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♪~
アートテラートニーのそろそろ美術の話を
この番組はアートテラートニーがアートに関わる方をゲストにお迎えして
トークを繰り広げるポッドキャスト番組です
本日は水戸芸術館現代美術センター学芸員 井関優さんとトークをしていきたいと思います
♪~
はい、ということでご出演ありがとうございます 先輩
どうもよろしくお願いします
お願いします
井関さんとはもう長い付き合いですもんね
そうですね
この番組にも何度か出てくださってる 天野太郎被害者の回ですからね僕らは
はい、そうですね
そこで知り合ったみたいな感じですかね
心差しを同じくする仲間です
傷を舐め合う仲間みたいな感じですかね
そうなんですよ
で、井関さんは最初に僕が会った時は まだ資生堂ギャラリーで
あ、そうですね
最初にお会いしたのって2007年ぐらいでしたっけ
2007年、8年
そうですね、横浜トリエンナーレ絡みですよね
そうです
もうだからそんなに経つんですか 10年以上経つんですね
と思います
あのトニーさんが最初横浜美術館でトークをされた前後に
確か天野さんから紹介されて
長いっすね、そう考えると
なんか飲み屋でこいつお前の後輩やでっていう
ヤクザみたいな
そうなんですよ
紹介のされ方でしたよね
で、なんかほっぽられるみたいな感じですね
はい、そうなんです
あと適当にやっとけみたいな感じでしたもんね
はい
ヤクザみたいなやつですね
お話聞いたらね
結構通ってた時期がかぶっていたようで
大学がですよね
そうなんですよ
だからそういう先輩後輩でもあり
後輩の先輩後輩でもあるということで
僕は勝手にもう伊関さんを
伊関先輩といつも思ってますんで
そんな先輩後輩で今日はお届けしたいと思います
ということで伊関さん今働いてるのが
水戸芸術館ですけれども
はい、そうですね
水戸芸術館はですね
2014年の12月からになりますので
それこそ12月1日です
だからもうすぐ8年に入りますね
そうなんです
僕は当たり前で今水戸芸術館って言いましたけど
水戸芸術館知らないよって方も
あの放送を聞いてる方にはいらっしゃるかもしれないので
ちょっとまずは水戸芸術館ってどんなとこなのか
というのを教えていただけたらと思います
そうですね
水戸芸術館は水戸市制100周年を記念し
1990年に開館した復興文化施設です
特徴的なよくNHKのニュースの時に
地震があると映る水戸市の塔があるんですけど
あの銀色のタワーみたいなやつですよね
そうですね
あの柵を張り合わせたような塔なんですが
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こちらが塔館の特徴となっています
こちらはですね
世界的に活躍する建築家の磯崎新さんが
設計されておりまして
内部にはコンサートホール、演劇の劇場
現代美術のギャラリーの3つの独立した施設がありまして
音楽、演劇、美術の3部門がそれぞれに
自主規格による多彩な魅力あふれる事業を展開しています
これはやっぱり珍しいですよね
美術館でたまにコンサート
展覧会の授業としてコンサートやりますみたいなことあるけど
これじゃなくてってことですよね
ここに水戸芸術館に関しては
そうですね
もう完全にそれぞれが分かれて
専用の施設を持ってまして
それぞれ独自に
事業を企画している館になります
ということは
磯崎さん、水戸芸術館の中でも
現代美術センターの学芸員という形になるとですね
そうですね
はい、私は現代美術部門の学芸員
通称じゃない、正称ですけど
正しくは現代美術センターという組織に属しています
これはでも1990年に現代美術専門って言ったのは
結構早い方ですか
日本の国内で考えると
おそらくは専門としては本当に早いんじゃないですかね
1989年に広島市さんが
現代美術館という名前名称をつけて
建てたのがおそらく一番最初だと思うんですね
あれが初なんですね
もちろん現代美術をやっていた美術館はあるんですけど
名称に現代美術っていうものをはっきりと入れたのは
おそらく広島さんが最初じゃないかなと
意外とだから浅いんですね
そう考えると、現代美術の歴史というか
そうですね
もちろんそれ以前からずっと
三宅三宅と先輩方が展覧会を
企画はされてきているんですが
専門としての施設となると
広島市現代美術館さんが
日本の美術館の中では最初になるのかなと
もちろん効率というふうにですよね
で、美東は2つ目ぐらいになるということですね
本当だ今調べたら
東京都現代美術館ですら1995年ですもんね
そうですね
これなんで美東はそんなに
現代美術に力を入れようとしたとかってあるんですか
これはですね
一つはその磯崎新さんが
建築家として選ばれたというところが大きいと思います
もともとは現代美術っていうものを軸に
この館の構想ができたというわけではなさそうでして
歴史的な経緯からすると
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そのコンサートホールと演劇の劇場
美術のギャラリーというような
まだ現代はついてなかったんですね
その時は
この館の構想が立ち上がったのが
84年とかそのぐらいらしいんですけど
その頃にはまだ現代というものは
そこには加わっていなかったようです
磯崎さんが建築家として
この館の設計に携わることになった時に
現代美術っていうものに
特化した館にしていこうという方針に
切り替わっていったというようなことを聞いております
磯崎さんが決めたようなもんなんですね
磯崎さんが提案したものを
水戸氏がそれでいきましょう
ということになったのかなと思いますね
磯崎さん言ってもいいかないですか
建築家なわけじゃないですか
で例えばそれを提案した時に
現代美術に特化した
やっぱり今スペースになってるんですか
その建物としては
現代美術に特化した建物になってますね
ギャラリーに関しては
どういうところが特徴的
他の美術館と比べて
ちょっと現代美術的だなと思います
まずですね
ちょっとこれは皆さんもあまり
分からないところだと思うんですけど
普通美術館っていうのは
