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2020-11-18 13:29

【第35夜】美しさ誰のためのもの?美貌を利用する健全さとグロテスクさと

「毒々しい、人間臭い一冊を」というリクエストにお答えして、近藤史恵さんの『夜の向こうの蛹(さなぎ)たち』をご紹介します。人気作家と美人新人作家とその秘書という3人の女性たちが織りなす心理サスペンス。テーマとなっている「ルッキズム」について掘り下げるうち、自分の中にあるルッキズムに気がついて……。
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みもれ真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと河童です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになるおテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第35夜となりました。今日のお便りをご紹介します。
私のインスタグラム、バタ読むの方にリクエストいただきました。やあさんから。
私は普段心温まる系の小説を読むのですが、最近なぜか独独しいような小説に惹かれます。
バタやんさんが考える独独しい人間くさい一冊ありますか?といただきました。ありがとうございます。
本当は先週お伝えしていた絵本特集をやるか、韓国小説、経文学を特集しようかなと思って準備してたんですけど、
やあさんのお質問がすごく好みだったので、ぐっときたので、今日はそちらを先にご紹介したいと思います。
独独しい人間くさい小説ということで、今日の勝手に貸し出しカードは、近藤文江さんの「夜の向こうのさなぎたち」をご紹介したいと思います。
「夜の向こうのさなぎたち」の主人公は、人気女性作家のオリベ太。
美人作家として話題の新人、橋本さなぎの諸女作に衝撃を受けながらも、対談のお話を断ったりしながら、文学賞のパーティーで橋本さなぎとオリベ太が対面するんですね。
その時の橋本さん側の受け答えがソツなくてつまんなかったっていうことに幻滅するんですよ。
しかしその隣に月人のように支えている、ちょっとムッチリした体型の秘書、 初柴優という女性がいて、その人にオリベは心を惹かれていくわけです。
何度か顔を合わせるうちに、橋本さなぎの存在自体に違和感を抱くようになってという、この3人の女性の心理戦を描いたサスペンスなんですね。
大好きな心理サスペンス。誰かが殺されたりするわけじゃないやつです。
このあらすじを聞いて、本月のここのポッドキャストを聞いてくださっている皆さんは、美人作家橋本さなぎ…さなぎ…なぎさ…すぐわかんなくなっちゃう。
橋本さんは本当は描いてなくて、ちょっとこの太めの秘書の初柴の方が描いてて、ゴーストライターなんじゃないのって思ったでしょ?思うよね。
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主人公のオリベ太もすぐそう疑うんだけど、いろいろだんだんとその疑惑が核心に変わっていくわけですね。
本当はゴーストなんじゃないかっていうこのサスペンスの軸と、もう一つこの小説には軸があって、主人公のオリベ太は同性愛者、レズビアンで女性をそういう対象として死な定めしているっていう視点が一個入ってくるんですよ。
恋愛の趣向性として美人の橋本さんよりも、ちょっと暗くてむっちりした初柴の方が好みのタイプらしくって、最初からオリベは結構初柴に対してアプローチを仕掛けていくんですね。
で、興味深いのオリベ自身もかなりの美人の部類に属する人らしくって、そういう自分でも自覚している描写が何度も出てくるんですよ。
顔がいいことを自覚しつつも、それを評価軸にされるのを極端に嫌がっているというように、この小説のもう一つのテーマはルッキズムだと思います。
ルッキズムっていうのは、人用詩の美衆によって評価して差別的な扱いをするような考え方のことですが、
冒頭担当編集、若い男性の担当編集が新人賞を受賞した橋本さんを紹介して、オリベにこんな風に言うんです。
すごい美人なんですよ。だから同じく美人小説家のオリベ先生と対談なんかどうかなと思いまして、
ぶっ殺すって書いてあって面白いんですけど、
こういうのきっとあるんだろうなぁって想像したりして、ちょっと本の話からそれるんですけど、先日西川美和監督にインタビューさせていただく機会があって、
西川監督がスタジオに入ってらした瞬間に、綺麗な人だなって思ったんですよね。でもそんなの多分何万遍も言われてるだろうし、
作品の評価と関係ないところで、用紙について言及されたりするの嫌かもと思って、もちろん言わなかったんですけど、
ここで言っちゃったけど、結構高豪しいぐらいの綺麗さがありました。女性の監督とか脚本家さん、女性作家さんも綺麗な方が本当に多くて、
著者勤英とかで見てたイメージより実際にお会いした方が美しい人だなって思うこと多いんですよ。
造形的に整っている云々というよりかは、人好きのする顔っていうか、人間的な魅力がきっと顔に映し出されているような気がしていますね。
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人は顔じゃないって言うけど、顔に出てますよね。例えば心の透明感が肌にも出るみたいな、きっと心に透明感がある人なんだろうなぁと思ったりしました。
