はい、アートテラー・とにのそろそろ美術の話を。この番組は、私アートテラー・とにがアートに関わる方をゲストにお迎えして、トークを繰り広げるポッドキャスト番組です。
本日は、東京オペラシティアートギャラリー キュレーターの瀧上華さんをゲストにトークをしていきたいと思います。
よろしくお願いします。
じゃあ、改めて自己紹介からよろしいでしょうか。
私が東京オペラシティアートギャラリーという初代にある美術館でキュレーターをやっている瀧上華と言います。
オペラシティアートギャラリーというのが初代にあるんですけれども、
初代のオペラシティビルという中、音楽のホールであったり、コンサートホールとアートギャラリーと2つの組織がありまして、その美術館として開館をしています。
ちょっと美術館の説明をしますと、展覧会がですね、年間4本大きな特別展、企画展というものをやっているんですが、
それ以外にコレクションとして、寺田小太郎さんというオペラシティの開発に関わった方の個人のコレクションを収蔵しておりまして、
その寺田小太郎コレクションという収蔵品をもとに、やはり企画展と同じ時期にですね、年に4回コレクション展というものを行っています。
だいたいみんな下の階で、2フロアになっていて、気づかずに帰っちゃう人もたまにいるけど、上の階に行くとこですね、コレクション。
そうですね、いつも。はい、コレクション。
コレクションは何点ぐらいある?
4000点弱ぐらいあります。
結構な数あるんですよね。
そうですね。なので、毎回年4回テーマをそれぞれ楽芸員が、キュレーターが出して、いろんな切り口から寺田さんのコレクションを紹介するということをやっています。
寺田さんは基本、例えば何が集めていたとか、特徴があったりするんですか?コレクションの。
そうですね。時代でいうと、日本の戦後美術が主なコレクション、それ以外にもいくつか他にもあるんですけど、メインとしては日本の戦後美術を中心にしているんですが、やはりすごい個人のコレクターの方なので、
効率の感とは少し違う、個人の目で面白いと思った作品というものを集めているのが、少し他の感とは違う特色のあるコレクションになっているのかなと思います。
確かに。ここでしか見たことのない作家さんといったらご迷惑ありますけども、結構特徴的な作品が多いですよね。
ちょっと不可思議な作品なんかが割と好きで集めていたりとか、そういう特徴もあります。
しかも、そのコレクション展を抜けると細い通路といいますか、あって、そこでもいつも展示もまたしてるんですよね。
そうですね。その集蔵品展を抜けた先に、プロジェクトNという企画をしていて、プロジェクトNのNというのは、南端達沖さんという中小学科で、
寺田さんがコレクションしていた当館の集蔵品の中でメインの作家さんなんですが、その南端達沖さんの意思を受け継ぐ形で若手の平面作家を紹介していく企画として開館時から始まっていまして、
もうそろそろ100になるんですよね。
毎年度ちょうど100人紹介しているということになるんですが、割と若手の作家を紹介するというのも、これも年に4回企画をしています。
作家さんを選ぶのは、キュレーターさんが推したいという人を選ぶ感じですか?
そうですね。毎年度ごとに、それぞれキュレーターが年間調査をして、推薦したい作家というものを推薦して、一応審査があって、年間4人誰にしようかというものを決めているという形ですね。
普通の展覧会、この後ゆっくり今担当されている展覧会の話聞きますけど、それとは別にプロジェクトNのためのものも用意しなきゃいけないんですね?
そうですね。それはまた別の調査で、年に4回やっています。
だからそこまで見逃さなく見ていただきたいということですよね、全体的に。
そうですね。3種類違うタイプの展覧会が楽しめるので、ぜひ下だけではなくて、上も楽しんでいただけるといいのかなと思います。
ちなみにオペラシティアートギャラリー、たぶんこの番組でアートウォッチングって1ヶ月に1回いろいろと紹介するんですけど、
マルさん結構オペラシティの展覧会を選びがちみたいな。
結構たぶんこの番組に来ている人もオペラシティのことを知っている人もいると思うんですけど、展覧会の特徴とかはあったりするんですか?
