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始まりました、志賀十五の壺。
みなさんいかがお過ごしでしょうか。オリバーカーンです。
今回は日本語の、ま、助詞ですね、「の」について考えていこうと思います。
典型的には、ま、所有者を表すっていう風に言っていいんではないかなと思います。
私のスマホ、ま、私っていう人物が所有しているスマホっていうことですよね。
どんな言語でも、こういう風に、所有者を表す、えー、なんて言うんですかね、形っていうかな、
ま、名詞の変化形にしろ助詞にしろ、ま、そういったものを持っていると思うんですよね。
で、そういうのをよく続格という風に言います。
ま、英語だったら所有代名詞、myとかねyourとかが表すこともあればofで表すようなこともあると思うんですけど、
日本語の表現には、この所有者を表しているのが、逆に所有物を表しているような場合もあるんですね。
どういうことかというと、今回のエピソードタイトルにもあるように、
男の髭、これは男が所有している髭っていうことですけど、
これが逆転して、髭の男っていうような言い方もできるんですよね。
まあ所有物を表しているというか、より正確には所有物でもって、その男っていうものを特徴づけている、就職している、ま、そんな言い方ができると思います。
ただ、いつでもどこでもこの髭の男みたいな言い方ができるわけではなくて、
女の髪、当然これは言えますけど、これを逆転させた髪の女っていうのは、まあ相当厳しいんではないかと思います。
なぜ髭の男っていう言い方はできるのに、髪の女っていう言い方は厳しいのか、そのあたりのことを今日はお話ししていこうと思います。
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こういう所有物の所有者っていう言い方について、角田多作という先生が非常に面白い考察をしています。
世界の言語と日本語っていう黒潮出版から出てる本があるんですけど、
ぜひね、言語学に興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか。非常におすすめできる一冊となっております。
で、その中に髭の男みたいな言い方の話があるんですね。
で、この所有物の所有者っていう言い方ができるのは、まず身体部分の所有か、属性の所有に限られます。
髭の男っていうのはまさに身体部分ですよね。
属性っていうのはどういうものかというと、彼の性格とか彼の体重、才能、あるいは風格とかこういったものが含まれます。
一旦身体部分を中心に考えていこうと思いますが、同じ身体部分であっても繰り返し言ってるように髪の女っていうのは非常に厳しいんですよね。
で、ここで普通所有物と非普通所有物っていう区別を角田先生はしています。
まあこれは読んで字のごとくというか、普通所有物っていうのは普通誰にでもあるもの。
まあこの普通っていうのがなかなか難しいですけど、当然社会とかね、そういったものに左右されるものかもしれませんが、
まあ普通誰にでもあると想定できるようなものが普通所有物。
非普通所有物というのは逆ですよね。普通誰にでもあるとは限らないものです。
所有物の所有者という言い方ができるのは、非普通所有物の場合だけなんですね。
つまり髭っていうのは誰にでも生えているものではない。
まあこういうの優評という言い方をしてもいいかもしれません。デフォルトではないということですね。
そういった場合に髭の男という言い方ができます。
それに対し髪っていうのは一応誰にでもあるものと想定できるので髪の女というのは厳しいんですね。
あるいはニキビの少年っていう言い方もできます。
これもやっぱりニキビっていうのが誰にでもあるっていうものではないので、だからこそ特徴付けに使えるということです。
ただ、普通所有物でも就職要素が伴えば ok ということがあります。
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髪の女は厳しいですけど、長い髪の女とか短い髪の女っていう言い方はできます。
こういうふうに就職要素があると非普通所有物扱いになるということなんですね。
これはなかなか面白い指摘ですよね。
他にも目の少女とかも当然言えないんですけど、これが青い目の少女だったら途端に ok になるんですね。
これもやっぱり目っていうのは普通誰にでもあるもので、ある意味目の少女っていうこと自体に意味はないんですよね。
それに対し青い目の少女っていうのは就職要素が付くことで非普通所有物になっているということです。
これはさっき言ったように身体部分だけじゃなくて属性にも当てはまって性格の男とかは言えないんですけど、
良い性格の男は言えるんですよね。
当然、非普通所有物の場合はそれに就職要素がついても ok です。
つまり、髭の男これはこれ自体で ok なんですけど、長い髭の男みたいにさらに拡張することもできます。
さらに面白いのがこの普通所有物と非普通所有物の区別が英語にも関わっているんですね。
英語の場合は所有表現というよりは過去分詞形を使ってそういった言い方をすることがあります。
例えば髭の男っていうのは髭、beard の過去分詞形みたいなのを使って a bearded man みたいな言い方ができるそうなんですよね。
やっぱり髭っていうのは非普通所有物なのでこういう言い方ができるんですが、
日本語で目の少女っていうのが言えないのと同じように an eyed girl みたいな言い方はできないんですね。
しかし blue eyed みたいな言い方をすれば a blue eyed girl みたいな言い方ができるそうです。
こういうふうに普通所有物か非普通所有物かっていう区別が日本語だけではなくて英語にも関わっているっていうことで、
ある意味普遍的な区別というかね、言語の違いを超えた特徴であるということができます。
今まではずっと身体部分とあとは属性についての話だったんですけど、
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もうちょっとそれを拡張させて衣類についても、服ですね、についても言えることがあるそうです。
例えばコートのタクシー運転手っていうのは、タクシー運転手は普通コートを着てないっていうことが前提なので、
そういった言い方ができるっていうふうにあるんですけど、どうですかねこれはね。
制服の警官とか学欄の学生とか、髪の女とかね、目の少女に比べるとだいぶ言いやすい気がするので、
この普通所有物非普通所有物の区別が衣類にまで関わっているかどうかはちょっと微妙かもしれません。
というわけで今回のお話は、普通所有者の所有物っていうふうにね、男のヒゲみたいなのが、
ある意味で脳の典型的な使い方なんですけど、それが逆転した所有物の所有者、ヒゲの男みたいな言い方が、
どういった場合に可能なのかっていうような、そういったお話でございました。
ぜひ参考文献もね、興味のある方は読んでいただけたらと思います。
それでは今回はここまでということで、番組フォローも忘れずよろしくお願いします。
お相手はシガジュウゴでした。
またねー。