1. 志賀十五の壺【10分言語学】
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2020-11-07 05:48

#204 森鷗外『舞姫』朗読 2/9 from Radiotalk

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#落ち着きある #朗読
00:00
さて、漢字の糸もあるごとに、かねて公の許しをおば得たりければ、所の大学に入りて政治学をおさめんと、なお菩薩に知るさせつ。
一月二月と過ごすほどに、公の打ち合せも済みて、取り調べもしだいにはかどりゆけば、急ぐことをおば報告書に作りておくり。
さらぬ、おば移しとどめて、ついには行く牧岡、梨県。
大学の方にては、幼き心に思いはかりしがごとく、政治家になるべき徳家のあるべえもあるず。
これか彼かと心迷いながらも、二三の法家の講演に連なることに思い定めて、借金をおさめ、行きて聞きつ。
かくて見とせばかりは夢のごとくに立ちしが、時来れば、包みても包みがたきは人の交渉なるらん。
弱父の優良を守り、母の教えに従い、人の振動なりなど、葬るが嬉しさにおこたらず学びし時より、官庁の良き働き手を得たりと励ますが、喜ばしさに頼みなく努めし時まで、
ただ諸道的、機械的の人物になりて、自ら悟らざりしが、今二十五歳になりて、すでに久しくこの自由なる大学の風にあたりたればにや、心のうち何となく穏やかならず、
奥深く沈みたりし誠の我は、洋々を表に現れて、昨日までの我ならぬ我を責むるに至り、与は我が身の今の世に奥秘すべき政治家になるにもよろしからず、
またよく法典をそらんじて、極を断ずる法律家になるにもふさわしからざるを悟りたりと思いぬ。
与はひそかに思うよう、我が母は与を生きたる辞書となさんとし、我が官長は与を生きたる法律となさんとやしけむ。
辞書たらんはなおたうべけれど、法律たらんはしのぶべからず。
今まではささたる問題にも極めて丁寧に依頼しつる与が、この頃より官長に寄する書には、しきりに法制の細目にかかずらうべきにあらぬを論じて、ひとたび法の精神を駄に得たらんには、
ふんぷんたる万事は八九のごとくなるべしなどと講言しつ。
また大学にては、法家の講演をよそにして、歴史文学に心を寄せ、しばらく書を噛む境に入りぬ。
官長はもと心のままに用いるべき機会をこそ作らんとしたりけめ。
独立の思想を抱きて、人並ならぬ趣したる男を如何でか喜ぶべき。
危なきは与が当時の地位なりけり。
されどこれのみにては、なお我が地位を覆すに足らざりけんを。
日ごろベルリンの留学生のうちにて、ある勢力ある人群れと与との間に面からぬ関係ありて、
03:01
かの人々は与を猜疑し、またついに与を懺悔するに至りぬ。
されどこれとでも、そのゆえなくてやは。
かの人々は与が共にビールの杯をもあげず、玉つきの球をもとらぬを、
かたくななる心と欲を制する力とにきして、かつはあざけり、かつはねたみたりけん。
されどこは与を知らねばんなり。
ああこのゆえよしは、我が身だに知らざりしよう。
如何でか人に知らるべき。
我が心はかの眠という木の葉に似て、ものさえあれば縮みて裂けんとす。
我が心は諸女に似たり。
我が幼き頃より長者の教えを守りて、
学びの道をたどりしも、
使えの道を歩みしも、
皆勇気ありてよくしたるにあらず。
大人勉強の力と見えしも、
皆みずからあざむき、
人をさえあざむきつるにて、
人のたどらせたる道を、
ただ一筋にたどりしのみ。
よそに心の乱れざりしは、
外物を捨てて帰り見ぬほどの勇気ありしにあらず、
ただ外物に恐れて、
みずから我が手足をしばれせしのみ。
故郷を立ちいずる前にも、
我が有意の人物なることを疑わず、
また我が心のよく耐えんことをも深く信じたりき、
ああかも一時、
船の横浜を離るるまでは、
あっぱれ豪傑と思いしみも、
せきもあえぬ涙に手巾をぬらしつるうを、
我ながら妖しと思いしが、
これぞなかなかに我が本性なりける。
この心は生れながらにやありけん。
また早く父を失いて、
母の手に育てられしによりて生じけん。
かの人々のあざけるは去ることなり、
されど妬むは愚かならずや、
この弱く不憫なる心を。
赤く白く表をぬりて、
かくぜんたる色の衣をまとい、
カッフェに座して客をひく女をみては、
ゆきてこれにつかん勇気なく。
高き棒をいただき、
眼鏡に鼻をはさませて。
プロシアにては、
貴族めきたる美音にてものいうレイベマンをみては、
ゆきてこれとあそばん勇気なし。
これらの勇気なければ、
かの活発なる同胸の人々と交わらんようもなし。
この交際の疎きがために、
かの人々はただ世をあざけり、
世をねたむのみならで、
また世を懺悔することとなりぬ。
これぞ我が冤罪を身において、
残事の間に無料の観難をけみし尽くす仲立ちなりける。
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