シャイティンの研究紹介
思考停止という病を読んでいきます。
シャイティンの生物学から分かると、
脳機能的な側面から思考について見ていきましょう。
生命の進化と思考とは関係性があります。
グレゴリー・シャイティンをご存知でしょうか。
私の著者や読者の方は何度か彼の名前を目にしてきたでしょう。
アルゼンチン生まれの数学者であり、計算機科学者です。
彼はゲイテルが自然数のみで証明した不完全性定義を
リスプというプラグマム言語でランダムを使って、数学全般でも説明しました。
その後、私も彼にそれどころ注目していたわけではありませんでしたが、
シャイティンは長らくIBM・トマス・J・ワトソン研究所に所属し、
その中で研究していました。
そして彼は2011年の1月にニューメキシコ州にある複雑系の権威の
サンタフェ研究所でメタバイオロジーを発表したのです。
その翌年には、ダーウィンを数学で証明するを表しました。
その著者はメタバイオロジーの研究成果をまとめたもので、
サンタフェ研究所での講演内容も収められていました。
シャイティンの本来の分野は数学ですが、
その中で超数学は数学について研究する数学と言えるものです。
彼はサンタフェ研究所で生命現象とは何かということを数学で定義したのです。
ここから思考を考えていきましょう。
思考そのものが生命現象の一部である。
まず彼がメタバイオロジーの中で最初に行ったのは生命の定義です。
進化生物学の第一人者であるメイナード・スミスの
生物の一番簡単な定義は、
親近対象による自己の状態の維持と自己増殖でした。
何かを取り入れて何かを排出する親近対象があるものを生命だと定義したのです。
しかしこれには問題がありました。
このメタポリリズムで定義した場合、火も生命になってしまうのです。
火は燃えるものを取り入れて二酸化炭素を出すというメタポリリズムを維持しています。
当然自己増殖も行っています。
しかしこれでは生命になりません。
生命には進化があり遺伝的情報伝達があります。
そこで彼はDNAという概念で生命と進化を数学で定義したのです。
彼が定義する生命現象はスペースをランダムウォークしながらヒルクライミングするというものでした。
スペースとは一つの情報空間のことであり、制約空間です。
ランダムウォークとは次の予想ができない突然変異です。
ヒルクライミングとはその空間を一段上に上がっていくこと。
進化とDNAの関係性
つまりある空間の中でランダムな突然変異を繰り返しながら中小度の階段を上がっていくことで進化してきたということを指摘しています。
DNA発見以前の考え方は生命現象の進化とは完全にランダムな突然変異です。
突然変異が起こるかというときもどういう変異を起こすかは基本的にはわかりません。
そのランダムを計算するチューリングマシンで計算します。
生命進化にかかる時間を計算すると分子の数Nに対してNの5乗レベルのオーダーに最低でもなります。
計算量の複雑性をご存じの方はわかると思いますが、Nの5乗というのはとんでもない時間が必要です。
宇宙の年齢を138年では無理に言って、ましてや地球ができて47億年では絶対無理な計算になります。
単純なランダムでは絶対にここまで進化できなかったはずです。
しかしDNAの概念がそれを覆しました。
純粋な1つのDNAができると、その組み合わせを全部最初からもう1回やり直すわけですから、
前のDNAの状態を継承していくことで、なんと進化は可能であるということを証明したのです。
これが彼の言うランダムなヒルクライミングという名言です。
ランダムな状態がヒルクライミングできると、あらかじめ最適な地図、インテリジェントデザイン、
何らかの知的な存在が宇宙や生命、進化を設計したいという考えがあったのに近い計算機のオーダーが進化できるというのが彼の論理。
これはダーウィンの進化の現代化するような論理です。
ダーウィンはDNAと言う言い方をしていませんが、それでも彼が今の時代に解釈すればこの概念が入っています。
だからチャイティンはメタバイオロジーと呼んだのです。
DNAとランダム性があれば、地球時間でも生命は進化できるというのが彼の主張です。