妊娠の喜びと不安
いつか父さんみたいにてんぱりしきれやろう
いつか母さんみたいにおしゃべりこんさるおう
妻の妊娠が分かってから2ヶ月、ようやく安定期に入った。
もう半年後ぐらいには、俺もパパになるんだな。
嬉しい反面、ちょっと不安なこともある。
でも不安なことは、俺ばっかりじゃない。
妻だって不安なこともたくさんあると思う。
おい、たかし君、あの件どうなった?
すいません、今日の10時までに回答いただけるように言ってますんで、大丈夫です。
おい、もしもし、材料足りない?
何が?あ、LT3個?
いや、ちょっと待ってね、たぶん頼んでたと思うんだけど。
うん、頼んでるね。ちょっとうん、確認してみます。
もしもし、たかしです。すいません。
うんと、LT3個足りないって現場から電話かかってきたんですけど、積みました?
はい。あ、電表に書いてあるし、持ってってる。
あ、じゃあ現場にあるのかな。すいません、もう一回現場に確認します。
あ、もしもし、たかしです。
あの、あ、LTありました?
あ、よかったですよ、よかったです。じゃあちょっと進めておいてください。はい、すいません。
あるのにねえとか言うんじゃねえか、このバカが本当に。
みたいな感じで日々、僕は仕事に追われている。
年齢は30中は、そろそろ仕事としても自分で大きい現場を持って稼ぐということが会社からも求められている気がする。
そんな中、子供を妊娠してパパになる。
すごく緊張するし、何よりも仕事が不安なんだよね。
そして、妻との話し合いを重ねた結果、ある決断をした。
はーい。すいません、失礼します。
ああ、お疲れ、お疲れ。どうしたの、どうしたの、たかつく。
ちょっと座ってて、座ってて。ちょっと今、あの、台風の今、海洋欄、あ、じゃなくて。
今、メール送ろうとしてるから、ちょっと待ってて。うん。
ああ、お前だってたかつく。
どうしたの、この急に時間。
で、なんか話したいこと、悩みとかあんの。
ねえ、最近ちょっと忙しそうだから、ちょっとそんな悩みかも。
この男は、昆野部長。
昆野というのは、お金の金に野原なので、昆野と書く。
だからみんな、キムちゃん、キムちゃんと影では呼んでいる。
人によっては、髪型が黒電話みたいだから、黒電話と呼ぶ人もいる。
だが、この男は、すごい出来る調子だった。
各部署に爆弾を落としては、自分のポジションを勝ち取ってきた男だ。
この男は、敵に回したら、正直俺も辛いかもしれない。
部長、ちょっとお話がありまして。
なんで、ちょっとリラックスして話しておいて、そういうの願ってたか。
ああ、えっと、あの、妻がですね、ちょっと妊娠しまして。
おお、おめでとう、たかつくん。
えっと、1人目かな。
ああ、そうです、1人目ですね。
ああ、よかったね。
でも、奥さんね、大変だね。
でも、これからね、仕事も大変だからね。
パパになってね、稼いだ稼いだお金をね、家につぎ込んでやってね。
部長、すみません。その点でお話がありまして。
何?
ちょっと、あの、育児休業を取らせてください。
え?たかつくん、産むの?
え?え?え?異国?え?産むの?
いいえ、部長、あの、育児休業なので、あの、産んだ後のお世話のために、ちょっとお休みを取りたかったんですよね。
ああ、あ、そっつ。
ああ、てっきり、あ、あ、そっつか。
ああ、ごめんごめんごめん。
なんかもう、時代のね、技術のつんぽんによって、もう、男の人が産める世の中になるのかと思ってた。
ああ、びっくりした。
休むの?
え?
ああ、はい。期間としては、1年ぐらい。
え?え?2年?え?え?ちょっと、ちょっと待って、待って、待って、待って、待って。
そんなにするの?
はい、あの、ちょっと妻ともお話をしまして、やはり我々夫婦は、実家が遠方にありますので、
僕がやはり家にいないと、つまり一人で子育てをすることになりまして、やはりあの、そっか、我々にとってネックになっているところでありまして、育休を1年間、不足させていただきたいです。
ああ、ついにうちのカイツアネも来たね、こういう波がね。
仕事と家庭の両立
うん、ファーストウェーブだね。
ファーストウェーブ、機械はいいけどね、
え?タカツ君1年いないの?寂しいな。寂しいよ。
あの、ちっちゃい親あげるからちょっとだけ、ちょっと、なんとかならないのかな。
今うち人でいないじゃん。
ね、1年か。
次亡くなっちゃうかもよ。
で、実はね、あの、手内でね、今度はタカツ君で担当としてもらうドッキリになってた。
それうまくやったら、勝負だねなんてね、あの、タカツ君のいないところでね、こう、盛り上がってたんだけどね。
うーん、やったらね、なんとかならないの。
俺、奥さんくどけないの。
いや、ちょっとそれは、すいません、やめてよって言われた。
そっか、一妻だもんね。
俺、そういうのしたことないからさ、ちゃんとわかんないんだけどさ。
いや、でもちょっと海田のことも、もうちょっと考えてもらいたいね。
1年は長いよ。
だって、1年経ったら、1個土地取るんだよ。
300足すぐに1年。
ちょっと、俺、めっちゃ動揺してるわ。
そもそもタカツ君が代わりに産むかと思って、まずびっくりしたって思ってた。
あの、じゃあちょっと、なんとかならないの。1年はちょっと長いよ。
だって、タカツ君ってね、だって、1000万円、1000万円、普通に稼ぐでしょ。
それなくなるの、ちょっとつらいな。
俺も寂しいな。
寂しいとか言ってる割には、僕に喋ったことはない。
いや、部長、ちょっとすいません。やっぱり家庭が第一なので。
会社のありきの自分っていうのは、すごくわかっているんで、
僕としても心苦しいお願いではありますが、
やはりこう、父親の代わりはいないので、そこはぜひ認めてほしいなと思ってます。
ああ、じゃあちょっと、
ああ、でも増税にちょっと予定めるね。
うん。
1年?1年。いつぐらい?いつぐらい?半年後から1年。
うん。
ああ、やばいじゃん。ちょうどあの物件が始まる頃じゃん。
ああ、やっぱりやっぱり。これやばいね。
ああ、どっちよ。
誰か雇おうかな。どっちよかな。
まあ、しょうがないけど。
ええの?給料とか減るけど大丈夫なの?
え、てか給料って減るの?
どっかから、会社が働いてないのに買ってたお金くれんの?
そこは多分、総務の方に聞いてもらえればわかるかなと思うので、
そこら辺の心配はないと思います。
ああ、ちょっと松がいいよって言えないけど、
でも多分いいよって言わないとダメだよね、これ。
これみんな聞いてんだもんね、これね。
このボイスドラマみんな聞いてんだもんね。
ああ、いいカッコついたいんだけどね。
ああ、どっちよ。
社長にもいいカッコついたいし、これ聞いてるみんなにもいいカッコついたいってどっちよかな。
ああ、欲望なんてね。
あれ誰のチャンネルだっけ?
なんか伝え筆みたいな。
そうやっていいよと心よく言ってもらえないまま、
その日の面談は終わった。
お家に帰ったら何て喋ろうかな。
会社には伝えたけどすごくいい顔はしなかったよ。
妻はどういう反応をするだろうか。
実は育休を取るのにあたって結構喧嘩したんだよね。
僕は仕事も大事だし、でも家族のことも第一優先として考えたい。
この両立って無理なのかな。
今日の夜は妻とまたお喋りすることに決めた。