00:10
LISTEN to books. Campus Presents.
『脳は世界をどう見ているのか』の概要
この番組では、本を取り上げていくんですけれども、これで4冊目になります。
書評をするというわけでもなく、本の内容を詳しく紹介するというわけでもなく、
LISTEN to the Voice of Booksというコンセプトで、その本が何を言いたかったのか、
どんなことが言いたくて、この本を書いたんだろうか、ということを伝えたいということで始めた番組です。
今日は、脳は世界をどう見ているのか、ジェフ・ホーキンスさんという方の書いた本です。
これは2021年に英語版が出て、日本語に翻訳されたのが2022年ですね。
4月に出たんですね、初版がね。
私が今手にしているのは、2023年の5月に出された第8版ですね。
私は脳科学とか神経科学にかなり関心を持って、最近ここ1年ぐらい追っかけてきたわけですけど、
この本があるのを知らなくてですね、最近見つけまして、
つい一昨日、今日が9月22日なんですが、9月の20日に届いて、一気に読んでしまいました。
ジェフ・ホーキンスさんというのはどういう人かというと、知っている人は知っているんですけれども、
ヌメンタという会社の共同創業者。これ人工知能の研究を行っています。
この方はただそれよりも有名なのは、シリコンバレーでパームコンピューティングという会社を作って、
スマホの先駆け、今皆さんが使っているスマートフォン、スマホの先駆けになるパームパイロットを開発した。
だから今のスマホ時代をある意味30年以上前に予見していたということなんですね。
その方がいま脳科学、神経科学の研究をしていると。
ちょっと前に「考える脳、考えるコンピュータ」という本を出してまして、これ私読んでなかったんですが、
実は脳、これは私なりにいろんな勉強してきた結果、結局、記憶それから予測、つまり脳の一番本質的な機能は、
もっと正確に言うと大脳新皮質の知能を司るホモサピエンスの本質的な機能は予測にあると。
もっと言うと実践的な予測ですね。動きを伴った予測と。行動する予測にあると。
これがもう脳の本質だというふうに私は実は思ってまして、大脳新皮質の。
そのことを実はこの「考える脳、考えるコンピュータ」という本では書いてたということなんですよね。
それを踏まえてさらに認識が進化してまして、このホーキンスさんのね。
この本、脳は世界をどう見ているのか。私なりにずっとここ1年ほど考えてきた。
特に機械学習、AIの進化と脳科学、神経科学の進化。この両方を睨みながら脳の構造を見ていくと考えていくという発想で私もやってきたんですが、
まさにこの方はそれをもうずっと何十年も考えてきた人なんですね。
私なりにたどり着いてた結論とほぼ完全に重なってくると。
もちろんこのホーキンスさんはもっと専門的にいろんなことを理解した上で言っているんですけれども、
思考をする方向というか考える発想の方向が完全に一致したということで、ちょっとびっくりしている本なんですね。
この本ですけれども、日本語版には序文がついていまして、序文を書かれたのがリチャード・ドーキンスさん。
知っているかな。進化生物学の利己的な遺伝子、セルフィッシュ遺伝子ですね。
利己的な遺伝子、我々は結局遺伝子に動かされているみたいなふうに俗っぽく理解されている本ですけれども、
これも私持ってて読んでますけれども、利己的な遺伝子を書いたドーキンスさんが序文を書いていると。
非常に刺激的な序文を書いています。
そういう意味ではこのジェフ・ホーキンスさんというのもすごく未来予測を含めて非常に卓越した能力を持っているなというふうにちょっと思っています。
面白かったのは色々あるんですけれども、やっぱり脳をしっかりと研究してきているわけですけれども、
この新皮質がどういう機能を結局果たしているのかということはまだあまり明らかになっていないんですよね。
色々な研究が進んでいるんですけれども、ただそれを統合するような説明というのは実はまだ十分されていないんです。
つまり人間の脳というのはまだまだ謎に満ちているんですね。
脳の基本機能と予測モデル
例えば人間がなぜこんな高度な知能を身につけて、そして言葉を生み出すようになったのか。
抽象的な思考をし、色々な自然界の法則を見出し、それを実際に応用し、ロケットを飛ばしたり、それこそスマホなんていう汎用コンピューターを開発したりということがなぜできたのか。
この動物に、ホモサピエンスという動物にできたのか。
それはもう全ての謎は脳にあるわけ。
さらに脳の中でも新皮質ですね。大脳新皮質にある。
この謎がまだまだ解けていないんですが、今実はAI、機械学習が進化したことで、
AIもいろんな実験を重ねてきた結果、ようやく自然的な言語が、自然な言語とか、あるいは空間予測とかね、色々できるようになってきたわけです。
囲碁とか将棋ではAIの方が強くなったわけです。
ただこの方向ではまだ人間には及ばないと。
今のディープランニング、ニューラルネットワークとディープランニングでは人間の脳は到底超えられないという、そういう話も書いていて、これも非常に説得的でしたね。
