1. レイ・イナモト「世界のクリエイティブ思考」
  2. #108 注目のクリエイティブ 〜..
2025-01-21 36:31

#108 注目のクリエイティブ 〜時代はめぐる!ブランドの栄光と衰退〜

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第108回は、様々な有名ブランドの低迷の理由をレイ・イナモトが徹底分析。そこで見えてきたのは、価格を下げてマス化してしまうとブランド価値に傷がついてしまうという共通点でした。では、なぜ衰退するブランドがある一方で、エルメスだけは「一人勝ち」を続けることができるのか?クリエイティブ思考を武器に21世紀を生き抜くヒントを紹介します。


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サマリー

このエピソードでは、バーバリーとナイキのブランドの栄光と衰退が検討されます。特に、バーバリーのマス化戦略とその結果、ナイキのCEO交代についての教訓が中心に論じられています。ナイキはCEOジョン・ドナホーの下でEコマースの成長を遂げていますが、2023年には業績予測を下げる事態に直面し、最悪のスニーカーとしてのレッテルを貼られています。一方、エルメスは高級ブランドでの成功を維持し、ブランド価値を損なわずに成長を続けています。このエピソードでは、ナイキやエルメスなどの企業が希少性を保つことでブランド価値を高めていることが語られています。また、クリエイティブの視点やブランド力の重要性についても議論されており、特に日本企業にとっての課題が指摘されています。ASICSとナイキの歴史を通じて、現代企業におけるブランド構築の重要性が語られています。

バーバリーの栄光と衰退
This is ReinaMoro's Podcast. 世界のクリエイティブ思考
Hi everyone, this is ReinaMoro. 皆さんこんにちは、ニューヨーク、東京、シンガポールを拠点にするグローバルイノベーションファーム I&CO 共同創業パートナーのレイ・イナモトです。
目まぐるしいスピードで世の中が変化する中、この番組は、日本人が世界で必要不可欠な存在となるためのヒントを探ります。
今回は注目のクリエイティブをお届けします。
今日はこの番組のプロデューサー、竹村由加さんと一緒にお届けしたいと思います。
レイさん、よろしくお願いします。
今日の注目のクリエイティブ、何を取り上げましょうか?
2024年に一番気になったこと、僕が結構昔から仕事をしていたりとか関わりのあるナイキがですね、社長が交代になったっていうニュースがあったんですね。
その数ヶ月くらい前から6月くらいから、僕の周りとかニュースとかでナイキの調子が良くないっていうことがよく目についたんですね。
日本ではあまり使われないSNSでリンクトインっていうのが英語圏ではありまして、それはレジュメとか履歴書とかあとその仕事に関する情報が流れてくるSNSなんですけども、
そこである方が、この方は元ナイキの方で、リンクトインの中で記事を書かれたんですけども、ナイキの社長を交代させるべきだっていうことをすごい口調でグワーっと書かれてたんですよ、記事として。
へー、そうなんですね。
で、それがめちゃくちゃ出回ってバズって、僕ももちろん読んで確かにこうだよねっていうことはあって、あとそれとは関連はしてないんですけど、
いくつか去年その老舗、ナイキは老舗のブランド、1960年70年代から出てきて、そこまで老舗っていうことではないかもしれないんですけども、またさらにもっと老舗の日本でも人気のあるバーバリーが株価があまりにも下落しすぎちゃって、
イギリスの証券取引所から取り下げられるっていうニュースが去年の秋ぐらいに流れたんですね。そんな中で、エルメスが、それこそ老舗のエルメスのブランドが独り勝ちしてるっていうところがあったんですね。
でですね、調べてみたら意外と時代と場所を超えた共通点があるなっていうのが、そのバーバリー、ナイキ、エルメスの失敗と成功の事例から見えてきたので、ぜひじゃあこのことを話しましょうということで、今日このテーマになりました。
今回のテーマはですね、時代は巡るブランドの栄光と衰退についてお届けします。では早速いきましょう。
バーバリーのことをご存知の日本の皆さんもたくさんいると思うので、細かいことではないんですけども、どっちかっていうと経営だったりとか、マーケリングとかブランドとかクリエイティブっていう、僕ならではの視点でちょっと話したいなと思うんですけども、まず1990年代に日本でもすごく人気が出て、
僕の世代、もうちょっと若い世代の人たちだったら知ってると思うんですけども、女子高校生がバーバリーのマフラーをつけ始めたっていうのが1990年代の半ばから後半ぐらいなんですね。
そうですね、みんなしてましたよね。ルーズソックスとセットで渋谷を歩く女の子たちはみんな茶色いチェックとか紺色のチェックとかのマフラーを巻いて歩いていたのを覚えています。
そう、で、それが可能になった理由って何かわかります?なぜ女子高校生がつけ始めたかっていう。
えー、有名人が来たからとかそういう理由ですか?
