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お前さんひょっとして、妖怪古伝を探しておるのか?
それならば、わしが入口まで案内してやろう。
妖怪古伝。
このポッドキャストは、毎回、この館の主人が、
勝手に作った妖怪の、誰も聞いたことのないオリジナルストーリーが聞ける番組じゃ。
だっついたぞ。この扉の向こうじゃ。気をつけてな。
雨女。雨女とは、雨を呼ぶとされる日本の妖怪。
産んだばかりの子供を、雨の日に、神隠しにあって、失った女性が、雨女となり、
泣いている子供のもとに、大きな袋を担いで現れるという説もある。
なお、雨を呼ぶ迷惑な妖怪とされることもあるが、
干ばつが続いた時に、雨を降らせてくれる。
雨を呼び、人を助ける妖怪という、神聖な雨神の一種とされることもある。
ここは、長野の山里。村人たちが、空を見上げ話し合っていた。
困ったの。ここ一月、全く雨が降らない。
米や作物もだが、その前に俺たちが、干からびて死んでしまう。
本当だの。
昔の言い伝いでは、あの山にある、竜神様の洞窟に、
子供を捧げれば、雨を降らせてくれるって話じゃ。
しかし、そんな本当かどうかわからない言い伝えのために、
大事な子供の命を差し出すわけにはいかんじゃろう。
それだとも、このまま村の者全員死ぬわけにはいかんじゃろう。
その会話を一人の子供が聞いていた。
そして、山の方を見上げると、何か決心したような顔で、
山に向かって歩き出した。
まだ十歳にも満たない子供の足には、
この険しい山道を進むことはかなり厳しく、
何度も転んだり滑り落ちたりして、
足も手も至る所をすりむいていた。
くそー、なんで俺らの体はこんなに弱いんだ。
少しでも早く竜神様の所に行きたいのに。
くそー、負けないぞ。
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ソウタは数年前の流行病で竜神を亡くし、
ソウタ自身も何とか命は取り留めたものの、
すっかり体が弱くなってしまい、
村の長老の家に住ませてもらっていた。
お日様が真上に上がった頃、
ソウタは山の中腹の洞窟にたどり着いた。
あったぞ、本当にあった。
ここがみんなが話していた竜神様の洞窟なんだ。
だったらこの中に入って、
竜神様に雨を降らせてもらうようにお願いしなくちゃ。
真っ黒な洞窟の中は怖かったが、
ソウタは歯を食いしばり、
勇気を出して中に入って行った。
しばらく真っ暗な中を進んで行くと、
前に明かりが見えた。
あれが竜神様かと、
ソウタが足を早めて進んで行くと、
そのところにいたのは、
白い着物、長い髪に、
正気のない青白い顔の女だった。
しまった、あれは村でも昔から噂になっている雨女だ。
見つかったら、おいらも食われちまう。
ソウタは雨女に見つからないように後ずさりして、
洞窟を戻ろうとした。
その時、濡れた岩に足を取られ、
ソウタは洞窟の下の方に滑り落ちてしまった。
どのくらい経っただろう。
ソウタは誰か女の人に声をかけられ、
気を取り戻した。
ソウタの頭と目には布がまかれているようだった。
よかった、気を取り戻したんだね。
私が見つけた時から目を覚まさないから、
死んじゃったのかと思ったよ。
よかった、本当によかった。
でもね、お前は頭と目のあたりを打ちつけたみたいだから、
お前は少しの間、その薬草を塗ったその布を撒いておくといいよ。
ところでどうしてお前はこんな寂しいところに一人でやってきたんだい。
こういうのは勇気とは言わないよ。
おばさん、おいらを助けてくれてありがとうございます。
実はおいらこの洞窟に住んでいる友人様に会いに来たんだ。
実はおいらの村に雨が降らなくて大変なんだ。
このままでは村のみんなが死んでしまう。
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だから、友人様にお願いに来たんだ。
おいらの命と引き換えに雨を降らせてもらうように。
なんだって!なんてバカなことを言うんだい!
