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みもれ真夜中の読書会 おしゃべりな図書室へようこそ
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと川端です。おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになるおテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、めでたく今回で第30回を迎えました。パチパチありがとうございます。
今夜のお便りご紹介します。青森県にお住まいのコリコさんからいただきました。
長く恋をお休みしていた40代が、久しぶりに恋したいなーってピュアに思える本が知りたいです。
デートとか、相手への連絡とか、今更ながらどうしたらよいのか、といった等身大のお話があったら嬉しいです。といただきました。
恋愛はありがたいことに行動力のおかげでたくさんあるのですが、恋をする勇気が欲しくて、とのこと、羨ましい、素晴らしい。
そんなコリコさんに今日おすすめするのは、山本文夫さんの新刊、自転しながら好転するにしました。
山本文夫さんというと、私の印象は終焉者コバルト文庫が始まりなんですけど、その後大人の小説もたくさん書いていらして、
ブルーもしくはブルーとか、恋愛中毒とか、ドラマにもなってますけれども、夫婦関係とか男女の会話のリアルさがすごいなと思っていました。
プラナリアで直木賞を受賞されたわけですが、そこからしばらく経って鬱病でお休みされてたんですね。
私は最近インタビュー記事でそれを知ったんですけど、今日ご紹介する自転しながら好転するが7年ぶりの新刊長編ということで、どんなお話かご紹介していきますね。
アパレルの契約社員としてアウトレットで働く32歳独身の世野美亜子さんが、主人公の小説で、
回転寿司屋でアルバイトをしている寛一君という彼と結婚を迷いながら、重い後年期生涯に悩まされるお母さんの面倒を見たり、ショップ内ではセクハラとか販売員の sns 問題とかが勃発してっていうようなお話ですね。
この小説がすごいのは、すごいと思ったのはベトナムでね、ベトナム人の彼と結婚式をあげる、そのウェディングドレスに着替えたメイクルームにいるっていうシーンから始まるんですよ。
つまりそのあらすじにある回転寿司屋の彼とは結婚してないっていうね、結末から始まるんですよ。
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結婚的霊気というか、結婚かこのまま独身化で揺れる年代の女性が主人公で、そこをリアルに等身大に描くと言っているのに、結末から始まるってすごくないですか。
そこがドラマ的というかストーリーテラーとしてすごいなぁと思ったんですよね。
前回謎解きはミステリーで、犯人とトリックは先に読者に分かってて、途中の家庭のハラハラを楽しむのはサスペンスのジャンルだっていう話をしたかと思うんですけど、
これはだから先に結論が分かって途中のハラハラを楽しむから、サスペンス型恋愛小説というか生き方小説かなぁと思いました。
それで冒頭の結婚式のシーンから遡って、回転寿司屋のバイトの寛一君と最初の最悪な出会いがあって、付き合うようになって、連絡取ったりデートの約束したり、家を行ったり来たりするような関係になってという途中の家庭はまさに恋愛関係を探り探り進んでいく感じがドキドキするというか、懐かしいなぁ、いいねいいねって感じなんですけど、
この小説が恋愛小説、結婚がメインの小説とは言い切れず生き方小説かなって思ったのは、
宮子さんは2年前まで東京のアパレルの正社員として働いてたんだけど、重い抗年期障害の母の看病のために茨城県の実家に戻ってアウトレットに移り、契約社員になってるんですね。
久保美澄さんがこの本の書評を書いていらして、32歳の非正規社員という設定がまず絶妙だというふうに書かれてたんですけど、
本当にやっぱり好きな彼と一緒にいたいだけでは突っ走れない、回転寿司のバイト代で大丈夫なのかとか、子供の可能性は年齢的にもそうだし金銭的にも、
お母さんは大丈夫かなとか、正規社員にもし自分がなったとしたら店長になったり移動もあったりで、子供ができたから辞めますっていうわけにいかないかなとか、
彼が本当に好きかどうかっていうこと以上にいろいろ考えることがあるわけですよね。
さらに追い討ちをかけるように事件が起こるんですけど、その話は後半にお話ししたいと思います。
主人公の宮子の働いているショップのスタッフがどうもSNSでお店の人の悪口を言ってるらしいと、それを誰から注意するよってなったり、結局宮子から注意するんですけど注意したら辞めてしまうんですよ。
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さらにその地域MDの男性がひどいセクハラ野郎だったりして、この辺はアパレル業界のあるあるというか、あることなのかなといろんなことが思い浮かんじゃいましたけど、