このディープランニングのやり方はどこかで行き詰まっていくと。
それは専用のコンピューターにはなっても、汎用ですね
何にでも使えるようなコンピューターにはならないということですし、やっぱり自律的な学習、人間の脳がするような学習にはやっぱり及ばないという話なんですね。
そうすると結局じゃあ人間の脳はどういう学習をしているのかという話で、
基本はやっぱり記憶、経験によって記憶を積み重ねて、その経験に基づいて予測を常に、行動しながら常に予測しているというのが人間の脳の本質なんですね。
予測には空間予測と時間予測、時間予測はシーケンス予測とも言うんですけれども、シーケンスですね、シーケンサーのシーケンスです、
予測とも言うんですが、これも相互に関連しているんですけれども、
さらに考える脳、考えるコンピューターという以前書いた本では、記憶による予測の枠組みで脳は動いているというふうに言ったんだけれども、
ホーキンスはもうこの言葉は使わなくなったと、むしろ記憶による予測の枠組みではなくて世界モデルに基づく予測、
つまり記憶ではなくて脳に蓄積されるのは記憶ではなくてモデルなんだと、脳の中にはモデルがたくさんあるんだと、
それを千の脳と言うんですけれども、千の風じゃなくて千の脳ね、脳は千あるということなんですね、一つじゃないという話で、
脳はたくさんのモデルを頭の中にいっぱい持っているんだというね、これが予測モデル、脳はいろんな体験を通じて、これは人間が身体を持っていろんな五感を持っていると、
そういったセンサーによって、しかも行動して動くわけですよね、それで世界を感じるわけです、
そこでいろんな予測モデルを常に作り直していると、いろんな予測モデルをため込んでいくと、
うまくいかないモデルは捨てられ、うまくいくモデルが作られると、
常にその予測モデルに従ってこう動くと、しかもその予測モデルは一つじゃないと、たくさんあるんだという話なんですね、
これを詳しく話すと、とても1時間2時間3時間で終わらないので話しませんけれども、
とにかく我々は感覚的に運動しながら学習していると、動きがなければ学習はしないと、
コンピューターはそうじゃないんですね、コンピューターはデータを読み込むことで学習するわけです、
人間は動くことで学習するということなんですよね、だからコンピューターは実践的な動きを伴った予測学習、
あるいは予測モデルを自ら作ることがこのままではできない、という話なんですよね、これは実に面白いですね、
結局、新皮質は世界の予測モデルを学習している、しかもその予測はニューロンの内部で起こっているということ、
脳の学習と座標系の重要性
こういったことを発見してきたというんですね、しかもここでもう一つのキーワードが座標系です、座標です、
そのニューロンの中には座標系がたくさんあるんだと、いろんな座標で人はいろんなモデルを理解していると、
抽象的な思考あるいは言語を生み出す謎も実はその座標系にあるという話で、これは私はもう納得しちゃいますね、
それしかないだろうと、これ考えていったらやっぱりそうなるだろうと、現実に脳がそうなのかどうかを私は実験で確かめていないので分かりません、
分かりませんがそういうのを確認していっている人がかなり確かな証拠がいろいろ出てくるということも言っていて、
この認識の枠組みですね、動きによって学習する、それは予測モデルを学習する、そしてそれがニューロンの中にあり、しかも座標系を持っているとニューロンはね、
これは実にね、全てを解決する理論ですね、であり仮説ですね、かなり有力な仮説だと思いますね、
これによって言語の謎、そして抽象的な思考の謎、これも全部解けてくるわけですよね、
しかもここから見ていくと、結局なぜ今のAIが人間の脳を超えれないかと、
この人ホーキンスさんは5歳児にすらなれないと今のAIがね、今のやり方は行き詰まると、
別の発想で行かなきゃいけない、それは人間の脳と今のAIは違うんでやっぱり、仕組みが違うんです、だいぶ似てきたんだけど違うんです、根本的に違うところがある、
その根本的に違うのは今言った大脳新皮質の謎ですね、のメカニズムですね、これだと、
これは今まだAIではやってないと、でもこれを開発しないと人間の脳のような知能はAIには生み出すことはできないって言うんですね、
これも非常に説得的ですね、説得的です、で我々は絶えず学習し、動きによって学習し、
だからAIはやっぱり身体とかセンサーをかなり持たないと人間の脳にはならないわけですね、
それからいろんなモデルと座標系を組み込むような単位を作っていかないと、ニューロンにあたるものを作っていかないとだめなんだけど、
人工知能の限界と未来へのメッセージ
今の人工的なニューラルネットワークは座標系もなければ動きもなければという話になっていて、やっぱりこれは人間の脳にこれ以上近づけないと、
あくまでも囲碁しかできないAI、将棋しかできないAI、空間予測しかできないAI、言葉を知らないけれども、リンゴが何か知らないけれども言葉を生み出せるAI、