こういう展覧会、うちは強いよみたいな。
そうですね。現代美術の展覧会ですとか、あと挙げているのは少しクロスジャンルのファッションとかデザインとかイラストレーションとか、建築もそうですね。
そういった部分の展覧会っていうものが割とオペラシティならではの特色と言えるのかなと思います。
ということは2024年で言うと、やっぱり宇野明展はすごい話題になってましたよね。
そうですね。宇野展もやりましたし、昨年度は高田建造展でファッションをやって、
松谷武貞展で日本の戦後美術家、現代に至るところの長くキャリアがある方の展示、松谷さんの展示もやって、
今回は逆に若手と言いますか40代の方のミッドキャリアの人の今の活動を紹介するっていう。
なので考えると、今年度は割とオペラシティのラインナップ的なものだったのかもしれないですね。
放送というか2025年ですけど、2024年度ラストを飾る展覧会が開催中ということですよね。
ということでせっかくなのでここからはその展覧会についてお伺いしたいなと思うんですが、まず何というタイトルの展覧会でしょうか。
はい、今津慶太郎アイルという展覧会になっています。
はい、これは今津慶さんという方ですよね。
そうですね。
アーティストの名前ですね。
はい、今津慶さんという女性の方、今インドネシアで生活をしているんですけど、作家さんで。
慶が景色の慶。景色の慶って呼ぶのか分からないけど、慶ですもんね。
で、タナアイルというのが副題、テーマというかタイトルになっています。
なかなか聞き慣れない単語ですけども、タナアイルというのはどういう意味になるんですか。
インドネシアの言葉で、タナが土、アイルというのが水という意味をそれぞれ持っているんですけど、このタナアイルという2つが合わさることで、故郷という意味を持った言葉になっているそうです。
なるほど、そういう意味なんですね。
今津さんはずっとインドネシアにいる方ではいつぐらいからなんですか。
2017年にインドネシアの方に移住をされて、それからはずっとインドネシアで生活、制作をされています。
どういう作家さんですかといったら、まずそもそもなんて表現したらいいんですか。
学科ペインターとして多分、多摩美術大学を卒業されてからずっとペインターとして活動されていて、
みなさん今津さんの作品というと、国内外のグループ展とかでも出品作家されていたりするので、
最近だと、2019年の六本木クロッシングであったり、
青森美術館であったりとか、愛知トリエンナーレであったりとか、そういったところに作品を出されている。
あと横浜美術館で、コレクションと一緒にダリの作品と一緒に展示をしたりということもされていたりするので、
その時に多分目にされている方もいるのかなと思うんですが。
こういう個展というのは、今回日本では初めてに近いんですか。
そうですね。美術館で大きい規模でやる個展としては本当に初めてですね。
おそらくグループ展とかで見ている今津さんの作品を知っている方でも、
イメージで言うと割と大画面のキャンバス、大きい画面で、
モチーフがちょっと浮遊しているような、ぐにゃりと歪んでいるような、
だけど抽象的というよりは何らかのモチーフが見える、
そういった大判の画面というのが、今津さんを知っている方々にとっても、
なんとなく今津さんの作品として思い浮かぶものなのかなと思います。
コラージュみたいな感じの大画面で、コラージュなのかなと思って貼っているのかなと思って近づいてみると、
全部実際に描いてあるみたいなイメージはありましたけども。
作り方としてはインターネットとかアーカイブから、デジタルイメージから撮ってきた画像というものを、
一回ご自身のパソコン上で、フォトショップで加工したりしながら構成をして、
その歪んでたりするのも指先ツールというので、多分絵を少しぐにゃっとさせたりして、
それを一度パソコンの画面上で構成して、主体を作ってから、それを油彩として大きな画面に描き出すという手法で作品を作っている。
ご本にいないところでどう聞いていいかわからないですけど、それ出力すればいいじゃんって思っちゃうんですけど、
それをなんで描くか、しかも大画面で。なんでなんですか?
多分おそらく山津さんがおっしゃっているのは、美術の歴史、みんなずっと絵を描いてきた歴史っていうのは、
その当時の視覚表現というか、自分の視覚認識みたいな空間認識とか、
そういったものの中で生まれてきている表現じゃないですか。
そうなると、現代になれば、それはそれこそCGだったりとか、今だったら恋愛生成とかもあると思うんですけど、
例えば昔、写真とか映画が生まれたときに、おそらく人間の視覚の認識っていうのがそこで大きく変わったのと同じように、
現代であれば、そうやってその認識が技術、テクノロジーとともに変わってきていて、
そういう現代においての視覚表現としての絵画っていうものを描きたいっていうようなことを、
山津さんは以前インタビューとかでおっしゃっていて。
なので、多分そういう絵画の歴史っていうものへの意識もおそらくあって、
だからそういう技術っていうものを使って、絵画を描くっていうことを取り組まれていたのかなと。
これだけ聞くと、僕も今言ったように、そのままでいいじゃんと思ったけど、
よく考えたら、例えば印象派の時代なんかも、写真ができたときに、写真で一回撮ったものを描いたりとかしてたわけだから、
歴史的に見ると別に目新しいというか、実はオーソドックスなことをもしかしたらやってるのかもしれないですね。
そうですね、まさにそういう感じなのかなと思います。
でもやっぱり、山津さんはそれでも今の時代だったら、結局だからCG作家になる人もいるし、映像作家とかいろんなジャンルがあるけど、
それでもやっぱり選択としては絵画を選ばれてるってことなんですね。
はい、ご自身で油彩だったりっていうもので絵画、自分の体を通して、
視覚デジタルであったり、そういう情報を、
自分の体を通してそれを描き出すっていうところが面白いのかなと思います。
だからさっき、自分はパソコンで出力すればいいじゃんって言ったけど、
出力するのがプリンターじゃなくて、今津さんを通じて出力してるみたいなことなのかもしれないですね。
でも僕は、なんとなく今津さんってそういうイメージがあったので、
今回の展覧会も当然平面作品が並ぶ展覧会なのかなと思ったら、
これからたっぷり聞きたいなと思うんですけど、
インスタレーションがたくさんあって、ちょっと度肝抜かれたというか、
いい意味で予想を裏切られた感じがあったんですけど、
今はインスタレーションが結構作られる作家になった?