いや、えっとね、違って何かっていうと値段なんですよ。
へー。
そう、価格を下げたんですね、その時に。
おー、なるほどなるほど。
で、価格を下げたことによって女子高校生が自分の小遣いだったりとか、まあ親に頼んで買っても親もまあこれぐらいだったらっていうぐらいの値段で買えるようになったんですよ。
で、それでブワッとこう日本で特に女子高校生を中心にまあそのトレンドとかファッションに敏感な層を中心に広がったんですね。
でですね、これ調べてみて意外な共通点だったんですけど、イギリスでちょうど同じ時に同じ戦略で値段を下げたんですね。
ただ広まった層が日本とは全く違って、イギリスではサッカーのフーリガンと言われているファンの人たちだったんですよ。
おー、じゃあ若いやんちゃなお兄さんたちがみんな身につけてたっていう感じのイメージですか?
そうそうそう、でこれって俗語で英語でチャーヴっていう言い方をするんですけども、あんまりいい言葉ではないんですが、高級品とかを買わない人たちがそのバーバリーのマフラーが値段が下がったことによって買えるようになって、
そしてサッカーの応援に行くときにそのバーバリーのスカーフをつけて行って、でまあフーリガンの人たちが暴れるとか特にその1980年代から90年代ってそれが結構問題になっていて、
その時からだいぶ管理はされていたんですけども、ちょっと正直柄の良くない人たちが本物偽物に関わらずそのハイブランドで自分が買えるようなものを身につけて出回るみたいな風潮がその時に出てきたんですね。
で、そのビジネス戦略は値段を下げるということでマスカを狙って売り上げを上げるっていう間違ってはいないことなんですけども、そうしたことによって日本では女子高校生で流行った。
イギリスではいわゆる中流階級、労働階級の一部フーリガンの人たちでもあるんですけども、サッカーファンの人たちが今までは買えなかった高級品を買って、ある意味ユニフォーム的につけてき始めたんですよ、そのマフラーを。
それでいいのは少なくとも一時的にはグワッと売り上げが伸びるんですよ。
というのも、それまで試行品だったりとかその高級品で手に入りにくいものが一般的に出回るから、ビジネス的に全体的に見ると売り上げがグワッと上がるんですけども、それで数年後に何が起きたかっていうと、日本では女子高校生がつけてる。
これは私もつけちゃうと女子高校生と同じに見られるからとか、今度もともとのお客さんだった人たちだったりとか、その30代、40代、50代のそこそこお金のあるそのブランド志向の人たちだったりとかが軽減し始めるようになったんですね、日本で。
ああ、そうなんですか。
それで同じことがイギリスでも、この柄の悪いサッカーファンたちがつけてるから、私たちは我々はつけたくないっていう、そのブランドに対する軽減がイギリスでも違う市場で、違う場所で、違う客層だったんですけども、同じ結果になっちゃったんですね。
なるほど。エレガントなイメージから遠ざかっちゃったんですね。
そうなんですよ。そうそう。で、それが1990年代半ばから後半にそのマスカになって、2002年にはバーバリーは上場するんですけども、2005年ぐらいに業績が悪くなっちゃって、CEOが交代しなきゃいけないっていう羽目になったんですよ。
で、その後、CEOも変わって、そしてクリエイティブディレクターも変わって、バーバリーは復活はして調子は良くなるんですけども、またここ最近、2023年になったかな、株価が今まで最高だったんですけど、ここ1年でぐわっとまた下がっちゃって、そして株式市場から撤退しなきゃいけないっていう状況にはなってるんですけども、その20年ぐらいの間で、実はCEOはそんなに交代はしてないんですね。
でも、ここ10年弱で何が変わったかっていうと、クリエイティブディレクターが変わってるんです。この10年以内でバーバリーは4人クリエイティブディレクターが書いてるんですね。
つまり、2年半ぐらいずつで書いてるってわけなんですよ。
それ何が問題かっていうと、そのバーバリーの売りとしているプロダクトの視点が毎回2年半置きぐらいに変わっちゃうってことなんですよね。
そうなると、なぜこのプロダクトがいいのかとか、このプロダクトの本質的なところは何かっていうのが、実はすごくブレちゃうんですね。
