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始まりました。志賀十五の壺。みなさんいかがお過ごしでしょうか。大木戸博士です。
みなさんは、可算名詞とか不可算名詞っていうのを聞いたことあるでしょうか。聞いたことあると思います。多分これ、学校英語で習うと思います。
可算名詞と不可算名詞。数えられる名詞と数えられない名詞っていう風に言い換えることができて、
要は複数形がある名詞と、本来的に複数形がない名詞と、そういう風に英語の名詞は分けられるっていう風におそらく教わってると思います。
で、実際、辞書を見てみると、多分ね、名詞を引くと、CとかUっていう風に書いてあると思いますね。で、Cっていうのが数えられる方で可算名詞、Uの方が不可算名詞ということになっています。
例えば、何でもいいですけどね、液体とかですか、Tとかね、ウォーターとか、こういったものは数えられない名詞ということで不可算名詞に分類されます。
まあ、この辺は日本語母語話者であっても確かに数えられないなっていうのはなんとなくわかるんですよね。で、なんか数えるためにはカップオブとかね、ボトルオブみたいな、なんか容器をくっつけなきゃいけないみたいな、まあそういったことを皆さん習ったと思います。
まだこういう液体系っていうかな、わかるものもあるんですけど、例えばペーパーとかね、紙とか、ブレッド、パンとか、こういったものが数えられないっていう風に言うと、なんだかよくわかんないなっていう感じがしますよね。
こういう風に可算名詞か不可算名詞かっていうのは日本語母語話者にとっては少し難しいことかもしれません。まあ当然それは日本語にそういった区別がないからですよね。
この英語の名詞、可算か不可算かの区別について、池上義彦先生というね、先生が面白いことをおっしゃってます。
これ日本語論への招待っていう講談社から出ている本なんですけど、まあ引用しますね。
名詞が可算不可算のいずれに扱われるかは、その名詞自体にもともと決まっていることではなく、話し手がその名詞の指示対象をどのように捉えるかによって決まってくるものである。
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このようにおっしゃってます。さっき言ったように英語の辞書を引けば、カウンタブルのCかアンカウンタブルのUかっていう風に可算不可算っていうのが明記されているんですが、
それはあくまで便宜上っていうか、名詞に本来的に可算不可算っていうのが決まっているのではなく、
話し手がその名詞、より正確には引用部分にあったようにその名詞の指示対象をどういう風に見ているかということによって決まってくるっていうことなんですね。
実際多くの名詞が可算名詞としても不可算名詞としても使われます。有名なのは、私は猫が好きですっていうのをそのまま英語にしようと思って、
I like cat みたいな言い方をすると、この cat っていうのは漢詞のあっていうのもついてないし、複数形にもなってない。
不可算名詞ということになって、これは猫肉が好きだという解釈になってしまいます。 そうではなくて猫が好きっていうのを言いたいなったら、I like cats っていう風に複数形にしないとダメなんですね。
こういう風に、cat っていうのは普通、可算名詞として扱われることの方が多いですけど、不可算名詞として使うこともできて、その場合は肉という解釈になるんですね。
こういう風に、可算名詞が不可算名詞的に使われる現象を連続体化という風に池上先生はおっしゃってます。連続体化。
可算名詞っていうのは典型的には当然数えられるっていうことなので、しっかりした輪郭があって、他と区別されるような個別化されたものなんですけど、そういった輪郭があやふやになって、つまり連続体になった時に、例えば肉みたいな場合ですね。
そういった場合に、可算名詞は不可算名詞として用いられ得るということなんですね。 これは逆の場合もあります。つまり典型的には不可算名詞であるものが、それが個別化、個体化した場合は、可算名詞として扱われ得るんですね。
コーヒー2人分みたいな時は、2コーヒーズみたいに、本来不可算であるコーヒーっていうのを、例えば容器に入っているようなものをイメージして、コーヒーズという風に複数で言うこともできるんですね。
このことからですね、先ほど引用したようにですね、その名詞自体が可算名詞か不可算名詞かということではなくて、話者がそれを個別のものとして見るのか、あるいは輪郭のあやふやな連続体として見るかによって、
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可算名詞としても不可算名詞としても、あらゆる名詞が使われ得るんですね。 もちろんそれぞれの名詞に典型的に想定される、可算性というかね、不可算性みたいなものはあって、
キャットだったら普通は個体としてみなして、コーヒーだったら不可算的なものとしてみなしてはいるんですけど、それも話者の見方によっては同等でもなるということなんですね。
さらに面白いのが、ここから一歩を踏み込んで、英語の名詞っていうのは基本的には不可算的なものであって、その中で可算的に使われるものもたくさんあるっていうような説があるんですね。
これは面白いですよね。普通名詞って聞くと、やっぱり物の名前っていうようなイメージがあるので、輪郭がはっきりしてて、それぞれ数えられるようなものを指すっていうような、そっちの方が直感としては正しい気がするんですけど、それが逆であらゆる名詞は不可算的だという考えもあります。
確かにこれは直感には反するんですけど、言語の現実としては、そう主張してもおかしくないというか、というのが、さっきのI like cat みたいに cat っていう何もつかない漢詞のあとか、複数の s みたいなものがつかない裸の名詞は不可算名詞なんですよね。
もし過算的に使うんだったら、漢詞だったり s だったり、余計なものをくっつけないといけない。プラスアルファのものが必要。そういった意味では、英語の名詞っていうのは不可算的なものが、こういうの無表って言い方をするんですけど、デフォルトで、過算的なものがある意味特別だっていうような見方もできなくはないんですね。
今回のエピソードはまあまあ衝撃だったかもしれません。英語の名詞っていうのは、過算不可算に分かれるっていうようなね、そういう教えられ方をした方も多いと思うんですけど、そういったものは状況に応じてというか、話者の見方によって変わってきます。
どっちかに決めてくれっていうふうに思われるかもしれませんけど、日本語だってそういう側面はあります。例えば、いるとあるっていうこの2つの存在動詞は、いるっていうのは生き物に使って、あるっていうのは無生物に使うっていうふうに大まかになってるんですよね。
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ただ、魚がいる、これは水族館で使って、魚がある、だったらスーパーで使うっていうふうに、やっぱり魚っていう名詞は本来的に生物名詞なわけではなくて、まあ典型的には生物ですけど、話者の見方によっては魚があるっていうふうに言えるので、まあこういったものと感覚としては近いんではないかなと思います。
というわけで今回は、英語の名詞ですね。加算とか不加算とか、そういったものについてのお話でした。参考文献もね、余裕のある方はぜひ読んでみていただけたらと思います。
というわけで今回はここまでということで、最後まで聞いてくださってありがとうございました。番組フォローも忘れずよろしくお願いします。
それではまたお会いしましょう。お相手はシガ15でした。
またねー。