1. セミラジオ ~生き物とサブカル~
  2. ジンバブエのハイパーインフレ..
2022-11-20 49:58

ジンバブエのハイパーインフレと人々の生活

ジンバブエで2007年~2009年にかけて発生したハイパーインフレ。
1年間で物価が400万倍に上昇する異例の事態の中、ジンバブエの人達はしたたかに、あるいは淡々と生活していました。

・新聞一部が200億ジンバブエドル
・ジンバブエの歴史とハイパーインフレ発生までの経緯(ざっくり)
・「今週は5000万ジンバブエドル札がいいお金です」
・あ~、ジンバブエ!
・史上最高額の高額紙幣 10亥ペンゴ
・カネを焼く


ハイパー・インフレの人類学: ジンバブエ「危機」下の多元的貨幣経済
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10亥ペンゴ
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教育をざっくばらんに語るラジオ ~いくざく~ コラボ回(前編)
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底抜けに浅く歴史を語る祐介のラジオ 新井白石回
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底あさ テトリスの歴史
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みなさん、こんにちは。自然を愛するウェブエンジニア、せみやまです。
今日は、2007年から2009年にかけて、アフリカのジンバブエで起こったハイパーインフレと、その状況の中での人々の生活についてお話ししたいと思います。
本題の前にお知らせなんですが、僕がいつも楽しみに聞いているポッドキャスト番組、教育をざっくばらんに語るラジオ、いくざくの最新回が、11月19日の3時9分に配信されました。
この3時9分は午前の3時9分ですね。
なぜ午前3時9分かというと、11月19日3時9分で、いいいくざくの日という語呂合わせなんですね。
こちらの内容なんですが、僕がゲストとしていくざくに出演させていただいてまして、パーソナリティのしろさん、とよさんと一緒にウェブエンジニアという職業についてお話しするというものになっています。
前後編に分かれていまして、今回配信されたのが前編になります。
いやー結構緊張してしまったんですが、しろさんととよさんに色々と引き出していただきまして、ウェブエンジニアというお仕事についてお話しさせていただきました。
畑の違うお仕事をされている方にはウェブエンジニアが具体的にどんなことをしているのかピンとこないところもあると思うんですが、
少しでもお伝えできればいいなと思っています。
概要欄にリンクを貼っておきますので、ぜひ聞いていただけたら嬉しいです。
それでは本編に行きたいと思います。
今回はハイパーインフレがテーマということで、日本ではハイパーインフレという状況ではないですが、円安で物価が上昇していろんなものが値上がりしていますよね。
僕も少なからず影響を受けています。
例えばよく行くインドカレー屋のビーランチが800円から900円に値上がりしたとかですね。
ごくごく身近なところなんですけども。
物の原価が上がっているのでいたしかたないんですけども。
あとはアイハーブという海外の食品なんかを買ったりできるサイトをよく使うんですけども。
こういう外国産のものを売っているサイトなんかはダイレクトに円安の影響を受けていて、かなり割高になってますね。
日本もインフレという状況ではあるんですが、
ただ世界の歴史に目を向けると、今日本で起きている物価高や円安とは桁違いのインフレ、ハイパーインフレという状況がいろんな国やいろんな時代で起きてきてたんですね。
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その中でもジンバブエで2007年から2009年にかけて発生したハイパーインフレは比較的近年に発生したということや、そのインフレ率の天文学的な数字によって多くのメディアで大きく報じられていました。
ジンバブエのハイパーインフレについては聞いたことがあったり、ジンバブエという国名を覚えていなくてもアフリカのどこかの国でなんかすごいインフレがあったみたいだよねという印象を持っている方は多いのかなと思います。
ジンバブエのハイパーインフレの凄さを物語る数字の一例を挙げると、例えば2008年の7月19日の時点ではアメリカドルとジンバブエドルの闇両替えレートは1ベードルにつき900億ジンバブエドルでした。
つまり1アメリカドルと900億ジンバブエドルは等価値だったんですね。