なるべく外の光を
空間の中に入れないようにしてるんですね
というのが作品に対して
太陽の光っていうのは
ものすごく悪影響を及ぼす
要素になっています
だから皆さんよく美術館行くとも
すごい暗い照明とかあったりすると思うんですよ
これだと作品見えないんじゃないですか
たまにありますよね
明るくしてくれよみたいなことですね
よくクレームでもそういうのあったりするんですね
なぜそういうことをするかというと
やっぱり太陽の光が
持っている紫外線を中心とした
様々な光が作品に
悪影響を与えてしまうと
例えば紫外線っていうのは
退色させる効果があったりしますし
その他熱線っていう
私たちの目に見えない光の要素がありまして
そういったもので紙が焼けてしまったり
いろいろ影響が出てしまうと
強い光であればあるほど
やっぱりそういうものが強くなってきますので
基本的には美術館って人工照明
しかも光を調節できるような器具を揃えて
展覧会の中で使っているんですね
でも水戸芸術館実はの天井に
天窓がついてる展示室があるんですよ
たしかに
もちろんブラインドで閉めることもできるんですけど
展覧会によってはそれを全開放して
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自然光を中に大きく取り入れることができる
というような設計になっています
当然そこに歴史的な美術品とか展示すると
あれですが例えば彫刻とか
別に紫外線大丈夫なものもあるってことですか
ありますね
というのが実は当館で
天窓に採用しているガラスは
ちょっと特殊なガラスを使っていまして
ドイツ製のものなんですけど
紫外線ですとか熱線ですが
そういった有害なものをほぼカットできる
美術館専用に作られたガラスなんですね
はい展示によっては
そこも開放することもできるとなんですね
そうですね
あとあれですよね
展示室が全部何個あることになるんでしたっけ
展示室はですね
クリテレームという小さな規格で使う部屋を含めると
9室あります
みんな形が違うというか
天井高も違うし
バラバラしてる印象はありますけど
そうですね
さすがトニーさんよく見ていらっしゃる
何度も言ってるじゃないですか
ありがとうございます
実はですね
それぞれ7つの部屋
ボリュームが色々と変わってまして
一番大きな部屋は
展示室の1と5というところになるんですが
横幅が大体9メートル
奥行き18.6メートルで
垂直壁が3.6メートル
天井さらに上にまで行くと
5.4メートルぐらいまでの巨大な白い箱ですね
開放的な感じですよね
そうですね
その次にある展示室2と4という部屋
ちょっと小さい部屋なんですけど
9メートルかける9メートルぐらいの
小さな部屋なんですね
天井高が3メートルという
ちょっと低くなるんです
でその間に挟まれた
展示室3というところは
9.5メートルかける9.5メートルぐらいの
床面積に対して
天井の垂直壁は5.4メートル
一番高いとこですか天井が
垂直ですね垂直に立てる
芸術館の特徴として
もう一つあるんですけど
斜めの壁があるんですよ
垂直に行って
さらにそこから斜めに屋根型になるとですね
はいそうですね
つまきりの屋根みたいな形で
屋根になっていく
壁が立っているんですけど
その先の一番高いところになると
13メートルになるんです
めちゃくちゃ高いですね
ここの空間は
すごいだから音も反響がするぐらいなんですけど
結構そういうような空間の作りであったり
あともう一つ面白いのが
展示室6っていう場所なんですけど
そこは天井と壁として使える
全長が46メートルあるんですよ
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細長ってことなんですね
細長で幅は3.6メートルです
だいぶ細長い廊下みたいな感じの
もう廊下ですね
33年度の廊下みたいな感じです
意外とみんな廊下と思ってるけど
あそこも展示室なんですね
あそこは完全に展示室と呼んでます
展示室6という括りですね
壁もちゃんと作品を展示できるようなものになってますし
照明も展示用の照明がついてます
これこんだけ色々と形を変えてるのは
これはもうあえて狙って
そういうふうに現代美術のギャラリーだからってことで
考えたってことですか
おそらく磯崎さんが
そういう形で設計されているんだと思うんですね
例えば展示室2と4
先ほどもちょっと小さい
展示用だから低くなってるっていうことをお伝えしたんですけど
ここはもともと磯崎さんが
版画作品とかドローイングのような
紙に書かれたものプリントされたものを
展示するために設計してまして
そういうところで作品との距離が近いんですよね
なるほど
そうするとどちらかというと
これぐらいの他の展示室と比べて
ちょっとこじんまりとした空間の方が
その親密さが出せる
作品と観客との間の距離を近づけることができるということで
そういうボリュームにしているという資料も残っています
これってその額原因としては
全部が違うのと
もしくはもう本当にこう
門切り型にも全部同じ形みたいな
展示空間だとどっちの方がやりやすいんですか
そこは難しいご質問ですけど
私としてはボリュームが違う方が
展覧会を構成する上では
イメージを膨らませやすいと思っています
結構その換気をつけることもできますし
やっぱりその作家にとって
ずっと同じ作品を作っているわけじゃないじゃないですか
それこそドローイングを書くこともあれば
大きなインスタレーションを作ることもありますし
立体作品を作っていたり
かつ映像作品があったり
いろいろと現代美術の作家って
たしたようなテクニック素材を使って
作品を作っていますので
一応じゃないんですよね
やっぱり作品って
例えばそれが個展であっても
グループ展であっても
それを考えた時に
空間のボリュームっていうものが
展覧会の構成を導いてくれるような
感覚になる時がありまして
そういう点では
大きな展示室を仮設の壁で区切っていって
展覧会場を作っていくとか
もしくは同じボリュームの部屋が
いくつも並んでいるような展示室というよりも
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やっぱり環境があるような
