00:00
【読み聞かせ】ぶんぶくちゃがま| 昔々、神戸の国の建林にある、「もりんじ」というお寺に、茶の湯をこよなく愛する和尚さんが住んでいました。和尚さんは、珍しい茶道具を集めるのが日々の楽しみでした。
ある日、町へ出かけた和尚さんは、道具屋で気に入った形の茶窯を見つけ、早速購入して、自室に飾りました。
これは素晴らしい茶窯だ!と来る人ごとに自慢していました。
ある晩のこと、和尚さんがお居間でうとうとしていると、小僧さんたちが障子の隙間から様子を覗いていました。
すると、なんと茶窯がむくむくと動き出したのです。茶窯から頭と太い尻尾、そして4本の足が生え、部屋の中をのそのぞと歩き始めました。
小僧さんたちは驚いて、「大変です!茶窯が化けました!」と和尚さんを叩き起こしました。
和尚さんが目を覚ましてみると、茶窯はすっかり元の姿に戻って座っていました。
バカなことを言うな!と叱られた小僧さんたちは、悔しがりながらもその場を去りました。
翌日、和尚さんは、「眺めてばかりではつまらない!」と思い、その茶窯でお湯を沸かそうと水を入れました。
すると、小さな茶窯なのに手桶いっぱいの水を一気に飲み干したのです。不審に思いつつも和尚さんはそのままいろりにかけました。
しかし、お尻が温まると茶窯は、「熱い!」と叫んで、いどりから飛び出し、再び狸の姿になって部屋を歩き回りました。
小僧さんはあまりのことに腰を抜かして驚き、すぐさま古道具屋を呼んで、その茶窯を売り払ってしまいました。
茶窯を買った古道具屋は掘り出し物を見つけたと大喜びで、その晩は枕元に飾って眠りにつきました。
すると真夜中、茶窯が狸の姿になって言いました。
古道具屋の旦那、そんなに驚かないでください。私は文服茶窯といって狸が化けた姿なんです。茶窯は自分の身の上を語りました。
03:02
野原で人間に追い回されて茶窯に化けて隠れていたところを捕まり、古道具屋へ売られ、最後にお寺の小僧さんに買われてひどい目に遭ったこと、そしてもう二度といろりで火あぶりにされるのはごめんだと訴えました。
どうか私を買ってください。その代わり見せ物で面白い芸を見せて旦那さんを大金持ちにしてあげますよ。
狸の言葉に乗り気になった古道具屋は早速町へくり出し、見せ物小屋を開きました。
さあさあ珍しい茶窯の化け物が綱渡りにうかり踊りを披露するぞ。
お?看板を見て集まった大勢の客の前で狸は両手に扇子を持って綱渡りをしました。
あまりの面白さに観客は大喝采し、見せ物は連日大盛況。
道具屋はあっという間に大金持ちになりました。しかしある日道具屋は考えました。
こんなに稼げたのだからもう欲張るのはやめよう。
これからは狸を寺へ返して大切なお寺の宝物として安楽に余生を過ごさせてあげよう。
道具屋がその思いを伝えると狸も私も疲れましたからそうしましょうと納得しました。
道具屋はいただいたお金の半分を持ってお寺を訪ね和尚さんに事情を話して茶窯を返しました。
和尚さんはそれは奇特なことだと喜んで受け取りました。
それ以来茶窯が化けて動き出すことはなくなりましたが、
もりんじの宝物として今日まで大切に伝えられているそうです。
おしまい。