話が反りちゃったんですけど、後半この3人の美しい魅力的な女性たちの中に感じると、独特しさというか、グロテスクさと人間味の方のお話をしたいと思います。
さて、この美人作家の橋本と秘書の初柴、こんなに若くて美人で才能もあって、でもまだきっと新人だから大した収入もないのに、なぜ秘書を雇う必要があるのか、
この野暮体というかムッチリした女を連れて歩く必要があるのかとか、あとは時々初柴の方が決定権があって若干偉そうなのが気になるとか、この2人の関係性が興味深いわけですね。
どっちが種でどっちが獣なんだっていうのが、またこの小説のキー、サスペンスのキーになっているので今日は詳しく話しませんけれども、
ざっくりした私の印象としては3人ともめんどくさい人たちだなあっていう、どの女の人とも友達になりたくないなって思ったんですけど、特に主人公のオリベはめんどくさい、美人なのは分かっていて、帯に自分の写真を使われるのは嫌だとか、
最近担当が変わったばっかりの若い男性にちょっと意地悪するところもあったりして、私なら担当したくないなって思っちゃったけど、でもまぁだんだんそういうところが魅力なのかなぁと思ったりしました。
聞き分けよく、はいはい、美人作家対談で出ます出ますみたいな人には人間味のある小説は書けないのかもしれないですし。
この本は冒頭、サナギがタイトルにもなっていますけど、蝶々の幼虫の話から始まって、桃をあげるシーンが出てくるんですけど、桃をあげるとかね、初対面の会食でグルジア料理を食べるんですけど、グルジア料理を食べるとか、スイカミルクっていうドリンクを飲むとか、
なんとなくその辺がちょっと性的な感じがするというか、モチーフがややグロテスクなものが出てきたりして、そこが女の欲望のグロテスクさを表現しているところなのかなって思ったりしました。
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同時にグロテスクでありながらも純粋さ、純愛も感じるんですよね。
深爪さんって、深爪さんっていらっしゃいますよね。ご自身の有料のサロンでピュアで邪悪ってあることを表現してたんですけど、
まあ有料サロンだからあんま喋っちゃいけないから言いませんけど、月額500円だったかな。よかったらそのサロンも見てみてください。
そう、そのピュアで邪悪って言ってたのの逆だなって思ったんですよ。このオリベさんは。
グロテスクで健全みたいな。 今日はこの夜の向こうのさなぎたちから紙フレーズをご紹介します。
もちろん用紙によって得をしていると言われれば、そういうこともあると答えるしかない。 だが用紙は自分では監禁できない価値のようなものだ。
それをコントロールできて搾取されない立場の人には大きなメリットがある。 だが立場が弱くなると搾取しようとする人たちが群がってくるのだ。
はいこちら本からご紹介したんですけど、また関係ない話に飛ぶんですが、ラブタイツキャンペーンが炎上したっていう問題があったじゃないですか。
タイツの魅力を伝えるはずの広告が、黒タイツ、透ける黒タイツのちょっとエロ目線みたいな漫画を拡散してしまうというね。
その時に女の人も女の人を性的に見ることがあるっていう話が出てて、
何を今更言ってるんだろうって思ったんですよ私は。 同性愛とかレズビアン的な意味でなくても、女の人の多くは綺麗な女の人や可愛い女の子を見るのが好きだし、
美しい体を見るのも好きだし、だから女性誌が成立するんだろうと思っています。 服とかコスメとかを見たいだけだったらカタログみたいなものだけ撮ってればいいわけで。
モデルが好きだから、表紙の写真が綺麗だったからっていうことで雑誌を買ったり、所有したいと思ったりすることは多々にしてあることで、
女優が好きだから、この女優さんが好きだからこの映画を見る、ドラマを見るっていう女性が多いから、そういう産業が成り立っていると思うんですよね。
でも読者が見る側が性的に見てるから、性的なビジュアル、スカートを託し上げるとかを提供していいかというと、それは違うかなと思っていて、
ノンノがノンノモデルにスカートを託し上げさせたりはしないわけですよね。 この本にあった美しさは自分が監禁できないっていうのはすごい素敵だなぁと思って、
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自分がコントロールして監禁できるならばいいけれども、他人の欲望のために他人が監禁しちゃいけないのよね、と思ったのでした。
やあさんのリクエストからちょっと話がいろいろ逸れてしまいましたけれども大丈夫でしたでしょうか。
ミモレではもう一冊ご紹介していますのでよかったら見てください。 今夜も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
さて、そろそろお時間になってしまいました。 真夜中の読書会おしゃべりな図書室はこんな感じで、皆さんからのお便りを基にしながら、いろいろなテーマでお話ししたり、本を紹介したりしています。
ミモレのサイトからお便り募集しているので、ぜひご投稿ください。 また来週水曜日の夜にお会いしましょう。おやすみなさい。おやすみ。
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