この小説は何というかレンドラみたいに1話、何十分かに1回にクライマックスシーンがやってくる感じで、そのうちの一つがカンイチが両親と会う家に来るシーンだったりとか、
もう一つ前半のクライマックスシーン、私的な最高視聴率シーンは、SNSに悪口を書いてやめちゃったその女の子アンナちゃんっていう子なんですけど、
と宮子が退治する。偶然会っちゃうシーンがあるんですよ。宮子さんはそのアンナちゃんって女の子に、うちのブランドが好きで入ったんじゃないの?と詰め寄るんですけど、
この程度のファッションなんて日用品で消耗品だと彼女は言い切るんですね。 スタバとかドトールのコーヒーとかおしゃれなノートと同じで消耗品だが叩き打ってやるって、叩き打ってるからアウトレットで働いてるのは嫌いじゃないって
単価を切られてしまって、アパレルだからって特別感とかプライドを持つのはおかしいとのたまうわけです。
ひどいと思うし、かわいそうなんですけど、宮子さんの方が。でも確かにそうかもと思わされるところもあって、
そうやって宮子さんはいつも誰かにバーって言われると揺れるんですよね。 アンナちゃんと会った時は宮子さんの方が圧倒的に正しかったはずなのに、
私だってモリガールみたいな格好がもともとは好きで好きな服を買ってた時はあんなに楽しかったのになとか思ったりするわけです。
カイチ君のことも同世代の友達にも両親にも評判があんまり良くなくて、そんな将来のことはぼんやりとしたしか考えられない男やめときなよってみんなが言うわけです。
みんなが言うからまた宮子さんは心が揺れて、彼からもらった高価なプレゼントを、
なんで後先考えずにこんな高いものを買うんだって怒っちゃったりしてね、そんなシーンから今日は神フレーズをご紹介したいと思います。
自分の人生を思い通りにするためにパートナーをものみたいに条件で選んでるじゃないですか。
例えばカーテンを買うみたいにこれは安いけどペラペラで、あれは社交性があるけど高くて一番コスパはいいのはどれかしらって。
これは宮子の友達が友達に言った言葉なんですけど、その前に宮子に対してこの友達がオシャレな人って強領な面があると思いますってビシャッと言うんですよね。
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強領って度量が狭いと書いて強領です。厳しいお言葉。泣ける。
そしたら友達2人の方がいい争いになっちゃってっていう展開なんですけど、
コウロになってしまった2人を前に、宮子さんははっきりしなくてごめんねって私本当にどうしたらいいかわかんないってなっちゃうの。
そうだよね、わかるってこのシーンで思いました。
そう、今なんか他人軸から自分軸へっていうのが時代のキーワードというか、自分の軸を持って自分で選択しましょう。
周りの評価じゃなくてね。自分の本当に欲しているものを軸に選ぶのが幸せの道ですっていうことをミモレでも提唱してたりしますし、
本当そうだなって思うんですけど、思うんだけど実際自分のこととなると、いやわかんないよ私どうしたらいいかわかんないっていうこともあるし、
人から強い口調で言われたらそうかもって思うし、やっぱこの人やめとこうかなとかこの仕事やめとこうかなとか、
これを選んで正しかったって確信を持てる人はそんなに多くないんじゃないかなと思ったりしましたね。
この間私も上司と面談みたいなのがあったんですけど、やりたいこととか行きたい部署とかないって聞かれて、
ないです、ないの?みたいな。でも私もそんなに軸っていうかないですね。置かれた場所で全力で裂きますじゃダメなんですか?と思って、
置かれた場所で裂いて、裂けたらいいとは思いますけれども、ちょっと話が揃えちゃったけど、
恋をする勇気が欲しいと言ったコリコさんに、なんでこの本を紹介したかったかというと、
これから恋を始めるのって最高じゃないですか。でもベストチョイスなんてないんじゃないかなと思っていて、
この年齢になるとやっぱ条件とかも考えちゃうし、この人でいいのかな?みたいなのとか、つい先に、
根踏みって言うとあれですけど、考えながら距離を詰められなかったり、一歩、勇気が出なかったりすることもあるかもしれないけど、
たまには流されてしまってもいいんじゃないかなという気持ちになれる本でした。
結末は、私は結構泣けたので、ぜひよかったら読んでみてください。
今日はちょっと長くなってしまいましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりなと出出はこんな感じで、皆さんからのお便りをもとにしながら、いろいろなテーマでお話ししたり、本を紹介したりしています。
ミモレのサイトからお便り募集しているので、ぜひご投稿ください。
また来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。