闇両替えレートというのは、実は2009年までジンバブエでは一般の人たちがジンバブエドルを外貨に買えることが違法だったんですよ。
ただ正規のルートではなく、法の目の行き届かないところで両替えしてくれる業者はいて、そういう業者に頼んでジンバブエドルと外貨を両替えすることは可能だったんですね。
その闇両替えのレートが1ベードルにつき900億ジンバブエドルだったんですね。
つい先日1ドル150円になって歴史的円安という風にニュースサイトなんかに書いてあったんですが、それと比較するとジンバブエドルのインフレがいかに桁違いだったかわかりますよね。
今回ジンバブエのハイパーインフレについて取り上げたのは、今後日本の円安がどこまで進行するかわからないんですけども、日本のインフレの遥か先を行っていたジンバブエのことを知ることで、日本でもさらにインフレが進行した時の心構えじゃないですけど、何かヒントがもらえるかもという風に考えて今回取り上げてみました。
で今回ジンバブエについて知るために本を一冊買ってみました。
ハイパーインフレの人類学、ジンバブエ危機化の多元的貨幣経済という本なんですけども、
06:03
この本の作者の早川真由さんという方は、ジンバブエのハイパーインフレ期間とちょうど重なる2007年2月から2009年3月までジンバブエ大学に留学されていて、文化人類学の現地調査を行うために首都であるハラレに滞在していたんですね。
ジンバブエに来た当初の目的は、ジンバブエのポピュラー音楽について研究をするためだったそうなんですが、滞在中日に日に悪くなるジンバブエの人たちの生活のことが気がかりになって、
最終的には研究テーマをハイパーインフレに変更して、激動するジンバブエの状況の中で、ご本人も翻弄されながら現地調査を行っていたんですね。
この文化人類学がベースにある方が経済学の分野で語られることが多いハイパーインフレについて調査を行ったということが一つポイントになっているのかなと思っていまして、
ハイパーインフレがテーマなんですけど、それ以上にその状況下で暮らしていたジンバブエの人たちにピントが合っているというか、
ハイパーインフレ化の生活って全く想像ができてなかったんですけども、この本を読んでだいぶ自分の中で解像度が上がったように思っています。
生身の人々が状況に翻弄される中で発した言葉の一つ一つが刺さってくるというか、心を揺さぶられる言葉がいくつもありましたね。
では早速本の内容をご紹介していこうと思うんですが、まずはジンバブエという国の歴史とハイパーインフレ発生に至るまでの経緯についてざっくりお話ししたいと思います。
多くのアフリカの地域がそうであるようにジンバブエも植民地支配を受けていたという歴史があります。
ジンバブエの植民地化を進めたのはイギリス人のセシル・ローズという人で、この人は南アフリカで鉱山の発掘によって巨万の富を築いたんですけども、
さらに野心を燃やして武装勢力を組織して現在のジンバブエにあたる地域を征服したんですね。
そしてその地域をローデシア、つまりローズの家と名付けたんですよ。かなり自己顕示欲の強い人だったみたいですね。
その後ローデシアは北ローデシアと南ローデシアに分かれて、1980年に南ローデシアがジンバブエ共和国として独立することになります。
09:09
1980年の独立から2017年に至るまでほとんどの機関を大統領として務めたのがロバート・ムガベという人で、ハイパーインフレの機関もこのムガベさんが大統領に就任していました。
ジンバブエのハイパーインフレの発端の一つになったと言われているのが、2000年代前半から始まった白人の土地の強制収容です。
白人によって植民地化されていたジンバブエでは、農業に適した肥沃な土地を白人が独占し、黒人は痩せた土地に住ませるという政策が取られていて、独立してからもその格差は埋まってなかったんですね。
そこでムガベ大統領は白人の大規模農場を強制収容して、黒人に分配するということを始めたんですよ。これが欧米の国々にとっては不満だったんですね。
それらの国々はジンバブエに経済的な制裁を課して、ジンバブエの経済状況はどんどん悪くなっていきました。
2008年にはインフレ率が年間2億%を超えて、このインフレ率というのが年間のインフレ率100%とする場合、1年間で物価が2倍になったってことを意味するんですけども、
インフレ率2億%というのは、物価が1年で400万倍になったことを意味します。1年で物価が2倍になってもかなり大変だと思うんですけども、400万倍というのはちょっと次元が違いますね。
ハイパーインフレに襲われたジンバブエは物資不足、現金不足、断水、停電が発生し、さらにコレラが蔓延して、1000人以上の方が犠牲になりました。
2009年の2月には複数通貨制という制度が導入されます。これは実質破綻していたジンバブエドルに代わって、アメリカドルや南アフリカの通貨であるランドなど外貨を国内で使用可能な通貨と認めることで、ハイパーインフレの収束を図るものでした。
