2024-03-15 22:32

#11 天才的なひらめき不要!『THINK BIGGER』で誰でもイノベーターに

スモールビジネスやその周辺のカルチャーついての情報をシェアしていくポッドキャストです。 今回は #ジャムの法則 で一躍脚光を浴びたコロンビア大学教授シーナ・アイエンガーの新刊『THINK BIGGER』についてご紹介しています。

前作『選択の科学』から13年ぶりの新著。

天才とされる多くのイノベーターが脳内で繰り返していた思考のプロセスを、システマチックになぞれる『THINK BIGGER』という手法が解説されています。

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サマリー

『THINK BIGGER』という書籍がお勧めされており、シーナ・アイエンガーさんが提案する6つのステップによるイノベーション手法や具体的な事例が紹介されています。偉人やイノベーターの思考プロセスをシステマチックになぞり、可視化させることに、THINK BIGGERという手法の魅力が感じられます。

ステップ1-3: 課題の選択と分析、望みの比較
このポッドキャストでは、スモールビジネスやその周辺のカルチャーについての話題をお届けしていきます。
再生ありがとうございます。
ウェブディレクションと音源制作を手がける、シララ株式会社の伊東宏之です。
前回、シャープ10で失敗の科学という書籍をご紹介したんですけれども、
この本を読んでみようと思ったとか、良いフィードバックをですね、ほんのちょっとだけなんですけどもいただいたので、
調子に乗って、今回も書籍の紹介の回にしたいと思います。
今回テーマにした本なんですけれども、僕にとっては結構読むのが大変で時間がかかってしまって、今回のシャープ11の配信もちょっと遅めになるぐらい、読み応えのある本でした。
本題に入る前に、このポッドキャストをお聞きの皆様は、人間の行動に関する研究実験で
ジャムの法則、あるいはジャムの実験と呼ばれるものはご存知でしょうか。
これはどういうものかというと、スーパーでジャムの試食ブースを作って、24種類のジャムを並べた時と6種類のジャムを並べた時を比べた実験なんですね。
この24種類のジャムと6種類を数時間ごとに入れ替えて、買い物客の反応を調べたという実験なんですけれども、これ結果はどうなったかというと
24種類のジャムを並べた時の方が、買い物客は足を止めるけれども、実際にジャムが買われたのは6種類しかジャムを並べていない時の方が圧倒的だったというものなんですね。
つまり、選択肢が多い場合は、仮に人間は興味を抱いたとしても、どうやら最終的に「選ぶ・選択する」という行為を鈍らせてしまう傾向がありそうだという、そういう示唆が得られた画期的な実験なんですよね。
多すぎると結局選べないということですね。
この実験で一躍有名になったコロンビア大教授のシーナ・アイエンガーさんという方が、選択の科学という本を2010年に出版しています。
この本は、今お話ししたジャムの法則の件も含めて、人間が選ぶ、選択するという局面でどういった挙動をするかということを様々な事例とともに解説した本なんですね。
僕はかなり好きですね。
このシーナ・アイエンガーさんが13年ぶりに新しい著作を発表しまして、今回ご紹介したいのはその本です。
今回はその内容のユニークさにも触れつつ、最後の方でとても僭越ながら、ここはちょっとどうかなという疑問を忖度なしでお話ししたいと思います。
肝心の本のタイトルなんですが『THINK BIGGER』 という本ですね。
考えるという意味のTHINK、BIGGERは、ビッグビガー、ビゲストの大きい、つまり「もっと大胆に考えよう!」みたいな意味でしょうかね。
内容を簡単に言うと、これは様々な課題に対して、著者であるシーナさんが考案した、このTHINK BIGGERという体系的な手法を用いて、
ベストな解決策とかイノベーションのアイデアを生み出そうというものなんですね。
このTHINK BIGGERのすごいところは、天才と呼ばれるような多くのイノベーターが意識的、あるいは無意識に関わらず、脳内で繰り返していた思考のプロセスを再現しようということなんですよね。
そのプロセスをシステム化、あるいは可視化して、ある種のフォーマットに落とし込んだところに、このTHINK BIGGERの魅力があると思います。
私たちは人類の歴史において、すごい偉人たちが超人的なひらめきをして、この世に存在しなかったものをゼロイチで生み出しているーー
そういう神がかり的にイノベーションを生み出しているように見えていることが多いわけですけれども、