当館の展示室っていうのは
非常に展覧会を企画していく上でも
面白い空間かなと思っています
これやっぱり石崎さんが見とけ長いじゃないですか
そうすると
いろんな環境のあるうちの展示室となって
この展示室にこの展覧会合うなって
考え方なのか
それとも展覧会先やりたいものがあって
それに合わせて
じゃあこの人はここに
この作品をこう展示していこうって
どっちでマインドで展覧会って進んでいくんですか
私の場合は両方あります
なるほど両方ありますね
じゃあせっかくなので
今回今やってる展覧会あるじゃないですか
先輩告知をしていただきたいなと思うんですけど
今回の展示はどっちのパターンで考える
今回の展示に関しては
このアーティストの展覧会をやりたいというところから
そこからじゃあ作品をどこに展示していこう
って考えたってことなんですね
はいそうですね
ではその今回今やってる展覧会を
ぜひ教えていただきたいなと思いまして
先輩から読みますか
いやあのトニーさんからお願いできました
今開催されているのは
佐藤雅治美行存在の不在
不在の存在という展覧会が行われております
こちらは11月13日から始まりまして
2022年1月30日まで開催されていますが
ありがとうございます
僕も好きな作家さんなんですけど佐藤さん
これはもう先輩から
改めて教えていただきたいなと思いますので
どんな作家さんなんですか佐藤さん
佐藤さんですがビデオカメラやスチルカメラで
撮影した日常の風景を
パソコン上のペンツールというものを使って
その風景ですとか対象をトレースして
アニメーション化するロトスコープと呼ばれる技術によって
映像作品を制作してきたアーティストです
ちょっとペンツールってよくわかんないと思うんですけど
具体的にフォトショップというソフト
アプリケーションありますね
あの中でペンツールっていうものがあるんですよ
それを選択すると画面上に線が引けたりする
このアニメーションはフォトショップで作ってるんですか
そうですね
具体的にはフォトショップっていうもので
写真からいろいろな
例えば佐藤さんが描こうとしている対象をトレースして
さらにその上に着色をして
それを今度はアフターエフェクトというソフトで
例えばちょっと光とか霧のような効果とか
つける場合はつけたりもするんですね
例えば雲の効果をつけたりとかいろいろそういったものですとか
桜の花びらとかパラパラと舞ってる作品があったりすると思うんですけど
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それを自然に桜を回せるような演算を行ったりとか
いろいろな特殊効果を映像の中で作るのが
アフターエフェクトっていうソフトなんですけど
そのソフトでそういった効果をつけるものもありまして
その後にプレミアというソフトで最終的に映像として動かしていく
これ今の写真を撮ってきて
そこにペンツールでなぞってアニメ化する
これ作品ってアニメーション映像みたいになってるじゃないですか
ということは一コマ一コマそれをやるってことです
そうですね
ということはすげー膨大なことをしなきゃいけないとこです
作業としては
作業としてはものすごい膨大です
ただですね皆様のアニメーション見ていると
全てのアニメーション毎回毎回描いてるわけじゃないっていうのを
気づかれることあると思うんですね
例えばアニメーションの背景
背景っていうものは毎回毎回その一コマごとに描いてるものじゃないっていう
気づいてたりします
動かないからってことですかそこ
そうです
そこに背景に関しては動いていないじゃないですか
ということは背景自体は毎回描かなくてもいいんです
動くところだけを描けばいい
そうです例えばそこに出てくるキャラクターの動きだけを
毎回毎回描き足していって
その動きをつなげていくってことはあるんですけど
背景とかを動かないものに関しては
基本的に1回描いたものを使っていくと
何を動かして何を動かさないかっていうところも
アニメを作っていく上では考えていかなければいけないですし
その動くものと動かないものの接点
そこに関してもいかに自然に映像として
つなぐことができるかというところも
考えていかなければいけないので
実は結構高度な技術なんですね
佐藤さんは元からアニメーターになりたかったわけではない
それだったらアニメーションの道に行けばいいじゃんって
勝手に思っちゃいますけど
そうですね
もともとは考えてはいなかったんですね
佐藤さんなんですが
1973年老板県の鶯木市というところで生まれてます
幼い頃から絵を描くことがとても得意だったようで
中学からは絵画教室に通うようになり
その頃には将来画家になるって目指してたそうなんですよ
だからもともと別にアニメーションを作ろうって思っていたっていうよりも
むしろ本当に画家、絵を描きたかった
絵を描いてきたかったっていうのがあったと思うんですね
その後に老板県立芸術緑ヶ丘高校という高校に進学するんですが
その高校が県立なのにちょっと特殊で
授業の7割が美術に関する科目
すごいですね、特化してるんですね
特化してます、ここは
今もあるんですけど
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油彩ですとか油絵
日本が彫刻デザインを3年間で一通り学ぶと
もう芸大の感じですよね
そうですね
だから7割ってなると
じゃああと何勉強してるんですかっていうぐらい
ほとんど美術付けの高校生活だったようです
高校を卒業した後は東京に出て
一郎で予備校に通いながら
東京芸術大学の美術学部絵画科優化専攻に入ったんですね
優化です
結構高校の頃の課題作品を
まだ老板のご実家はお持ちでして
それをちらっとお見せいただいたんですけど
抜群にうまいんですよ
もう才能はそこからあるんですね
才能本当にその頃からあったようですね
じゃあもうそれでいけばいいじゃんって思っちゃいますけどね
そうですね
当時の東京芸術大学の優化専攻なんですけど
今でも20倍近くの競争倍率あるんですけど
佐藤さんが受験された頃って50倍から60倍くらいだったって聞いてるんですよ