これによってジンバブエのハイパーインフレは収束しました。生活環境の悪化によってコレラが蔓延して多くの方が亡くなったというのは本当に痛ましいですし、他にもいろんな問題が起きていたと思います。
12:00
ただ、多くの方はそんな混乱するジンバブエ社会の中でも、ある人はしたたかに、ある人は淡々と生活を続けていたんですね。今回この本を読んで、それがすごく印象的でした。
日本の経済とハイパーインフレ、当時のジンバブエといろいろ違うところはあるんですけども、人間が生きて生活している以上共通しているところの方が多いんだなというふうに思ったんですよね。
世の中がどんなふうに変わっても、一日一日を生きて生活していくしかないんだなーって思ったんですよね。
全体としてはそんなふうに感じたんですが、ここからは具体的にハイパーインフレ化のジンバブエで何が起きていたのか、印象的なところをピックアップしてご紹介したいと思います。
当時のジンバブエの物価の上昇率は、ここまでにいろんな数字でお話してきたんですが、食べ物を買うために行列に並んでいる間に物価が2倍になっていたという話もあって、そういう時はお店の値札の付け替えのために一時的に販売を休止したという話もあります。
それとジンバブエで暮らす人と外からやってきた人の支払いの際の振る舞いについて、印象的なエピソードがあるのでご紹介したいんですけども、
2008年の7月にスーパーマーケットで白人の若い女性2人がレジで支払いをしようとしていたそうです。
チューインガムか何かを買おうとしていたらしいんですけど、その白人女性のうちの一人がジンバブエドルを笑いをこらえながら数えて、店員さんに渡すのではなくて、お札を扇状に広げて記念写真を撮っていたそうなんですね。
チューインガム1個買うのにこんなにたくさんのお札が必要なんだよ、おかしいよねっていう感じでですね。
で、その2人は爆笑しながら店を出て行ったそうです。
おそらくその2人はジンバブエに来て日が浅い旅行者かボランティアだったと思うんですけど、
そうした外部の人の振る舞いと対照的なのが現地のジンバブエの人の振る舞いです。
現地の人がどうやって支払いをするかというと、大量のジンバブエドル札を鞄に無造作に突っ込んで持ち歩いてレジで淡々と数えて渡すんですよ。
作者の早川さんによると、それはとても自然な振る舞いに見えたそうです。
なんかかっこよくないですか?想像するとかっこいいなって思っちゃうんですよ。
15:05
牛乳ワンパック買うのになんでこんな枚数お札を出さなきゃいけないんだって思わなくはなかったと思うんですけど、
それでも生活していかなきゃいけないから淡々とそれをこなすっていうかっこいいと思っちゃいますね。
またこんなエピソードもあります。
ジンバブエの教会である日牧師さんが信者にお話をしたそうなんですよ。
その内容なんですけど、ジンバブエでは毎週お札を発行していますね。
先週は1000万ジンバブエドル札がいいお金でした。今週は5000万ジンバブエドル札がいいお金です。
って言ったそうなんですね。教会というのは信者からの寄付で成り立っていますから、
いいお金という表現でお札の種類を指定して寄付を募っていたわけなんですね。
いいお金っていう言い回しがじわじわきますよね。
またジンバブエドルの貸し借りについてこんなこともあったそうです。
ハイパーインフレカのジンバブエではお金の価値がすごい勢いで下がっていったわけなんですが、
友人同士でお金の貸し借りをするとき、その価値の減価率は考慮に入れないのが普通だったそうなんですね。
例えばこの本の作者の早川さんがジンバブエ人の友人にバス代の2000万ジンバブエドルを貸したんですが、
お金を貸してから返してもらうまでの10日間でバス代が1.5倍に値上がりしたそうなんです。
なんですけど、物価が1.5倍になったから額面も1.5倍にして返すねっていうことにはならなくて、
その友人は額面通りの2000万ジンバブエドルを返してくれたそうなんですね。
ある意味早川さんは損をしたと言えなくもないんですが、
友人同士の関係性の中でそこは目をつぶるというか、そこまで厳密に求めないみたいな暗黙のルールがあったようです。
お金の貸し借りが厳密な数字だけではなくて、お互いの関係性込みで行われていたということなんですね。
続いてはハイパーインフレ化のジンバブエにおける現金と預金についても触れておきたいんですけども、
銀行に預けている1万円と手元にある1万円の価値っていうのはこれは同じであるっていう認識を多くの方が持っていると思うんですけど、
当時のジンバブエでは同じ金額のお金でもそれが現金なのかまたは預金なのかで大きく価値が違っていたんですね。
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というのはジンバブエドルはドイツの印刷会社が政策していたんですけど、
