1. 志賀十五の壺【10分言語学】
  2. #479 オジャマタクシの言語学..
2022-09-20 10:17

#479 オジャマタクシの言語学?(メタセシス) from Radiotalk

関連エピソード
https://radiotalk.jp/talk/536876
https://radiotalk.jp/talk/593439

主要参考文献
“Pacific Languages: An Introduction” (John Lynch, University of Hawai’i Press)

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#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育
00:06
始まりました、志賀十五の壺。
みなさんいかがお過ごしでしょうか。
ご番外のマリーです。
トトロのジブリのね、トトロのめいちゃんが
オジャマタクシーっていうシーンがありますよね。
オジャマタクシー。
もちろん、オタマジャクシーが
本来の形なわけですけど、
それをめいちゃんが言い間違えているということになっています。
今回は、こういう現象を言語学的に扱っていこうと思います。
確かに言い間違いは言い間違いなんですけど、
ちゃんと言語学で扱われているものなんですね。
こういう風に音の順番が入れ替わっちゃうことを
音韻転換、あるいは音韻転奏ということがあります。
あるいはカタカナでメタセシスということもあるんですよね。
オジャマタクシーの場合は、
モットーがオタマジャクシーなので
どうなってるんだ。
マを挟んでタとジャが入れ替わってるっていうことですかね。
これはね、タとジャが入れ替わってると考えるか、
シーンだけが入れ替わってると考えるかはちょっと微妙ですけど、
いずれにせよ音が入れ替わっています。
外視で子供はね、こういうことやりがちなんですよね。
トウモロコシがトウモコロシみたいにね。
これもめいちゃんが言ってたやつですけど、
こういった風に子供のある意味、
発話の特徴付けとしてこういった映画とかのね、
創作物の中に音韻転換が使われることがあります。
この話については関連エピソードがあるので聞いていただけたらと思います。
こういうのは役割語って言うんですよね。
皆さんの中にもお邪魔タクシーとかトウモコロシみたいに、
こういう言い方だと思って小さい頃ずっと言っていたみたいな言い方あるんじゃないでしょうか。
なんでこういう音韻転換が起こるかっていうのは、
まあいろいろあります。発音のしやすさみたいなのもあるし、
あるいは類推によって、
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一種の勘違いによって音韻転換が起こるということもしばしばあるんですね。
例えば、おたまジャクシーがお邪魔タクシーになっちゃうのは、
お邪魔しますのお邪魔っていう単語を知ってて、タクシーっていう単語も知っててっていうことで、
お邪魔とタクシーの一種の複合語だっていうふうに勘違いしているという可能性もあります。
まあそういうふうに考えちゃうと、トウモコロシっていうのはコロシっていう単語からの類推だっていうことになっちゃうんで、ちょっと物騒ですけど、
まあいずれにせよそういうふうに勘違いによって音の位置が変わっちゃってるっていうようなものもしばしばあると思います。
こういう勘違いのことをさっき言ったように類推と言うんですけど、この類推は言語の変化を促す大きな一因となってるんですよね。
例えば、ハンバーガーっていうのは本当はハンとバーガーで切れるものではなかったんですけど、そこに切れ目を入れちゃって、
バーガーだけがヒトリアルキーするようになっちゃって、チキンバーガーとかチーズバーガーとかテリヤキバーガーとか、そういった言い方がどんどんどんどん作られてますよね。
このハンバーガーについてのお話も関連エピソードがあるので、ぜひ一緒に聞いていただけたらと思います。
まあそういったこともあって、そういう勘違い、思い違いみたいなものが大因転換を引き起こしている場合もあるかと思います。
日本語の場合はもう単なる言い間違いじゃなくて、もうそれで単語として成立しちゃってるものも多々あるんですね。
有名なのは新しいという単語で、これは本当は新たしいというのが元の形だったんですよね。
気持ち新たにとか、そういった場合に新たっていうのが残ってますけど、それが形容詞になると新しいっていう風に音位転換が起こっています。
あるいはサザンカっていうのも本当はさんざかなんですね。漢字を見ればこれはわかります。
こういったもの、新しいとかサザンカみたいなものは一丁前に日本語として受け入れられていますけど、そこまでまだ至っていないものもあります。
雰囲気っていうのがそうですね。雰囲気っていうのが、もちろん文字通りには正しい読み方なんですけど、文字通りってこういう言い方できるのかな?
まあ雰囲気じゃなくて雰囲気っていう人もいますよね。多分僕自身もよくやってるんじゃないかなと思います。
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ただそのうち雰囲気の方が多数派になれば、新しいっていうのが現代日本語で普通であるように雰囲気っていうのがある意味正しい日本語として受け入れられるかもしれません。
音韻転換っていうのは日本語においては、まぁ所詮というかね、言い間違いに過ぎなくって、お邪魔託し、友殺しみたいにちっちゃい子がやる間違いであるとか、あるいは新しいサザンカみたいに、もうそれが定着してしまったものもありますけど、
基本的には言い間違いであるということになっていますが、この音韻転換という現象がもっと言語の根幹に働いてるっていうか、文法的な機能になっていることがあります。
つまり音を入れ替えることで、意味が変わってくるっていうような言語があるんですね。
これはロトゥマ語っていう言語で、オセアニアのフィジーっていう国で話されている言語です。フィジーはフィジー語っていう言語があるのと、あとはインド人も多いのでヒンディー語も話されています。
ロトゥマ語っていうのは、フィジー語ともヒンディー語とも全然違う言語です。一応フィジー語とは親戚にあたりますけど、お互い通じないぐらい全然違うんですよね。
フィジー語を含め、オセアニアの言語っていうのは母音は大体5つなんですよね。アイウエオの5つです。
しかしロトゥマ語はオセアニアの言語でありながら、母音が10個もあるんですね。倍もあります。
これは何でかっていうと、さっき言ったようにロトゥマ語では音位転換が文法的な機能になっていて、頻繁に起こるんですよね。
そうなると、ロトゥマ語の場合は親と母音が入れ替わって、母音が連続するっていう状況がよく起こります。
その結果、母音が融合しちゃって、新しい母音ができて、結果的に母音の数が増えているっていうことになってるんですね。
例えば、人っていう単語はロトゥマ語でファモリーというらしいです。
で、ここで音位転換が起こって、最後のリのアールアイ、この2つの音が入れ替わって、ファモイルみたいなね、発音になって、
で、さらにこのオとイの母音が融合して、唇を丸めるエ、ウみたいな発音になって、ファミオみたいな発音になるそうです。
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つまり、人っていう単語にはファモリーっていう形とファミオルっていう形と2つあるっていうことなんですね。
で、これがそれぞれ文法的な違いを持っていって、ファモリーっていう音位転換が起こってない方は、
定の名詞、つまり英語だと定漢詞がつくような意味を表して、音位転換が起こってさらに母音が融合したファミオルみたいな発音の時は不定の意味、
英語だとアーとかアンとかあるいはサムがつくような意味になるそうです。
ということで、言語によっては単なる言い間違いじゃなくって、こういうふうに意味の使い分けにも音位転換が関わっていることがございます。
というわけで今回のお話はここまでということで、また次回のトークでお会いいたしましょう。
お相手はシガ15でした。
またねー。
10:17

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