東大より難しいですよね
東大よりも難しい
定員が50人なんですけど
受験者数が2500とか3000とかになっちゃうんで
学校に入りきらないんですよ
同じく受験された方に聞いたら
武道館を借り切って試験を行ってたっていう話もあります
もうでもそれだけ浪人が出たとこですね
そうですね
五六六当たり前って言われてた時代らしいので
同期だと思ったら九郎だったりとか
先輩だと思ったら八郎だったりとか
でも今さらっと言った一郎して入ったっていうと
普通の大学だったらあり得る話な感じじゃないですか
一郎して入る
東大の一郎して入ったらすごいことなんですよね
すごいです
普通に一郎二郎ぐらいまでは
普通に浪人じゃないと思われるぐらいのところですよね
でもそこから4歳でずっと4年やったわけではないですか
そこが面白いんですけど
やっぱり中学高校さらに予備校で
ひたすら7年間絵を描き続ける毎日だったんですよ
ちょっとだから普通の皆さんよりも早いんですよね
なるほどなるほど
でも入学した頃には絵描くのにも疲れたっていうか
飽きてしまったらしかって
そうでしょ
みんなここから始めるぞうなのに
もうひととびやっちゃってるから
そうなんですよ
早くても多分高校ぐらいだと思うんですけど
佐藤さんそのスタートが中学だったので
ちょっと早いですよね
それで大学に入ってから
ほとんど絵を描かなくなってしまったようなんですよ
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その代わりに美術手帳とかいろいろそういうもので
知るようになった現代美術というものに
ちょっと関心を向けるようになったようで
それこそ大学1年の頃は
蒲田忠さんの影響をちょっと受けていたようで
結構インスタレーション作品とかを作っていた
もう全然違う作風の人ですよね
もう絵を描くってもうない人ですよね
蒲田さんはあんまり絵描かないですからね
でも一応そうとは言っても
やっぱりアニメトレースして描くっていう
絵からは最後、あれですよね
佐藤さんもお亡くなりになって何年
そうですね
亡くなられたのは2019年の3月の9日なんですね
40何歳? 45歳です
小学校生ってことですもんね
でももう最後まで絵からは外れなかったと
そう考えると
そうですね
最後まで絵から外れなかったのと
あとまたちょっと後で作品のことについても
話していこうと思うんですけど
本当に最後は絵に帰っていくんですよね
アニメーションじゃなくてってことですね
本当に絵画に戻っていったというところが
佐藤さんのとてもアーティストとして
心打たれるところがありますね
絵からアニメーションに切り替わった
なんかその転換はあったんですか?ちなみに
そうですね
絵からアニメーションに変わったっていうとこ
東京芸大の時は基本的には
全くアニメーションっていうものを
作品の中に取り入れるってことはされてなかったんですけど
東京芸術大学の大学院を1999年に終了されて
それからドイツに渡るんですね
そこでドイツで国立デュセルドルフ
クンストアカデミーというところで研究生として
勉強をし始めるんですね佐藤さん
ただですねその時に作った作品っていうのが
アニメーションの作品を作るきっかけになったであろうもので
南アフリカの現代美術のアーティストで
ウィリアム・ケントリッチっていう方
ご存知ですかね
ちょっと前に金美伝なんかやった金太美ですかね
設議されたからですね
ドローイングをたくさんされる方
はいそうですドローイングが非常に重要で
彼はもう手描きのドローイングを繋げたアニメーションに
していたと思うんですよ
佐藤さんも実はですね
パラパラ漫画みたいなことですよね
ドローイングをたくさん描いてって
言うなればパラパラ漫画ですね
佐藤さんもドイツに渡って
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おそらく彼の作品に触れたのかなって思うんですけど
最初に作ったアニメーションの作品が
木炭画を繋げてアニメーションにしたものになります
アイタッチドリームナンバーワンという作品で
今回の展覧会でも展示しているんですが
その作品の作り方っていうのが
壁に大きな紙を貼って
そこにデッサン用の木炭
バーベキューとかで使うようなものじゃなくて
ちゃんと絵を描くための木炭があるんですけど
その木炭で絵を描いては写真に撮って
動かす場所だけ消してまた描き足して
写真に撮ってっていうことを続けて
映像にした作品なんです
それをさっき説明してくださったペンでやると
やり方としては同じなんですねアニメーションの
そうですねただなぞってないんですよ
そういうことか
はい一から描いてるんです
この時はってことですね
そうですね
だからその時はトレースっていうことをせずに
自分のイメージしたものを木炭で描いて
それをコマ撮りして映像にする
ということをしてたんですけど
ただそれが作られたのが1999年
このデュセルドルフ・クンストアカデミーに入学した年で
この時期ってちょうど
Macがすごく手に入りやすくなった時期なんですね
確かにその頃かもしれないですね
それこそiMac
ボンダイブルーのiMacとかが出始めた頃で
比較的手に入れやすくなっていた時期なんですね
実はこの映像も写真自体はフィルムのカメラで撮ってるんですけど
その撮ったフィルムをスキャンしてスキャナーでスキャンして
それを最終的にコンピューターの映像編集のソフトでつないで
アニメーションにしたという作品です
その作品が最初の彼のアニメーションの作品になるんですね
でも今、うちの館でも展示している作品の大半は
全く作り方が違って
先ほどご説明したようなパソコン上で
自分が撮影してきた風景ですとか人とかを
ペンツールを使ってその人のアウトラインをとって
それをさらに着色していってアニメーションにしていくというようなやり方をしているんですけど
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そこら辺の転機が一つ里さんの中には大きくあるんですね
実はこの「I touch dream no.1」という木炭画で描かれた絵をつなげて