それが今の業績の悪さ、株価の落下につながってる一つの原因だと思うんですね。
だからちょっとそのバーバリーの話をまとめると、まず一つはマス化することによって業績は良くなるんだけども、それがブランドに対してどういう影響を与えるかっていうことをちゃんと捉えとかないと、後でとんでもない失敗会社を食らうことになる。
それをバーバリーが経験してるっていう、それがまず一つ。
で、二つ目にやっぱりそのプロダクトの視点っていうのはすごく大事で、バーバリーの場合はクリエイティブディレクターをコロコロコロコロ変えたことによって視点がはっきりしなくなっちゃって、人が離れていっちゃって、今株価が下がっちゃって、株式市場から手出しなきゃいけないっていう、そういう状況になっちゃってる。
だからマス化が業績が良くなるっていうことが決して良いことではない。
そしてブランド商品には視点が必要だっていうことが、まずそのバーバリーの20年ぐらい長い時間で見るとそういうパターンが見えてきます。
ナイキのCEO交代
そこからちょっと今最近のNikeの話に移すんですけども、Nikeが2004年、もう20年ぐらいの話なんですが、2004年にその創業者であるフィルナイトが1960年代からずっと何十年間もCEOしていて、ようやく40年ぶりにCEOが変わるっていうビッグニュースが流れたんですね。
ちょうど僕その時にNikeと仕事をし始めて数年で、まだまだ若造だったので、経営のことが分かってなかったんですけども、もともとP&Gにいたプロマーケッターと言われたウィリアム・ペレズさんっていう人を採用してCEOにつけたんですね。
なんですけど、それは2004年だったんですけども、2年弱で追い出されちゃうんですよ。
プロマーケターの人の経営はうまくいかなかったんですか?
彼がP&Gから持ってきた方法を内部でいろいろやろうとしたんですけども、Nikeという社風とカルチャーと外部から来た人のケミストリーがあまりにも合わず、内部で半分反逆みたいになっちゃって、すぐ追い出されちゃうんですね。
それで2006年にベテランの1970年代から新卒の時代からNikeにいたマーク・パーカーっていう人がCEOになるんですが、その方は結果2020年までいて、その15年で150億ドルから300億ドルまで売り上げを倍にするんですね。
おお、すごいですね。
150億ドルってもともととんでもない数なので、それって5%伸びれば全然十分なんですけども、それを倍にするって14年間かかってはいるんですけども、とんでもない業績なんですよ。
すごいですね。
2020年に彼が引退することになって、今度2020年にジョン・ドナホーっていう元々ベインのコンサルタントをやってた人、それから2008年から2015年にeBayの社長をやってたっていうコンサルタント兼テックのエキスパートをCEOにするんですね。
それちょっとコロナの前なんですけども、オンラインがこんだけ、eコマースもこれだけ発達したし、Nikeってコンシューマーグッズの会社だけではなくてテック企業にならなきゃいけないっていうことで、そのテック業界の経験が豊富だったこのジョン・ドナホーさんをCEOにするんです。
その彼がCEOになって半年後ぐらいにコロナになっちゃうんですけども、コロナになったおかげで、実はeコマースがすごく伸びるんですね。伸びたことによって、戦略を今までいわゆるNikeみたいなビジネスっていうのは、Nikeって一般人の認知度がすごい高いビジネスではあるんですけども、
実はビジネスをする相手っていうのは、いわゆるリテーラーって言われる人たちで、靴屋さんとか日本だとABCマートとかそういうところに卸売りをするんですね。
よく見ますよね。
分かってデータマーケティングをしていこうみたいな流れが2015年ぐらいからすごく強かったんですね。
それの一番流れが一番強かったときにジョン・ドナホーさんがCEOになられて、もっともっとDTCに振ろうっていうことで、それまで取引のあったオリフリゴの会社との取引をやめたりとか削減をグワッとしたんですね。
そうしたことによって何が起こったかっていうと、実はEコマースがすごく伸びた。