欧米による経済制裁の一環でそのドイツからのお札の供給も途絶えてしまったんですよ。
仕方なく自国での印刷に切り替えたんですが、燃料不足や印刷会社のストライキで市場に現金が出回らない現金不足という状況が生まれたんですね。
足りない現金に対応するためにジンバブエ政府は預金封鎖に踏み切りました。
これは1日あたりの預金の引き出し上限額に大きな制限をかけるというものでした。
例えば2008年7月の引き出し上限額は1000億ジンバブエドルだったんですけども、
この時1ドルが250億ジンバブエドルだったので1日約4ドルしか引き落とせなかったんですね。
新聞一部が200億ジンバブエドルだったので1日の上限額1倍まで引き落として新聞5部を何とか買えるという金額だったんですね。
その後2週間でさらにジンバブエドルが値下がりして1ドル900億ジンバブエドルになって物価は上昇して新聞一部の値段が1500億ジンバブエドルになってしまったので、
もはやATMで限度額の1000億ジンバブエドルを下ろしても新聞一部すら買えないという状況になってしまっていました。
タダでさえお金の価値がどんどん下がっているのに、預金があるのに下ろせないという状況はジンバブエで暮らす人々に大きな負担を強いることになりました。
預金封鎖されていた首都のハラレではお金を下ろすための行列が延々と続いていたそうです。
公務員やサラリーマンが自分の月給を全額引き落とすには数日から1週間以上かかったと言われています。
その行列に並んでいる間にも彼らのお金の価値はどんどん下がっていくわけで、もうたまらないですよね。
どれだけ預金があっても現金化しないと使えないというのはもどかしいですよね。
もちろんデビットガード払いで預金から直接払うことができるお店もあったんですが、物資の供給が滞る中でとりあえず物が置いてあるお店や露店商から物を買わないといけないわけで、
21:03
どんだけ預金があるんだと言っても、「いや、うちは現金払いしか対応してないんで。」って言われちゃったらどうしようもないわけなんですよね。
今の日本ではキャッシュレス化が進んでますし、僕も最近お店で支払いをする場合ほとんどペイペイで決済していて、
前ほど現金を持ち歩かなくなったんですけど、世の中こういう状況も発生し得るんだというふうに思いましたね。
こういう状況では公務員やサラリーマンなど振込で給料をもらっている人が大変な思いをしていたんですが、
逆に意外としたたかにサバイバルしていたのが、路上で物を売り買いする露店商でした。
早川さんは路上でプリペイド形態の通話カードを販売する露店商と仲良くしていたんですが、
露店商は元々現金主義なので月給を何時間もATMに並んで引き落とすということをする必要がなかったんですね。
逆に早川さんが仲良くしていた公務員のミミさんという方がいるんですが、
預金が引き落とせなくて石鹸1個買えないと冷め冷めと泣いていたそうです。
その時点での預金引き出し額の上限は、さっきも言ったように1000億ジンバブエドルで新聞一部すら買えない金額だったんですね。
1日並んでようやく引き落とした1000億ジンバブエドルで新聞一部すら買えないわけです。
その公務員のミミさんは生計が立てられなくなり、ハイパーインフレの収束前に南アフリカへ移住したそうです。
このように現金と預金の価値が大きく開いた時期というのが、ジンバブエのハイパーインフレのある期間中に発生していました。
実はこの状況を利用して外貨を増やす裏技というのが存在していました。
この手法は金を焼くという因語で呼ばれていたんですけども、これはお札を燃やして灰にするという意味ではなくて、
おそらく小麦の塊を焼いてパンにするみたいな焼き上げて価値を上げるみたいな意味が込められているのだと思います。
この時期、アメリカドルとジンバブエドルの闇両替レートは、現金レートが1ドル900億ジンバブエドル、預金レートが1ドル4500億ジンバブエドルだったんですけども、
どういうことかというと、闇両替でアメリカドルをジンバブエドルに両替した場合、現金だったら1ドル900億ジンバブエドルのところを、
24:06
預金としてであれば1ドル4500億ジンバブエドルもらえるんですね。これを利用したわけです。
まずは手持ちの1ドルを預金レートで4500億ジンバブエドルに両替します。
これをATMで1日1000億ジンバブエドルずつ現金化して、5日間で4500億ジンバブエドルの現金を回収するんですよ。
で、回収した現金でアメリカドルを買って、さらにそのアメリカドルを預金レートで両替するということを繰り返せば、
延々と手持ちの外貨を増やすことができたというわけなんですね。
この金を焼くという手法は一時期大流行したんですが、政府によって取り締まられて下火になっていきました。
