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2023-09-19 02:54

イタラジ#16 『特性のない男』について(概観)

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今回は、ロベルト・ムージルの作品、『特性のない男』についてお話しいたします。

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イタラジ、今回は、ロベルト・ムジルの『特性のない男』のお話をしていきたいと思います。
特性のない男、ロベルト・ムジルの代表作でありますが、この第一章編は、大まかに前半と後半に分けられていまして、
前半は徹底した現実批判、それもアイロニー、皮肉、これを使って、
我々の生きている世界を極限まで批判して、確実な認識をえぐり出そうとするわけですけれども、
後半は、その削膜たる現実に俗に言う神秘主義、つまり千年王国、ユートピア、
これを打ち立てようとする試み、などと言われています。 しかし、これは神秘主義といっても、一概に単純なロマンチシズメや、
穴黒な無双ではないと思われます。 実際読んでみますと、そこには確固たる心理学や認識論による土台が築かれた上で、
そのユートピアへの指向がなされております。 そして前半よりも厳しい批判がその指向自体に向けられているわけです。
後半部の執筆が揃ったのは、ここに訳があるのだと思われます。 ユートピアの指向、イコール記述された指向そのものへの批判をするわけでございます。
しかし、内容の質の面から言ったら、ますますそれは磨き抜かれたものとなります。 第2巻の記述はとても素晴らしい、その倉庫の部分もとても素晴らしいものになっております。
絶筆部分が近づくにつれ、それはますます輝かしいまでの記述になるわけであります。 しかもそこには、自己統制も自己否定もありません。
我々は二つのことを考えるべきだと思います。 特性のない男は完結しなかったが、
それは飛び切りの量と質を備えた何かではある。 もう一つ、しかしだからこそその分完結しなかったのだ。
間切れもなく未完結の何かが我々に残されたのだと考えられます。 これは我々に二つの感情をいただけると思います。
つまり、慎重さと活力。 慎重さとは、ムージルの仕事を前にした謙虚さであり、ムージルと同じ技術を踏んかえなかったという選択の余地があります。
活力は、我々は握りずにはペシミズに陥ることなく、 現代を冷静にユーマを真面目に見ることができるし、
その先に小説内の分量は僅かながら、確かな道筋を確かめることができるからであります。 今回はロベルト・ムージルの特性のない男について少しお話しいたしました。
ありがとうございました。
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