なおかつ2020年から2021年のときにすごく人気商品のNike Dunksっていうスニーカーがあるんですけど、それバスケットボールがもともとモデルになってるんですけども、それをパンダダンクスっていうニックネームで、なんでパンダかっていうと白と黒の色だったんですね。
で、それをお手頃な値段で売るっていう戦略を測ったら、それが当たって一気にそのパンダダンクスというニックネームのNikeのスニーカーがマス向けに売れ始めたんですね。
DTCからEコマースに振ることによって、そしてそのパンダダンクスっていうニックネームで低価格のダンクを売り始めたら、それが一気にブワッと火がついてものすごく売れましたと。
で、そして2022年にはこれ調子いいからって言って、そのパンダダンクスのモデルをたくさん作って、またまたどんどん売り始めるんですよ。
で、結果的にはこのジョン・ドナホーさんは2024年にCOを辞めなきゃいけない結果にはなるんですけども、彼がいた3、4年間で約400億ドルから500億ドルまでで1.25倍、3倍ぐらい伸ばしてるので業績はいいんですよ。
なんですけど株価が下落して、そして時価総額もグワッと下がっちゃったんですね。
えー売れてるのに。
2023年の下半期には次の年の売り上げの予測を下げなきゃいけないっていう、そのナイキってそれまでずっと右肩あたりの上ってきた企業なのに、何十年間で初めて次の時期の業績を予測を下げなきゃいけないっていうことになっちゃって。
これウォールストリートとか株式市場からめちゃくちゃ叩かれたんですよ。
で、なおかつ同じ時に同じ大体タイミングでそのパンダダンクスっていうのがそのスニーカーオタクの間で、これって今まで歴史上一番最悪のスニーカーっていうレッテルを貼られてるんです。
ナイキ市場最悪のスニーカーとまで言われてしまったんですか、それは。
で、エリオットヒルっていうもともとナイキにいたベテランの人を社長にするっていう、その人は一回引退はしてるんですけども、社長として呼び戻して、そして去年の秋から新しい社長としてナイキの再生を今やってるっていう、そういう時期なんですけども。
これ何が面白いかなと思ったのは先ほどそのバーバリーの話をしたじゃないですか。
で、今ナイキの話をして、これお気づきの方もいらっしゃると思うんですけども、共通点があって、まず成功した時のその背景にマス化したっていうのがあるんですね。
そのパンダダンクスっていうのをマス向けに売り始めて、で、そうするとやっぱり業績が伸びるんで、これ調子いいじゃんっていう風に調子乗っちゃうんですよね。
それがまずありますと。
で、そのマス化したモデルもそのダンクスっていうそのスニーカーヘッドの間ではすごく人気のあるモデルなんですけども、それをいろんなモデルで出しちゃったことによって、この商品の良さだったりとか、その希少性だったりとか、この商品の視点っていうのがなくなって、それで人がどんどん離れていっちゃったんですね。
そう、なので、このバーバリーの話とナイキの話、これ全く別の時代。先ほどのそのバーバリーの話は、1990年代後半から2000年の時に、こうグワッと英国、そして日本で人気が出てきました。
マス化をしました。で、場所と対象の人たちはオーディエンスは全く違ったんですけども、日本では女子高校生、英国ではサッカーのファン、中級会計屋のサッカーのファンっていう全く違うところで人気が出ちゃったんですけども、それが結局そのマス化したことによって売り上げは伸びたんだけども、ブランドっていうところに傷をつけてしまった。
そして20年以上後の今、2020年の時に、2020年から2024年、業績はどんどん伸びてきて、お客さんとの関係が良くなったのかな。そしてこのパンダダンクスっていうマス受けをするスニーカーを売り出したことによって、いろんな人が買って伸びてきたんだけども、結局その20年前、そのバーバリーのマフラーをマスに売るっていうことをナイキがしちゃって、
ナイキがそれまですごく貴重品として高級品として見られていたものをマス化しちゃったことによって、それも2,3年後蓋を開けてみたら業績が良くなってたんだけど、実はブランドに傷をつけてたよねっていうことが起きて。
