タツアにご紹介をいただいたどんぐりFMでも話したエピソードなんですけれども。
私がずっと見ていた油まみれの水どりっていう映像があって。
湾岸戦争絡みのニュースでは本当によく出てきた映像なんですよね。
若い方はご存知ないと思いますけど。
どこかしらの海の海岸のところによちよちと水どりが歩いていて、
真っ黒というか真っ茶色というか汚れちゃってるわけですよ。
イラクを含めて福衛島を含めてペルシャ湾岸というのは原油を産出する国々がいるところですから。
当然戦争になれば原油の流出があって、海も汚れて、鳥も汚れてっていうそういう映像だったわけなんですけれども。
だからやっぱり戦争ってのは良くないな、イラクは酷いなっていうふうに思ってたわけですが。
関係ない映像だったっていう話を後から聞くわけですよね。
アンカで読んだんだと思うんですけど、広告代理店なんかが動いていて、やっぱり世界中でアメリカであったり、
他国籍軍側に対して頑張れ頑張れというような感情を奮い起こさせるために、いろんな工作がなされていたと。
いろんな説もあるので、何が事実か事実じゃないのかっていうののふわけはすごく難しいんですが、
ただここでもシンプルに衝撃を受けたのが、
俺が本当だと思って見ているものってそうじゃない場合あるんだっていう。
それまで信じていたんですよ。
報道とかあるいは学校の先生が教えてくれることっていうのは正しいことだと思ってて。
そうなんですよ。正しいんですよ。
だけどそこを越えてより複雑なことがあるんだっていうのを知って、
だったら俺は騙されたくないと思ったんですよ。
いやーわかります。
そしてみんなにも騙されてほしくないって思って、
そこら辺から結構報道の仕事に対してそっちに進みたいなっていう気持ちが強まっていったっていうところですね。
なるほど。すごくわかります。
実は僕たち海外の研究者を集めたネットワークっていうのをやってるんですけど、
海外の留学情報も、いろんな情報を集めて海外にポンって行って、
留学情報に信じて行ってもですね、現場でぶち当たることって全然違かったりするんですよ。
100人いたら100人の留学で、意外と前の人の方が役に立たないというか、
教科書みたいに書かれても、やっぱり実際その場に行ってその場で見ると、
例えばこの国はこうだよって言われてても、国のこの状況の時のこの場所に限定されてて、
一歩そこ出ると全然別世界が広がってたりしますよね。
そうなんですよね。さまざまな角度から見るっていうことが大事ですし、
あとやっぱり自分がいるその日本の価値観っていうのが、ある程度狭いもんだなっていうことも感じるところがありましたし、
あとアメリカの絡みでいうと、そもそもなんで僕がアメリカに9ヶ月間とかいたかっていうと、
僕の通っていた高校の同級生が、16歳、高校2年生の時にアメリカにルイジアナ州に留学してたんですね。
友達、ハットリヨシヒロって名前なんですけど、その子ね、ハロウィンの時にね、打ち殺されたんですよ。
ちょっと待ってください。知ってます。フリーズとプリーズを間違えたとかって報道されたっていう。
同級生なんですか?
ハロウィンの時に、パーティーがあるっていうところで行く先の家を間違えちゃって、
別の家のところでトリコアトリートって行ったところ、もう問答無用で射殺されちゃったんですよね。
フリーズって言ったんだけど、ハットリヨシヒロはそのフリーズって意味がプリーズだというふうに聞こえちゃって、
どうぞ入ってくださいっていう感じで行ったら、撃たれちゃったっていうね。で、死んだんですけど。
ハットリヨシヒロは僕同級生で、一緒に学校のキャンプファイアインとかやってたんで、カラオケとかも一緒に行ってるような友達なんですよ。
で、あの、まず死っていうのが、最初ね処方を聞いた時には、僕は何言ってんのって思って、
学校朝ね、時差もあるんで、僕がそれを知ったのが朝のニュースだったんです。
で、学校行ったら、同級生の特にハットリともそんなに親しくないだろうみたいな女の子が泣いてたりして、
いやいやいや、なんでそんななんか信じられるのっていうふうにも思ったんですよ。
で、今思えばその女の子たちは感受性の高い子たちで、すごく物事に対する理解が強いから、泣いてたっていうのがわかるんですけど、
僕は本当に子供だったんで、何?何?っていうふうに思ってたら、あれよあるよとですね話が進んでいって、
僕はもう単純にやっぱりハットリが打ち殺されたことが憎かったわけですけど、
ハットリのご両親はもうそういうところを越えて、自由規制の問題に取り組んでいかれるわけですよ。
で、時のクリントン大統領にも面会して、一定の自由規制というのが進んでいくきっかけになった、そういう運動になっていくんですけれども、
つまり、罪を憎んで人を憎まず、自由社会というものがあったから自分の子供が亡くなったんだっていう発想ですよね。
ただ、僕も子供いますけど、自分の子供を打ち殺された時にそんなことができるって、今になってもうとてつもないなと思うんですが、当時はわからなかったんですよ。