アニメーションにした作品の次に作られたのが
2004年から2007年にかけて制作した約10分ぐらいのアニメーションの
「トラウム」という作品になるんです
この「トラウム」という作品は
皆さんが佐藤さんのお名前を聞いて思い浮かべるタッチのアニメーションになります
今説明したペンツールを使うものになると
これちょっと僕が不勉強であれなんですけど
佐藤さんというとやっぱそのペンツール使っての
その独特のアニメーションの作家っていうのを
原美術館の展覧会見た時から知って
それがすごいなと思って見てたんですけど
こういうやり方をしてる作家って
他に僕は思い浮かばないんですけど
いろいろですよ、この作家さんみたいな人って
そうですね、現代美術においてはあんまりちょっと
私も思い当たらないというか
いないことはないと思うんですよね
あの別に特殊な技術ではないですし
もちろん自分の作品の中のある一部に
同じようなことを使われてるっていう方は
いらっしゃると思うんですけど
例えばですね映画ですと2019年、あれ2020年かな
2020年に公開されたの「音楽」っていう
短編のアニメーションがあると思うんですけど
その音楽は全編ロトスコープで制作されています
でもロトスコープの現代アーティストっていうと
もう結構今佐藤正晴さん一択な感じですか
そう考える
ここまでの規模で作られてる方っていうのは
ロトスコープだけで特化して制作をされてるっていうのは
私も知る限りではそうですね
佐藤さんだけじゃないかなという気はします
はいちょっと私もそこ
あの勉強しきれてないところがあるんですけど
もちろん自分の作品の中で
ロトスコープの技術
まあ言ってみればそのトレースすること自体は
されてる方はいると思うんですよ
ただそれをつなぎ合わせて
アニメーションにするっていうのは
ロトスコープとして作品につかれてる方っていうのは
そうですよあまりちょっと聞いたことがないかなと
そうですよね
ちなみにこの展覧会では
もう今言った初期の作品も当然出てますけども
晩年まで全てもうどれぐらいの作品が見れると
考えたらいいですか
そうですね今回の展覧会なんですけど
佐藤さんの映像作品で現存するものに関しては
全作品26点展示してます
全部見れちゃうってことですね
そうですね映像に関しては
ただですね佐藤さん映像作品だけじゃなくて
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平面作品も作っておりまして
そちらに関しましては
大体制作されたうちの3分の2ぐらいは
展示してますね
でもほぼ佐藤正晴展としては
もう大規模ですよねそう考えると
かなりの大規模です
今回の展覧会に合わせて
制作したの図録があるんですけど
そちらに掲載されている作品の点数が99点なんです
こちらの現在確認できている作品
というのが佐藤さんはやはり
あまりにも早く亡くなられてしまったので
ハードディスクの中に作品
まだ途中なのかはわからない
制作の途中なのかわからない作品とかが
あるらしいんですよね
そこについては
でも作品のタイトルもついていなければ
制作年も佐藤さんがつけていなかったり
ということで
まだ完成した作品としては
まだ私たちもちょっと見なしていないというか
それは除外しているんですよ
それ以外で佐藤さんが
これはもう完成した作品ですと
いうような形で
認めているものが99点
全部じゃないですか
そうです99点ですね
そのうちの64点を展示しています
佐藤正春大全集展ぐらいに言えばいいもの
今回タイトルわざと美好ってちょっと使ってる
この言葉はどういうところから取ったんですか
そうですね
この美好っていう言葉なんですけど
佐藤さんにとってもすごく重要な言葉なんですね
例えば今先ほど
トニーさんもちらっとおっしゃった
原美術館での展覧会のタイトル
覚えていらっしゃいます
東京美好でしたっけ
そうです
東京美好です
実は佐藤さんが作品と展覧会に
初めて美好っていうものをつけたのが
東京美好からなんです
東京美好っていう作品名でしたよね
そうですね
ただ展覧会タイトルも原ドキュメンツ展
佐藤正春東京美好というタイトルだったと思います
あと作品において美好っていう言葉がついているのは
実は東京美好っていう作品と
福島美好っていう作品2つだけになります
でもこの2つって佐藤さんにとっての代表作なんですよ
佐藤さんがなぜこの美好っていうものを
この2つの作品つけたかっていうこととも関わってくるんですけど
今回の展覧会で美好っていう言葉が
全面的に出してありますが
佐藤さんにとってもこの美好ってすごく重要な言葉だったんですね
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この佐藤さん
ただこの美好っていうのは自分でつけたものではないというか
自分ではもともと美好って言葉を
そんなに意識はしていなかったんですよ
ただ2013年に制作された「伊達巻」という作品
伊達巻を作る工場の映像が流れるやつですよね
そうですね
工場見学みたいな映像ですよね
工場見学みたいな映像です
その伊達巻という作品を見たデザイナーで
佐藤さんの友人でもあった杉原修さんという方が
彼のブログの中で書いていたんですけど
佐藤さんの制作方法はモチーフの後をぴったりとつける美好のようと
彼が表したんですよ
このブログを佐藤さんが見て
それまで作業的にしか意識していなかったトレースを
美好という言葉の変換によって
ご飯を食べたり自転車に乗ったり
ニュースを見たり笑ったり怒ったり
シャワーを浴びたり会話をしたりおならをしたり
お酒を飲みながらカラオケで歌ったり
疲れて眠ったりなど
生きていればごくごく当たり前な日常の行いと同様
トレースもまた行為として意識できるようになったと語ってるんですね
また佐藤さんはトレースっていうことについてなんですけど
トレースはものすごい時間がかかる作業なんですよ
佐藤さんの制作って
それこそ作品によっても半年とか
今ちょっとちらっとお話ししていたトラウムっていう作品は
4年かかってるんですね制作に
確かに発表年がだいぶ空いたなと思ったら
それは途中やってなかったわけじゃなくて
ずっと制作してたってことなんですね
