1. 志賀十五の壺【10分言語学】
  2. #374 ガとヲの言語学(格配列..
2021-10-18 09:59

#374 ガとヲの言語学(格配列) from Radiotalk

途中鼻すすってすまん。

関連トーク
247 はじめての能格言語
https://radiotalk.jp/talk/450848

参考文献
『世界の言語と日本語 改訂版』 (角田太作、くろしお出版)
『明解言語学辞典』 (斎藤純男ほか編、三省堂)
「人称と活格類型 ―上代日本語の代名詞体系の観点から―」(John Whitman・柳田優子、開拓社、『「内」と「外」の言語学』所収)

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00:01
主語や目的語っていうのは何なのかっていうのは、言語学において結構難しい問題なんですよね。 日本語においてもそうです。
言語学で主語と言っているものと、 一般的な解釈での主語っていうのが食い違っていることはね、よくあるんですね。
そういった細かい議論は置いておいて、 どんな言語でも主語や目的語っていうものがあると仮定して、
その主語や目的語っていうのをどういうふうに表すかっていうのを、 タイプ分けする、グループ分けするっていう学問があります。
これを言語類型論、あるいは単に類型論という言い方をします。 英語だとタイポロジーですね。
始まりました。4月15日のツボ。 皆さんいかがお過ごしでしょうか。4月15日です。
言語類型論が対象にするのは、 主語や目的語をどうやって表すかっていうことだけではなくですね、
例えば語順とかも扱うんですね。 日本語みたいなSOV語順なのか、英語や中国語みたいなSVO語順なのか、
どういうふうに並べるかっていうことも類型論で扱うことがあります。 今回のトークはですね、
さっき言ったように主語や目的語を各言語でどうやって表すかっていうことを お話ししていくわけですけど、
とりあえず日本語みたいに、 名詞に何かくっついて、
主語や目的語っていうのを表す言語がありますよね。 日本語だったら、
まあ大雑把に言ってですけど、主語にはがっていうのがついて、目的語にはをというものがつきます。
あるいは、それこそ英語や中国語みたいな言語だと、 語順で表しますよね。
名詞に何がついて、主語や目的語を表しているわけではなくて、 動詞の前の位置は主語、動詞の後の位置は目的語というふうに、
語順に頼っているっていう言語もあります。 他にも主語や目的語を表す方法はあって、
それは、動詞に 主語や目的語の
表示をくっつけるというものですね。 いわゆる一致というものです。
アイヌ語なんかは、こういった言語で、 主語や目的語の名詞の方には がやをというものはつかないんですけど、
動詞に、例えば一人称主語の一致とか、目的語の一致っていうものが 出てくるような言語もあるんですね。
こういった仕組みっていうのは、組み合わされることもあります。 ラテン語なんかがそうで、
03:05
名詞の方は主語の形になるし、動詞の方は その主語に合わせた動詞の形になるというような、ハイブリッド型というものもございます。
こういうふうに主語や目的語を表すのに、 名詞の方で表すのか、語順で表すのか、
動詞の方で表すのかっていうふうに、 さまざまな方法があるんですよね。
さっき言ったように、日本語っていうのは、 名詞の方で主語とか目的語を表して、
主語には がっていうのがついて、目的語には をというものがつきます。
日本語は対角型の言語って言われるものなんですよね。
これはどういうことかというと、 自動詞の主語だろうが、他動詞の主語だろうが、
同じように扱って、つまり がというものがついて、
他動詞の目的語に をというものがつく言語です。
ここから少し専門的な固い言い方になっていくんですけど、
自動詞の主語のことをS、他動詞の主語のことをA、 他動詞の目的語のことをP、
ということが類型論ではあります。 そういうふうにラベリングするんですね。
Sはサブジェクト、Aはエージェント、Pは ペーシェントから来てるんですけど、
そういうのは置いといて、日本語はSとAが 同じように扱われる言語で、
Pだけ仲間外れというタイプです。
ただ、主語や目的語をこうやって表す 言語ばかりではなくて、
自動詞の主語Sと他動詞の目的語Pが 同じように扱われて、
他動詞の主語Aだけ仲間外れっていう 言語もあるんですね。
こういうのを能格型言語というふうに言います。 まあ過去のトークでも同じような話をしているので、
ぜひ聞いていただきたいんですけど、 もし日本語が能格型言語だったとしたら、
自動詞だと踊るみたいなものですよね。 俺踊るみたいに、自動詞の主語Sには何もつきません。
こういうのを絶対格という言い方をします。 一方他動詞は、
俺が魚食べるみたいになると。 この時、他動詞の目的語、つまりPも何もつかない。
絶対格表示となって、 他動詞の目的語Aにだけがという特別の表示が与えられるんですね。
これを能格という言い方になります。 つまり能格型言語は、SとPに絶対格がついて、
Aに能格がつく言語ということになります。 先ほど言った対格型言語の場合は、
06:04
SとAに主格というものがついて、 日本語だったらがですよね。
Pに対格、日本語だとOというものがつく言語となっているんですね。
今回のサムネイルが一応そういうことを表した図となっております。 つまり対格型言語と能格型言語の違いは、
Sがどのように扱われるかっていう違いで、 SがAと同じように扱われるのが日本語みたいな対格型言語。
SがPと同じように扱われる、絶対格で表されるのが能格型言語ということになっています。
かなり専門的な話をしているので、今日は頭こんがらがってくると思うんですけど、 もう一つ
主語や目的語を表すパターンがあって、 それは括格型と言われるものです。
これはどういうものかというと、 自動詞の主語Sが2つに分かれて、
SAとSPという2つのSが想定されるようなものなんですね。
SAというのはAに近いようなS、 つまり他動詞の主語に近いような自動詞の主語。
SPの方はPに近いようなもの、 つまり目的語っぽい自動詞の主語ということになります。
これも仮想の括格型日本語みたいなものを 考えてみると、
他動詞は私が魚を食べるみたいになる。 これだけ見ていると 今の日本語と変わらないです。
問題は自動詞の場合です。 もし自動詞が
意思的に何かを行うようなものの場合、 これは他動詞の主語に近いということで、
SがAと同じように扱われます。つまり 踊るみたいな動詞の場合は、私が踊る というふうになるんですね。
しかし同じ自動詞の場合でも、 何か意思を持ってやるわけじゃなくて、
意味的にはPに近いようなSというものも あるんですね。
腐るみたいな動詞の場合は、意思的に腐るわけではないので、
こういったものの場合は、 自動詞の主語Sの表示が目的語Pと同じようになります。
つまり魚を腐るみたいな言い方になるんですね。
つまりさっき言った対角型や 納角型の言語の場合は、
SというのがAと同じように扱われるのか、 Pと同じように扱われるのかという問題だったんですけど、
このかつ角型言語の場合は、S自体が2つに分かれて、
意思的だったらAと同じように、 意思的じゃなかったらPと同じように扱われると。
09:03
そういった言語なんですね。
変わった言語と思われるかもしれませんが、 上代日本語といって、
我々が古文で習う以前の日本語も、 こういった言語だったと言われています。
現代日本語で主語を表すがっていうのは、 上代日本語では、
意思的に何かを行う場合にのみ、 つまりSAとAにのみついていたんですね。
だからがっていうのは、 人間名詞と一緒によく出てきていたようです。
というわけで、 今回は主語や目的語をどうやって表すのかっていうね、
かなり大きい枠組みのお話でした。 最後まで聞いてくださってありがとうございました。
よろしかったら番組フォローお願いいたします。
ではまた次回お会いいたしましょう。 お相手はシガ15でした。
09:59

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