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あひるさんの髪の毛 村山籌子
あるところに大変おとなしい一羽のアヒルさんがありました。 小さくてまだ手が頭に届きません。
毎朝髪をゆってもらわねばなりませんでした。 アヒルさんにはおじいさんだけしかないので、
おじいさんに髪をゆってもらうのでしたが、 おじいさんは男でおまけに大変な年寄りでしたから、
アヒルさんの髪をあまりハイカラにはゆってやれないのでした。 毎朝アヒルさんは鏡の前で
横を向いたり前を向いたりして髪の形を眺めましたが、 いつでも油で髪が固まって、
頭のてっぺんのところできつくゆわえてあるので、 目をしばたたくこともできないくらい引きつっているのでした。
ある日アヒルのおばさんが訪ねてきて、 大笑いに笑い出しました。
なんてまあ、へんてこな髪だこと。 しかしその時アヒルのおじいさんが
プクンと怒ったような顔をしたので、 私がうまく言ってあげましょう。
と言いかけましたが、 そのままそれを喉の奥へ引っ込めてしまいました。
かわいそうなアヒルさん。 アヒルさんはそれからというもの、
ご飯もろくに食べられないくらいに悲しみました。 アヒルさんのおじいさんは一生懸命考えて、
コテを買ってきて、 髪をちじらせてやりました。
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これでやっとアヒルさんはハイカラになりました。 それでご飯は前の2倍くらい食べるようになりました。
ずいぶん運のいいアヒルさん。