バーバリーの場合はクリエイティブデータがコロコロコロコロ変わることによって、視点がこぼれちゃった。ナイキの場合はそれまであったダンクスっていうちゃんと視点がはっきりしていたものをいろんなモデルで展開しちゃったことによって、クリエイティブの視点がなくなっちゃって、お客さんがだんだん離れちゃったことによって、歴史上最悪のスニーカーというレッテルが払えるぐらいになってしまったと。
エルメスの成功
だからこれらを見てた時に、時代は全然違うし、業界も違うし、対象の人も違うけど、実は共通点があるんだなっていうことを、これって蓋を開けてみるとすごくシンプルなことなんだけど、実は業績が良くなる時の落とし穴の一つでもあるなって思いました。
本当ですね。なんか時代が違うのに同じ失敗をしてしまうって不思議な感じがしますが、短絡的な結果だけを重視していても、長期的に見るとブランドの価値を下げてしまうっていうことが本当にあるんですね。
そうなんですよ。そうそうそう。
では、逆に上手くいっているブランドっていうのはどうやってるんでしょう?
失敗しているブランドの話とか失敗している企業の話って興味深い話なので、どっちかというとそっちがセンセーショナルに取り上げられちゃうことが多いんですけども、そんな中でもここ1,2年、安定した成長だけじゃなくて、結構ちょっと輝いているのがエルメスなんですね。
1年半ぐらい前だったと思うんですが、2023年だったと思うんですけども、エルメスが実はナイキの時価総額を超えてるんですね。
ビジネスの規模でいうと、ナイキの方が売ってる商品も多いですし、いわゆる一般ブランド、マスブランドなので全然規模は大きいんですけども、
企業の価値だったりとか利益っていうところで見ると、逆にエルメスの商品は僕も全然手が届かないものばっかりですし、何十万、下手したら何百万もするものを売ってるわけじゃないですか。
そうですね。
だから全くマスブランドでもないし、買える人たちっていうのも多分1%、いわゆる100人人がいたら1人いるかいないかぐらい、それぐらい稀なブランドだと思うんですけども、認知度もあるし、今その時価総額、価値っていうのもすごく上げてるんですね。
で、このエルメスのことをバーバリーとナイキのことに比べる、見るとやっぱりその違いが明確で、どうしても業績が上がる兆しとかが見えちゃうと、そこに火に油を注ぐじゃないですけども、これがうまくいってるからどんどんどんどんそれを進めようっていう風に、その経営者目線から見るとそういう方向に行っちゃうんですね。
いわゆるその経営者、数字を追っかける経営者から見ると、それって間違った戦略ではないんですよね。その1年2年ぐらいの軸で見ると。なんですけども、実はさっきのその話に共通しているのが、それはブランドに傷つけちゃうってことになるんですが、エルメスは成功してる理由はそれを全くやらないんですよね。
もうとにかく高価なものをさらに値段を上げて売るっていう、そして出しすぎないっていうこともすべて手作りで作り方もめちゃくちゃこだわってるし、そのエルメスのそのブランドの決まり文句でも英語で言うと、コンテンポリーアーティザンシンス1837。
日本語だとエルメスとは1837年から続く現代のアルチザン。アルチザンってちょっと聞こえのない言葉かもしれないですけど、職人ってことなんですよね。で、その製造もあれだけ世界に出回ってるブランドなんですけども、製造もほとんどフランスでやってるんですよね。
で、すべて手作りで、そして技術の高い人たちを雇って、フランスのいろんな地方の職人と提携をして、そしてエルメスならではの作り方で作ってもらって、それも大量生産じゃない。だからその職人っていうのをすごく大事にしていて、そういうところのこだわりをもうぶらさずにずっとちゃんと貫いてる。
なるほど。
だからバーバリーが20年くらい前に取った戦略、そしてナイキがここ数年で取った戦略とは全く真逆の方向に行っていて、そしてこれだけ高級ブランドが苦戦していると言われているポストコロナの時代もエルメスが独り勝ちしてるっていうところなんですよね。
ブランドの希少性と価値
なんかたくさん売らない方がブランド力がアップするっていうのはすごい不思議な感じですよね。なんかいっぱい売れてるものの方がみんなの人気があるからすごくブランド力が強くなるのかと思いきや真逆で希少性がある方がブランドの価値がアップするっていうのはすごい不思議だなぁなんて思いました。