ずっと制作してました
20分間のアニメーションを4年間かけて作ってます
なぜこれをしていたかっていうと
佐藤さん次のように答えているんですが
自分の身の回りにあるものが本当に存在しているのかを確認するために
わざと手間をかけているのかなと思います
簡単に手に入るものは簡単に手放すことができる
でも苦労して手に入れたものは自分の肉となり骨となる
僕にとってトレースとは食べる行為と同じなのかもしれません
深いことを言いますねやっぱり
そうですねこういうように佐藤さんにとって
美行トレースっていうことは非常に重要な言葉になってくるんですが
それを佐藤さんも意識しながら
次第に制作してきたのかなと
そのトレースっていうものは佐藤さんの技法でもありますし
その美行っていう言葉が佐藤さんの作品の相対を言い表すようなものでもあるんじゃないかな
ということもありまして今回のテーマ回のタイトルつけています
39:02
これは東京美行現代アート好きの方が今回聞いてらっしゃるかもしれなくて
原美術館で東京美行見たよって方もいらっしゃると思うんですよ
僕みたいに
東京のいろんな街中の風景の映像にして
その一部をアニメーション化してる作品じゃないですか
そうです11台ぐらいモニターがあった
12台
12台ありますね
あれですよね原美術館の時にはモニターで展示されてたんですよね
そうですね
記憶で僕の記憶は確かならない
今回は 正しいです
違うんですよね
だから原美術館で見たからいいやじゃないんですよね
水戸芸に来ていただきたい
ここも一つ先輩のこだわりでしたもんね
ありがとうございます
そこに触れていただいて
今回の東京美術館の展示はですね
初めてプロジェクターで展示をしています
今まで特に原美術館さんですとか
原美術館さんは2回も展示されてますし
あと老板県立美術館さん
今回この展覧会を共同で企画している間で
先行して展示をされたところなんですけど
そちらでもモニターでの展示だったんですね
今回12台プロジェクターを使って
東館では初めて巨大な画面で作品をお見せしています
これなぜ大きくプロジェクターでお見せしたかったかというと
やっぱりこの東京美術館って
12の画面に90の東京の風景が映し出されてるんですよ
いろいろなところ皆さんも気づくような場所もあれば
どこかわからないような
本当に日常的な風景もありまして
そこを小さい画面で見るよりも
大きな画面で映すことによって
皆さんに東京を散歩してるような
佐藤さんが撮影した
その東京の風景を佐藤さんの後を追いかけてほしい
美好してほしい
僕らも美好するんですね
佐藤さんが美好して作品作ったけど
その佐藤さんを美好してほしいというような
そういうことを考えて展示を作ってます
これがすごく迫力があったんですけど
その後に僕も思わず聞いちゃいましたけど
今回全部でプロジェクター何台あるんですか
プロジェクターに関しては
1,2,3,4,5,6,7,8,
33台ですかね
過去最多って言ってましたよね
そうですね
モニターがブラウン管が1台あるんですけど
それを含めてそれも30台ちょっとありまして
全部で65台のプロジェクターとモニター使ってます
42:05
それで疑問になって思って
この前僕も個人には聞きましたけど
そういうのってレンタルして借りてるんですかって聞いたら
これ買ってるんですよね
そうですね
今回ちょっとですね
こうやって企業さんのお名前出しちゃっていいですかね
全然大丈夫ですよ
ソニーさんから重要なんでもう一度言いますけど
ソニーさんから
天下のソニーさんから
ソニーさんからご協力いただいて
モニターを14台お借りしてるんです
正確には
モニターはお借りして
モニターはとてもいいブラビアっていうやつなんですけど
すごく綺麗なんですよ本当
さすがソニーですよね
さすがソニーさんです
ちょっとびっくりしましたこれは
ソニーさんからモニターをお借りして
14台お借りしている以外は
基本的には当館で在庫している機材を使ってます
だから巡回店とかあったら
巡回先から借りりゃいいじゃん
ぐらいに思ってたんですけど
作品としてプロジェクターとか機材も回ってるのかなと思ってたら
そんなことないっておっしゃってました
はいそんなことないですね
というのが機材って結構美術家にとって
扱いが困るものなんですよ
資産になってしまうっていうのが
これすごく内輪の話なんで
カットしていただいていいんですけど
この番組内輪の話皆さん大好きだから
美術館って基本的には
作品を収集保存していく施設じゃないですか
でも機材って収集対象じゃないんですよね
基本的に
コレクションじゃないとですもんね機材自体は
なので機材あの備品なんですよ
でも備品って言いながらも結構場所は取るし
どんどん経年劣化もしていけば
モデルも古くなっていくと
にもかかわらず捨てるに捨てられないっていうことが多いんですね
確かに
廃棄にもお金がかかりますし
その廃棄するにあたってもいろいろと条件があるので
それと粗大ごみに出せるもんじゃないんですね
皆さんも普段ね
家でも粗大ごみ出すだけでも
めんどくさかったりすると思うんですけど
こちらになると手続きから何からいろいろありますので
そんなにこうあんまりうっちゃることができないっていうのはあるんですけど
当館は元々現代美術に特化した館であるっていうことと
基本的にコレクションを収集しないという方針で
美東芸術館ってコレクションはないことになってるんですか
そうですね
よくいろいろな美術館さんが例えば印象派を集めてますとか
モノ派具体とか集めてます
シュルレアリスム集めてますとか
いろいろそういった形で収集方針を立てて
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それに即したコレクションを形成しているっていうのが
美術館になりますが
美東芸術館はそれがないんですよ
元々コレクションをしない館として
現代美術に特化したアートセンターとして開館しておりまして
その関係で元々そんなにコレクションがないんですね
実際に全く収蔵品がないっていうと
そうではないんですけど
高さに比べたらもう10分の1とかじゃないです