で、2008年の後半はハイパーインフレの加速が進み、ジンバブエの人たちの生活が本当に苦しい時期でした。
早川さんはジンバブエでコリーヌさんという女性の医師と部屋をシェアして住んでいたんですが、
このコリーヌさんがそうした一番苦しい時期に言った言葉がとても印象に残っているので紹介させていただきます。
このコリーヌさんはある日スーパーマーケットに行ったそうなんですが、
愕然として家に帰ってきたそうなんですよ。
行った先のスーパーマーケットでほとんど物が売られていなくて、
僅かに残った商品にはとんでもない値段がついていたそうなんですね。
コリーヌさんの言葉を引用しますね。
教会に行って夜通しお祈りをするわと言ったそうです。
コリーヌさんはジンバブエでは珍しいストライキをしない医師だったそうで、
国公立病院の医師や看護師が値上げを求めてストライキをすることはジンバブエでは普通のことだったそうなんですが、
コリーヌさんはそうしたストライキには参加していなかったそうなんですね。
なぜストライキをしないのか早川さんが尋ねたところ、
給料の値上げは必要だと思うけど、
労働条件が悪いからといって医師が病院に行かないというのは良くないことだと思う。
27:00
医師が仕事に行かなければ病院はどうなるの?と不思議そうに答えたそうです。
なのでそんなコリーヌさんが病院を休むというのは異例のことだったんですね。
ただコリーヌさんは1日だけ仕事を休んだんですが、
翌日からはいつものように出勤したんだそうです。
なぜ仕事に行く気になったのか早川さんが尋ねると、
僕はこの時のコリーヌさんの言葉がすごく印象的だったんですけども、
怒っても怒らなくても何も変わらないのよ。
だからもう怒らないのよ。って言ったそうなんですね。
逆感というか丁寧、諦めの境地なのかもしれないんですけど、
怒りを超えて状況を受け入れて自分にやれることをやるという人生に対する姿勢がすごく印象的でした。
怒っても怒らなくても何も変わらないのよ。
だからもう怒らないのよ。
いやー、この言葉はすごいなと思いましたね。
早川さんはコリーヌさん以外にもジンバブエでいろんな人と親しくしていたんですが、
本当にいろんな人がいて、その人たちの人生の一場面を垣間見ることができるのも、
この本の魅力の一つだと思っています。
そんなこの本の登場人物の一人である露天賞のババア田中さんというジンバブエの人がいるんですけど、
早川さんはババア田中さんに一月分の新聞代として100ドル札を渡したそうなんですね。
そしたらその100ドルを大事に貯蓄したり生活必需品を買うとかじゃなく、
カラーテレビとDVDプレイヤーを買うのに使っちゃうんですよ。
それまでは白黒テレビしか持っていなかったババア田中さんなんですけど、
白黒テレビで良くないという早川さんに対して露天賞のババア田中さんは、
白黒テレビで十分なんてことはない。
白黒テレビだったらジンバブエのサッカーチームのキャップスユナイテッドかっこテーマカラー緑と
ダイナモスかっこテーマカラー青が試合をしてもどっちがどっちかわからないじゃないかと答えたそうです。
確かにサッカーはできればカラーで見たいですよね。
あとこんな小ネタもありまして、ジンバブエの人は何かうまくいかないことがあると、
あージンバブエって言うそうです。
物事がスムーズにいかないことを表現する言葉として、
あージンバブエって言うんですね。
30:01
ジンバブエの人たちのジンバブエ感がよく伝わるエピソードだなぁと思いますね。
そんな混乱を極める2008年後半のジンバブエで、
ジンバブエ大学の図書館のカウンターにいた司書さんがとうとうと語った長ゼリフがあるので引用したいと思います。
トウモロコシコが10キログラムで3兆ジンバブエドル。
パン一斤が1兆ジンバブエドル。買えない。
だからどうするか?
トウモロコシコを朝昼晩食べる。
そしたら子供2人に奥さんの分入れて1ヶ月でトウモロコシコ30キログラム入る。
3兆×3で9兆ジンバブエドル。
トウモロコシコ3兆ジンバブエドル。
それを夕方6時に見つける。
家に帰って次の日3兆ジンバブエドル持って店へ行く。
そしたら値段が4兆ジンバブエドルになってる。
それでまた帰って足りなかった1兆ジンバブエドル用意してきたら今度は5兆ジンバブエドルになってる。
こんなの僕が思うのはブツブツ交換した方がいいよ。
貨幣システムが機能しないんだから。
例えば50キログラムのトウモロコシコをバスに乗るのに何キログラムか渡して石鹸とか砂糖とか食用油とかもそれで買う。
7月銀行から引き出せる現金が1日当たり1,000億ジンバブエドルだったよね。
この時家から町へ行くのに片道3,000億ジンバブエドルだった。
往復だと6,000億ジンバブエドル。
1,000億ジンバブエドル取りに行くために6,000億ジンバブエドルかかるってこれ何?