一番難しいのがもちろんナイキも昔からその希少性をアップして、物によるんですけどもマス向けのものと例えばスニーカーヘッドと言われる人たちだったりとか、あとごく限られたエリートアスリートとかそういう人たちの向けのすごく希少性の高いものを作って売ってたりはするので、ナイキもその戦略はずっとやってはいるんですね。
ただそこのこのバランスの取り方っていうのはすごく難しくて、もちろんやっぱりそのナイキみたいなあそこまで規模があってあそこまで認知度があるとたくさんの人に売らなきゃいけないので、エルメスのようにもう本当に限られたものをものすごい高額な値段で限られた人だけに売るっていう戦略をナイキがずっとできるかっていうとそういうものでもないので難しいことであるんですけど、でもそのやっぱりバランスですね。そういうものもあればマス向けのものもある。
ナイキが犯したミスは本当は希少性があるものだったのにそれをマス化しちゃったことによって、でもやっぱりそれって売り上げは少なくとも短期的にはグワッと上がるので、これすごいじゃんってことなんですよね。
落とし穴ですね。
そう、その売り上げを上げながらこう希少性をキープする、もしくはそのブランド価値を下げないっていうことがそのバランスがすっごく難しいかなと思います。
今回は時代は巡るということで、またどのブランドがいつ栄光になっていつ衰退になって低迷するかってわからないっていうことですよね。
僕も規模は全然もちろん全然違うので同じ話じゃないんですけども、その数字を追いかけるタイミングと追いかけないタイミング、そして数字に対してノーっていう判断っていうのはすごく大事にしていて、お金だけで物事を判断してしまうとこういうしっぺ返しを食らうっていうのは僕レベルの会社でも自分の会社をやる前も大企業にいた時もそういう経験はしてきているので、
それはその経営者として、そしてブランドというものを意識する企業、まあ正直これほとんどと思うんですけども、それって大企業じゃなくても、例えばレストランとかでもやっぱりそのブランドとかイメージとかあと信頼がないとお客さんに来てもらえない、そして来続けてもらえない。
だからそれを構築して保っていくことっていうのはすごく大変なことなので、その経営っていう視点とブランドマネジメントっていうのはもう本当にサイズ関係なく、で特に日本の企業って正直ブランドの作り方が下手と思うんですね。
だからそこはこの今話したバーバリー、ナイキ、エルメス、で特にエルメスって日本の企業、そして日本の地方の企業、中小企業にすごくいい例だなと思うのは、職人業なんだけどもこんだけ伸びてる。やっぱりそのブランドの作り方すごく上手いですよね。
しかも場所も大事っていうことなんですよね。フランスで作ってるから価値がある。だから同じようにすれば日本で作ってる、日本の職人が作ってるから価値があるっていうエルメスみたいなブランドを日本も作れないことはないかもしれないっていう希望もあるわけですよね。
もう絶対あると思っていて、いろんな企業にいろんなチャンスがあると思います。さてここまでお送りしてきましたレイナモトの世界のクリエイティブ思考。今回は時代は巡るブランドの栄光と衰退についてご紹介しました。
今日のお話はすごく勉強になりました。バーバリーのマフラーを巻いてみんなが歩いていたのも覚えていますし、ナイキのスニーカー、希少性のあるものを集めている人たちにとっては大人気商品、ヒット商品みたいなのが出るとちょっとなんか面白くないなぁみたいな気持ちになって、そのブランドから離れちゃうっていう気持ちもなんとなくわかるなぁなんて思いました。
あとやっぱりエルメスの人気ってすごいんだなぁと思って、あの一つ何百万、下手したら1000万近くするカバンなんてどんな人が買えるんだろうって思っちゃうんですけど、ただお金があるだけでもやっぱり買えなくて、それを買うまでに何年もウェイティングリストで待たなきゃいけないっていう話を聞いたことがあるんですね。
それを何年待つっていうのを、例えば3年待つのを1年にしてもらうために、店員さんに気に入られるために、本当はバッグが欲しいんだけれども、スカーフとか口紅とか別のものを買ってまでしてバッグが欲しいって思っている人がいっぱいいるっていうようなインスタグラムの投稿とかを見たりしたので、いや、ブランド力があるってそういうことなのねっていうのは、
