00:00
こんにちは。明治大学で生涯学習講座の講師をしています、遠藤美保です。
この番組では、社会人や学生向けの生涯学習講座を10年以上行ってきた私が、日常生活でも活かせる心理学をポッドキャストでお伝えしていきます。
今回のテーマはこちら。
「承認欲求を満たし合う、コミュニケーション3つの法則」
今回は「承認欲求を満たし合う、コミュニケーション3つの法則」のお話です。
お伝えしている心理学ですが、皆様にとっての日常的で身近な話題とも自然とつながっています。
その見方、活かし方をご紹介します。
話しやすい、話しにくい、どうも裏を感じるなどなど、私たちにとって必須の人との交流、コミュニケーションについて。改めて、シンプルな基本法則を知ることで、それを応用し、対応の選択肢を増やすことができます。
それだけ自分にとっても楽になりますし、解決策も増えるということになります。
第1回目「承認欲求は誰もが持っている原点」、そして第2回目「心の仕組みは世界共通、誰もが持つ親・成人・子ども」、こちらの2つの内容ともリンクしながらお伝えしていきます。
皆様は、コミュニケーションでどんなことを大切にされていますでしょうか。
例えばわかりやすい言葉で話すこと、相手の気持ちを汲み取ること、誠実であること、甘く見られないこと、先手を打つこと、いろいろあるかと思います。
場面によって、相手によって、状況によって、当然大切にされていることは違うと思います。
ただそれでも問題があるなら、何とかする必要があるなら、やはり基本法則をおさえること、そして応用することをお勧めします。
まず原点、そもそもコミュニケーションは何のためにするのか?ということなんですが、これはやはり、承認欲求を満たすため、ということです。
これがコミュニケーションのモチベーションのもとになっています。
そしてこれ、承認欲求を満たし合う方法が、コミュニケーションです。
これが今回のタイトルなんですけれども、やはり満たし合うというからには、コミュニケーションは基本的には双方向のやり取り。
相手の存在を認め、自分の存在を認められることで、やり取りは成立しますので、まさに存在を認める刺激の交換、ストローク交換そのものということになります。
もちろんお好みがありますし、ストレートなやり取りでうまくいくもの、いかないもの、裏があるもの、そこにはいろいろなストローク交換があります。
03:07
ではいろいろあるそのストローク交換、コミュニケーションのやり取りというものについてですが、実は3つの法則があります。
この3つの法則を見分けるときに使うのが、私たちが誰でも心の中に持っている「親・成人・子ども」の部分になります。
コミュニケーションを、この「親・成人・子ども」の部分を意識して考えてみる。それが3つの法則になります。
1つ目の法則、「親・成人・子ども」、このうち、狙い、狙われた部分でやり取りすること、これがストレートに続くやり取り。
これはいつまでも続く可能性のある交流やり取りです。
もう少し噛み砕いて言ってみますと、この第一の法則、1つ目の法則がそのままつながっている、うまくいっているときは、非常に相手とも話しやすくて、話が弾む、夢中になってあっという間に時間が過ぎてしまう、そんな相手との会話や交流をちょっとイメージしてみてください。
日常的なやり取りでもストレスなくスムーズに話が進む、一緒に活動していてもすごく建設的に話が進む、などということです。
ではこれがどういう状態かと言いますと、いくつか例を挙げてみたいと思います。
例えば仲の良い人同士で共通の趣味や興味のある内容についての話をしているとき。これは、いかがでしょうか。
私なども思い当たる節があるんですけれども、本当にあっという間に時間が過ぎてしまうんですが、これはもう非常にエネルギッシュで自由な「子ども」の部分同士が盛り上がっている。
相手の「子ども」に向けて話して、自分も自分の「子ども」の部分で反応する、きゃー、って盛り上がるような会話だったりします。
