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みもれ 真夜中の読書会 おしゃべりな図書室へようこそ
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと川端です。おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになるおテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本やマンガ、紙フレーズをご紹介します。
さて、第77夜を迎えました。みなさんいかがお過ごしですか。
先日、津村キッコさん原作の君は永遠にそいつらより若いの映画を見に行ってきました。
期待以上に主演の2人が良くて、とても面白かったです。
あまり大きいところでやってないんですけど、もしみなさんのお家でやっていたら、津村さんお好きな方はぜひ見ていただけたらと思いました。
さて、今夜のお便りをご紹介します。今夜はペンネームココQさんからいただきましたインスタグラムバタヨムの方にいただいたメッセージです。
バタやんさんこんにちは。いつも通勤中に聞いています。家では子供の世話でてんてこまえの毎日で、通勤の車でこのポトキャストを聞くのが楽しみな一人時間でもあります。ありがとうございます。
実は昨日夫と夫婦喧嘩をしてしまいました。謝らなければと思いつつ、私は悪くないという気持ちもあり、解決しないまま重い気持ちで数日過ごしています。
夫婦関係を見つめ直したり、前向きに捉えられるような小説はありますか。ぜひ教えてください。といただきました。
ありがとうございます。実はこれも少し前に結構前にいただいていたので、その重い気持ちのまま今もいらっしゃるとは思いませんが、そうですね的外れだったらあれですけど、まあでも今は今でラブラブだったらそれはそれで良いことですね。
今日の勝手に貸し出しカードは、奥田あき子さんのファミリーレスという本にしました。ファミリーレスってファミレスじゃないですよ。ファミリーレスの反対はなんだろう、ファミリーフルかな。
満たされた家族ではないと感じている6人の人たちの物語、短編集ですね。一つ一つ独立して完結しているんですけれども、少しずつ連動しているところがあるので、そのあたりも楽しんでもらえたらと思います。
この中から2番目の作品、「指と筆が結ぶもの」という短編を今日はご紹介したいと思います。こちらが夫婦の話になっています。
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指と筆が結ぶものという作品の主人公は鉄平という売れない画家の男性で、売れない画家といっても売れようとしているんだけど才能がなくて書いてがつかないとかってことじゃなくて、売れるっていうこと自体はあまり良しとしていないというか、
売れるための作品を書いたり、発注を受けてそれに合わせて書くみたいなことが、あまり画家として良いと思っていないっていう、めんどくさそうでしょ。
古典とかに出たりもするんだけどあまり社交もしないっていう収入のほとんどない彼が主人公で、精神的にも支えであり経済的にも支えているのは真由子さんという奥さんの方なんですよ。
そんな解消のない旦那と結婚したっていうことを奥さんの方の実家はあまりよく思っていなくて、結婚式で再会しなきゃいけないんですけどちょいちょい嫌味言われたり意地悪されたり、味噌汁の具が一個も入ってないとかいう小さい意地悪されたり、大事にされてない鉄平さんなんですね。
この小説のすごく面白いところは、そうやって支えている献身的な妻、真由子なんですけど、この人がすごくいい人かっていうか献身的で、陰で支える女性っていう感じじゃないんですよ。ちょっと変わっていると言いますか、すごくプリプリいろんなことに起こっていて、その起こり方が面白くて読んじゃうんですけど。
旦那さんが勝手にお菓子を開けて食べちゃったっていうところで、もうどうして私のお菓子を勝手に開けるの。食べたいんだったらせめて先に一言かけてよ。それがマナーだよ。礼儀だよ。
無断で人のものを開けるなんて推理小説で犯人をバラすようなものじゃない。
ああがっかり本当にがっかり。飛行機がついても私立ち上がれないかもしれない。
そこまで言わなくてもっていうぐらいずっと怒っているんですよ。
他の数日前に同僚とランチに行った時にタバコを吸っていいかって言って、吸い始めた人がいたっていうことも許せないと言って、
そんなの私が相手の食事中に気持ちを落ち着かせるために変な匂いのアロマ炊きますっていうのと同じだと思うんだけど、とか言ったりするの。
