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2023-08-03 16:08

e37 死を認識すると早死にする

*このエピソードの後、数週間夏休みにします。次回がいつになるか未定ですので、再開の通知が受け取れるようにしておいて頂けると嬉しいです。


ショウジョウバエの研究で、仲間の死体をみると寿命が縮むことが示され、そのメカニズムが明らかになりました。この論文の紹介に加えて、この現象の意味も考察します。


https://theconversation.com/seeing-dead-fruit-flies-is-bad-for-the-health-of-fruit-flies-and-neuroscientists-have-identified-the-exact-brain-cells-responsible-207283

https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.3002149

https://www.nature.com/articles/s41467-019-10285-y

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27736277/

サマリー

センチューと症状媒の研究によると、死を認識することが寿命への影響に関与していると言われています。特定の神経の活動とホルモンの関係が示されています。死を認識することは動物の生存戦略と関連しており、ストレス状態になることで寿命が縮む可能性があります。

00:01
今日は初めにお知らせがあります。
諸事情により、これから数週間、pod scientistは夏休みとなります。
9月の上旬の再開を予定しているんですけれども、
状況が許せば8月中に突然配信をする可能性もありますし、
9月に再開した時に通知が行くというメリットがありますので、
もししていなかったらspotify等のプラットフォームでフォローをしていただいて、
通知がされるようにしておいていただけるとありがたく思います。
では、今日の本編をお聞きください。
皆さんこんにちは、こなやです。
やっぱり人間が一番興味を持っているのは、
命って何なのかっていうところで、
だからやっぱり死、死ぬっていうことにはすごく興味があるわけなんです。
長生きしたいっていう気持ちを持っている人も多くて、
老化とか寿命っていうのは、昔から多くの人が興味を持っているところなんですね。
寿命の研究っていうのがあるんですけれども、結構難しいんですね。
例えば人間であれば、一生っていうのが80年以上あるわけで、
だから1回の研究に80年かかるわけですよ。
もちろん人間の研究っていうのはいろいろ制約があるので動物で行うんですけど、
実験でよく使われるマウスなんかでも3,4年は寿命があるんです。
つまり1回の実験をするのにそれだけの時間がかかるっていうことで、
なかなか研究するのが大変なんです。
寿命の研究とセンチュー症状媒
それで寿命の研究にはですね、
センチューとか症状媒がよく使われるんですね。
センチューっていうのは小さいミミズみたいなものなんですけれども、
その寿命が1月ぐらいなんです。
症状媒だともう少し長いんだけれども、それでも2月ぐらいなんですね。
1月、2月っていうのも実験するのにはかなり不都合なんですけれども、
それでも他の動物よりはだいぶマシなので、
これらの動物を使って寿命の研究っていうのは進んできたんです。
それでそのおかげで寿命を変える条件とか、
寿命に関わる遺伝子なんかがすでに見つかっているんですね。
今回紹介する研究なんですけれども、
ミシガン大学のスコット・プレッチャーのグループによるもので、
2019年のネイチャーコミュニケーションズと、
2023年のプロスバイオロジーに掲載された一連の研究です。
で、これ症状媒を使ったもので、
死を認識することと寿命への影響
死を認識することの寿命への影響っていうのを調べているんです。
具体的にはですね、死んだハエを見たハエっていうのは寿命が縮むっていうことを示したんです。
通常症状媒っていうのは、さっきも言ったように60日ぐらいの寿命があるんですね。
このグループがまず最初に見つけたのがですね、
同じ種類の症状媒の死体と一緒に置いておくと、
寿命が短くなるっていうことなんです。
具体的にはですね、たくさんの死体と48時間一緒に置いておいたんですね。
そうしたら、その症状媒っていうのは45日程度までしか生きられなかったっていう結果だったんです。
そういう結果が起きた時にですね、
一つ考えられるのは、死体から変な物質が出ていて、それで寿命が縮むっていう可能性があるんですけど、
彼らはですね、ただ死体を見ていただけでも寿命が縮むっていうことを示しているんですね。
だから、やっぱり死を認識するだけで死が早まるっていうことがわかったんです。
そんなふうに死っていうものを認識しているっていうことは、何かしらの形で脳が働いていると考えられるわけですね。
症状媒はですね、いろいろ複雑な遺伝子の改変をするっていうことができるんです。
それでそういう技術を使ってですね、特定の神経が持続的に活動すると、その神経が光るっていう仕組みを作ったんです。
そういう症状媒を使って、死体を見せた時にどうなるかっていうのを調べたんですけれども、その結果ですね、
R2、R4神経と呼ばれる特定の神経が活動しているっていうことがわかったんです。
だから、これらの少数の神経がですね、死体を見ると活動しているっていうことがわかったんです。
次にやったことはですね、本当にこれらの神経が何か重要な役割をしているかどうかを調べるために、これらの神経の活動を止めるっていうことをやったんです。