下手すると100分の1とかそのぐらいの
なのに美品は増えていくんですね
美品は増えていきます
なんだかんだでやっぱり映像とか
もちろん映像の展覧会だけに限らずで
いろいろ資料的に見せる映像もあったりしますし
そんなことでどんどんと増えていったんですね
ただ今回の展覧会で買い足したプロジェクトは4台だけです
あ、そうなんですね
元々かなり持っていたものを使っています
あとちょっと特殊な映像を再生するための機械なんかも
改めて買い足しはしたんですけど
でもそれでもそんなに予算を圧迫するようなぐらいの
金額ではなく元々在庫しているものを中心に活用してますね
でもこの前聞きました
その12台のバターバスの東京日光のモニターは
全部同じモニターじゃないとダメだって言ってましたもんね
あ、そうですプロジェクター
あ、プロジェクター
そうですよね
というのがですねプロジェクターっていろいろなモデル
たくさんの皆さん見てると思うんですけど
個体差ってすごく大きいんですよ
特に大きいのが投影距離の問題です
スローディスタンス投影距離が
それぞれのプロジェクターによってまちまちなんですよ
でそれを混ぜていくと
同じ大きさの画面に映像を投影したくても
プロジェクターの位置を計算し直したりして
プロジェクターに個体差のばらつきがあると
そういうところとかすごく面倒になってしまうんですね
だからそういうところも含めて
あと同じメーカーであっても
やっぱり絵作りが違うってのがあるんですよ
なるほど
であればできれば同じモデルで統一して
展示を作るっていう方が
もちろん作品を設置していく上でも
とてもやりやすいものになりますし
かつ作品をお見せする上でも
例えば複数のプロジェクションをする場合であれば
統一した絵作りの絵をお見せできるっていうことになりますね
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プロジェクターがあればなんとかなるじゃなくて
そこまで考えなきゃいけないんですね展覧会って
そうですね
そういうところまで考えて設計していかないと
作家が思っていた展示っていうものを
いかにそこに近づけていくかってのは
やっぱり難しくなってきちゃうのかなと思っています
そこもちょっと注目してみてもらえると
嬉しいなと思います
ありがとうございます
今回東京美術館と伊達巻が
それぞれ12面と7面なんですよ
ですので今のお話のところも
思い出しながら展示を見ていただけたらなと思います
そして結構収録が迫ってきまして
せっかくの最後伊貞さんが
これはぜひ見てもらいたい作品ありますか
っていう質問なんですけど
伊貞さんに選んでもらうというよりは
さっきちょっとチラッと話が出たんで
やっぱり最後の平面作品
はい 死神先生の知りたい
フィナーレの部分というか
についてちょっと教えていただけたらなと思います
はい 死神先生というシリーズなんですけど
これはですね
佐藤さんが2018年の9月に
嫁3ヶ月と主人から伝えられるんですね
がんでしたっけ
そうです 上子のがんで
実は2010年にドイツから帰国して
すぐがんが見つかるんですね
上子のがん
その時一回手術を受けて治療されて
しばらく大丈夫だったんですけど
2015年それこそ東京美工を
制作している佐中に再発するんですよ
そのまま即入院となって
手術を受けて
上子を全部取ってしまったんですね
ですから
佐藤さんの上子を全部取ってしまったので
上子は全部入れ歯になっていたようなんですけど
それを受けても
それでも定員が見つかったりして
ずっとがんと戦ってこられたんですね
作業自体大変だけど
さらに病魔と戦いながらってことだったんですね
そうですね
やっぱりがんでそこまでの進行ってことなので
抗がん剤の治療ですとか
放射線の治療を受けながら
かなり体力的にも精神的にも
つらい中での制作をされてきたようなんですが
それでも制作を続けてこられたんですけど
最終的には嫁さんか月と
主治医から宣告されてしまう
その時にはですね
病状もかなり進行していたようで
視力が低下していたということだったそうです
特に左目だったかな
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ここはもうほぼ見えなくなってしまってたようで
そうすると映像制作
映像その作品の制作が
どんどん難しくなってしまうようなんですよ
かなり目を酷使する作業でしたし
おそらくはペンツールとか
パソコンのタブレット用のペンを握っているのも
すごく大変だったんじゃないかなと思うんですけど
そういった中でも
映像作品の制作が難しくなってしまったと
そんな中で作り始めたのが
死神先生というアクリル画の作品のシリーズになります
日常的な風景を描いたシリーズみたいな感じですよね
そうですね
結構日常的な風景っていうのは
佐藤さんに一貫していたテーマでもあるんですけど
今度はもう外にも出れなくなっていたので
自宅の中にあるものを
佐藤さんは描いていくようになります
自宅で静かに過ごしていく中で
目に留めた親しみのある風景であったり
段ボールとかですよね
そうです
段ボールとか階段とか
そういったものをアクリル画として9点描きまして
最後に制作されたのが
時計をちょっと素材とした作品で
『Now』っていうものになるんですけど
合計10点の作品化なる
死神先生というシリーズになります
タイトルはちょっと怖そうなタイトルですけど
ちょっとポップな感じですよね
雰囲気としては
そうですね
背景がちょっと鮮やかな水色で
ピンクのキャップをかぶっている骸骨が
死神先生の中の
その骸骨っていう作品なんですけど
この死神先生なんですけど
佐藤さんにとっては本当に異作となる作品です
佐藤さんがこの作品を描き始めたのは
18年の9月頃
おそらくはもうその年中には
書き上げていたんじゃないかなと思います
亡くなられたのが19年の3月の9日になりますから
ちょっとそういうのも踏まえてみると
なんか胸に迫る作品ですよね
そうですね
この作品についてなんですけど
佐藤さんはこんなことを
ちょっとおっしゃってたんですけど
自宅から出られなくなって
自分が住んでる家を改めて見ていて気になったものと