実際はある種の定型的なプロセスを経ていることが多いんだよということを、シーナさんが主張されていて、この本はそれを解説しているわけなんですね。
このTHINK BIGGERのすごいところは、そういった思考の過程を分解してシステマチックなプロセスにしたところ。
ここがまずとてもユニークだなと思いました。
それを説明していく際に、本の中で、例えば公民権運動のマーチン・ルーサー・キング牧師がどのように活動を成功させていったかとか、
あるいはコロナワクチンがものすごい速さでどうやって開発されたかというプロセスに触れていたりとか、事例も面白くて説得力があって、なかなか読み応えがある本でした。
このTHINK BIGGERなんですけれども、ステップを6つに分けています。
一応読み上げますね。
ステップ1、課題を選ぶ。ステップ2、課題を分析する。ステップ3、望みを比較する。ステップ4、箱の中と外を探す。
ステップ5、選択マップ。ステップ6、第三の目というものです。
これだけ聞いてもですね、よくわからないので、この6つのステップについてネタバレしない程度にざっとご説明したいと思います。
まず、ステップ1の課題を選ぶですね。
THINK BIGGER ステップ1-5の概要
確かに課題があるときって、その課題を並び立てること自体は割と簡単なんじゃないかなと思うんですけれども、そこから選ぶのって結構難しいですよね。
ここがですね、さすが選択の科学の作者だけあって、この課題を選ぶというところにまず大きく着目しているわけですね。
どういうふうに課題を選ぶかというと、意味があるほどには大きいけれども、解決できるほどには小さい課題、これを見つけようとシーナさんはおっしゃっているわけですね。
じゃあそれをどうやるかというヒントがこのステップ1で示されています。
その方法の例として、課題のレベルを上げ下げしておいしいところを探す手法というものが指定されていました。
例えば、仮にプラスチック汚染を減らそうという課題があったとしますよね。
レベルを上げる、つまりより大きな視点にすると、プラスチックだけじゃなくて、そもそも環境に害をなすものをすべて減らすにはどうすればよいかという課題の設定になると思います。
逆にレベルを下げる、分解すると使い捨てレジ袋を減らすにはどうすればよいかみたいな感じの課題の設定になると思います。
こうやって課題のサイズを設定していくというステップがこのステップ1になるというふうに僕は解釈しました。
では次、ステップ2なんですけれども、課題を分析する。
これはですね、課題を選んだらそれをメイン課題として、その課題にぶら下がるサブ課題を5つまでに絞って定義しようねということのようです。
このサブ課題が一体となってメイン課題を解決する、そういう構成にしなければいけないそうですね。
これをですね、書き出してマッピング化していくすごく重要な作業が紹介されているんですけれども、
そうやってTHINK BIGGERの肝となる、あとでも出てくるんですけれども「選択マップ」と呼ばれる表が埋まっていくことになります。
次、3つ目のステップ、望みを比較する。
これはですね、自分とターゲットと、あと全く関係ない第三者。
これがですね、それぞれ何を心の底から望んでいるかということを分析するというステップです。
ここでですね、顧客の望みではなくて、あなたの望みを一番優先しないとうまくいかないよということを
シーナさんが主張しているのが特徴的でした。
同時に、もちろん、第三者の望み同士が対立するのも当たり前で、全部を満たすこともないとも言っていました。
それを強弱をつけて、やはり選択することが重要だというふうに述べられています。
ステップ4、箱の中と外を探す。
これはですね、ちょっと比喩的な表現で、つまりですね、先行事例の戦術を調べるということなんですね。
なので、自分がやろうとしている業界、領域の中、つまり箱の中での事例と、その外での事例の両方を調査しましょうねという作業です。
特に領域の外の事例を調べることを、このシーナさんは推奨されていました。
例えば、自動車の大量生産を生み出したフォードが、食肉工場の生産方式を取り入れたとか、そういうことだと思うんですね。
そうやって課題に対する戦術を、自分の領域の中と外から入念に集めると。
ここでちょっと面白かったのは「失敗から学ぶな!」というふうに、著者のシーナさんが述べていることでした。
前回、シャープ10の失敗の科学を紹介したところで、ちょっと微妙に気まずいような気もするんですけれども、
この本の中ではですね、失敗から学ぶなということに関して、面白い例えがされていました。
こういうふうに述べられています。
森でサバイバルするのに、500種類の毒キノコを解説した図鑑よりも、