で、僕はやっぱり現場を見るまではそんなの信じられるかみたいな気持ちもあって、アメリカっていう社会を少しでも知ろうという気持ちがあって留学をしてたんですけどね。
やっぱりね、大学の3年終わった時に大学を休んで休学して、それでアメリカ行ったんですけど。
で、グレイハウンドバスで、最初カリフォルニアの大学に留学をしてたんで、ルイジアナまではだいぶありますから行ったんですけどね。
で、バトンルージュっていうハットリーが殺された町にも行きましたけど、現場行けなかったんですね。
なんかそこに行っちゃったら、いろんなことを認めなきゃいけない感じとかして。
で、結局ね、僕20年経って記者としてバトンルージュ行ってるんですよ。
ハットリーが殺されてから20年目の節目の時に、ご両親が久しぶりに現地に行くっていうんで、その時に一緒についてもらって取材をしたんですけどね。
だからね、分かったんですよ。なんでご両親が。
分かったって、私は理解したところなんですけど。
10期生に向かったから。バトンルージュってルイジアナの州都ですし、それなりに大きい町です。
僕も留学の経験とかを通じて、アメリカって地域によって治安が全然違うなっていうのは肌で感じるところがあったんですよ。
とりわけ日本と違うなと思ったのは、いわゆるダウンタウン、町の中心ほど治安が悪いわけですよね。
郊外は安定していて、みんな車持ってるから、お金がそれなりにある人はそういうダウンタウンには近づかずに生活をするわけですけれども。
グレイハウンドバスのバスディープとかあるのは全部ダウンタウンなんですけど。
僕は、服部がおそらくそういう治安の悪い地域に足を踏み入れちゃったんだろうと。
現地の人だったら分かるけれども、留学生とかだとその辺の土地感も不安ないだったのかもしれませんし、って思ってたんですよ。
アメリカのそういう地域ってあからさまに少なくとも大人になったら分かりますよね。
窓ガラス割れてたり、道がめっちゃ汚かったり、道股にいろんな人が転がったりしてるようなところもありますからね。甘い香りがしたりとかね。
そういうところに行っちゃったのかと思ったら全然違ったんですよ。
その服部が打ち殺された地域って鍵もしてないんです。治安がいいから。
植木とかも綺麗に刈り込んであって、車も各家に2,3台当然あってピッカピカに磨いてるんですよ。
ちゃんとしたお金持ってる人たちが住んでる地域なんですよね。
だからこんなところで服部が殺されなきゃいけなかった理由ってそこに銃があったからだとしか思えないんですよね。
例えばそこでナイフとかだったら、はっという間に死んでなかったかもしれないなと思って。
その犯人の男に関しても、僕は別にそいつのかと思った気は全くありませんが、ただそういう地域だったからこそ、
ルイージアナっていう土地柄もあったのかもしれませんけれども、銃を持ち出すっていうことが普通だったんだろうなと。
あるいは自分の身を守るっていうことを考えるっていうのが、初めて現場に行ったときにピンと来たっていうかつながったところがあったんですよね。
そういうのっていうのも結局、行かないとわからないとか見ないとわからないこともあるっていうのは、
それ新聞記者歴もだいぶ経ってからなんですけれども、改めて感じるところはあって、
いろんなところを見たり、いろんな人の考え方を知らないと、物事の全体像はわかんないなと。
だからハットリのご両親は、それがもうすぐわかったってすごいなと思ったんですけどね。
確かにこの家の作りだとか、あとは銃の買いやすさだとか、
どうやって銃を買うか、そしてその銃をどこに、家のどこに置いておくかっていうこの一連の動きっていうのは、
このアメリカの暮らしを見てみないと、こう見えてこないですよね。
そうですよね。また、リージョナルってね、ディープサウスとかって言われるような、
新南部って言われるような地域でもあるし、さまざまな歴史もありますしね。
っていうようなところで、ハットリがどういう状況にあったのかみたいなところを聞いていくっていうようなこと。
要は世の中って湾岸戦争もそうですし、ハットリが殺された件とかもそうですけれども、
本当に複雑で単純なことで、わかったっていうふうに解釈できるようなものではないですよね。
そうですね。
ただ、これが新聞記者になってから私の中で矛盾が生じるのは、
新聞記事って私服の制限、紙の制限があるので、なるべく短く書かなきゃいけないんですよ。
一面トップの記事とかでも、例えば我々の言葉で80行とか言うと、
80行ってもう長い記事なんですけど、12日詰めなんですよ。
で、80行とかあと60行とかなんですね。
つまり、小学校の作文とか読書感想文で使う作文用紙っていうのは400字詰めなんですけれども、
それの2枚から3枚分ぐらいしか書けないんですよ。
小学生の読書感想文より短い文字数で複雑なことを表現しなきゃいけないんですよね。