死と向かい合う中で生まれた心情が
こうして今まで気にもしていなかった対象が
愛おしく見えてきて
それを何とか記録したいと
そういうことを佐藤さんおっしゃってるんですね
またですね
佐藤さんが住まれてた
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茨城県鳥出市の戸頭というところにある
釈弥が老朽化ということで
出ていかなきゃいけなくなってしまったと
地震もあったりいろいろですし
実はこの地域って1960年代から
開発が始まっている場所で
東京のベッドタウンとして作られたところなんですね
おそらくは結構最初期に建てられた家なんだと思うんですけど
だから地区40年50年とか
そういうところに佐藤さん住まれてたんですが
そこが老朽化ということで
出ていかなきゃいけないということで
誰の目にも気にせずに
家と共に消えていく存在を
絵にしたいっていうことも
佐藤ちゃんが考えた
それでモチーフがどんどんと自宅の中に
描かれていったようですね
なんか胸に迫りますね
本当そう考え
存在の不在
不在の存在ですね
まさにみたいなタイトル通りですよね
そうなんですよ
この作品ですね
ちょっと皆さんに
展覧会の中で
ぜひ近づいてじっくり見ていただきたいんですね
というのが
もちろんこの作品
今まではずっとコンピューターの中で
作品を描いてきた佐藤さんが
その学生の頃に戻ったかのように
それこそ高校生とか中学生の頃に戻ったかのように
アクリル絵の具で木製パネルに直接
自分の手で描いてる
筆で描いてるってことですね
そうなんです
ここで私が作品を見て気づいたことがあったんですけど
最初は作品を写真だけで見た時は気づかなかったんですよ
でもそれこそ本当に近づいて
実際に作品を目にした時に気づいたんですけど
この作品はハードエッジっていう技法で作られているんですね
ハードエッジってちょっと聞き慣れないかなと思うんですけど
高校とか中学校ぐらいで美術の時間でマスキングテープを使って
例えばそこをカッターでイメージを切り抜いて剥がして
そこに色がつかないようにすると
塗ってあるところは
そういうの多分経験したことがある方いらっしゃると思うんですけど
この作品はそういう描き方で描かれてるんです
なぜそれに気づいたかっていうと
画面に結構汚れがあるのと
もう一つ絵の具と絵の具の境目が盛り上がってるんですね
シャープに
よく見てみると
よく見てみると垂直に立ち上がってるんですよ
これって普通に筆で描いたらそうはならないんです
なるほどそこに元々あった何かがあったから
それがマスキングテープだったりしてるんですね
そうですね
あとが残ってる
あとがある
その汚れもマスキングテープの糊なんです
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どうしてもやっぱり残っちゃうんですよ
糊って
これを気づいたところ
佐藤さんの奥さんでいらした方っていうのは
大垣美穂子さんっていうアーティストなんですね
彼女も今ちょうど新宿の県中橋というギャラリーで
「うず」っていう展覧会を開催されてるんですけど
その大垣さんにその絵ことについて尋ねたんですね
そしたらマスキングを貼るのは
私の仕事だったって言ってたんです
じゃあ空腹でやってたんです
そうですね
かなり大垣さんが支えているところがあるんですけど
なぜ佐藤さん自分でやらなかったっていうと
もうそれができなかったんだと思うんです
その時には
マスキング貼ることすらできなかったってことですか
マスキング貼るのもできないし
それを切り抜くっていうことも
彼にはもう難しかったんじゃないかと
でも筆だけは辛うじてもう気力でやってたってことです
じゃないかなっていうのをちょっと想像してるんですよね
それがなぜさらに革新へと近づいたかっていうと
実はですね
この死神先生全部で10作品ありますって
先ほどお伝えしたんですけど
会場でちょっとその死神先生について
佐藤さんが寄せた文章をまとめてプリントした
紙を配布してるんですね
こちらのご自由に
ただでお持ちいただけるものなので
ぜひ作品をご覧いただくときは
その紙と一緒に作品を見ていただきたいんですけど
実はその作品の描かれている順番に
並べてあるんです
で死神先生の中では
骸骨が一番最初に描かれてるんです
一番最後に描かれたのは
Nowっていう時計の作品なんですね
その一つ前にあるのが階段なんです
階段を見ていただくと
他の作品と明らかに描き方が違うんですよ
なぜかというと筆のタッチが全然違うんです
もう粗いってことですか
粗いというかよくよく見てみると
もう筆じゃないんですよ
何で描いてるんですか
ペンキを塗るローラーです
もうそれぐらいしかできない
なっちゃってるんです
おそらくはそうだったんじゃないのかなと思うんですね
これあくまで私の想像なんで
はっきりとそれが真実ですってことは言えないんですけど
おそらくはもう最後の頃には
ローラーを転がすぐらいまでしか
できなかったんじゃないのかなっていうのを
ちょっとその作品を見て
はい
うわぁやっぱりちょっと近づいてみないと
わかんないですねそれは
先輩今更ですけど
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それ僕がいる時に言ってください
これまたみとまで行かなきゃいけないじゃん
なんで今
今日はこの収録はオンラインの収録だからあれだけど
またみと行かなきゃいかんわ
トニーさんならやっぱり気づくかなと思ってたんですが
ちょっとそこは僕も何か不注意
もう少しちゃんと今度作品を美好したいなと思って
いやいやいや
いやあのまだまだちょっと紹介していただきたい作品はあるんですけれども
ちょっとこの後それは後半にも撮っておこうかなと思いますので
ここで改めて展覧会情報を告知したいと思います
佐藤正春美好存在の不在
不在の存在は美都芸術館現代美術ギャラリーで
2021年11月13日から
2022年1月30日まで開催しておりますと
はいお待ちしております
はいということで
次回は伊関さんのご経歴を交えつつ
さらに展覧会についての話も続けていきたいと思います
それではまた
バイバイ