10種類の食用キノコを解説した図鑑の方が必要だよねっていうことだそうで、確かにそうだよなと思いました。
次、ステップ5、選択マップ。
ここまでのステップがうまくいけば、課題とそれに対する戦術が集まっているわけなんですけれども、
この5番目のステップでは、これまでのステップ1から4を行ったり来たりしながら、
THINK BIGGER専用の選択マップと呼ばれるフォーマットにマッピング化して、
課題を解決に導く良い組み合わせ、課題と戦術の組み合わせを何度も試そうというふうにやっていくのが、
この5番目の選択マップというステップです。
ステップ6: 第三の目
ここで、量よりも質を求めてアイデアを絞り込んでいくということが重要だそうなんですね。
さらに、課題とそれに対応する戦術を組み合わせるだけじゃなくて、
戦術同士を掛け合わせたりできないかということまで入念に検討するステップだそうです。
次、ステップ6、第3の目。
これは、他人の目を通して自分自身の課題に対する理解を深めるステップのようですね。
まず、ここまでのステップで絞り込んだアイデアを完全に暗証して空で説明できるようにして、
自分自身に対して声に出して語って聞かせる。
これがアイデアの妥当性を検証するのに有効だそうで、面白いですよね。
あとは、もちろん自分自身に声に出して聞かせるだけじゃなくて、もちろん他人にも聞かせます。
ただ、他人に聞かせていいね!とか悪いね!とか、そういった評価を受けるわけではなくて、
それを聞かせておいて、今の話をあなたが今度は私に説明してくださいというプロセスも指定されていました。
この章で特に面白かったエピソードとしては、
著者のシーナさんがポール・マッカートニーに直接インタビューしたことがあるらしくて、
何を聞いたかというと、ビートルズのイエスタデイの歌い出しのあの切ないメロディー、
あれがどうやって生まれて、しかもどうやってポールがその良し悪しを検証したかという話が出てくるので、
ここはとても読み応えがあると思います。
以上が6つのステップになりまして、その他に全体を振り返ってみて、
僕自身が興味深かったのが、課題分析する際に漏れなくダブりなくでおなじみのMECE、
ひいてはロジックツリーですよね。
あれはあんまり有効じゃないよというふうにシーナさんが言っていたところですね。
その理由というのは、課題は重複しないどころか複雑に絡まり合うものだから、
あんまりミーシーでロジックツリーを書いててもあんまり機能しないんじゃないかと。
それに課題というのはどこまでも掘り下げられるから終わらないよと言ってますね。
あとこれも面白かったんですけれども、ブレストについてめちゃめちゃ否定してますね。
これはその理由としては、アイデアを出すには効果的ではないという研究結果があるそうで、
そのあたりが言及されていました。
ブレストの疑問
もちろん他人と何かを考えるのが悪いというわけではなくて、
それぞれが自分で考えて考えて調べることを突き詰めた上で、
さらに少人数、5人以下で打ち合わせしようぜというのがポイントだそうですね。
これはちょっと余談かもしれないんですけれども、
そもそも我々がビジネスをやっていて、結構安易にブレストを持ちかけられることってないですかね?
参加してみると、ちゃんとしたブレストになっていない雑な仕切りのアイデア出しだったりとか、
実は単なる相談だったりすることが結構ありますよね。
正しいブレストって準備ももちろん必要だし、ルールの設定も結構厳密なはずですよね。
一応そういった体裁が整っているときでも、
結果としてそんなに効果につながったなという体験が、僕自身はあんまりないんですよね。
そういうわけで、個人的にもともとブレストに対して取扱い注意の印象があったので、
もちろんこの本で説明されていることとはちょっと違う角度の話かもしれないんですけれども、
椎名さんがブレストはこのTHINK BIGGERのプロセスにおいてはやめておこうという示唆に対しては結構腹落ちがしました。
あと、シーナさんもこの本のどこかで書いてた気がするんですけれども、
このTHINK BIGGERという手法自体ももちろん過去のいろんなイノベーターの事例をもとにしていて、
すでに発表されている研究とかノウハウを参考にして構築されたものでもありますよね。
例えば課題の設定をめちゃくちゃ重視するというのは普遍的でもあり、
国内の本で言えばベストセラーですごく売れたらしいんですけれども、
『イシューからはじめよ』という本の存在もちょっと脳裏をよぎったりしました。
さらにひたすら課題を分解して向き合っていくという意味に限れば、
前回シャープ10の失敗の科学でもご紹介したマージナルゲイン、小さな改善。
この小さな改善を繰り返す行為とも少し通ずるものがあるのかもしれませんよね。
