の一つで、語の一部を形態素と誤解し、あるいはそのようにみなすことによりその元の、元のっていうのは鍵括弧入りの元の形態の語を新たに作ること。
まあちょっとわかりづらいですかね。つまりこれは勘違いから新しい単語ができているということです。
インスタ映えから映えるができたっていうのは、インスタプラス映えっていうね、そういう足し算だと思って、でこの映えっていうのは動詞だとすると、
その終止形というか元の形は映えるになるだろう。
っていうわけで映えるという単語ができたんですね。
当然これは元々はインスタプラス映えなわけですけど、つまり連濁が起こってない形だったわけですけど、映えるではなくて映えるっていう動詞の形を想定してしまったっていうことなんですね。
でこのね、ウィキペディアのこの直後に書いているのは、黄昏るっていう例が挙げられてますね。これも面白い。黄昏っていうのは漢字で書くと、誰ぞ彼なんですね。
つまり誰だあれっていう意味なんですね。Who is thatっていう意味なんですけど、語源としてはその夕暮れ時は暗いので顔がよく見えないと。
だから誰だあれっていうのがそのまま時間を表す名詞となったんですね。
で、黄昏だったものがこれ全体が動詞の連用形と勘違いされて、つまり疲れっていうのが元々は疲れるだっていうのと同じように考えて、
疲れが疲れるになるんだから、黄昏は黄昏るになるだろうっていうことで新しい動詞ができたんですね。面白いですねこれね。
形は違えど、インスタ映えも似たようなことが言えるんじゃないかなと思います。
06:04
インスタプラス映えっていうこの動詞の連用形で、この映えっていう動詞の連用形の元の形は映えるっていうことで新しい単語ができたと。
一応そういう説明もできなくはないかなと思います。
こういうね逆性と言われる、なんていうんですかね、そのプロセスの例は英語にいっぱいあって、
例えば編集するっていうeditっていう動詞があるんですけど、これは元々editorっていうのが元々の形なんですね。
ただ、プレイヤーが元の形はplayだとか、シンガーの元の形はsingだみたいな感じで、
エディターの元の形はeditだっていうことでeditっていう新しい単語ができたんですね。
英語はね意外と探せば逆性の例はいっぱいあると思うので、気になる方はぜひ調べてみてはいかがでしょうか。
この逆性っていうのは一種の勘違いから新しい表現ができているっていうことなんですけど、
この勘違いっていうのも専門的に言えば類推という言い方になります。
英語だとアナロジーって言うんですね。
この類推っていうのは似た構造のものを似てるからといって同じルールを当てはめてしまうみたいなことなんですね。
ちょっとあんまり良くない説明かな。
本当は全然関係ない単語なんですけど、似てるのでというかね、勘違いで同じルールを当てはめるっていうのが類推なんですね。
例えば日本語の動詞の見るっていうものの命令形を見れっていう人がいるかもしれません。リスナーさんの中に。
こっち見れみたいな言い方ですね。
これは当然正しい形というか、いわゆる正しい形は見ろなわけですけど、
この選んで命令形が終わるっていうのは別の動詞のグループの話で、いわゆる五段動詞ですね。
行けとか駆けとか叫べとか何でもいいですけどいっぱいあるわけですね。
そのルールを見るっていう、これ一段動詞って言われるものですけど、そっちにも適用しちゃって見れとか食べれとか、こういうのが類推と言われるものです。
まあ一種の勘違いですね。
ただ、今はいわゆる間違った日本語ですけど、未来の日本語でもしかしたら見るとか食べるの命令形は見れ食べれになってるかもしれません。これは何とも言えませんけどね。
09:09
この類推っていうのは言語の変化を促す結構ね大きな要因なんですよね。
だから、ばえるっていう動詞もあながち馬鹿にできないっていうか、ある意味言語の本質をついてると言ってもいいかもしれません。
他にも勘違いはあって、異分析って言われるものもあって、例えば、やむをえないっていうのを、やむをえないと勘違いして、このををね、あいうえおのをで書いちゃう人もいるんですね。
で、これは間違ったところで単語を区切っちゃってるっていうことで異分析と言われます。
まあこれも言語の変化の一因と言われてるんですね。
というわけで今回のトークは、ばえるからね、ちょっと言語変化の本質についてお話ししてみました。
最後まで聞いてくださってありがとうございました。
次回のトークでお会いいたしましょう。
お相手はシガ15でした。
10:21

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