作品名:きのこ会議
著者:夢野 久作
図書カード:https://www.aozora.gr.jp/cards/000096/card46694.html
青空文庫:https://www.aozora.gr.jp/index.html
ブンゴウサーチ for Kids:https://bungo-search.com/juvenile
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00:04
きのこ会議
夢野 久作
はつたけ
まつたけ
しいたけ
きくらげ
しろたけ
がんたけ
ぬめりたけ
しもふりたけ
ししたけ
ねずたけ
かわはぎたけ
こめしょうろ
むぎしょうろ
なぞいうきのこ連中が、ある夜集まって、談話会を始めました。
一番はじめに、はつたけが立ち上がって挨拶をしました。
みなさん、この頃はだんだん寒くなりましたので、そろそろ私どもは土の中へ引き込まねばならぬようになりました。
今夜はお別れの宴会ですから、みなさんは何でも思う存分に演説をしてください。
私が書いて、新聞に出しますから。
みながパチパチと手を叩くと、お次にしいたけが立ち上がりました。
みなさん、私はしいたけというものです。
この頃人間は私を大変に重宝がって、わざわざ木を腐らして、私どもの畑を作ってくれますから、私どもはだんだん大きな立派な子孫が増えていくばかりです。
今に、どんなきのこでも人間が畑を作ってくれるようになってもらいたいと思います。
みなは大賛成で手を叩きました。
その次に、松茸がえへんとせきばらいをして演説をしました。
みなさん、私どもの務めは第一に傘を広げて、種をまき散らして子孫を増やすこと。
その次は人間に食べられることですが、人間はなぜだか私どもがまだ傘を開かないうちを喜んでもっていってしまいます。
03:04
そのくせ、しいたけさんのような畑も作ってくれません。
こんなふうだと、今に私どもは種をまくことができず、子孫をねだやしにされねばなりません。
人間はなぜこの理屈がわからないかと思うと、残念でたまりません。
と涙を流して申しますと、みなも口々に
そうだ、そうだ、と同情をしました。
するとこの時、みなの後ろからけらけらと笑うものがあります。
見るとそれは、ハエトリダケ、ベニタケ、ワラジタケ、マグソタケ、キツネのヒトモシ、キツネのチャブクロなぞいう毒キノコの連中でした。
その大勢の毒キノコの中でも一番大きいハエトリダケは大勢の真ん中に立ち上がって
お前たちはみなバカだ。 世の中の役に立つからそんなに取られてしまうのだ。
役にさえ立たなければいじめられはしないのだ。
自分の仲間だけ繁盛すればそれでいいではないか。
俺たちを見ろ。 役に立つどころでなく世間の毒になるのだ。
ハエでも何でも片っ端から殺してしまう。
偉いキノコは人間さえも毎年毎年殺しているくらいだ。
だから少しも世の中のご厄介にならずに繁盛していくのだ。
お前たちも早く人間の毒になるように勉強しろ。
と大声で喚き立てました。
これを聞いた他の連中はみな理屈に負けて
なるほど、毒にさえなれば怖いことはない。
と思うものさえありました。
そのうちに夜が明けてキノコ狩りの人が来たようですから
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みなは本当に毒キノコの言う通り
毒があるが良いかないが良いか
試験してみることにして別れました。
キノコ狩りに来たのは
どこかのお父さんとお母さんと姉さんとぼっちゃんでしたが
ここへ来るとみな大喜びで
もはやこんなにキノコはあるまいと思っていたが
いろいろのキノコがずいぶんたくさんある
あれ、お前のようにむやみに取ってはだめよ
壊さないように大切に取らなくては
小さなキノコは残しておきよ
かわいそうだから
やあ、あそこにも
ほら、ここにも
と大変な騒ぎです
そのうちにお父さんは気がついて
おいおいみんな気をつけろ
ここに毒キノコが固まって生えているぞ
よく覚えておけ
こんなのはみんな毒キノコだ
取って食べたら死んでしまうぞ
とおっしゃいました
キノコどもは
なるほど、毒キノコはえらいものだと思いました
毒キノコもそれ見ろと威張っておりました
ところがあらかたキノコを取ってしまって
お父さんがさあ行こう
と言われますと
姉さんとぼっちゃんが立ち止まって
まあ毒キノコはみんな憎らしい格好をしていることね
うん、僕が成敗してやろう
といううちに
片っ端から毒キノコどもは
大きいのも小さいのも
根元までこっぱみじんに
踏みつぶされてしまいました
08:50
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