そうですね、やっぱりベースはもちろん絵画で作品は制作されてるんですが、
近年ですね、特に立体の大きな作品っていうものを3Dプリンターで作っていたりするの、
あとそれから鉄の、今回も大きなものが出品されてるんですけど、
そういう鉄の作品だったりとか、本当に絵画だけにとどまらないというのが、
このおそらく2,3年の間にすごく今津さんが取り組まれて、
集中的に今取り組まれているところなのかなと思います。
滝上さんが今回この展覧会をやる時、今津さんと展覧会をやりたいと思って、
ここを描きした時には、もうそのフェーズに入ってたんですか?
今回インスタレーション展になるなと思って声を掛けたのか、
それとも声を掛けた時は平面だと思ったら、あれ?ちょっとドドッとなっちゃった?
そうですね、本当にそれすごく面白くて、
私、もともと今津さんの作品、そういうグループ展とかでは積んであげてたんですけれども、
アノマリさんのギャラリーで今津さんの個展をした時に、
その絵画と、わりとそれまでも後ろに出力したもので多層構造になっているような作品、
そこで少し絵画が空間の方に出てきているというか。
出力したでっかい壁紙みたいなのがあって、その前に平面作品、キャンバス作品。
そういうレイヤーというのはそれまでもあって、
そういう片輪というか空間に至る部分というのはあったんですが、
アノマリでやった時には、今回のものとはまた違うんですけど、
もう少し細いワイヤーを使った作品がモビールのような感じで空間に浮いていったりとか、
あと旦那さんのバグースさんというインドネシアの方がパートナーでいらっしゃるんですけど、
一緒にコラボレーションした作品が展示されていたりして、
そのワイヤーのモビールの作品を見た時に、
なんとなくベラスティの空間で展示をしたらすごく面白いんじゃないかなというふうになとなく思ったんですよね。
ただやはりその時はまだ今津さん自身もそこまで立体を、
お自身もまだ製作されていなかったし、私ももちろん見てもいなかったので、
始まりの時はなんとなくその片輪はあったけれども、
今回のような規模で立体物が展開されるようなものを最初から想定していたということではなかったですね。
でもそこからインドネシアのギャラリーでの個展とか、
その後の1、2年間の間で、
今津さんがどんどん立体の方面に作品も展開されていって、
今回の展示を構成するにあたっても一緒に話していく中で、
すごくインスタレーションであったり、空間全体をすごく使うような展示ということを一緒に話して、
今津さんの方からもそういうプランがどんどん出てきたという形ですかね。
でもそのインスタレーションってもうだいぶないインスタレーションって言ったら、
本当に空間全体を使う、ちょっとここだけの話、そこまでは考えていなかったよ、みたいなのはなかったんですかね。
そうですね。
でも去年一昨年にジャカルタのローでやった展示を見たときに、
今回ギャラリー2という後半の部屋でやっている展示っていうのが、
一番大きな展示室ですよね。
それをテーマにした展示で、今回それを少し発展させたというような形だったので、
大きな彫刻類も少しあったので、それを見て、これがおそらく来るんだなというのは感じましたね。
せっかくなので作品について具体的に聞いていきたいなと思うんですけど、どうします?
入り口から説明していきますか?それとも今のでっかいメインからいきますか?
どうしましょう?どっちがいいのかな?
