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章魚の足 海若藍平
夢野久作 タコ屋の店にいろいろ並んでいるタコの中で
だるまとタコとが喧嘩を始めました。 えあえ、だるまの育児なし
貴様はヒゲなんぞ生やして威張っていても 手も足も出ないじゃないか
俺なんぞ見ろ こんなにたくさんイボイボのついた手を八つも持っているんだぞ
そんな無茶を言うものでない お前も坊主なら俺も坊主だ
坊主同士だから仲良くしようじゃないか 俺が貴様みたいような奴と手も足もないぬっぺら坊と仲良くするものか
喧嘩すりゃ負けるものだからそんな弱いことを言うのだろう 邪魔を見ろ弱虫め
と いきなりその長い八本の足で
だるまを蹴り飛ばしました だるまはたいそう口惜しく思いましたが
手も足もないのでただあの大きな目玉から 涙をほろほろ流して蹴られていました
そばにいたヤッコダコがたいそう気の毒がって
タコさん もう喧嘩はおよしなさい
と仲裁しました するとタコは
お前なんか黙っておれ と言ってまた蹴りつけました
ヤッコも怒ってはみたが これも手が袖から出ず
足も2本しかないのでじっとこらえていました 翌朝
タロウ ジロウ
サブロウの3人に3つともそれぞれ飼われて 腹に連れて行かれました
そうすると タロウさんのだるまも
ジロウさんのヤッコも 元気よく高く高く上がりました
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しかしサブロウさんのタコは 長い足がケヤキの枝に引っかかりました
そしてサブロウさんが無理に引っ張ったために 破れてしまいました
その時タコは ああ
足がなければよい と思いました