今日のレイさんがおっしゃっていた希少性の話からすごく納得がいきました。
今日こうやって竹村さんとお話したことによって、いくつかの気づきがあるんですね。
3つポイントがあるんですけども、まず1つ目にクリエイティブの視点の重要性、そして2つ目に逆タイムマシン経論、これは僕の言葉じゃないんですが、ちょっと後ほど説明します。
それから3つ目にこれからの日本企業に必要なのはブランドの力。
まず1番目のクリエイティブの視点の重要性ということなんですが、先ほどの話にも挙がったようにバーバリーって過去10年間で4人クリエイティブディレクターが変わっているんですね。
となると2年半ぐらいの割合でクリエイティブの視点が同じ考えを持っていたとしても人が変わるので意見も変わったりとか、どうしても視点がぶれちゃうんですよね。
それがここを近年バーバリーという老舗のブランドの力が落ちてきちゃってる1つのポイントでもあると思います。
あとですね、ナイキっていうのは代々そんなに社長の数が変わっていなくて、まずフィル・ナイトから始まってその後ウィリアム・ペレズという元P&Gのオペレーターマーケターになって、それがうまくいかなくてマーク・パーカーで、
マーク・パーカーさんは15年近くCEO、そしてものすごい成長を成し遂げた人なんですけども、彼って実はナイキに入った時にはデザイナーとして入ってるんですね。
長年デザイナーとしてもう本当にこう自分で手でスニーカーの絵を描いてそれを形にするっていうことをやってきたりとか、
あとこう新しい新商品の開発をどうしようかとかイノベーションをどうしようかっていうことをすごく長年やってきた人で、社長になってからもそのイノベーションに力を入れていた、クリエイティブのところにすごく力を入れていたってところがあるんですね。
その彼が社長の座を次の人に渡した時には、その次の人は元コンサルタント、そしてテック業界の人で、このデザインとかクリエイティブっていう視点がなかったとは言わないですけども、非常に少なかった人なんですね。
最初の1,2年はうまくいってたんだけども、やっぱりそのブランドを築く時、構築する時っていうのはそのクリエイティブの視点っていうのは重要で非常に強いのかなと思います。
最後に事例として挙げたエルメスなんですが、いわゆるクリエイティブディレクターっていうのはあまり公に出てはいないんですけども、会社の立ち位置として現代のアルチザン、現代の職人ということをステートメントとして明確に掲げているんですね。
なので、ものづくりが中心の会社、それもフランスにいる非常に技術の高いものづくりの人たち、職人たちをビジネスの中心に置いている。これもクリエイティブの視点の重要性っていうところを非常に会社として企業として分かっていて、それをちゃんとビジネスモデルにつなげているっていうのがバーバリー、ナイキ、そしてエルメス。
日本企業への提言
業種はちょっと違いますし、時代も違いますし、場所も違うんですけども、やっぱりその中心点にはクリエイティブの視点っていうのがあるんじゃないかなと思います。
2つ目に、実は逆タイムマシン経営論っていうことがあって、これは一橋大学の薬木健教授が本にもされたものだと思うんですけども、これ何かっていうと、新聞雑誌は10年寝かせて読めっていうことなんですね。
古い新聞を読むってことですか。
古い新聞を、そう、10年前の新聞を読みなさいと。
今、10年前の記事を読むと、時間の流れで余計なノイズがディトックされて、本質が剥き出しになるっていうことをおっしゃられてるんですね。
彼の説は、これなるほどなと思ったんですけど、ニュースとか情報誌とか情報雑誌とかって、読んでもらいたいから結構センセーショナルな見出しに頼っちゃうんですよね。
これ、今まで歴史上初めてのことですとか、今までにないことですみたいなことを書くと、やっぱりセンセーショナルに聞こえて読者も増えるっていう傾向があると思うんですけども、
でもそれって、よく見ると何回も同じような見出しで違うことが取り上げられてるんですけども、
