子供の集中力と誇り
入るわよ。
あ、あ、あんたまた、こんなに散らかしても、
全然片付けてないじゃないの。
なに?
漫画読んでて。
集中して?
片付けて泣いて?
も、いっつもそんなこと言うわね、あんた。
なに?
ぼっとしてんの?
一回、そうやって、こう、物語の世界に入ったら、なかなかあんた戻ってこないんだから。
すごい集中力よ、ほんとに。
あー、そうそうそう。
そういえばね、あんたね。
宿題。
あんた宿題やったの?ちゃんと。
なに?
うん。
まだやってない。
なんでまだやってないの。
漫画今ばっか読んでるじゃないの。
ん?
うん。
後でやって?
明日まで間に合わせる?
あんたいっつもそんなこと言ってギリギリになって、それでもギリギリにはちゃんとやるじゃない。
すごいわ、その計画性。
いっつもいっつもギリギリになってて、まあ後回し先に楽しいことしてて、
最後期日までにちゃんと終わらせて、もうほんとに誇りそうだわ、あたし。
なに?
あんたのそういうとこ誇りそうだって言ってんのよ。
いや、もう誇っちゃってるわ、あたし。
ねえ。
なんかもう、ずーっとずーっとね、絶対宿題してないのかなと思ったら、最後にバーンってやって。
なんならちょっと、あのー、徹夜気味にもなって、
こう、なんとかギリギリ間に合わせて、先生にてへーって言って、愛嬌まで乗っちゃって。
ただの計画性だけじゃなくて、こう、エンターテインメント性まであるのに、あんたほんとに誇らしいわ、もう。
誇っちゃいそう、お母さん。
もう誇ってるよ。
うん。
誇ってるって言ってんの。
あんたがそうやってね、物事にすぐ没頭して、でもやらなきゃいけないことはね、ギリギリになってもやって、
で、なんかちょっと面白さまで付き加えちゃって、そういうあんたはね、私の誇りだって言ってんの。
この前も町内会でも誇ってきたよ、あたし。
あんたにことね、周りのご近所さんにね、
あた、あたしの子供、そういうところがあるんですって誇ってきたんだから。
あ、でも、何の話しに来たのか忘れちゃったじゃない、今日は、違う、そんな話じゃないの。
進路についての会話
進路。
進路よ。
あんたももうそろそろさ、この先のこと考えなきゃいけない時期でしょ?
え?
いいとこ進学するの?
それとも就職しても働くの?どっちなの、あんた。
え?
何?
お笑い芸人になりたい?
夢見て一発当てたいって言うの、あんた。
何なの、それ。
面白いじゃない。
あんたがね、そうやってね、自分のやりたいことをどんどん突き詰めていく姿ね、
お母さんもほんと、誇っちゃう。
素晴らしいわ。
何?
うん、親なんだから?
うん、安定した方を選べって言わないのかって?
言うわけないじゃない、そんなの。あんたがやりたいことを応援するのが私の仕事でしょ。
ほんとに。
いつまでも自分のやりたいことやりなさい。分かったわね。