1. 志賀十五の壺【10分言語学】
  2. #153 「食べ行く」「飲み行く..
2020-08-12 08:19

#153 「食べ行く」「飲み行く」は誤用か?前編 from Radiotalk

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#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育
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始まりました、志賀十五の壺。皆さんいかがお過ごしいでしょうか。志賀です。
さて、今回はお便りをいただいたので、それに対する返答ということでやっていきたいと思います。
こちら、ラジオネームリンゴさんです。
このリンゴさんはあれなのかな?
ラジオトーカーのリンゴさんなのかな?ちょっとわかんないんですけど、とりあえずリンゴさんからいただきました。ありがとうございます。
こんばんは。志賀十五さんのラジオはとても興味深い内容ばかりで、いつも楽しませてもらっています。
以前から気になっていたことが一つあるので、教えていただきたいです。
標準語を話す人が飲み行くや食べ行くという言葉を使用しているのを聞きます。
助詞の2を抜くのは誤用ではなく当たり前のことなんでしょうか?というお便りです。
はい、いつも聞いていただいてね。ありがとうございます。
飲み行く、食べ行く、こういう言い方は確かにしますね。
言われて僕もちょっと気づいたというところもあります。
こういうのがちょっと気になるというかね、変だなって思うということ自体が言語学的なセンスがあるということだと思うので、とても良い質問だと思います。
池上明さんみたいな感じになりましたけど。
どうかな?これ12分で足りるかな?
頑張って1回の放送で収まるようにお話したいと思います。
結論から申し上げますとですね、誤用じゃないのかということですけど、
僕自身の考えではですね、母語話者の口から出てくるもの、母語話者が話すものに誤用はないというふうに考えているので、
誤用というのは母語話者でない話者がすること、
例えば我々日本人が英語を話す時にやってしまうようなミスのことを誤用と言ったりするというふうに思っているので、
なので間違ってはいないと思います。
そもそも正しいとか正しくないというのを、僕自身はそういうのをジャッジするのは言語学ではないと思っているので、
まずそこが1点ですね。
さらにもう1点ですね。
このリンゴさんの考えではですね、
食べに行くって考えますか。
食べに行くっていうのが元の形としてあって、
助詞のにっていうのが脱落して省略して食べに行くということになっているということですね。
そもそもですね、僕はちょっとこれについて考えてみた結果ですね、
この助詞の脱落ではなくて、
食べに行くと食べ行くっていうのは全く別の表現だと考えた方が都合がよろしいんじゃないかという結論に至りました。
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そういうお話をしたいと思います。
この表現はどうなっているかというとですね、
食べに行く食べ行くどちらにしろですね、目的を表しているということですよね。
この表現の面白いところは時系列がちょっと逆転現象が起こっているということなんですよね。
例えば食べて行くとかいう言い方だと、
こういうのは発話の順番とその出来事の順番というのが一致しているわけですよね。
ただ食べに行くといった場合は目的を表すので、
行った後食べるということなので、
その発話の順番と口に出す順番と実際の出来事の順番というのがずれているというかね、
時系列が逆転しているという点でまず面白いと思います。
あまりそういうことを議論する人はいないと思いますけど、
僕自身はちょっとそういうところが面白いかなと思います。
まずですね、このなぜ食べに行くのにが落ちて食べ行くになったというね、
そういうふうに考えないかという理由の1個目は、
そもそもにっていうのが脱落しづらい助詞っていうのがあります。
例えばがとかをっていうのは脱落しやすいんですよね。
俺聞いたとか全然言えますね。
俺が聞いたとか言わずに俺聞いた、これ全然言えると。
新曲聞いた、これも行きますよね。
新曲を聞いたじゃなくて、このをが出てこなくても新曲聞いたってこういうふうに言えると。
ただ太郎に聞いたのこのにをとって太郎聞いたって非常に言いづらいんですよね。
なのでがとかをとかっていう助詞に比べるとにっていうのは非常に脱落しづらいっていう点でですね、
まず食べに行くから食べ行くってなるっていうのはちょっと考えづらいんですよね。
で、もう一点はですね、この食べに行くとかの食べっていうのはいわゆる連用形っていう形ですよね。
で、このにをとっちゃうと食べ行くっていうのは、
これ出来事をそのまま順番に並べてるだけっていうそういう言い方もありますよね。
口に出すときはそういう言い方あんまりしないかもしれないですけど、
どちらかというと文語的って言っていいかもしれませんけど書き言葉的というかね。
例えばカレーを食べ行ったみたいにね。
にをとっちゃうとそういう表現と全く聞いた感じっていうか見た目っていうか形の面で同じになっちゃうので、
なのでそのにを省略しちゃうと別の形と一緒になっちゃうので、
なんかそのにを省略するメリットがないんですよね。
もちろんその発音する上であるものがない方がかなり効率的にね、
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発話の労力を軽減させるという意味では省略ってあるんですけど、
その省略した結果別の表現と一緒になっちゃうんだったら、
今度はその聞いてる側の負担が増えるんですよね。
話し手の方は省略することで簡単に話せるけど、
聞く側は食べていくっていう出来事が並んでるだけなのか、
食べに行くっていう目的を表してるかっていう区別ができなくなるので、
その聞き手側の負担が増えるっていう点で、
あんまり省略してることに意味がないと思うんですよね。
この2点がまず省略とは考えない大きな理由ですね。
他にも細かく見ていくとね、
やっぱりこれは食べに行くと食べに行くには結構ギャップがあると思います。
そもそもですね、この食べに行くとか飲みに行くっていうのは非常に生産性が低いというか、
そんな例が観察されないはずなんですよ。
例えば、勉強しに留学する。
これは当然2っていうのがついてて目的を表してますよね。
この2を省略して勉強し留学する。
これはね、多分その出来事の順番を言ってるだけですよね。
目的は多分表せないんですよね。
こういう言い方ができるのは、食べに行くとか飲みに行くとか、
かなり少数のペアしか観察されなくて、
もっと言うと遊びに行くとかは言えるので、
その2個目の動詞が行くとか来るとか、
移動を表す動詞じゃないとダメなんですよね。
移動の中でも特に行くと来るしか許されないんじゃないかと思います。
ちょっと待ってくださいね。どうしようかな。
時間が何か足りなくなる気がするので、一回ここで切りますね。
ちょっと前編後編に分けてお話したいと思います。
なので続けてお聞きください。
ほいじゃ、一回切ります。
08:19

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