1. 栗林健太郎の音声
  2. 第6話 阿部薫の時代
2022-03-29 09:32

第6話 阿部薫の時代

日本における伝説的なフリージャズミュージシャンの阿部薫とその時代について、あんちぽくん自身の受容体験を交えながらお話します。

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ブルーッブループループループループルー
というわけで、antipopmももはや第6回目となりました。
私、あんちぽくんといえばですね、ブランディー・グラッスを片手にゆっくりとくつろぎながら、
デューク・エリントンやビル・エバンス、モダン・ジャズ・カルテットなどを愛称する、まあオーセンティックなジャズファンなわけですが、
その一方で、例えば今年85歳で亡くなったオーネット・コールマンとか、セシル・テイラーのようなフリージャズも大好きな、
要するに何でもありなジャズファンなわけであります。
そのフリージャズといえばですね、先に挙げたミュージシャン以外にも、
例えばジョン・コルトレーン、まあジョン・コルトレーンといえばいろんなイメージがありますけれども、
特に後期はフリージャズに傾倒していてですね、
インターステラー・スペースとかアセンションといったアルバムを出しているわけなんですけれども、
それらのアルバムには非常に大きな衝撃を受けましたし、
中上賢治も愛したアルバート・アイラーとか、
あるいはもう少し後で言うとデレック・ベイリーとかミルフォード・グレイブスなども熱心に聴いたりしたものでした。
で、そういうフリージャズっていうのはもちろん海外の人だけじゃなくて、
日本でも結構やる人がいっぱいいたわけですね。
そんな中でも僕自身が一番聴いていたっていうのが、阿部香織という人です。
冒頭の変な謎の音声はですね、阿部香織のプレイスタイルへのオマージュということです。
阿部香織という人はですね、1949年に生まれて、1978年に29歳で亡くなりました。
一貫して妥協のないフリージャズをやり続け、60年代の革命の季節を過ぎた70年代のある意味挫折の中で、
最終的にはブロバリンを98条飲んで死んでしまった。そんな生涯を送った人です。
死後ですね、しばらくの間は音源を聞くこともままならなかったわけですけれども、
1992年にですね、稲葉真由美さんという小説家によって、阿部香織をモデルにした小説、
エンドレスワルツというのが出ましてですね、それによって状況が変わってきました。
この小説はですね、女流文学賞という賞を受賞するなど結構注目を集めました。
その2年後の1994年にはですね、坂本隆一さんとか、あるいは若松浩二監督とかですね、
各界の著名人が有志頃の阿部香織について語るという本が出たりしてですね、
これは少し縦長の本で、真っ暗な重々しい表紙で、カバーは渾身の力でサックスを吹く阿部香織の姿、
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そういう写真が使われています。
いかにもですね、前衛音楽家としての無茶苦茶な姿がいろいろ語られるんですけれども、
その一方で、阿部香織のプライベートというか、もうちょっと親密に付き合っている人としては、
子守りみたいなものがですね、阿部香織というのは実は好きでサックスでよく吹いていたんだよとか、
あるいはそういう序章的で優しい側面というのがあるんだよねというような話が語られたりもしています。
それでですね、1995年、かつてですね、阿部香織を13人連続暴行罵という映画で出演させた若松浩二監督がですね、
そのエンドレスワルツを映画化をしました。
で、阿部香織の奥さんというのは、これまた今でもカルト的な人気を誇っている鈴木泉という人です。
その阿部香織と鈴木泉、2歳の、言ったら救いのない人生の物語を、
阿部香織をまだ町田校として屈伸大国で小説家デビューする前の町田松尾さんが演じていてですね、
鈴木泉を広田レオナさんが演じたというような映画です。
町田松尾さんといえばですね、さっきの本でもデビュー当時に、阿部香織にそっくりだと訪問で言われたというような話が紹介されていますけれども、
実際ですね、阿部香織の写真を見てみるとですね、
町田松尾さんとどことなく似ているところがあってですね、
しかもですね、その映画では町田松尾さんというのは本職の俳優ではないので、
不器用なんですけどセリフ回しとかが、だけどまあ結構いい感じに味があると。
それで酒と薬に溺れるっていうのが阿部香織なんで、そういう演技をするんですけれども、
結構白心に迫った演技ですね。
実際の阿部香織というのも実際そんな感じだったんだろうなと思わせるような感じで、
電気映画としてはすごいいい出来なんじゃないかなと思うような映画だったんですね。
1995年といえば、当時僕は19歳だったわけですけれども、
その19歳だった僕に真正面からぶっ刺さっていたのがサニーレイサービスというバンドがあったんですけれども、
彼らも特にボーカルをしている曽我部さんは若松浩二の大ファンという人ですけれども、
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その彼らの若者たちという曲を引用していえばですね、
若さをもてあそびずっと泣いていたというような時代だったわけですけれども、
そういう頃にですね、ふと歌舞伎町のエロビデオ屋さんになんとなくスーッと入ったときにですね、
この映画のビデオカセットが500円で売られていたのを見つけてですね、即座に購入をしました。
エンドレスワルツ、若松浩二さんの監督の映画ですけれども、
別に全然メジャーじゃないというか、すごいマイナーな作品なんで、
当然劇場で見られるものでもないですし、
ビデオとかもですね、レンタルビデオ屋さんとかも全然入っていないというようなものだったので、
そこでもう偶然見つけてですね、やっと見ることができた。
で、それから少なくとも100回は見ましたね。
で、その度にですね、安いリスキー、レッドとかですね、トリスとかそういうやつですよ。
ガブガブ飲みながら部屋をププププとか言いながらゴロゴロ転げ回っていた。
私にとって90年代後半とはそういう時代ではありました。
で、そんなこんなで、今まではほとんど聞くことができなかった安部香織の音源がですね、
どんどんそういう経緯もあってCG化されて、
安部香織本を刊行した文雄社という出版社からですね、
ドピンクのインパクトの強い想定で、鈴木泉さんの作品集もたくさん出たりしてですね、
90年代の後半ってにわかに安部香織周辺が盛り上がったと。
そういう時代があったりもしたんでしたね。
今改めてですね、その頃に出た安部香織の音源CDって結構いっぱい買ったんですけれども、
当時はすごい夢中になって聞いていたんですが、
今改めて聞くとですね、とにかく悲壮感だけがひしひしと感じられる。
ただそういう文脈がなくては聞くに耐えないというかですね、
そういうものであるかなとは思っております。
でもですね、70年代の当時、ちょうど僕が生まれた頃の話なんですけれども、
薄暗くて数十人も入れば、
マーインのライブハウスでですね、ステージに安部香織がふらふらと出てきた。
と思いきやサックスを構えるんだけれども、何分もじっとして全く吹き始めずにですね、
じっとしている安部香織を一触即発みたいなものすごい緊張感に耐えながら待ってですね、
やっと安部香織吹き始めたなと思えば、当てもないフレーズを完結的にですね、
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それこそ冒頭みたいにプルプル、プププみたいな感じでやるだけ。
でもですね、そういうのを楽しめたというのは、今思えばのどかな時代だなと思いますし、
率直に言ってバカバカしいとは思うんですが、
ただそれはそれでいいものだったんだろうなと思ったりも、
今ですね、2015年、今から振り返ると思ったりもするのでした。
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