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始まりました、志賀十五の壺。 皆さんいかがお過ごしいでしょうか。志賀です。
今回のトークは前回の続きとなっております。 タイトルにもあるようにですね、なぜ英語ではティメと書いて、タイムと読むのかっていうね、
そういうお話をしていました。 と言いつつですね、その英語の話は全く前回してないんですね。
まあ、もっと 一般的なというかね、まあ広い話で
その母音について その言語学の一分野である音声学の観点からお話しいたしました。
母音っていうのは3つの観点から 定義されるというか特徴付けられるっていうのが前回のお話でした。
すなわち 唇を丸めるか否か、
舌が前か後ろか、 そして
舌の高さが高いか低いか、これは口を狭めるか開けるかというふうにも言い換えることができますが、
この3つの観点から特徴を付けられると言いました。 で、今回のトークで関係あるのはですね、最後の特徴ですね。
この舌が高いか低いかっていうこれが
なぜティメイと書いてタイムと読むのかっていうのとね関わってるんですよ。 でですね
まあ結論から先に言うとですね、 まあ英語っていうのはいわば日本語で言う歴史的金遣いをずっと使ってるっていうことなんですよね。
なんだよ歴史的金遣いってよってことだと思うんですけど、 なんか中学とかでやりましたよね。古典を初めて習った時に
あはれと書いてあわれと読みましょうみたいな、ああいうものです。 で日本語の場合はですね、
終戦後ですね、 現代金遣いっていうものを
普及させて歴史的金遣いっていうのはもう使わなくなっているので、 かなり日本語の場合は
発音と 綴りっていうのは一致しています。かなり。
一方英語の場合は話し言葉の発音の方はどんどんどんどん変化しているのに、 綴りは全く昔と同じものを使っている。全くではないかもしれないですけどもちろん話し言葉を
反映させている部分はあるにしろ かなりその
昔の綴りを使っているので、そこに発音と綴りの 乖離ができているということですね。
なのでまぁ 繰り返しになりますけど、いわば歴史的金遣いをずっと使っているということです。
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つまりですね、ティ名をタイムと読むのも どっかの時点で母音がこう
変化したっていうね。音変化があったっていうことなんですよ。 これは一大事件でですね、その英語史上の。
このような母音の変化のことを大母音推移と言います。 英語ではgreat vowel shiftと言います。
なんか必殺技みたいでかっこいいですね。 この大母音推移ですが
これはどういう変化だったかというと 母音が
これ一斉にですよ。母音が一つずつ1個ずれていった。 1個どうずれたかというと、1個狭母音になっていったっていうことなんですよ。
まぁ狭母音でなんのこっちゃっていう方は 前回のトークをお聞きください。
これは この単語は母音変化したけど、この単語は母音の変化しなかった、なかったっていう話ではなくて
一斉に母音が1個上にずれたっていうか 下の位置が1個ずつ上がっていったっていうことなんですね。
ちょっと具体的に例を見ていきましょうか。 前回お話ししたようにですね、あっていう母音は広母音で下の位置が一番低いものです。
英語でもそういう母音を使っていた単語はもちろんありまして、例えば名前の name というものです。
これは古くはですね、なーめってね、ちゃんと綴り通り読んでいたんですよ。
なーめ。 で、このあの音が
1つ狭母音になる、1つ下の 位置が上がるっていうことは、ねーめみたいな音に
変わったんですね。 で、その後ですね、さらに最近の出来事ですけど、
a っていうのが ei っていう二重母音に変わって、今の name に変わるんですけど、とりあえず大母音推移の変化では、なーめがねーめになると。
で、面白いのはですね、これがたまつき事故的に音変化が起こっていったと。そういうことなんですね。
つまり、なーめがねーめになっちゃったら、今度 a って発音していたものは、さらに1個上に上がって ei という音になるということです。
例えば、感じるっていう feel とか、
保つっていう keep、これは fail とか keep っていう発音だったんですよ。
ただ、なーめがねーめになっちゃったので、たまつき事故的に今度は a が i っていう音に