なぜかというと、このTHINK BIGGERでは「意味があるほどには大きいが、
解決できるほどには小さい課題」を洗い出すのがポイントですよね。
マージナルゲインも小さいけど解決する意味があるものに取り組むという動きを取るので、
ちょっとその辺りが通じるかなと思いました。
いずれにしてもその似ているというか、過去の何かと通ずるところが悪いという意味では決してなくて、
そういった手段をTHINK BIGGERとして体系化していったところがポイントだなと思います。
最後に、あえてこの本のここはちょっとどうかな?というところを言いますね。
ほとんどいちゃもんかもしれないので、聞き流していただければと思います。
まず、このTHINK BIGGERなんですけど、さすがに手法がちょっと壮大ですね。
例えば、ステップ1の段階で絞り込んだ課題について25人の話し相手を見つけて話すというプロセスがあるんですね。
そんなに僕の話を聞いてくれる人、25人もいないんだよなとか思ったりしてて、
そんなこと言ってたらダメなんですけれども、それはイノベーションを生み出すことにも使えるような手法ですから、
仕方ないんですけれども、そんなに楽ではないと。
もちろんTHINK BIGGERが楽な手法だなんてシーナさんは一言も言っていないので、
これはもう完全に一話もんというか、個人的にやると大変なんだなと思ったというところです。
本の装丁と図解がイマイチでは
次に、これは本当にちょっとどうかなと思っていることなんですけれども、
本の内容ではなくて本の装丁ですね。
日本語版だけだと思うんですけれども、これですね。
見ていただくとわかるんですが、オレンジに黒の文字で結構毒々しくて、いわゆる警告色ですよね。
じゃあアメリカ版の方はどうなっているんだろうと思って、原著はどうなっているんだろうと思って、
アメリカのAmazonを見るともっと爽やかな白地に青の素敵な想定なんですよ。
なので日本の出版社さんが派手にして目立つ、よく言えば革新的な感じにしたかったのかなと思うんですよね。
ただなんかね、かえってちょっと知性的に見えない感じもややして、
この本を持っているのをあんまり人に見られたくないなとか、
僕はこれをカフェで開く勇気はあんまりないなとか思ったりしました。
これは非常にセンシティブな話でもあって、完全に僕の邪推かもしれないんですけれども、
この著者であるシーナ・アイエンガーさんって目が不自由な方なので、
このカラーリングについての著者本人のジャッジがある意味で制約があるわけじゃないですか。
そこをもし商業的に偏った視点で日本の出版社サイドが押し切っていたとしたら、
どうなのかなというふうに思いました。
なので文庫版でデザインがもうちょっとスマートなものに変わることに期待したいなと思っています。
もう一つ、そういった著者の視覚的な特性とちょっと関連するかもしれないのが、
図解の部分ですね。発想のステップを体系化しているわけなんですけれども、
そのフレームワークの図が日本語フォントのチョイスも含めて、
もうちょっとどうにかならなかったのかなと思ってしまいました。
本屋さんでこの本のP60、P61あたりをチラ見していただいて、
給与できれば全然大丈夫だと思うんですけどね。
僕自身はシーナ・アイエンガーさんの前作である選択の科学ですっかりファンになってしまったので、
すべてOKというか、このぐらいは小さなことかなと思いつつ、ちょっとだけ気になってしまいました。
そんな文句はさておき、繰り返しになりますが、
これまで天才とされてきた多くのイノベーターが脳内で繰り返していた思考のプロセスをシステマチックになぞれるようにして、
可視化させたところに、このTHINK BIGGERという手法の魅力がありますし、この本の魅力があると思います。
この手法を解説していく際に、やはり過去のイノベーターたちの事例が多く紹介されているので、それも読み物としてとても面白かったです。
あとですね、シーナ・アイエンガーさんの出版記念講演をオンラインで聞いてたんですけれども、
このTHINK BIGGERをどうもサービス化、多分ですね、アプリケーション化するんだと思うんですけども、
そんなような話もしていたので、それもリリースしたら是非チェックしてみたいなと思いました。
確かに本でなぞるよりも、アプリケーションとして6つのステップを管理できる方が絶対楽ですからね。
というわけで、今回はシーナ・アイエンガー著『THINK BIGGER』をご紹介しました。
もしよろしければ、このスモビる!という番組もフォローしていただくととても励みになります。
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