今回は展覧会のテーマとしては、タナアイル、故郷ってことですけど、
その故郷をテーマにした作品があるってことです。
そうですね、そこまで故郷っていうのは全体を見渡した時に浮かんできた言葉っていうことかなと思うので、
必ずしもこの展覧会が全て故郷っていうものを想定しているわけではなくて、
ただ先ほども言ったように、2017年からインドネシアで生活してきた作品、それ以前のものもあるんですけど、
わりと中心になっているので、そうなるとやっぱり日本からインドネシアに移って、
そこで生活をしてっていう作品の中で、今津さんが感じたこととか考えたことっていうのが、
全ての作品においてベースになっているので、そうなった時に故郷っていう言葉、
故郷っていうだけじゃなくて、やっぱりそれが土と水っていう2つから来てるっていうようなところも、
共通する言葉として出てきたっていう感じかなと思います。
作品数としては何点って言うんですか?今回の場合、例えば。
一応71点ですね。
平面作品を1カウントしてみたいなことですか?
そうですね。最後の69点をあれは1点と数えてはいるんですが。
コンコースで折ってたってバーっと壁に並んでるやつとか。
インスタレーションとしては全部でいくつってことになったんですか?
インスタレーション。
6ぐらいですか?
そうですね。展示室といいますか、大きくテーマに分けている。
こっちで分けたもので言うと、大まかに分けて5テーマぐらいがあるかなと思います。
じゃあぜひどれから説明いきましょうか。
頭からいきますかね。
今回展示室に入って冒頭のところが、通常の展覧会と少し違うのが、
普通展覧会って入って入り口があって、一周して出口があるっていうような順路が。
一筆書きできるように。
そうですね。割と多いかなと思うんですけど、今回1室目っていうのはそこで完結している部屋っていうのが。
だからそこに入って、またそこから出てきて、また次の部屋に行くみたいなことですか?
はい。がありますね。
そこの部屋、一番最初の冒頭の部屋っていうのには、2つ一応テーマになるような作品が展示されているんですけれども、
そのうちの1つがアンダ・ディシニ、You Are Hereっていうようなタイトルの作品群で、
このアンダ・ディシニっていうのも。
インドネシア語ですか?
アンダ・ディシニですね。インドネシア語で英語で言うとYou Are Hereなんですけど、
要は地図とかで現在地、日本語でいうYou Are Hereって多分英語だと書いてあるような看板とか地図とかにある現在地を示す言葉だそうです。
この最初の作品群っていうのは、まさに今津さんが最初にインドネシアに行った時の体験っていうのを元にした作品。
だからまだ定住する前。
そうですね。最初はアーティスト・イン・レジデンスで行ったそうなんですね。
その時の経験を元にしていて、
その時にインドネシアのバンドンっていうジャカルタからも少し遠くというか1、2時間くらい行ったところで、少し高地なんですよね。
ジャカルタよりは少し涼しいような、わりと過ごしやすいところなんですけど、そこにアーティスト・イン・レジデンスで行って、今もそちらに住んでるんですけど、
そこのバンドンに行った時に、バンドンにあるゴア・ジッパンというですね、いろんな単語が出てくるんですけど、
ジッパンっていうのがジャパンですね。
ゴアが洞窟かな?洞窟なんですね。ゴア・ジッパンっていう名前の。
観光地みたいなことですか?
今は国立公園の中にある洞窟なんですけど、
歴史的に言うと、第二次世界大戦中に日本軍が占領した時に、インドネシアの現地の人を労働者として労働させて作った洞窟で、
そこに今津さんもバンドンに行った時に行ったっていう風に、その時の体験っていうのがベースにあって、
今津さんはインドネシアにバンドンに行ったんですけど、
おそらく、もともと例えば、パリに行って絵を勉強しようとか、
例えばニューヨークに行って勉強しようっていうのとは少し違う。
最先端を学ぼう、芸術とかじゃなくてってことなのかな?