ちょっと可愛らしいというか、怒っているところが面白くてわざと怒らせたりするんですけど。
最初のエピソードにペットボトルのミネラルウォーターを買ったら人気のキャラクターグッズのおまけがついていて、
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それを真由子さんは外してバッグの内ポケットに丁寧にしまったっていうシーンから始まるんです。
ただその人気のキャラクターであるには違いないんだけど、真由子さんはそのアニメ自体を別に見ててファンっていうわけじゃないっていう話なんですけど、
なんだろう、今だったら鬼滅の刃とかかな、世の中的にめっちゃ流行っているものがペットボトルのキーホルダーについてて、
だけど自分は別にそのアニメを見てないっていう時にどうするかなって思ったら、私なら捨てるかなって思うんですけど、
大事に真由子さんは取っておくわけ。
捨てたら知らないやつなんだろうって言って、捨てればいいじゃんって言われるんだけど、しっかりとしまうっていう人なんですよ。
別にすごく欲しかったわけじゃないけど、買ったらたまたまついてきちゃったキーホルダーっていうのが、後々大事なキーになってくるので、
何でもないシーンのようなんですけど、大事なシーンなんですよ。
そのあたりが本当にうまいなと思うので、ぜひ楽しんでいただけたらと思います。
今日はこのファミリーレスから指と筆が結ぶものの中から、神フレーズをご紹介したいと思います。
それにね、昔おばあちゃんに言われたことがあるんだ。
家族になるなら自分の長所を気に入ってくれる人じゃなくて、短所を許してくれる人を選びなさいって。
という一文があって、いいなって思ったんですけど、この本の後書きにもこの箇所が引用されてて、被るのちょっと恥ずかしいなと思ったんだけど、ここを選んでしまいました。
山内真理子さんに前にインタビューをさせていただいたときに、男の人の褒め言葉は女の子の呪いだよっていう話をされていて、
それはつまりなんとかちゃんのこういうところが好きだ、僕は好きだって言われちゃうと、
可愛いところとか優しいところとか、ご飯を作ってくれるとか、あとは安いお店に連れて行っても怒らないところとか、
イライラしたり自分を詰め寄ったりしないところとかって言われれば言われるほど、それが女の子にとっては呪いになってしまうっていう。
そうじゃなきゃいけない、そうじゃなきゃ愛されないっていう風になっちゃうんじゃないかっていう話をされてたんですよ、山内真理子さんが。
なるほど確かにと思って、この長所を気に入ってくれる人って長所のままずっといられるかどうかわからないから、
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そこだけを愛情のポイントにされてしまうと、自分が後々つらくなっちゃうことがあるかもしれないですよね。
そういう結婚前の若い女の子たちだけじゃなくて、もしかしたら男の人もそういうとこあるのかなと思ったりして、
会社があるとか、いい企業に勤めてるっていうことが愛の拠り所だったとしたら、
うつ病になりそうなほど今の仕事がしんどくて、会社辞めたいとか部署移動したいって言えなくなっちゃうかもしれないですね。
そういうとこあるかもしれないなって思ったりしました。
この人から見たら、他人から見たら短所だけど、ちょっと面白い人だなっていうか、
全くもうって思いながらも可愛らしいなって思っちゃうようなところが、
個々旧さんの旦那さんにもあるでしょうか。
なんかそういうところを愛しく思えるといいのかもしれないですね。
この短編集は6つ入っていると言ったんですけど、
もう一つ、さよならエバーグリーンという作品も私はすごい好きで、
中学生の男の子の淡い恋心と、
お家に地方上のおばあちゃんが急に来るってなって、
それに戸惑いながらも少し彼が成長していくっていうようなお話です。
すごい好きなお話なのに、読むとあれこれ読んだかなと思いながら読んで、
読んだ読んだって3回ぐらい読んじゃいました。
ぜひ楽しみにしていただけたらと思います。
今日はリクエストありがとうございました。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室は皆様からのお便りをもとに、
いろいろなテーマでお話したり、本を紹介したりしております。
みもれのサイトからお便り募集していますので、ぜひご投稿ください。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。