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2023-05-27 08:19

#567 【史】奇妙な国境や境界の世界地図/地図も読み物だから(31)

「奇妙な国境や境界の世界地図」という本を読んでみたら、ヨーロッパの人々と日本人の国境の捉え方の違いを感じることが出来た。

という話です。

興味がない人にはまったく面白くないと思うので、スキップしちゃってくださいね。

にゃおの考える現代の基礎的なリテラシーは、ITをきちんと使えることが含まれます。そのためにどのような問題があり、どう解決していったらよいか考えてみるPodcastです。

奇妙な国境や境界の世界地図 ゾラン・ニコリッチ著

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をご覧ください。


地図を読む人々
にゃおのリテラシーを考えるラジオ、読書と編集の千葉直樹です。
このチャンネルでは、読書とIT時代の読み書きソロ版を中心に、様々な話をしています。
今回のタイトルは、「奇妙な国境や境界線の世界地図。地図も読み物だからな。」の31回目です。
土曜日は地図を読む話をしています。
毎週、地図を読む話をしていますが、なんとなく暗黙のうちに、地図を読む人は変わっているという前提を持っていました。
実際、特別な用がないのに地図を読むという人は周りにはいませんしね。
でも、先週紹介した北海道立文学館で開催された、地図と文学の素敵な関係という展示を見ると、
案外地図が面白いと思っている人はいるんだなと思います。
そんな風に見方を変えて本を探していたら、気になる本を見つけました。
ゾラン・ニコリッチ著。
奇妙な国境や境界の世界地図。というものです。
まだ全部読み切っていないのですが、主にヨーロッパのとても奇妙な国境や境界を集めて、その一つ一つの戦を書いてある本なのです。
奇妙と言っただけでは、どう奇妙なのかわかりませんよね。
代表的なのは、飛び地です。
ある国の中に、他の国の土地があるようなケースです。
中には、ある家の土地だけが飛び地となっている、というようなこともあります。
実際に地図で見ると、なんでそうなったんだろう、とか、本国とどうやって行き来するんだろう、と不思議になりますよね。
もう一つは、やたらと複雑な境界線です。
境界線で挟まれた幅が数メートルという細長い土地があったりします。
どちらも、歴史的な理由でそうなっているのです。
周りを海で囲まれた日本人の感覚では、本当に不思議に感じるものです。
境界線のルール作り
なぜそう感じるかというと、日本では江戸末期から第二次世界大戦までの歴史をきちんと学ぶことが少ないからのようです。
日本の国境線はこの時期に引かれたものなのですが、島国であることから、境界線を引くということがきちんと理解できていないのです。
日本は存在していたけれど、それがどこからどこまでなのかは、江戸末期までは決まっていませんでした。
というか、決める必要があると日本人は思っていなかったのです。
日本人だけでなく、アジアの人々はだいたいそうでした。
もっと言うと、国家という考え方すらなかったのですね。
江戸時代より前にやってきたヨーロッパ人も、まだ現代でいうところの国家という考え方は持っていませんでしたが、
その頃からヨーロッパでは今に至る国家の概念が着々と育ちました。
その過程で、国家と国家の間に境界線を引くという考え方が作られました。
これが国境ですが、その境界線は隣の家との境とか隣の街との境とかとあまり違いはなく、交渉によって変化するものなのです。
そしてその交渉の中には実力で戦うということも含まれていたわけです。
こんな風に土地は取ったり取られたりするものという暗黙の了解があるわけですね。
取ったり取られたりする主体が国家になったとき、交渉は戦争という形になり、科学の発展とともに相手を根絶やしにできるような兵器を使うものに発展してしまったのです。
もちろん、それでは両者にとってダメージが大きすぎるので、折々でルールが作られていきました。
それが国際法と言われるものだということができます。
今、隣の家との境界が曖昧だったとして、その境界を決めるとしたらどうしますか?
少なくともその隣の家と話し合う必要がありますよね。
話し合いで折り合って境界を決められたら良いですが、相手が法外に大きい範囲を要求してきたらどうしますか?
頼れる法律もお役所もないとしたら、実はそういう状況が明治に入った日本の周りの状況で、境界線を決めるルールを作っていたのはヨーロッパの人々だったということになります。
素朴な日本人は、そのルールに従って戦って境界線を引こうとして、第二次世界大戦末期に盛大に敗れるという経験をしたわけですね。
ヨーロッパ的な国境について
さっきの戦争に対する評価は別れるところで、ここで議論する気はありませんが、少なくともヨーロッパ的にはルールに従って境界線を引くのが当たり前で、
それは自然に生まれるものではないし、そもそも隣と意見が違うのもよくあることで、何らかの交渉をもって境界を決めるということを今でもやっているのです。
その過程が飛び地や複雑な境界線になっているわけですね。
今回紹介した本を読んでみて、ヨーロッパ的な世界観の一部を知った気がします。
少なくともそういうことが今でもあるということを前提にしないと、今起きている戦争については理解できないし、判断を誤ってしまうかもしれないと思いました。
一般的な日本人は国境を土地を隔てる海や川のように自然発生したものと感じていて、だからそれは絶対的なものだと思い込んでしまうことになりがちなのです。
その思考でヨーロッパで起きる戦争について考えると、それを変えようとするのは絶対悪と思ってしまうでしょう。
国境はルールにのっとって変えられるもので、ルールの解釈は結構曖昧なものだという前提で、大多数が納得できるルールを作るために各国があれこれ動いていると考えないと、絶対悪はやっつけるしかないという発想になってしまうのではないでしょうか。
奇妙な国境、境界線を見てその戦いを知ることは、現状の認識を深める上でとても役に立つと思いました。
こういう歴史の見方みたいな難しい話だけでなく、惹かれた境界を利用してしたたかに生きる大衆がいるということも書かれていますので、歴史の本に興味がある方も必見の面白い本だと思います。
今回は、奇妙な国境や境界の世界地図という本を読んで考えたことを話しました。
今日はここまで。読書と編集ではITを特別なものではなく、常識的なリテラシーとして広める活動をしています。ITリテラシーの基礎を学べるオンライン講座をやっています。
詳しい内容については、概要欄のリンクから、または、「読書と編集」と検索して、猫がトップページに出てくるホームページをご覧ください。
この配信の書き起こしをノートで連載しています。概要欄にリンクがありますので、フォローいただけると嬉しいです。
今日もワクワクする日でありますように。千葉直樹でした。ではまた。
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