あるいは近所のごみ捨てルールを守らない人がいて、その考えが同じ人同士、本当どうにかならないものなのかなと怒りながらする話など。
これはですね、ルールを守らせたい、守らせようとする、そしてルールががっちり入っている「親」の部分同士が盛り上がっているわけです。
相手の「親」の部分にどう思いますかって言って、そして相手の「親」の部分もいやとんでもないですと言って、この話が延々続く、非常にこう、スムーズに続いていく話。
あるいは上司が仕事に遅刻してきた部下を叱責するやり取り、これなどは上司の「親」の部分から部下にですね、今一体何時だと思っているのということで叱責をします。
06:02
そしてそれに対して部下が、申し訳ありません、遅刻して本当にすみません、というふうに謝罪をする。
これはですね、上司の「親」部分と部下の「子ども」部分のやり取りと言えるかと思います。
次に2つ目の法則、「親・成人・子ども」、狙われた部分ではないところから反応すること。これがストレートに続かないやり取り、これはですね、止まってしまいまして、どちらかあるいは両方が、反応する部分を変えない限り続かない交流、やり取りになります。
どこも話が続かない、ストレスを感じる、いやーなんかあれ以来疎遠になってしまったな、そんな相手との会話や交流などが思い当たります。
ではこれどういう状態かと言いますと、またこれもですね、少し噛み砕いて、いくつか例を挙げてみたいと思います。
例えば、自分のお気に入りのお店を紹介して、一緒に楽しいランチをしようと思って連れて行ったのに、連れて行った相手がお店の味付けやら対応やらを、批判を始めちゃいまして、せっかく気に入ってくれると思って連れて行ったこちらとしてはですね、笑顔も凍りつき、もう黙々と食べるだけ食べて帰ってきた。
これなどは、そうですね、さしずめ、この「子ども」同士で盛り上がろうと思っていたら、相手がですねすごく批判的で皮肉めいた「親」の部分を発動して反応してきたやり取りではないかなと推測されます。
あるいはですね先ほどの近所のごみ捨てルール、これも例を挙げてみたいと思いますけれども、この場合ごみ捨てルールを守らない人がいてどうにかならないものかと怒りながら盛り上がろうと話しかけたところ、相手がですね、「ごみ捨てルールについて、先方に正確に伝わっているか確認が必要ですね」と淡々と反応してきて、フリーズしてしまう。
これはですねルールを守らせようとする「親」の部分同士が盛り上がろうとしたのに、「成人」から反応されてピタッとちょっと止まってしまったやり取りと言えるかと思います。
あるいは、先ほどの上司が遅刻してきた部下を叱責するパターンを例に挙げてみますと、上司が、今何時だと思ってるんだ、これ「親」の部分から、相手の素直な「子ども」の部分に対して、謝ってほしいと思って投げかけている問いなんですけれども、それに対してもし
「今ですか?9時15分です」と、淡々と答えたとしたらいかがでしょうか。これはよく考えて、「成人」。ちょっと悪く考えますと、もしかしたらその人の言い方とか目線によっては、これ、素直に謝ってくれる「子ども」の部分からではなくて反抗的な「子ども」の部分からの返しということで、いずれにしろ狙ったところではないところから返ってくる。
09:12
そういうやり取りになります。
そして3つ目の法則、「親・成人・子ども」、表面上のやり取りの裏に、隠されたやり取りがあるもの。
この場合、結果は、その、裏の隠されたやり取りで決まると言われています。
表面と裏面で違うやり取り。
これはシンプルにイメージしやすいかと思いますので、先ほどから挙げております、遅刻した部下と上司のやり取り、これで解説してみたいと思います。
例えば、9時が始業時間だったとして、部下が9時半ぐらいに来たとします。
そしてその来た時に上司がどうしたの?というふうに聞く、あと目でも見る。
そしてそれに対して部下が、
「あっ、すみません、電車遅延で30分遅れました。申し訳ありません。」
と、こう言ったとします。
これ、表面上は「成人」と「成人」でのやり取り、ということになるのかなと思うんですけれども、これ例えばこんなことってないでしょうか。