そういうものにしかならないと、新しい課題に対応できるAIはこのディープランニングでは生まれないということを言うんですね、
これも私にとっては非常に説得的でした。他にも人間の脳は大脳新皮質だけじゃなくて古い脳を持っているわけですよね。
この古い脳は運動や本能やそういったものを司っているわけですが、この部分と新皮質の関係、そしてAIとの関係ということも非常に構想しているわけです。
語りたいことはいっぱいあるんですが、それはまたおいおいいろんな場所で使わせてもらうとして、
さらにこの人は100年後、200年後、数百万年後、人類が滅んだ後のことまで考えている。
宇宙に生命体がどれだけあるか、地的な生命体がもしあったとしても、ある可能性は非常に高いんですよね、宇宙は広大ですから。
だけどそれは、例えばパーティー会場でパーティーが行われていますと、そのパーティーが6時間行われていましたと、
でも人類が生存した瞬間、高度な知能を持ってね、というのは、6時間のうちの50分の1秒ぐらいだって言うんですよね。(50分の1秒が正しいです。)
他の知的生命体もそれぐらいの瞬間でしかそのパーティーの会場に行かないと。
するとパーティー会場はいつ行っても無人という形になってしまうというような話で、
つまり同じ時間に知的生命体が複数出会う可能性は間違いなくほぼないということを前提に、
でもこういった知識を身につけた種がいたんだということをやはり伝えたいと、残したいと。
メッセージインボトルですよね。
未来に向けたメッセージインボトルはどうしたら可能なのかということまで書いているんですよね。
つまり我々は何のために生きるのか、知識をさらに進化させるのか、
AIなんかを生み出して何をやっているのかと。
個々人の人生の目的や幸福はあるけれども、そうじゃなくて人類が生きた証はどこに見出せるんだろうかといったときに、
やっぱりこの知的な、知識ですよね。
これをどう実際には出会うことがないけれども、もしかしたら伝わるかもしれない。
メッセージインボトルで伝わるかもしれない。
もしかしたらね。
いうことでその形を考えるんですね。
これはすごいです。
何百万年後、何千万年後のメッセージインボトルの発想ね。
これを考えるわけね。
ジェフ・ホーキンスの発想と著書の紹介
これはちょっと、この発想も非常に親近感を持つというか、
自分自身が今60歳になってもうあと10年、20年、30年は生きないだろうというときに、やっぱりこれなんですよね。
メッセージインボトルなんですね。
だから自分なりのメッセージインボトルの残し方ということも考えるし、
人類全体としてのメッセージインボトルを突き詰めるというこの人はちょっとただもんじゃないですね。
さすがそのスマホの原型を生み出した。
スマホ時代が到来すると30年前に予言しただけあるということで、ちょっとびっくりしました。
こんな人がいるし、こんなことを書いてんだなと。
しかも今私がこだわっているAIと脳と、そして言語、抽象的思考、科学的方法、これの意味、目的、もっと言えば人類の存在の意味、知能を発展させた意味とかいうことについて、
いろいろ考えてきたことがほぼですね、全部じゃないけどほぼ答えてくれるというちょっと稀有な本に出会いましたので、
まだ届いたのが2日前で、ちょっと2日かけて読んで読み終わって、
でもスーッと入ってきましたね、私はね。
で、このポッドキャストでもね、ちょっと紹介したいと思ってしゃべりました。
どこまでね、これ整理してしゃべれてるかわかりません。原稿なしでしゃべってますので、
しゃべり残してることはたくさんありますけれども、とにかく今読み終えての思いというかね、これを残しておきたいと思ってしゃべりました。
それから、これは私のnoteの記事にも、もうすでに原稿書きました。
これはもうちょっとあっさりした本の紹介ですけどね、それもよろしければご覧になっていただければと思います。
そちらのノートの記事が出されるのはちょっと明日ぐらいになると思うんですけどね。
ジェフ・ホーキンス、脳は世界をどう見ているのか。早川書房。早川書房ってのはSFで有名でしょ、早川文庫ね。
で、もう最後の方は完全にSFです、これ。サイエンスフィクション。
読む人が読むと、何これ、たわけたSF言ってんだと思うかもしれないけど、これはね、ノンフィクションになりうるサイエンス。
まあ、サイエンスフィクションのように読めるけども、30年後、50年後、100年後にはサイエンスノンフィクションになってる可能性が非常に高い、そういう内容ですね。
で、なんでそんなことが可能になってるかというと、ジェフ・ホーキンスさん。やっぱこれは熟慮です、熟慮。
とにかく徹底的に考えると、やっぱりそれ以外ないという回答に行きつくんですよね。
だから彼は非常に確信を持ってるわけです。
今誰も信じなくてもどう考えても、こういう選択肢しかなくなっていくだろうっていう話なんですよね。
なのでこの発想の仕方も非常に親近感を持ちますね。
そんなことでどこまで本の内容が伝わったかわかりませんが、内容のことはそんなに語ってません。
ただこんな本があったよということで紹介したいと思います。
ではまた。