結構インドネシアだったっていうのは、
偶然というか、多分今津さんももともと想定してなかったことなのかなと思うんですよね。
すごく例えば人生において7歳でインドネシアに行こうみたいな計画があって行ったっていうことでは多分ない。
思いがけず行った場所で、自分の日本という国とインドネシアの歴史みたいなものとか、
そういうのを思いがけず触れた。
多分すごいハッとするような経験だったのかなと思うんですけど。
しかも多分、ちゃんと僕も行ったことないからわかんないですけど、
ハッピーな紹介じゃないわけですもんね。
戦争の無効とした負の遺産というか、こんな目にあったぞっていう戒めというか、
みたいな感じだから、日本人としてはやっぱり罪悪感を感じてしまうような体験になるってことですかね。
今でも博物館とかそういうところに行くと、歴史の解説のイラスト付きの絵みたいなのがあると思うんですけど、
そういうので日本軍が送らせている絵みたいな解説の看板とかを目にしたりとかしていて、
その時その地図に、要は現在地として書いてあった言葉が、このアンダーディスニーという言葉だったっていうところからタイトルになっている作品ですね。
なので本当にインドネシアに最初に行った時の今津さんが感じた経験っていうのが、
展覧会でも今今回は冒頭に入っているっていう。
その経験のものを絵画に落とし込んでいるってことですか、その作品も。
そうですね。今回出ている作品は再製作として、今年か去年か製作したものもあるんですけど、
2019年の段階で製作しているものもあって、
2019年に笠谷の森現代美術館。
横須賀にある駅から遠い。
犬笠駅かなんかですね。
そこで今津さんの個展をやって、それがアンダーディスニーの展覧会。
その時本当に2017年に行った時の経験をもとにアンダーディスニーという展覧会をやっているので、
その時の作品と今回それに合わせて再製作した作品っていうのが出ている。
言われてみるとそういう作品だなと思うけど、パッと見た時に日本絵が描かれているとかではないですもんね。
そうですね。それだけじゃなくて、やはり今ちょっとゴアジパンの話をメインでしたんですけれども、
今津さんの絵ってすごく多くのレイヤーでできているので、
それ以外にもバンドの地質学博物館に行った時に見たジャワ原人。
ジャワ島でインドネシアなので、そういうジャワ原人の骨格標本とか、そこから再現したジャワ原人の像だったりとか、
そういった一つの語りだけではない、いろんな経験が層になって作品になっているので、
本当にそのことだけを描いているわけではなくて、
いくつかの自分の初めても初めてやっぱりバンドに行った時に感じたことみたいなのが主なテーマの作品になっている。
それを例えばこういう作品作ろうと思った場合、今津さんは、
例えば普通の画家って言い方が変かもしれないですけど、その場でスケッチしてそれを絵に落とし込むけど、
最初の説明でいうと、それをインターネットで画像を集めるんですか?それに関する。
そうですね。インターネットだけではなくて、たぶん今回だったら実際に見た看板の絵も、イラストレーションもそうですし、
あとは例えばオアジパンの地形図みたいなものとか、そういったイメージだったりとか、
それからジャワ原人の再現したイメージ図とか、そういったものを採用して。
一回パソコンに取り込んで、パソコンでコラージュのようにして、それを今度描くみたいなこと。
そうですね。そこは一貫した制作の手段なのか。
という作品ともう一個別のがあるわけですよね。
そうですね。もう一つが逆に、アンダーディシネが日本からインドネシアに行って、
最初の経験を元にしているとすると、そのもう一つのインスタレーションの作品というのは、
わりと新作、2024年なので新作のインスタレーションになっていて。
アンダーディシネは平面作品だなって印象でしたけど、それを見た時はまだ今津さんの展覧会だったんですけど、
目に飛び込んでいるのはベッドみたいなのがあって、そこに手の置物みたいなのがあったりとか、
本当にザ・インスタレーションというか立体物があったのが今おっしゃっている作品です。
そうですね。これはワンドンのキニイネ工場という、日本語で言うとそういうタイトルがついていて、
キニイネって何ですか?
キニイネというのがキナという植物の樹皮から取れるマラリアの特効薬なんです。
マラリア、インドネシアもそうです。熱帯地域ですごく深刻な病気で、
マラリアの特効薬というキニイネという植物から取っていた。
今津さんが住んでいるバンドンにキニイネの栽培、キナの栽培をしてキニイネを取るというような工場が以前、
今はほぼないけれども、田舎に行くと実はまだ細々とやっているところが一つあったみたいな。
でもマラリアって、僕も別にそんなに詳しいわけではないですけど、
結構ニュースとか見てたら最近温暖化が進むと日本でもマラリアになるかもしれないみたいな感じで、
全然過去の病気じゃないかとかあったらキニイネ工場なんて。
今はキニイネから取らなくても、人工でマラリアの特効薬が作れるようになったので、
キナの栽培からキニイネを人工でできるようになってからは需要が少なくなった。
でも完全になくなってない、ちょっと細々とやっているところは、それもやっぱりマラリアの特効薬として今だに作る。
でもキニイネって本当にそれだけではなくて、トニックウォーターなんかに入ってたりとかも。
えー、それ未だにですか?
未だになのかな、ちょっと私もあれなんですけど。
ちょっと癖のある味みたいな、ちょっと薬っぽいですね、トニックウォーターって。
ハレクニイネなんですか?
はい。
合法なやつ?
大丈夫なやつなんですよね?
はい。
よかったよかった。
たぶん。
それを今回はモチーフにした作品。
そうですね。
要はバンドンでキニイネ工場ができた、キナの栽培が行われてキニイネ工場ができたっていう歴史をひも解いていくと、
やっぱり最初はオランダの植民地にインドネシアがなった時に、そういうプランテーションみたいな形で栽培をして、
それで大規模な開発が行われていて、
でも今度やはりアンダーディズニーと今同じ部屋にあるっていうこととつながってくると思うんですけど、
第二次世界大戦中になると、要は日本軍がそこの接種する。
その工場ですか?