実は上司は、本音では、「もっと早めに連絡できるんじゃないの?」とか、あるいは「この間も電車遅延で遅刻してたけれども、そんなに頻繁に何度も電車遅延が起きるような路線なんだったら、そもそもそれを織り込んだ上で行動するのが当たり前なんじゃないの?」とか、そんなことを心の中で思っているかもしれません。
そんなことってないでしょうか。これ、そうすると裏面ではですね、「成人」対「成人」ではなく、上司はですね、もう相手を叱責したい、もうなんて言うんでしょう、ビシッと叱ってやりたいっていう、そういう厳しい親の部分の気持ちが実は出ていたりします。
そうするとどうしたのと言いながらも、もしかしたら表面上、ニコニコしてるかもしれませんが、やっぱりですね、ちょっと目線とか、色々なもの合わせなかったりとか、この、不穏なものが醸し出されているわけです。
そして部下は部下で、これやっぱりですね、ニコニコって、ニコニコっとしてないまでも、入ってきているのは、実はそこまで反省してない可能性もありますし、あと、もともと、もしかしたら、だいたいそもそも、この、なんて言うんでしょう、職場に対する不満があるかもしれませんね。
そんなわけで、電車遅延だし仕方ないじゃないですか、ぐらいの感じで、気持ちの中では非常に素直で従順な、こう、謝罪する部分の「子ども」というよりも、もしかしたら本当に、かえって自分が「親」の部分だったり、あるいはですね、反抗的な「子ども」の部分があるのかもしれません。
12:14
いずれにしろ、これ、裏面の交流に引っ張られて結果は出てきますので、おいおいですね、その表面的なやり取りが続いた後に、これが延々続きますと、こじれる関係という結果につながっていきます。
ただこれ、すいません、こちらのまた別の回でのお話として、この、これが延々続いてですね、こじれる関係になっていく、そうすると何が起こるのかということは、また別の回にお話したいと思います。
以上が承認要求を満たし合おうとして、私たちが行っているコミュニケーション、この3つの法則ということになります。
ここでちょっと、注意点を加えていきたいと思います。
1番目の法則、これですね、私が挙げた例だと、なんだか良さそうな感じに聞こえてしまったかもしれないんですが、もちろんですね、良い関係が延々続く場合というのは良いんですけれども、
実はこの1番目の法則、非常にこう嫌な関係であったりとか問題のある関係が延々延々続く場合には、やはり対策をとる必要があるのではないかなと思います。
以前私が遭遇した例が参考になるかもしれませんので、ご紹介してみたいと思います。
ある時、複数の後輩の教育係といいますか、面倒を見る、という立場になったことがありました。
1人、いくら注意しても全然なおらないわ、メモもほとんど取らないわ、本当に手間のかかる、手がかかる、その割に成長速度が遅いという後輩がいました。
ある時、あまりにもちょっとこう、それはないだろう、というようなミスがありまして、それも注意もしたんですけれども、メモもしない、また繰り返し同じミスをするというようなことがあったので、本当に呆れ果てて、
ただ私もですね、まだちょっと熱いものが流れている時でして、今だとちょっとすいません、何か注意されちゃうか、私の方が注意されちゃうかもしれませんけれども、A4の紙に「いい加減にしなさい」っていうふうに書いて、彼の机の上に置いて、すっすって、帰っちゃったことがあります。
ちゃんと仕事終わってましたけれども、そしてですね、その時に彼はといえば、もうすいませんとかっていう感じで謝罪の言葉を言ってくれるんですけれども、本当に相変わらずのままだったんですが、その後ですね、彼も部署異動をしまして、私もですね、どういうふうにしてるのかな?なんて懐かしく思いながら、
15:00
その後、久しぶりに移動後の彼と、そうですね、1、2年後ぐらいに会う機会があったんですけれども、そうしたら、あ、久しぶりだなと思って、あ~って、私がこう声をかけそうになったら、もう彼の方から気がついて、あ~って言いながら、
