子供を願う夫婦とたにしの子の誕生
【読み聞かせ】たにしの出世。 昔々、ある村に、とても貧しい夫婦が住んでいました。
二人は子供がおらず、いつも水神様にお参りしては、「どんな子でもいい。カエルの子でも、たにしの子でもいいから、子供を授けてください。」と一生懸命にお祈りしていました。
すると不思議なことに、赤ん坊が生まれました。 しかし、それはおぎゃーっと鳴く赤ん坊ではなく、石ころのように丸くて小さな、たにしの子でした。
夫婦は、「水神様の授かりものだ。」と大切に育てました。 10年たっても、たにしの子は大きくなりませんでした。
たにしの子の知恵と長者の娘との出会い
ある日、父親が地主の長者の屋敷へ米だわらを運んでいると、たにしの子が、「お父さん、僕が馬をひいていくから、お米をたわらの上に乗せてよ。」と人間の言葉で話し出したのです。
驚きながらも、言われた通りにすると、たにしの子は馬の上から、「はい、しーしー。」と上手に馬に指示を出し、綺麗な声で孫歌まで歌いながら、見事に長者の屋敷まで米を届けました。
これを見た人たちは、「なんて賢いたにしなんだろう。」と驚きました。
何事もてきぱきとこなす不思議なたにしの子に、感心した長者は、「このたにしを気に入った。娘の無子にしたい。」と持ちかけました。
たにしの子が両親に相談して許可をもらうと、長者は二人の娘を呼び出し、たにしと結婚するように言いました。
姉の娘は、「汚い虫なんて嫌よ。」と怒って出て行きましたが、妹の娘は、「お父様との約束ですから。」と素直に従い、たにしの子は長者の無子になることになりました。
長者の娘はたにしの娘をとても大切にしました。
水神様での出来事と若者の復活
ある日、二人は娘の実家へ行くことになり、娘はたにしの娘を帯の間に挟んで出かけました。
途中の水神様の親しろの前で、娘が、「少し休みたい。」と言ったので、娘は近くの鳥居の上に娘を乗せてお参りに行きました。
お参りを終えて戻ってみると、そこにいるはずの無子がいません。
娘は慌てて探し回りましたが、田んぼの中には数え切れないほどのたにしがいて、どれが自分の無子なのか分かりません。
娘は泥だらけになりながら、日が暮れるまで泣きながら探し続けました。
「つぶよ、どこへ行ったの?」と悲しみに暮れていると、どこからか光り輝くような美しい若者が現れました。
実はこの無子は水神様の申し子でありながら、ある理由で十年もの間たにしの殻に閉じ込められていたのです。
しかし娘が親城の前で心から祈り献身的に探してくれたことで、封印が解け元の姿に戻ることができたのでした。
人間としての姿を取り戻した若者と娘は水神様にお礼参りをして、その後は二人で末永く幸せに暮らしました。
たにし長者としての幸せな暮らし
他西から見事に出世した若者は、後に他西長者と呼ばれ、いつまでも栄えたということです。
おしまい。