そうですね。
そうなると日本はそれでキニイネ工場とかキニイネを独占して、
それは本当に戦争中はすごく重要というか、マラリアっていうのが本当に深刻だったので、すごく重要な意味を持っていて、
だけど逆にオランダ軍は日本に取られないように、接種される時に工場を全部燃やして、
取られるぐらいならみたいな。
そういう歴史があって、そういったことに基づきながら、
インスタレーションとしては血液のようなものが、血管のようなものが巡っていると思うんですけど、
要はマラリアの感染経路をそこのインスタレーションとして表していて、
血が体内に入って、そこで生殖して、そこからまた感染してっていうようなことをインスタレーションとして表しているという作品です。
インドネシアって今さらですけど、国名は知ってますけど、どんな国って言われたら意外とわからなくて、
この事実なんて何でも教えてもらったことないじゃないですか、学校でも教えてもらったことないし、
でもいまだにそういうのが残っているんですね。
そうですね。バンドンには工場の跡地だったりとかそういったものもあって、
自分の生活している街の中のことなのですごく身近なのかなと。
でもそれを知ったわけじゃないですか、今津さんはバンドンで。
そしたら、僕だったらって言い方はあれかもしれないですけど、
言いづらいというか、バンドンに住むというよりも、申し訳ないって言い方もあれですけど、
要するに住民から日本人万歳って思われてる感じじゃなさそうな気もするんですけど、
今はどうなんですか?住み心地はいいんですか?
なぜバンドンに住み続けるんだろうか、すごい疑問に思っちゃう。
そうですね。でもバンドンはすごくアーティストが割と多い場所で、
バンドン工科大学っていわゆる美大のようなところがあって、若いアーティストが多分たくさんいて、
ちょっとそういうアーティストランスペースみたいなところもあったりとか、
そういった意味で、現代アートにおいても割と活気のある場所なのかなとは思います。
単純に気に入りの工場が社用して、錆びれた場所というよりは、アートにとっては今すごく活気的な新しい場所なのか。
今、今津さんの作品をもとにそういう話をしましたけど、
それはおそらく今津さんがちゃんと意識的に自分の住んでいる場所であったり、
その歴史という自分の足元にあるものを意識して作品にしようということで、
制作をしているのかなとは思います。
今津さんよりも日本人の作家さんはその辺にいるんですか?
いろんな国の人が集まってきてるみたいな感じ?
あとは普通にインドネシアベースのアーティストが多いですね。
それはバンドンなんですけど、でもジャカルタもやっぱりすごく活気のある場所で、
インドネシア、シンガポールとかも近いので、
そういった意味ですごい若いアーティストとかが制作をするには、
すごくいい環境ではあるのかなと思います。
今回すごく大きな作品とかもあると思うんですけど、
全部やっぱり今津さんのアトリエで制作もされていて。
この飾ってある作品じゃないですか。
だから日本じゃなかなかそれのスペースを確保するの大変ですもんね、あんだけでかい。
っていうのもやっぱりあるかなとは思いますね。
じゃあせっかくなのでメインの作品の説明に行きますか。
それだけでかいか楽しいですけど。
まあすごい作品。
そうですね。
ここの大展示室、一番でかい展示室のテーマは何のテーマなの?
そうですね。
ハイングウェレっていうインドネシアの神話をテーマにした部屋になっていまして。
ハイングウェレ。
ハイングウェレですね。
新しい言葉が出てきました。
そうですね。
インドネシアの神話なんですけど、
ハイングウェレっていう不思議な力を持った女の人がいて、
多分そういう神話ってインドネシアだけではなくて、
例えば日本だったりいろんなところにあるのかなと思うんですが、
自分の排泄物を金とか陶磁器とか少し珍しい財宝に変える力を持った女性がいたと。
入り口からしてすごい不思議な話。
排泄物ですか?
そうなんですよ。
そういう不思議な力を持っていて、
それってすごく金とかを生み出せるので、
最初は。
自分のために使うというよりは。
それをあげるんですよね。
お祭りの時とかに男の人に捧げ物みたいな感じであげて。
最初はそれがすごく珍しいし、
高価なものということでちょうほがられていたけれども、
不思議な力、神秘的な力っていうものを恐れられるようになって、
あるお祭りの時に村の男の人たちから生き埋めにされて、
殺されてしまった。
恩を仇で返すとはこのことだみたいなことですね。
それで生き埋めにされた後で、
亡くなったハイヌエレの体をお父さんが掘り起こして、
それを体をバラバラにしていろんなところに埋めたと。
そうするとその埋めたところからいろんな芋が、植物が生えてきて、
その出てきた芋類がそこの島の人々の食事を支えることになったっていうような、
それ以降そこの島の主な食料源が芋になって、
それを食べているっていうような神話があって。
これはめでたしめでたしだ。
植物起源神話みたいなものになるのかなと思うんですよ。
殺しちゃったわけじゃないですか。
村人とか島の人たちは罰は与えられなかったんですか?