嬉しそうにですね、自分の机のキャビネットからゴソゴソと何かを取り出してくるんですね。それがファイリングしている紙を、私に見せてくれたんですけれど、何かな?と思ってみたら、それがその私が1、2年前に、もう呆れちゃうと思いながら書いた、「いい加減にしなさい」っていうこのA4の紙を、
まあ何か大事にファイルして取ってたみたいで、これって言いながら、すごく嬉しそうに見せられたわけなんです。いかがでしょうか皆さん、これ。つまりですね、これ今から思えばなんですけれども、できない彼をキャッチし続けて、そしてこう叱責する、この私がですね、彼のストローク源といいますか、
承認欲求を満たし続けていたがために、彼はできなかったのかなっていうところなんです。異動後の部署では立派に成長しているようでしたので、これは本当にですね、問題のあるやりとりが延々続いていたんだなということを、本当に今にして思えばなんですが、感じるやりとりです。
そして、コミュニケーションの3つの法則から考えてみますと、第一の法則、延々続くやりとりというところでいきますと、ここにもし問題があるのであれば、そのやりとりは、一旦止めたほうがいい。
その止めるためには、やはりこの第二法則を活用して、一旦相手が狙っていないところから返して、そしてですね、そのやりとりを止めてお互いにちょっと、なんて言うんでしょう、冷静になってみるというか、違うやりとりの方法を模索してみる、試行錯誤してみるということが必要ではないかと思います。
私の先ほどの例でいきますと、延々この叱責し続ける、彼のことをキャッチしながら、あれこれ構い続けるというのではなく、他のやり方、そちらをですね、ぜひしてみる必要があったのではないかなと思います。
この例を承認欲求、ストロークから考えてみますと、承認欲求を満たすための刺激、それがストロークですというお話を第一回目にしてますけれども、その際の注意点、覚えてますでしょうか。
このストロークは私たちにとっては、食べ物や空気と同じぐらい必要なもの、必須のものなので、何もないのが一番きつい状態ですから、何もないぐらいであればネガティブでも何でもいいから取りに行く、それがストロークですということを申し上げたかと思います。
18:10
今回のこの例はまさにですね、ネガティブでも何でも取りに行くためのやり取り、これ彼にとってはできない自分でいることがこのストロークを確実にモノにするやり取りだったのではないかな、というふうに思います。
これがストロークの根深さというか怖さかと思います。本人もあえてしているという意識がない可能性が高いかなと思います。
ただ私からできることがあるとすれば、もっと彼がうまくできていること、良いところ、たくさんありましたので、そこのところをもっと認めて、そこにストロークをたっぷりと上げるようにする、そんなやり方もあったかと思います。
皆様ならいかがされますでしょうか。ぜひ基本法則を把握した上で、それを使って応用をきかせて、いろいろな解決策を編み出してみていただけたらと思います。
では今回覚えていただきたいポイントは、「承認欲求を満たし合う、コミュニケーション3つの法則」。まずは気づくこと、そしていつもと違う変化を味わってみませんか?
ここまで聞いていただきありがとうございます。最後に番組からのお知らせです。気づくと変わる心理学をまた聞きたいと思った方は、お聞きのPodcastアプリで番組フォローとレビューをお待ちしています。
フォローしていただけると最新話が更新された際、通知がきます。またレビューしていただくことで番組の改善につながりますので、できれば欲しいご評価をお待ちしています。
また番組では、お聞きのあなたからの疑問・質問・感想を、様々な媒体でお待ちしています。
Spotifyでお聞きの方は、エピソードごとのQ&A画面、番組へのメッセージはこちらから。
Apple Podcastでお聞きの方は、レビューを書くからコメント付きでレビューできます。
来週も火曜日の朝6時に更新されます。お会いしては遠藤美保でした。ありがとうございました。