ジャズの入り口案内所、案内役のフランクナッパです。
この番組は、様々な扉からジャズの入り口をご案内するラジオです。
2024年、ちょっと残念な悲しいニュースが多く届いていますけれども、
先日、八代亜紀さんがお亡くなりになられたというニュースが入ってまいりました。
実はこの八代亜紀さんは、一般的には演歌歌手として名声を築かれている方なんですけれども、
実はジャズのアルバムもリリースされていて、とっても素敵なジャズシンガーでもあられるということで、
私の大好きなアーティストさんでしたので、ぜひ皆さんにも知ってもらいたいなという思いと、
お疲れ様でしたという思いを込めて、今日の配信を収録させていただいています。
ということで早速、八代亜紀さんの扉を開けてみましょう。
八代亜紀さんといいますと、魚は炙ったイカでいいの船歌だとか、
雨雨ふれふれもっとふれの雨の母上といったヒット曲が有名なわけですけれども、
この八代さんがレコードを収録するときに一番気をつけていたことというものは何かといいますと、
まずはリズムやテンポなんだそうです。
このリズムやテンポというのがうまくあってこないと歌に魂が乗ってこない。
八代さんの考えで言うと、バックバンドの演奏も歌の一部であって、
楽器がですね、まず歌っていないと八代さんが歌ったとしても、
その曲自身が歌っていることにはならないということを思っていたそうです。
その判断基準になってくるのが曲の持っているリズムやテンポ。
ですので歌い前にですね、このバックバンドのリズムやテンポが八代さんの感覚とちょっと違うなというふうに思ったときには、
もう一度やってくださいということでやり直しをしてもらっていたということもおっしゃっています。
また八代さんの特徴としてですね、この収録を一発撮りで撮るというのがあります。
これ何でかと言いますと、八代さんがその曲を聴いた最初のイメージを八代さんの気持ちを込めて表現する。
そのため一発撮りが多かったそうです。
多くてもですね、3テイクぐらいのうちで止めてしまったことがほとんどだそうで、
実はジャズとかブルースなんかもたくさん聴いていて、本当はジャズシンガーとかブルースとか歌いたかったっていうのを、
以前私テレビでインタビューで見たことがあるんですけれども、
2012年にですね、ジャズのアルバムをリリースするんですけれども、とても自然な流れだったんだなということを感じます。
このアルバムをプロデュースしたのが元ピチカート5の小西康春さん。
小西さんがジャズのアルバムをプロデュースするっていうのもなかなか面白いなと思って聴いてたんですけれども、
この小西さんですね、先ほども言いましたけど、小西さんがやたらマイナーコードの曲ばっかり歌うんで、
なんでかなーってずっと気になってたみたいですね。
実は小西さんのプロデュースで2枚アルバム出すんですけれども、その時2枚目の時に思い切って聴いてみたら、
今みたいなお話を聞いて、そういうことなのかと。
そういうことなら思い切ってね、そういう気持ちに全振りしてアルバムを作ろうということで、2枚目のアルバムを作ったっていうような経緯があるぐらい。
この小西さんの中にある歌に対する背景、思いっていうのはね、かっこたるポリシーがあったそうです。
このジャズアルバムなんですけれども、2012年にですね、「夜のアルバム」というタイトルでリリースされます。
このアルバムがものすごくいいんですけど、実はビルボードジャパンの2013年のジャズアルバムの年間1位に輝くんですね。
演歌歌手の方が出したアルバムがですね、ジャズアルバムの年間1位とっちゃうって、
なんかイメージ的にすごいなって、ちょっとイメージ湧かないところもあるんですけど、
このアルバムを聞くとですね、演歌歌手八代明とはまた別のジャズシンガー八代明がいてですね、
ものすごく新しい発見をすると同時に、そのジャズシンガー八代明の中に演歌歌手八代明がちゃんといるっていうですね、そういう歌なんですよね。
ですから本当のジャズシンガーが歌っているかのように聞こえるんです。
やっぱり昔からずっとジャズ好きで聞かれてたんだな、ジャズの歌い方だったり、ジャズの様式だったりっていうのを体の中に入れ込んだ状態で、
今まで歌っていた演歌の心というかですね、そういったものも乗せてですね、歌っているこのジャズ。
他のジャズシンガーにはない魅力があって、本当にヤシロジャズというか、唯一無二のジャズソングになっています。
ぜひ一度聞いていただきたいなと思うわけですけれども、このアルバムがですね、ヒットしたことで海外からも注目されてですね、
ニューヨークのジャズクラブ、老舗ジャズクラブのバードランド、有名ですよね、バードランド。
ここに招待されてですね、ライブを行います。
連日満員で、そこで船歌とか雨の墓場とか歌うんですよ、演歌のね、持ち歌も歌うんですよ、ジャズの曲だけじゃなくて。
ついに小さい頃からの夢であったクラブで、ジャズクラブで歌を歌うという夢を、2013年にヤシロさんは叶います。
その後、先ほども言いましたけれども、もう1枚ジャズアルバムを出しますし、
その他ですね、ブルースに特化したアルバムだったりとか、
あとその他いろんな歌謡曲をカバーしたアルバムを出したりですね、
いろいろ演歌に限らずですね、精力的な音楽活動をヤシロさん、晩年になっても進めていきます。
改めてこのヤシロさんの曲を聴いていくと、演歌にしてもジャズにしてもですね、
唯一無二というか、本当にすごく心のこもった歌を歌われて、
素敵な声ももちろんですけど、歌い方だったりね、緩急だったり、
もっと専門的なことを言っている記事を見ると、マイクに声を入れるのがとてもうまいというか、
マイクから離れて声量を出して歌っているという人を見ると疲れちゃうんだけど、
マイクってもっと繊細な表現をしようと思ったらもっと近くで歌えばいいのにな、
なんてことをヤシロさんが言っているのを記事で読んだことがありますけれども、
そういったいろんな技術だとか、そういったこともね、とても極められた方で、
本当に一アーティストとして素晴らしい方だったなと今すらながら思うわけです。
改めてこうしてヤシロさんの残した曲を聴こうって思えた機会になったというのは、
一つありがたいことだなと思いますし、もっと早くからね、聴いてはいたんですけれども、
もっとね、聴けていたらまたね、自分の世界観だったり、音楽の聴き方、こういったものも変わっていたのかなというのことも感じました。
小さい頃からですね、そこに居すぎてしまって、まるで永遠に続くかのような錯覚を覚えてしまう人って結構いると思うんですよね。
ヤシロさんに限らず、例えば芸能人の方でもそうですけど、
人である以上は永遠ではないということを改めて感じさせられた今回の不法だったわけですけれども、
まあ、暗い話ばかりしていてもしょうがないですのでね、この機会にですね、ヤシロさんの残してくださった素晴らしい音楽っていうのを皆さんにも聴いていただけたらなと思います。