芋を食べれて結果はラッキーだったみたいな話になってるんですけど。
一応今回展示室に入ると鉄の門があると思うんですけど、
あの門の真ん中に描かれているというか鉄で描かれているのが、
サテネっていう女神。それが要は審判を下す女神。
ハイヌエレとはまた別で?
ハイヌエレが島の人たちに殺されてしまったっていうことを聞いて、
怒ったサテネはその門を作って、
その島の人たちを通して、
殺戮に加担した人はそこでネズミとかに変えられてしまったり。
その門をくぐる時に。
右側を通った人と左側を通った人を、
2つのグループに島の人たちを分けたんです。
確かに今回の展覧会も展示室を横切るように作りたくなっていて、
真ん中にサテネ女神がいて、入り口というか通路が2つありましたもんね。
そういうのは元々この神話のエピソード?
そうですね。右側と左側を通った人たちが、
展示室に小さな小人のようなワイヤーの生き物が点々といたと思うんですけど、
あれはよく見ると多分右側のラインと左側のラインに並んでいるんですね。
その通った人を表しているってことなの?
そうですね。
殺戮に加わっていない人はそこを通っても動物に変えられるのか?
そうですね。かつ右と左の2グループに分かれてしまって、
それがパタリマとパタシワっていうらしいんですけど、
それが今もそこのシマ、セラム島っていう島は、
パタリマっていうグループの人とパタシワっていうグループの人が今もいて、
それの起源としてそういうふうに伝えられているっていう。
それは住む地域の話ですか?パタリマとかパタ…
なんか私もちょっとあまりしかわからないんですけど、
島の中に明確にそういう2つのグループがある。
いわゆる右寄り左寄りみたいなことではないんですね。
右に行った人は右寄りの考えになってとかじゃなくてっていう地域的な話になる。
そうですね。
今津さんはどっち側に住んでるとかってあるんですか?
今津さんが住んでるのはまた別の場所ですね。
このシマワ、セラム島っていうところなので。
そうか。だから今回その一番その展示室の奥にめちゃくちゃでかい絵が飾ってあったんですか?
あれ何メーターぐらいですか?
あれがですね、正しい称号。
横でも4、5メーターは全然ありますか?
そうですね。350×800。
8メーター。
横が8メーターですね。
サッカーゴールぐらいでかかったですかね。
そうですね。8メーターだとそうですかね。
その絵に芋みたいなのがバンバンと描かれてたなと思ったのは、
それはこの今のエピソードの出てきたさっきの芋なの?
そうですね。そういうのを元にしていて、
展示室にもいろんな体の部位があって、
そこから植物のようなものが出ていると思うんですけど、
そういった立体作品もそのハイヌエレの神話を元に津さんが制作しているものになります。
これはインドネシアでは結構おなじみの神話なんですか?
おそらくそうだと思います。
結構ポピュラーなもの。
今回は、一回インドネシアで古典されたって言ってたけど、
その時にも出てた作品もある?
そうですね。ハイヌエレの大きな、今お話しした8メートルの絵画は、
2023年のジャカルタの展覧会で初めて展示したもので、
今回日本では初めて2回目の展示ですね。
あれを持ってきたとおりですか?
はい。ロールで今回貼り直して。
門とかはですか?
門も持ってきました。パーツに分かれます。3、4パーツ。
しかも、皆さんまだ手の中に行ってない人は想像つかないと思いますけど、
8メートル3.5の絵が、今キャンバスにつけてはあるけど、
壁にかかってなくて、なんか上から吊るされてましたよね。
あれはなぜそんなでかい作品を壁にかけないで吊るすというとんでもないことをしているのか?
あれはどういう意図があるのか?
あの作品、今さんがおっしゃっていたのは、
あの作品ってすごい上から地面の中を覗いているような構成になっているんですね。
芋もそうですし、あとは骨だったりとか。
バラバラにされたってエピソードがある。
そういうのがエピソードとしても、自分が地層の中を覗いているような構成の絵になっていて、
そうなった時に、やはり少し浮遊感があるというか、
壁から前に出ている方が、より自分が覗いている感じというのが伝わる。
あれを壁にかけてしまうと、それがあまり出てこなくなってしまうから、
この作品は絶対に壁からは離して展示する方がいいんだということをおっしゃっています。
それはインドネシアでもそういう展示の仕方だった?
そうですね。
でも、物理的には結構大変なことですか?
