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老妻の李徴は、白額妻家、天邦の末年、若くしてなお古房に連ね、ついで口内に伏せられたがん、政権界、自ら頼むところすこぶる厚く、戦利に甘んずる追い詐欺をしとしなかった。
幾泊もなく漢を知る沿いた後は、古山革略に飢餓し、人と交わりを絶ってひたすら死作にふけった。狩りとなって長く膝を俗悪な大漢の前に屈するよりは、志賀としてなお死後百年に残そうとしたのである。
しかし文明は容易に上がらず、生活は費用を負って苦しくなる。李徴はようやく焦燥に駆られてきた。
この頃からその要望も彰刻となり、肉落ち、骨引いで、頑固を飲み、悪戯に敬敬として、かつて真摯に登台した頃の宝鏡の美少年の面影はどこに求めようもない。
数年の後、貧窮に絶えず妻子の遺職のために遂に説を屈して再び東へ赴き、一地方官司の職を奉ずることになった。
一方これは己の修行に半ば絶望したためでもある。
かつての同輩はすでに遥か後位に進み、彼が昔鈍物として親愛にも欠けなかったその連中の加盟を這い去ねばならぬことが、往年の春災、李徴の自尊心をいかに傷つけたかは想像に固くない。
彼は往々として楽しまず、兄輩のせいはいよいよ要塞がたくなった。
一年の後、紅葉で旅に出、女髄のほとりに宿った時、ついに発狂した。
ある夜中、急に顔色を変えて寝床から起き上がると、何か訳のわからぬことを叫びつつそのまま下に飛び降りて、闇の中へ駆け出した。
彼は二度と戻ってこなかった。
付近の山谷を捜索しても何の手がかりもない。
その後、李徴がどうなったかを知る者は誰もなかった。
翌年、観察漁師陳軍の縁さんという者、直命を奉じて麗南に仕えし、道の省央の地に宿った。
次の朝、まだ暗いうちに出発しようとしたところ、駅司が言うことに、
これから先の道に一釘ドラが出るゆえ、旅人は白昼でなければ通れない。
今はまだ朝が早いから、今少し待たれたがよろしいでしょうと。
縁さんはしかし友回りの多勢なのを頼み、駅司の言葉をしりぞけて出発した。
残月の光を頼りに林中の草地を通って行った時、果たして一匹の猛虎が草むらの中から踊り出た。
ドラはあはや縁さんに踊りかかるかと見えたが、たちまち身をひるがえして元の草むらに隠れた。
草むらの中から人間の声で、
危ないところだったと繰り返しつぶやくのが聞こえた。
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その声に縁さんは聞き覚えがあった。恐怖の中にも彼はとっさに思い当たって叫んだ。
その声は我が友李徴氏ではないか。
縁さんは李徴と同年に紳士の台に上り、友人の少なかった李徴にとっては最も親しい友であった。
温和な縁さんの性格が純正な李徴の正常と衝突しなかったためであろう。
草むらの中からはしばらく返事がなかった。
忍び泣きかと思われるかすかな声が時々漏れるばかりである。
ややあって低い声が答えた。
いかにも自分は老妻の李徴である。
縁さんは恐怖を忘れ馬から降りて草むらに近づき、懐かしげに急滑を除した。
そしてなぜ草むらから出てこないのかと問うた。
李徴の声が答えて言う。
自分は今や異類の身となっている。
どうしてお目お目と友の前に浅ましい姿をさらせようか。
かつまた自分が姿をあらわせば必ず君に異不圏延の情を起こさせるに決まっているからだ。
しかし今はからずも故人に会うことを得て既誕の念をも忘れるほどに懐かしい。
どうかほんのしばらくでいいから我が醜悪な今の外形を厭わずかつて君の友李徴であったこの自分と話を交わしてくれないだろうか。
後で考えれば不思議だったが、その時縁さんはこの超自然の怪異を実に素直に受け入れて少しも怪しもうとしなかった。
彼は部下に命じて行列の進行を止め、自分は草むらの傍らに立って見えざる声と対談した。
都の噂、旧友の収束、縁さんが現在の地位それに対する李徴の祝辞。
青年時代に親しかった者同士のあの隔てのない御長でそれらが語られた後、縁さんは李徴がどうして今の身となるに至ったかを尋ねた。
早中の声は次のように語った。