はじめに:本書の目的と現代の若者の働き方への疑問
FeelWorks代表前川孝雄の著書 勉強会に1万円払うなら上司と3回飲みなさい。
どの会社でも求められる20代の働き方は、当たり前のことを当たり前にやること。 勉強会に通い、会社と距離を置いて自己防衛に走る若者を悟し、会社員として働く意味を説く一冊です。
若者はもちろん人材育成を考える人事・管理職にもおすすめです。 今日は、はじめにを抜粋してご紹介します。
はじめに どんな会社でも通用する20代の働き方
この本は、働くということについて述べた本です。 ですが、仕事において成功するためのテクニックやノウハウみたいなものは一切載っていません。
会社組織の中で、会社員として働くとはどういうことか、ということについて、当たり前のことを当たり前に語っています。
なので、この本を読んでもすぐに年収が倍増したり、あなたの市場価値がみるみる上がったりするようなことはないでしょう。
私は先日、20代の若手社会人のカリスマとなっている、ある著名なビジネスパーソンの講演会に出かけました。
若者に、働くことの意味を説くメッセンジャーの端くれとして、外資系企業を渡り歩いた後、コンサルタントとして活躍されているその方から、私も学びたいと思ったからです。
平日の夕方6時台から始まる講演会。驚いたのは、会場前の5時過ぎにはもう長蛇の列ができていたことです。
しかも並んでいるのは20代とおぼしき若手社会人ばかり。
講演が始まると、壇上からは刺激的な言葉がどんどん飛び出しました。
「会社を信用してはいけない。」 「自分の市場価値を正しく理解しよう。」 「セルフブランドを確立させなさい。」
会場はしーんと静まり返っています。うつむいている人も多い様子。
話が響かず眠っている人も多いのかと思いきや、会場を見渡してみて私は驚きました。
皆が皆、カリスマの発言を一言一句聞き漏らすまいと、必死に耳を傾け、カリカリとメモを取っていたからです。
平日の5時過ぎに社外の勉強会に駆けつける時間があるなら、もっと他にやるべきことはあるだろう。
いたたまれない気持ちになりながら、私は会場を後にしました。
書店のビジネス書のコーナーに行けばわかりますが、勉強法やキャリアアップのための本が山積みされていて、実際多くの若手社会人に読まれ指示されてもいます。
また、今まさに述べたような勉強会も盛んで、ビジネス外のカフェでは毎日のように朝勝と呼ばれる早朝勉強会が行われていたりします。
若い人たちの間では、ビジネスパーソンという言葉も一般化しました。
この言葉には、どこか効率よくプロフェッショナルに仕事をこなす、仕事のできる人間といったニュアンスがあります。
赤提灯で毎晩飲んだくれて上司の悪口ばかり言っている、旧来型のサラリーマンとは違うんだぞといった無言の圧力も感じさせます。
まさに、勉強熱心で自身のキャリアを大事にしている今の若い人にぴったりの表現なのでしょう。
ですが、ここで改めて問いたい。本当にサラリーマンよりもビジネスパーソンの方が仕事ができるのでしょうか。
そもそも、若い人が熱心に勉強してまで追い求めているキャリアとは具体的には何を指しているのでしょうか。
また、なんでそんなにキャリアが欲しいのでしょうか。
こういった問いを若い人たちに直接ぶつけてみても、具体的な答えはなかなか返ってきません。
「自己実現するためには無駄な付き合いはやめて、勉強に時間を当てないと」 「キャリアアップできればもっと幸せになれるはず」
こういった漠然としたセリフばかりが返ってきます。
いつ会社が潰れるかわからない不安定なこの時代に、何かしていないと取り残されてしまう。
そういった不安感や焦りが若い人たちを、勉強会や自己啓発的なビジネス書、そして自己実現やスキル、キャリアなどといった曖昧な言葉に向かわせているのでしょう。
私がこの本で強く言いたいのは、自己実現やキャリアアップを考える前に、会社組織の中で会社員として働く意味を若いうちから正しく、そして具体的に理解してほしいということです。
そのために私はこの本を書きました。
繰り返すように、この本では会社で働く上での当たり前のことしか述べていません。
「遠い将来のことばかり考えないで、目の前の仕事をコツコツやりなさい。」
「社会人にとって挨拶は大切です。」
当たり前のことの重要性と上司・先輩との関係構築
「日々の仕事に一生懸命な人間が、結局は可愛がられる。」
「先輩や上司と飲みに行って腹を割って話し合いなさい。」
社会人生活の長い方が読めば、何を今さらといった感想しか持たないかもしれませんが、一方で効率重視、短期の個人成果重視の今の職場において、誰も言わなくなってきたセリフではないでしょうか。
先輩や上司の多くは、そんなこと改めて言わなくてもわかるだろうと考えています。
でも20代の若手社会人にとっては、もしかしたら一度も聞いたことのないセリフかもしれません。
言葉では言ってくれないのに、先輩や上司はあなたにそれを求めています。
この上司と部下、先輩と後輩間の意識のズレを解消することも、この本の目的です。
この本で述べることは、勉強会では語られず、自己啓発的なビジネス書にも書かれていない、働く上で一番大切なことです。
勉強会ブームの最中ですが、私はあえて言いたい。
勉強会に1万円払うなら、上司と3回飲みなさいと。
自己投資を惜しむなという風潮の下、月に1万円程度は勉強会やビジネス書にお金を費やしている人も多いでしょう。
勉強会やビジネス書自体は否定しませんが、でもちょっとした居酒屋で3000円程度自腹で払えば、
飲み食いしながら先輩や上司から働く上での大切なことが学べるのです。
先輩や上司たちとの心理的な距離も縮まるでしょう。
それが会社というものです。会社という組織で働くメリットでもあります。
それなのに、職場には尊敬できる先輩や上司はいません、などといって、
平日の夕方から勉強会に参拝したり、社外の人間との異業種交流会に精を出している若者がいる。
先輩や上司から見れば、悲しい現実だと言えるでしょう。
また、「どんな会社でも通用するスキルを身につけたい。」というセリフもよく聞かれますが、
当たり前のことを当たり前にできることこそが、どんな会社でも通用するスキルなのではないでしょうか。
少なくとも社会人のベテランはみんなそう思っています。
与えられた目の前の仕事もちゃんとできない段階から自己啓発に走る若者が多い中、
この本が提示する働き方は、あなたに多くの気づきを与えるはずです。