下の位置が上がりました。なので、 現代の発音と同じく
feel とか keep になったということなんですね。 ということはですね、
a っていう音が e になったってことは、もともと e にいたとこも、たまつき事故的に下の位置が上がったということです。
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ですが、問題はですね、これ前回のトークでもお話ししたんですが、
e っていうのが、一番下の位置が高いんですよ。
つまり、もうそれ以上上がりようがないんですよね。 で、これは苦肉の策ですよ。
上がることができない、e がそれ以上ないので、 二重母音にしました。つまりこれは t 目っていうのが
t っていう e の音が time で i っていう二重母音になったということなんですね。
最初からちょっとおさらいしてみましょうか。 a っていう音が na 目から ne 目になると。
こいつはまた name っていう二重母音になるという、 また別個の変化があるんですけど、現代音階というか、
大母音推移では na 目から ne 目になる。で、そのたまつき事故的に
cape が keep になる。 で、t 目はもう上がりようがないので、仕方ないから二重母音で time になると。
こういう音変化、大母音推移があったんですね。 今は前回お話しした前舌母音というか前舌母音の話だったんですけど、
後ろ舌の方でも o が u になったりするっていうね、 下の位置が上がるっていう変化は同様にありました。
これ繰り返しになりますけど、組織的に音変化があったということですね。 ある単語は音変化したけど、ある単語はしなかったんじゃなくて、一斉に母音が
ダダダダッと上に増えて、一番上は仕方ないから二重母音になったっていうことなんですね。 これが原因で、
今のスペリングと発音の食い違いが起こっているということです。 で、これいつ起こったんだということなんですけど、
時代としてはですね、1400年ぐらいから1600年ぐらいの間に起こったということです。 江戸時代が始まるちょっと前ぐらいですね。
たった2、300年の間にこんな急激な音変化が起こったんですが、その原因の一つとして考えられているのは、
なんとペストなんですよ。 国死病とも言われているペストですね。
ペストで知識階級の人口がガッと減って、
仮想階級の発音というか言語が表だって使われるようになって、そういう変化が起こったっていうことらしいんですよ。
本当ですかね。 まあその原因は置いておいてですね、ひとまず
英語の母音が一斉に1個下の位置が上がっていて、
一番高い狭母音は二重母音になってという変化はありました。 注意していただきたいのはすべての母音であったわけではなくてですね、
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強制がある長母音でしか起こりませんでした。 なのでそのアクセントがないような母音についてはこのような音変化は起こっていません。
さあいかがだったでしょうか。 ちょっと音声だけじゃ理解しづらいかもしれませんね。
ご自身でちょっと発音してみるとお分かりやすいかもしれないですね。 なーめがねーめになって、
けーぷがきーぷになって、 てぃーめが、
これ以上上がりようがないかタイムになるっていう。 だんだん下が上がってるっていうのがね、
まあ注意深く発音するとわかるかもしれません。 というわけでなんでタイムをてぃーめじゃなくてタイムになってるかっていうのは
大母音推移のせいだということです。 まあねそういう大母音推移があったなら、
そのタイミングでねスペリングを統一してくれたら我々もねそんな苦労することなかったんですけどね。
まあでも今後英語のスペリングが変わるっていうことはないんじゃないですかね。 だいぶ定着しちゃってますからね。
イギリスとかアメリカとかっていうその英語圏だけの問題でもなくなってきているので、
ずっとこのスペリングと発音の食い違いっていうのはついてもある問題かなと思います。 というわけで
今回のトークは前回と合わせて 英語の発音の変化。前回はどちらかというと母音の全体的なお話でしたね。
という感じでした。 もし質問等ございましたらマシュマロ送ってください。
というわけでよろしかったら番組クリップもお願いいたします。 ではまたお会いしましょう。ごきげんよう。