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2025-11-25 05:59

朗読・カモメ珈琲店とマグカップ

朝のスパイス配信メンバーで火曜日枠を使って朗読配信をはじめました。

<今日の作品>
時を超えた交換日記 OKE x AI
:AIに土台の部分を作ってもらい、それに私が手を加えたモノを朗読してます。この作品を含めた全7話をベースにしたデジタルzineを作っています。zineの詳細などはこちらからどうぞ、、、
https://note.com/okestyleszakka/n/ne09aa06ca609



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サマリー

ひなさんはカモメコーヒー店で、マスターから特別なマグカップを受け取ります。そのカップにはおばあさんの温かい言葉が込められていて、ひなさんの心を支える力となっています。

カモメコーヒー店での出会い
カモメコーヒー店とマグカップ。
路地裏にひっそりと佇むそのカフェは、
カモメコーヒー店というシャレた名前のわりに、派手さのないごく普通の店でした。
扉を開けると、古いラジオから流れるジャズの調べと、
焙煎された豆の香りがふわりとひなを包み込みます。
リモートワークで働く編集者のアシスタントとして、ひなは日々の忙しさに追われ、
自分の居場所を見つけられずにいました。
漠然とした不安を抱えながら、ここ最近はこの店に立ち寄るのが日課になっています。
いつものカウンター席に座り、マスターにブレンドをと声をかけます。
マスターは寡黙な方ですが、その手から生まれるコーヒーはいつもひなの心をじんわりと温めてくれました。
「よかったらこのカップでどうぞ。」
そう言ってマスターが差し出したのはひび割れた取っ手と、
年季の入った上薬が何とも言えないマグカップでした。
ひなが少し驚いた顔をすると、マスターは少しだけ口を開きました。
常連さんが置いていったものでしてね。
そのマグカップはこの店の常連だったおばあさんのものだそうです。
おばあさんはいつもこの席に座り、若いお客さんたちの悩みを聞いてはそっと背中を押してあげていたようです。
数年前、病に倒れてしまい、お店を訪れることが難しくなった時、
いつかこのカップを必要とする誰かに渡してあげて、
とひなが手にしているものと同じマグカップを五十個ほど置いていったそうです。
マスターの言葉を聞き、ひなは今まさに自分の手の中にあるマグカップを眺めました。
陶器から伝わる温かさがまるで誰かの手のひらみたいに感じられます。
そのかえりにマスターは、「ひとつあなたにさしあげます。」
と言ってさっきのマグカップと同じものをプレゼントしてくれました。
その日からひなはそのマグカップを自宅で使うようになりました。
朝、目覚めの一杯のコーヒーを入れるとき、仕事で疲れた夜、ほっとひと息つきたいとき、
いつもそのマグカップで飲み物を飲むようになりました。
おばあさんの言葉の力
ある日の夕方、自宅のデスクで企画のアイデアがまとまらず、ひなは深くため息をつきました。
コーヒーを飲み干し、キッチンであのマグカップを洗っていると、
外側の底に小さな文字が書かれていることに気づきます。
「大丈夫、きっとうまくいくよ。」
その文字はひなの心にすとんと落ちてきました。
まるで遠い誰かが自分に語りかけているような不思議な感覚でした。
次の日、ひなはカフェへ行き、マスターにそのことを話しました。
するとマスターはほほえみながら、「おばあさんはいつも若者たちにそう言ってあげていたんですよ。」と言いました。
おばあさんに話を聞いてもらっていた若者たちが、
いまでもときどき店を訪れて、おばあさんの話をしていくことをマスターは教えてくれました。
ある若者はおばあさんの一言でずっとあきらめていた夢を追いかける勇気をもらったそうです。
またある若者は失恋で落ち込んでいたときに、
次の恋はもっとすてきな人に出会えるよと励まされたと言います。
このマグカップはそんな会話の横にいつも置かれ、
悩み事を聞き、そしておばあさんの温かい言葉をいつも聞いていたのでしょう。
誰かの優しさや温かい心がぎゅっとつまったものなのかもしれません。
企画の締め切りが迫った夜、ひなは再びアイデアにつまっていました。
マグカップを手にとり深呼吸をします。
すると不思議と肩の力が抜け、心に余裕が生まれていくのを感じました。
大丈夫、きっとうまくいくよ。
カップの底の文字が再びひなに語りかけてくれた気がします。
ひなはその言葉に静かにうなずき、ペンを走らせ始めました。
数日後、完成した企画書を上司に提出したひなはすがすがしい気持ちで鴨目コーヒー店を訪れました。
マグカップに書かれた言葉に元気をもらい、企画を考え、無事に企画が通ったことを報告しました。
おばあさんも喜んでいるでしょうね。
マスターは優しい笑顔でそう言いました。
ひなはそのマグカップから受け取った温かさを今度は自分が誰かに伝える側になりたい、そんな静かな決意がひなの心に芽生えていました。
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