その時は、例えば数年前だとNFTがどうのこうのとか、クリプトがどうのこうのっていうふうに話題になってましたけども、今となっても全然話題になってないじゃないですか。
確かに。
それだけではないと思うんですけども、やっぱり時間を置いてから過去のことをおさらいしてみると、パターンだったりとか本質が見えてくると。
だから今回そのNikeの件も、実はこれNikeが初めて落ちる、落としたのではなくて、過去にも同じようなことがあったよねっていうのがあって、それを社長の方は気づいてなくて見てなくて、
安易に売り上げが上がったからそっちに振っちゃったら、痛いしっぺ返しを食らったっていうことなので、
この楠木教授の逆タイムマシン経営論っていうのは、今回この事例をいくつか見てみて、
そういえば楠木さんが、僕は何回かお会いしたことあるんですけども、そういう話をしてたなっていうのを思い出してまとめてるなと思ったのが2つ目。
なるほど。
3つ目に、これもちょっと話の中で触れたんですが、やっぱりこれからの日本企業に必要なのはブランド力だなっていうのはつくづく思いましたね。
今回、楠木の話をたくさんしましたけども、実は楠木っていう会社はASICSがなかったらなかった存在なんですね。
というのも、楠木の創設者であるフィル・ナイトーさんは、その時1960年代日本に来て、日本のスニーカーの質に驚いたと。
ASICSとナイキーの歴史
こんな良い、フィル・ナイトーさんは中長距離ランナー、大学生の頃ランナーだったので、陸上競技にすごく詳しくて、こんな良い商品がこんな安い値段で作られてるんだっていうのを驚いて、
それをアメリカで売らせてくれっていうことをASICSの創業者である鬼塚さんに頼んで、
その時は鬼塚タイガーだったんですけども、鬼塚タイガーのアメリカでのディストリビューションの権利を鬼塚さんからいただいたっていうのが、
楠木の始まりなんですよね。
そうなんですか。
それで、後々は1960年代の後半の時に、その時はブルーリボンスポーツって会社だったんですが、
フィル・ナイトーさんの共同創業者であるビル・バーワーマンっていう陸上競技のコーチがいるんですけども、
彼は靴職人でもあったんですね。
その彼が、そのASICSの鬼塚タイガーの靴をモデルに、一応彼のデザインではあると思うんですけど、靴を作って売り始めて、
そしたら鬼塚タイガーが、それってうちの商品のマネージャーって言って訴えるんですよね。
そんな歴史があったんですね。
そうなんですよ。結局、楠木とその当時の鬼塚タイガー、今のASICSさんっていうのはバラバラになっちゃって、
決別してビジネスの関係がなくなっちゃうんですけど、でもそれがなかったら、
フィル・ナイトーが鬼塚さんに会ってなかったら、今のナイキーはなかったっていう、そんな歴史もあります。
ブランド構築の重要性
そうなんですね。
でも今となっては、ナイキーはASICSさんを何十倍と超えてるサイズには成長はしてるので、
今ここ1,2年ガタガタしてるところはあるんですけども、やっぱり伸びてきたっていうのも、
そのブランドをちゃんと築いてきたからっていうところがあるので、
21世紀の日本、そして日本企業、これは中小大企業問わず、
どの企業でもそのブランドをどうやって作っていくか築いていくかっていうことが、
一つのすごく大きな課題だなとは思います。
そうですね。なので今日のいくつかの話で皆さんに参考にしていただきたいのは、
もちろんその短期的な成長だったりとか業績っていうのは大事な時もありますし、
それが非常にビジネスのためになることはあるんですけども、
その向こう側の長期的な目線で、じゃあどういうことが大切なのか、
何が我々のブランドには大事なのかっていう本質的なところを常に見直す必要があるなっていうのは思います。
デジタルガレージの精神
世界のクリエイティブ思考、お相手は麗菜本と竹村幸子でした。
デジタルガレージは危険な海に最初に飛び込むファーストペンギンスピリットを、
創業以来大事にし続けています。
これからくるWeb3、オープンソース時代を見据えた、
テクノロジーで新たなビジネスを生み出す仲間を募集しています。
番組詳細欄にあるリンクよりぜひご覧ください。
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