いや、大変ですね。
パネルは一応4パネルになっているので、200が4枚。
なので、それをキャンバス張りして、それを結合させて、本当に壁ですよね。立っていて。
みんな後ろに入って、よいしょって上げて、上の吊り元と繋いで、みたいな感じなので、
結構展示としては、すごい盛り上がる展示でした。
しかも、それに気づいて、僕も。
後ろに行けるってわけでもないけど、キャンバスの裏側が見えるじゃないですか。
裏側を見ていて、そのまま上を見上げたら、今回ちょっと上の光も入っていませんでした。
天井から自然光が入る感じがしたけど、あれも意図的なんですか?
そうですね。今回ギャラリーに行っている今のハイヌエレの部屋は、窓を開けていて、自然光が入るようになっています。
それも今津さんと悩んで、どうしようかっていう話をしてたんですけど、
やっぱりその自然光を入れることによって、時間とか天気によって少し変わるような感じだったり、
今抜けがすごい明るくなったり、特に午前中がいいので、午前中がおすすめです。
全然違うんですよ、光の変え方で。
午前中がすごい光が綺麗だなと私は思います。
じゃあ、皆さん行かれる方は午前中。
さらに、展示室の床も一面ピンク色のカーペットを敷いていますね。
そのピンク色っていうのは意味があるんですか?
これも2023年のジャカルタの展示の時にも、すでにピンクのカーペットで展示はしていたんですけども、
今回もそれを踏襲してピンクのカーペットにしていて、
やはり少し体内というか、そういうイメージがあるのかなと意図としてはあります。
普通のフローリングの床ではなくて、少し柔らかい素材でピンク色という有機的な体内を思わせるような全体を空間にすることで、
展示室全体のハイヌエレというテーマを答えるにあたって、ピンクのカーペットを選んだのかなと思います。
だからやることがいっぱいありましたね、展示室は本当に。
そうですね、門を組み立てるのも、左右の木のやつも一個一個パーツに分かれているので、パズルのように。
それだけの準備が必要だったってことですね、今回の展覧会は。
そうですね。
さらにデカイ展覧、インスタレーションを終えると、さっきもちらっと言いましたけど、細い通路のところに69点ですか?
魚の絵が並んでるんですけど、あれはまた別の作品だと思いますけど、なぜ魚なんですか?
そうですね、あれはチタルム川という、今さんが住んでいるバンドンに流れる川をテーマにしているんですが、
その川が世界で一番汚い川というふうに。
って言われてるんですか?
そう、言われている川だそうで。
何が、なんでですか?
繊維工場が近くにあって、インドネシアってすごく繊維工業が発達しているそうなんですけど、
それによる汚染水であったり排水がすごく川の環境を汚してしまって、深刻な健康被害も起きるような形になっていて、
だけど一方でそこに人が流域には住んでいて、インドネシアはやっぱり上下水道みたいなものもしっかりしていないので、
みんな地下水を汲み上げたり、そこの川の水が実際生活の水にもなっている。
実際健康被害が起きてても、その水をみんな使って生活をせざるを得ないとかしていて、
一方で自分たちの排水もそこに流す。
なるほど。
ゴミの処理もきちんとゴミ処理がないので、自分たちのゴミも埋めたりとか川とかそういうところで、
自分たちの生活によっても、
また汚れていくんだ。
そういった川があって、そこの川に今さんが描いているのは魚の絵なんですけど、
1個1個木のパネルに1匹の魚というのが69枚。
イメージとしては魚の図鑑を見ているような感じですね。
そうなんです。
まさにそれは17世紀にオランダ人の地質学者がチタルム川を調査した時に、こういう魚がいたよという本を書いていて、
その頃は汚染水もない、世界一汚い川ではなかった頃。
そうです。
その時にいった魚の種類の図鑑というののイメージを今津さんがそれを元にして魚の絵を描いていて、
今はもう川が汚れてしまったことによって、ほぼその種類の魚はいない絶滅なので、タイトルがロストフィッシュって言うんですけど、
もう現在はいない。
昔オランダ人が調査をした時には、いたよという図鑑を元に魚の絵を描いているという作品ですね。
描かれているのも普通のキャンバスじゃなくて、板を組み合わせたようなのとか、あれは何に描いているの?
その板もチタルム川の流域で生活している人たちの古い建材だったりとか、
学校の机の板だったりとか、そういった材に描いている。
69って図鑑に載っている数とかなんですかね?
そうですね。ちょっと重なっているのもあるので、あれなんですけど、図鑑にいる魚というのを1枚ずつ描いている。
いやいや、まだまだ他にも聞きたい話があるんですけども、
残念ながらもう前半おしまいと近づいてしまったということで、これは後半にまた色々と聞きたいと思っておりますけれども、