これもですね、遺伝的に症状媒を改変することで、特定の神経の活動を止めるっていうことができるんですね。
そういう技術を使って、これらの神経の活動が止まった症状媒っていうのを作ったんです。
こういう症状媒の場合はですね、死体を見ても見なくても寿命が変わらないっていう結果だったんです。
ということは、この神経がですね、死体を見たときに活動して、それが何らかの働きをして寿命を変えているっていうことがわかったんです。
さらにこのグループはいろんな実験をしてですね、この神経が活動した後に、インシュリンのようなホルモンが増えるっていうことを突き止めたんです。
このホルモンがですね、インシュリン要成長因子、IGFって呼ばれるものなんですね。
さらにこのIGFが作れない症状媒でも実験をしていて、そういう症状媒ではですね、死体を見ても寿命が変わらないっていう結果も得ているんです。
だから、IGFもこの死体を見ることによって寿命が変わるっていうことに関わっているっていうことを明らかにしたんです。
でですね、もうすでにこのIGFっていう分子が寿命に関わっているっていうことはよく知られていたんですね。
腺中でもそうだし、症状媒でもそうだし、マウスでもそうなんです。
だから死体を見ることによって、さっきのR2、R4神経が働いて、で、IGFの量が変わる。
で、さらにこのIGFによって寿命が変わるっていうのは、すでにIGFが寿命に関わっているっていうことを考えると納得のできる結果だったんです。
ということで、死体を見ることによって寿命が変わる。
で、その時に体の中でどんな変化が起きているのかっていうところまで突き止めたわけなんです。
でも、やっぱり疑問に思うのはですね、死体を見てその結果早死にすることに何か意味はあるのかっていうところなんですね。
ストレス状態と寿命の関係
つまり、こういう仕組みが備わっている進化的な意義は何なんだろうっていうところなんです。
でまぁ、こういう意味っていうのは完全には結論の出るものではないんですよ。
でも、筆者らはいくつかの議論をしていました。
まず、すでに知られていることとしてですね、感覚需要、つまり外界の情報を認識することによって寿命が変わるっていうことなんです。
例えば、戦中だと匂いを嗅げない変異体は寿命が長いっていうことが知られてますし、
痛みを感じないマウスはこれも寿命が長いっていうことが知られているんです。
でまぁ、特に死を認識することに関してなんですけれども、
例えばですね、ミツバチとかアリみたいな大きな巣で暮らしている生き物は、
死んだ個体が巣の中にいると、それを見つけて巣の外に運び出すっていうことをするんですね。
だから、やっぱりこういう昆虫でも死を認識してるっていうことなんです。
しかも、それはあまり身の回りに置いておきたくはないものっていうことなんです。
哺乳類の研究ではですね、仲間が死ぬとストレスホルモンが増える、つまりストレス状態になるっていうことが知られているんです。
そういう研究がありますから、著者らはですね、死んだ仲間がいるとハエもストレスを感じて、ストレス反応が起きることによってハヤジにするのかもと言っていました。
つまり、仲間が死んでるっていうことは危険がある状態だっていうことなんですよね。
それを認識して不安に感じて、ストレス反応が起きて、それが負担になってハヤジにするっていう、そういう解釈なんです。
でもですね、そういう周りに危険があって不安になるっていうのはわかるんですけど、
でもその結果、ハヤジにするなんていうのは、生き物の作りとして不適なんじゃないかと、ポンコツなんじゃないかと感じるところがあるんですよ。
ここからは僕の理解する一般論なんですけれども、危険で不安な状態になるとですね、
今その瞬間を生き延びるっていうことが重要になるわけなんです。
だからそういう状態になると将来を犠牲にして、今危険な状態を回避するためにベストを尽くすのが大事になってくるわけなんです。
その今死んでしまっては長生きしても意味がないわけなんですよね。
だからそういう行動を取るっていうのが生存戦略としてはいいんですけれども、そういうふうにすると長期的には負担になるわけなんです。
それでストレス状態に継続的になるとハヤジにをすると、そういうふうに理解することができるんだと思います。
でですね、死を認識するって聞くと思い出す研究があるんですね。
これ結構前の研究で、たぶん初めて聞いたのが5、6年前だったと思うんですけど、これ人間を対象にした研究なんです。
そこではバスケットボールのゲームをしてそのパフォーマンスを測っているんですけれども、死を認識するとそのゲームのパフォーマンスが上がるっていう、そういう結果の研究だったんです。
だからそこから拡張してですね、常に死を意識することによって何をやってもいい仕事ができるんじゃないかみたいな、なんかそんな話だったんです。
でもですね、これも死の危険について考えると、先のことはいいからとにかく今ベストを尽くそうっていうふうに行動が変わってるんじゃないかって、そういうふうに感じるんですね。
だから人間もですね、死を意識することによって長い目で見れば寿命を縮めてしまうんではないかと、そんなふうに今回の症状倍の研究を見て思いました。
さらに言うとですね、ストレス状態だとやっぱり幸福度も下がるので、そんなふうにするとパフォーマンスは上がるかもしれないけれども、長い目で見た幸福度っていうのは結局下がってしまうんじゃないかと、そんな気にもなったわけです。
今日はこの辺で終わりにしたいと思います。最後までお付き合いありがとうございました。
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