お前の命と引き換えに雨を降らせるなんて。
だってしょうがないんだ。
誰かが友人様に命を捧げないと。
おいらは体も弱いから何の役にも立たないし、
死んで悲しむ両親もいないから、
おいらがそれをやらないと。
バカなことを言うんじゃないよ。
子供の命と引き換えに願いを叶える友人なんてここにはいないわよ。
お願いだから命をそんなに粗末にしないで。
昔、この村が干ばつで雨を降らせてほしいと
友人に子供を捧げるためにくじ引きをし、
選ばれたのが私のたった一人の息子だったのよ。
息子の命と引き換えに確かに雨は降ったけれど、
もう二度とあんなバカなことは私がさせない。
代わりに私が雨を降らせるわ。
お前はここで待っていなさい。
そう言うと女は洞窟から飛び出して行ったようだった。
ソータも起き上がると頭に巻いてあった布が落ちた。
目は見える。
慌ててソータも女の後を追った。
やっと出てくると、さっきの女は崖の上から天に向かって何かを唱えていた。
その女こそソータが洞窟の中で見た雨女であった。
崖の上の女が泣きながら悲鳴のように何かを唱え続けると、
どこからともなく黒い雲が湧き出してきて空を覆った。
そして女が何かを叫ぶと一斉に雨が降り出した。
その雨にあたって女はソータの見ている前で霧のように消えていった。
ソータが見た最後の雨女は笑顔のように見えた。
雨だけが降っていた。
ソータは洞窟に戻り雨が止むのを待っていた。
どれくらい経っただろうか。
洞窟の外で聞き慣れた声がした。
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村から長老をはじめ大人たちがソータを探しに来たのであった。
長老、おいらはここにいます。ここにいます。
おお、ソータ、無事じゃったか。
村のみんなも心配して大人たち全員でお前を探しに出ておるのじゃぞ。
ソータは長老や大人たちに謝り、今までの出来事をすべて話した。
そうか、雨女が自分を犠牲にして雨を降らせてくれたのか。
それであれば村のみんなが恐れていた雨女はユリだったのかもしれんの。
この村が今年のように干ばつになった時、
言い伝えの竜人様の捧げ物に選ばれたのがユリの息子じゃった。
泣いてすがるユリから子供を引き剥がし山の洞窟に連れて行ったのだ。
そしてその晩ユリも見張りの目を盗んで洞窟に息子を探しに行ったのじゃ。
しかしユリがいくら探しても息子は見つからない。
とうとうユリは帰ってこなかった。
それもそのはずじゃ。
子供を連れて行った男たちは洞窟にその子を置いて帰ろうとすると、
その子は村のみんなのためならと笑ったのじゃ。
それを見て男たちは子供を村に連れて帰り、
当時の長老に男たちみんなが自分が代わりになるから子供の命は助けてくれと訴えたのじゃ。
それを見た天皇竜人様が願いを叶えてくれたのか。
雨が降り出したということじゃ。
そしてその救われた子供こそ、
蒼太のひいひいじいさんじゃ。
きっとユリは悲しみに暮れ息子を探すうちにこの世ならざるものになってしまったのかもしれんな。
しかしユリも自分の息子の子孫の命を救えたんだ。
成仏できたことじゃろう。
こうして村は陥罰から救われた。
そして村の神社の脇にはユリに似せた女の人が子供を抱っこしている石の像が掘られ、
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長く村の人々に愛されました。
おかえり。どうじゃった?今回の妖怪話は。
もし気に入ってくれたならまたここに聞きに来ておくれ。
そしてフォローしてくれると嬉しいの。
それと妖怪古伝へのご意見ご感想はこの番組の概要欄を見ておくれ。
また新しい話は毎週土曜日の午後5時に公開されるらしいから楽しみに待っていておくれ。
そうそう、妖怪古伝の話はノートでも読めるようになっているらしいぞ。
よかったらそちらも覗いてみてくれ。
それではまた来週の黄昏時、大間が時にまた会おうぞ。