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PitPa, Inc.
秋葉原通り魔殺人事件 第5話
葛藤の20分 動機はなんとなくわかった
けど、無差別殺人の動機は何を? 自分の存在を示すために実行したんだと思います
会社をクビ 好きな人には彼氏がいる
俺にはもう何も残ってない だったら
最後の最後に負け組の意地でも見せるか
この世界は 勝ち組と負け組に分けられる
俺は間違いなく負け組だ このまま社会を変えたとしてもずっとずっと
ずっと 負け組って言われるんだろうな
チャンスはすべての人に平等に与えられるべき 生かせるか生かせないかはその人次第
俺のチャンスっていつなんだ そもそも俺にはチャンスなんてものはなかったのか
真面目に働いているのに誰も認めねー 俺はここにいるのに
どうやったらお前らは俺を認めてくれる そうか
事件でも起こせばいいのか 俺が何か事件を起こしたら
みんなまさかあいつがって言うんだろう やってみる価値はあるかもしれない
もし殺すなら銃だな 銃をぶっぱなすか
って なんで俺こんなこと考えてんだろう
人を殺すとか馬鹿らしい 人見さんから返信だ
今お付き合いしている人がいますがそれでもお友達としてで良ければ 6月8日の日曜日にどうですか
秋葉原でいつものようにゲームをしましょう 返信ありがとうです
では6月8日いつもの秋葉原の交差点で12時に待っていてください 彼氏がいても俺に会ってくれるんだ
罵倒の一つでも送りたいがそんなことできないわなぁ
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リア銃をぶっ殺して まあ日本だから銃なんか売ってないよなぁ
ナイフなら手に入るのか どこで手に入れるんだ
福井 福井まで行くと
往復2万かよ でも
ここで止まってたら負け組のまま何も変わらねーな 新幹線に乗るとテンション上がるなぁ
福井までダガーを買いに行ったとか馬鹿だよなぁ まあ
これも最後の旅行になるかもしれないから楽しかった それにしてもお店の人優しかったなぁ
タクシーの運転手さんも俺に優しかった 知らない街だと俺は優しくされるのかもしれないな
伊藤は おそらくダガーを買うまでは
本気で実行しようとは考えていなかったと思います イブさんからの話だと
決め手となったのは おそらく会社関係かと思います
自分が勤める会社の社員から 存在に扱われたのでしょう
一人でも優しくする人間がいたら バカらしいと
思い留まっていたかもしれません つまり
伊藤は誰にも認められなかったってこと おそらくです
あの書き込みをした日は きっと伊藤にとって
屈辱的だったに違いありません 今日も俺は負け組だったなぁ
なんであいつらお疲れ様って一言かけないんだろう 俺が負け組だから仕事できないから
もういいわ 俺は世間から用がないと思われてる
そんな人間を怒らせたら どんなことになるか教えてやろう
そうだ 6月8日にしよう
もしかしたらひとみさんの彼氏が秋葉にいるかもしれない
絶好のチャンスだ どうせこのまま死ぬくらいなら
世間を賑わせて 死んでやる
日曜日 秋葉原で人を殺します
06:04
トラックで突っ込んだ後はナイフで人を刺します 嘘だと思うなら日曜日に注目してみることだ
と さあ
やるしかない 明日
俺は勝ち組を倒すんだ 反抗当日ってのに雨かよ
最悪 このまま秋葉原行って雨だったらどうしよう
歩行者天国の人減るなぁ でも最悪なのは突っ込んだ後に捕まったりすることだよな
まあ とりあえずレンタカー借りに行くか
今のところ順調に進んでるな このまま行くと12時前には秋葉原に着くよね
あれ 歩行者天国って1時からだっけ
12時からだっけ まあいいか
待つか 人見さん
時間になってるのに来ないなぁ 少し遅れます
なんだよ あれだけ早く会おうとしていたのに遅刻かよ
まあ まだ人も少ないし
もう少し待つか 12時10分
遅いなぁ あっ
あれは人見さん しかも一人だ
やっぱ可愛いなぁ そうだ人見さんに最後の連絡
俺は変わったんだ 今日はそのことを人見さんに伝えたい
最後に掲示板にも書き込んで それでは時間です
ここまではわかったけど空白の20分はどう説明するの この20分は
伊藤にとって迷いのある20分でもありました よし
やってやるぞ やってやるぞ
トラックで突っ込む トラックで突っ込む
落ち着け 仕切り直しだ
次のタイミングで行くぞ 次こそはきちんとやるぞ
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俺はトラックで突っ込むんだ 負け組を代表して
どうせ俺が声を上げなきゃ 負け組は負け組のままだ
えぇっ なんでできないんだ
アクセルを踏むだけでいいんだ なんでそれができない
やめたら俺はまた度胸なしの負け組じゃないか 俺は違え
負け組で好きになったわけじゃない 俺は
勝ち組になるべき男だ でも
俺は卑怯な手を使って人を騙すことができない もしこのまま突っ込んだら
何人人生路頭に迷うのだろうか いや
そんなこと考えなくていい 相手はリア充だ
家に帰れば誰かがいて心の疲れを癒してくれる 俺にはそんな人がいない
いないんだ 俺は今日勝ち組どもをぶっ殺して証明してやるんだ
負け組にもできるってことを 俺はもう誰にも理解してもらえないんだ
次の信号が青になったタイミングで突っ込むの 俺は負け組じゃない
俺は勝ち組なんだ 死ねー
貴様は 伊藤は
自分との葛藤に勝ち 犯行を実行しました
つまり 直前まで迷ってたってこと
おそらくですが もし迷いがなかったら
躊躇なく突っ込んでいたはずです 最後の20分は
言ってみるは両親との葛藤です
でも孤独の辛さが怒りになり 抑えられなかったと思います
無差別殺人を止める方法って何か知ってますか 声をかけることです
殺人犯に誰かが声をかければ それだけで状況が変わるんです
つまり伊藤に誰かが声をかけたら 変わっていたの
そういうことです 人を殺すことは許されないことだけど
最悪のタイミングだったよね もし
誰かが近くにいたら バカなことは
止められたかもしれません でもなんであんたは伊藤の人間性がこうだと言い切れるの
掲示板ですよ 掲示板には伊藤の人間性が映し出されています
12:02
そこには 勝ち組への強い嫉妬と
自分を変えたいという葛藤がありました おそらく
いい人を演じていたけど 報われなかったのでしょう
かといって 相談する相手もいない
だから反抗に走ったんです 斉藤
仮説でもいい 掲示板の記録とイブさんの証言を照らし合わせた記事を作って
誰でも伊藤になってしまうってことを強調するんだよ はい
私はこの後 伊藤の目線に立った記事を書いた
もちろん 伊藤のやったことは正当化されない
今でも事件の傷が癒えず 秋葉原に行けない人もいる
でも 大切なことは
伊藤のような男は 私たちの社会が気づかないうちに
作り上げてしまうかもしれないということだ