職場に至ってほら4分の3の人間が来てない。
来てないけど誰もそのことについて喋らない。
学校では生徒の中に食べるもののない子がいる。
先生は補修授業をするからって授業料を取る。
学校に払って先生に払って2倍払う。
警察は道で走ってる車を止めていくら持ってるかって聞いてきてお金を取る。
医者の看護師も同じようなことしてベイドルとか南アフリカのランドとか外貨を請求してくる。
銀行は中央銀行がお金吸ってばっかりでそのお金で外貨を買う。
今南アフリカの100ランドは50兆ジンバブエドル。
100ベイドルは100兆ジンバブエドル。
50ジンバブエドル札とか昔のもう使わなくなったお金、ゴミ捨て場に捨てられてる。
でもこれドイツで吸ったお金じゃないか。
これ買うのにいくらかかるの?
外貨で払うんだよね。
この状況は何なのか。
そりゃ他の国でも経済問題文化問題政治問題はあるよ。
でも他の国って戦争があったらその時は医療援助とか食料援助とかもらえるでしょ。
33:05
戦争もないのにこんな状態ってどこ探してもないよ。
ハイデンシティ行ったら子供が遊んでる横に下水が流れてる。
綺麗な水って食事するのにも洗濯するのにも手洗うのにもいる。
お水では洗えない。
サザーかっこジンバブエの主食を作ろうと思ってお湯を沸かして
トウモロコシ粉を入れようと思ったら電気が止まる。
シャワー浴びてて頭を濡らして石鹸つけて流そうと思ったら水が止まる。
床屋行って頭を刈ってもらってたら半分刈られたところで電気が止まる。
こんな状況他にある?
風呂入ってて頭を流そうと思ったら水止まる。
どうしようと思って床屋行ったら半分頭剃ったところで電気止まる。
第一次世界大戦ありました。
第二次世界大戦ありました。
産業革命ありました。
でもこんなのない。
銀行で2時間待ちそれでバス乗ったらガソリン切れてたってこんなのない。
という長ゼリフなんですけども
当時の状況がひしひしと伝わってきますよね。
そこからさらに時は進んで
2008年12月から2009年1月はジンバブエにおけるハイパーインフレの最終局面にあたります。
この時期はそれまでは違法だった外貨が公式に認められてジンバブエの人の生活に入り込んできていました。
そんな中流通していたお金は500億ジンバブエドル札そして10兆ジンバブエドル札
20兆ジンバブエドル札50兆ジンバブエドル札そして100兆ジンバブエドル札でした。
この100兆ジンバブエドル札は100兆ということでなんと15桁もの数字が並ぶ見た目のインパクトがすごいお札でした。
ゼロが14個も並ぶわけですね。
今までに印刷された史上最高の額面のお札としては
この100兆ジンバブエドル札を超えるものが実はありまして
それは第二次大戦後のハンガリーで発生したハイパーインフレの時に印刷された10外ペン語札というのがあるんですよ。
10外の外は億兆計の上の数字の単位ですね。
ペン語は当時のハンガリーの通貨の名前ですね。
第二次世界大戦後のハンガリーはハイパーインフレが発生して円安ならぬペン語安になっていたんですね。
最近ペン語安で物価が上がって大変だと。
36:03
このハンガリーの10外ペン語札は印刷まではされたものの市場には出回らなかったそうなんですが
その一つ下の1外ペン語札は実際に市場に出回っていたのだそうです。
1外ペン語札は使われていたっていうことなんですね。
いやすごい状況ですよね。レジで支払いの時に
すいません大きいのしかないんですけどって言って1外ペン語札を出して
ありがとうございますお釣りが9兆7億ペン語になりますお確かめください
とかやってたんですかね。かなり計算が大変そうだなぁと思っちゃうんですけども
10外ペン語札はアラビア文字の表記がされていないので
実際に15桁もの数字が並ぶお札としては過去を振り返っても
この100兆ジンバブアドール札のみということで唯一無二の存在だったりします。
で話をハイパーインフレ末期のジンバブアに戻すと
市場には500億ジンバブアドール札そして10兆ジンバブアドール札
20兆ジンバブアドール札50兆ジンバブアドール札
そして100兆ジンバブアドール札が出回っていたんですが
その時点で実際使われていたのは500億ジンバブアドール札だけで
他の紙幣は使えないお金として市場から駆逐されていってたんですね
どういうことかというと500億ジンバブアドール札と
10兆ジンバブアドール札の間の開きが大きすぎて
お釣りを出すことが難しかったんですよ
そのため例えば10兆ジンバブアドール札で何か買おうとしても
受け取りを拒否されるというケースが増えてたんですね
でメインの通貨はすでにほぼ外貨に切り替わっていたわけなんですが
アメリカドルや南アフリカのランドがあれば
ジンバブアドール札を使わなくても経済が回るんじゃないかという気もするんですが
実はこの時点ではまだそうはなっていなくて
なぜかというとお釣りの問題があったからなんです
例えば1ドル札で何か買った時にお釣りをもらいたいんですけど
1セント効果が不足しているとか
そういう時に500億ジンバブアドール札を60枚に束ねた
3兆ジンバブアドールが重宝されてたんですね
1枚ずつ使うお金としてじゃなくて
3兆ジンバブアドールの束として使われてたんですよ
39:00
この3兆ジンバブアドールの札束が最も重宝されていたのが
乗り合いタクシーの運賃の支払いだったそうで
1回分の乗車賃がこの3兆ジンバブアドールの札束で払えたそうです
この札束は細かく枚数を数えないのがマナーで
この本の作者の早川さんは面白がって
これ2枚足りないんだけどみたいな文句をつけてたそうなんですが
そうするとタクシーの運転手さんはすごく嫌そうな顔をして
タクシーから降りてその辺を歩いてる人たちに
誰か500億ジンバブアドール札をくれよ
わからず屋の白人がいるんだと言って
足りない枚数を調達してくれたそうです
早川さんはモンゴロイド系の日本人なんですけど
僕もそうなんですけど
その時早川さんはジンバブエ人の流儀に反した行動を取ったので
わからず屋の白人と呼ばれちゃったんですね
まあ調査のためにあえてそういう行動を取ったというところもあると思うんですけども
末期のジンバブアドールはそういう風に大らかに運用されていたんですね
小学士兵の500億ジンバブアドール札はそんな風に最終的には使われてたんですが
高学士兵の10兆ジンバブアドール札なんかは
ほとんどのお店で受け取り拒否される使えない金でした
ある時乗り合いタクシーの運転手が
こんなもの使えない金なんだと叫んで
10兆ジンバブアドール札を何枚も窓から外に投げ捨てたそうです
そして乗客たちは一人も騒がず黙ってその様子を見ていたそうです
ジンバブアドールの終わりを象徴するようなエピソードですよね
2009年の2月にはジンバブアドールが実質使用停止となり
ジンバブへのハイパーインフレは収束しました
ハイパーインフレはジンバブへの人たちにとって本当に大変な時期だったと思うんですが
そういう状況下だからこそ成立していたこともあって
例えばハイパーインフレの収束後に
早川さんが露天匠たちと話をしていたそうなんですが
近くの小学校で教師をしている人が
その場にいた早川さんにだけ挨拶をして露天匠たちとは目を合わさず
そそ草と立ち去っていったそうなんです
で早川さんがあの人最近あんまり話をしないねと言うと
露天匠たちがあの頃はハイパーインフレだったからだよ
あの時あの人はお金がなくて生活が苦しくて僕らにお金を借りたりしてたんだ
42:02
本来は僕らなんかと話をしたりしない立派な人なんだよみたいなことを言ったそうです
表現が難しいんですが人ってそういうことあるかもしれないと思ってしまいましたね
ハイパーインフレという共通の関心事が人々を一時的に結びつけていたとも言えるかもしれないですね
ジンバブエのハイパーインフレと混乱した状況はその中で生きる多くの人に負荷をかけたんですが
ジンバブエの人たちはその中でしたたかにあるいは淡々と生活をしていました
ハイパーインフレという圧倒的な状況自体も印象深いものなんですが
その中で見られたジンバブエの人たちの人生への態度や生き抜くための工夫は
僕の中ではハイパーインフレ自体よりも印象に残っています
そんなハイパーインフレに向き合ったジンバブエの人たちの生身の生活が垣間見えるこの本
ハイパーインフレの人類学 ジンバブエ危機化の多元的貨幣経済
ご興味があればぜひチェックしていただければと思います
それとですね
このジンバブエのハイパーインフレ回をアップする直前に
弟のゆうすけがやっているポッドキャスト番組
そこのけんやさく歴史を語るゆうすけのラジオの最新回を聞いたんですが
最新回はアライ白石という江戸時代の政治家について取り上げていまして
こちらは育作のシロさんがリクエストされたテーマだったそうです
シロさんのご友人にアライ白石に詳しい方がいらっしゃるということでリクエストされたそうなんですけども
でいつものように楽しくゆうすけのポッドキャストを聞いたんですが
びっくりしたのがこのアライ白石のライバルに
小木原重秀という人がいたそうなんですが
この人が何をやったかというと
貨幣懐中というのをやったそうなんですよ
当時佐渡金山から取れる金の量がどんどん減っていたそうで
今までと同じ金の含有率で小判が作れないみたいな状況があったそうなんですが
そこで小木原さんが考えたのが貨幣懐中
つまり一つ一つの小判の金の含有量を減らすということだったんです
小木原さんは単に一つ一つの小判の金の含有量を減らしたというだけではなくて
貨幣の価値は政府の信用によって保証されるという考え方を持ってたんですね
45:01
これって現在の貨幣経済につながる考え方でもあるんですよ
1万円札も1ドル札もただの紙なんですけど
それは信用によって保証されているという考え方ですね
まあこの現在の貨幣経済システムが絶対的な正解ではないと思いますし
100年後は世の中もどうなってるかわからないんですけども
100年後はマトリックスみたいにみんな暗い部屋でコードにつながれてるかもしれないですし
または逆にブツブツ交換って新しくない?みたいになって
新発売 iPhone 2090 料金は牛5頭もしくは羊10頭みたいになってるかもしれないんですけど
話が脱線しましたけども
たまたまジンバブへのハイパーインフレや貨幣経済の話をアップしようとしていた矢先に
ゆうすけがそれとリンクするポッドキャストをアップしていたので
びっくりするとともに
ああまたシンクロニシティが発生したなと思っちゃいましたね
本当に以前もお話ししたんですけども
セミラジオを始めてからシンクロニシティが頻繁に発生してまして
一体どうなってるんだろうと思ってるんですけど
パッと思いつく限りでも
僕がビコウ類という架空の生き物の話をセミラジオでアップしたら
セミラジオでもおなじみのイラストレーターのすすむさんが
同じ日にビコウ類の本を手に取っていたりですとか
セミラジオでウィッカーマンという映画の話をアップしたら
数日違いで別のポッドキャストでウィッカーマンの話をアップしていたり
これ新しい映画ならわかるんですけど
1973年の映画だったんですよね
あとは僕のやっている生き物とサブカラーのブログセミブログで
国立科学博物館の記事を最近アップしたんですけども
そしたら数日後に仏作で国立科学博物館について取り上げていたり
僕が作ったブラウザゲームプルトニウムムーミンの告知をツイッターに上げたら
その日がちょうど8月9日ムーミンの日だったり
弟のゆうすけとは同じようなタイミングで自作ゲームを開発していたということもありましたね
全部狙わずにやったことなんですけども
ことごとく他の方のアップされたポッドキャストやムーミンの日とかに
かぶってきているという不思議な現象がちょいちょい発生してるんですよ
で今回も兄弟で事前に打ち合わせしてないのに
過平経済という意味ではリンクした内容のポッドキャストをほぼ同時に準備していたということがありまして
どうなってるんでしょうか
ちょっとよくわかりませんけど
これからもいろいろと発生していきそうだなぁという予感はしていますね
48:05
それとゆうすけのポッドキャスト
そこの原野作歴史を語るゆうすけのラジオで
テトリスの歴史について語るという回がありまして
これめちゃくちゃ面白かったので
まだ聞かれていない方にはぜひともお勧めしたいと思っています
その内容なんですが
冷戦時代東西の文化の壁は想像以上に厚かったんですが
日本人からするとその壁の向こう側
東側陣営のリーダーであるソビエト連邦で開発されたテトリスが
ゲームボーイのソフトとしてニンテンドーから発売されて
大ヒットを飛ばすまでには実は隠されたドラマがあったんですね
テトリスの開発者のロシア人パジトノフ氏や
ライセンス契約を結ぶために
ニンテンドーの使者としてソビエト連邦を訪れたヘンク・ロジャースなど
テトリスの関係者たちによって紡がれるドラマは
本当にエキサイティングで面白かったです
このゆうすけのラジオのテトリス回は
テトリスエフェクトという本を資料として使っていて
僕はラジオを聞いてこの本を買いましたね
テトリスエフェクトも本当に面白い本でした
まずはゆうすけのラジオのテトリス回を聞いていただいて
より深く知りたいという方は
テトリスエフェクトもチェックしていただければと思います
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概要欄のフォームやツイッターで
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今日はジンバブエのハイパーインフレと
その中で営まれていたジンバブエの人たちの生活について
お話しさせていただきました
ご視聴ありがとうございました
49:58

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