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良い設計とは啓蒙アンチなのかもしれない~残酷なフールプルーフ~_#042
2026-05-28 13:03

良い設計とは啓蒙アンチなのかもしれない~残酷なフールプルーフ~_#042

フールプルーフは、優しさであり残酷さでもある。

お聴き頂きありがとうございます。「理系男の人生取締役会」です。

今回はクラゲの専門、エンジニアリングの回です。ぜひお楽しみに!

「気をつけてください」という注意喚起には、限界がある。

産業用プレス機による指の挟まれ事故は、現在でも年間約50件発生している。マニュアルを読ませる、教育を徹底する——そうした「啓蒙」で解決しようとしてきた歴史があった。でも、エンジニアたちが出した答えは違った。ボタンを2つにして、両手で同時に押さないと機械が動かないようにする。人間に気をつけさせるのではなく、そもそも気をつけなくていい設計にする。

これが「フールプルーフ」の考え方です。

フールプルーフとは、人間が操作ミスをしても安全が確保されるよう設計すること。現場では「ポカヨケ」とも呼ばれます(かつては「バカヨケ」と言われていたが、人権上の理由で改称されたという歴史もある)。電子レンジのドアが閉まっていないと動かない仕組みも、重力を利用して誤操作を物理的に不可能にした設計も、すべてフールプルーフの発想です。

ここで面白い対比があります。「啓蒙」は人間の能力を高めることでミスをなくそうとする。「フールプルーフ」は環境を変えることでミスをなくそうとする。どちらも同じゴールを目指しながら、アプローチは真逆です。

そして、フールプルーフには残酷な側面もある。「人間はミスをする」という前提に立つということは、人間への期待を手放すということでもある。SFの世界にはこんな言葉があります。「宇宙はより優れたフールプルーフを作ろうとする。宇宙は常により優れたフールを作ろうとする」——想像を超える「フール」が現れる限り、設計は永遠に追いかけっこを続ける。

人間に期待するか、仕組みに頼るか。理系的な問いが、意外と哲学的な場所に着地します。

通勤・作業のお供にぜひどうぞ。

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サマリー

本エピソードでは、「フールプルーフ」という、人間が操作ミスをしても安全が確保されるように設計する考え方について掘り下げています。産業用プレス機や電子レンジの例を挙げ、人間のミスを前提とした設計がいかに重要であるかを解説。一方で、啓蒙思想が人間の能力向上を目指すのに対し、フールプルーフは環境を変えることでミスを防ぐという対照的なアプローチであることを指摘します。最終的には、想像を超える「フール」が存在するというSFの引用を交え、人間への期待と仕組みへの依存という問いを投げかけます。

工場のプレス機とフールプルーフの導入
理系男の人生取締役会
トマトさん、突然ですけど、工場の話から始めてもいいですか?
工場?ファクトリーですか?
ファクトリーです。
お願いします。
産業用のプレス機ってご存知ですか?金属とかをドーンとやる巨大な機械。
産業用ってなるとそんな見たことないけど、イメージですけどね。
こういう板で油圧か何かでガシャンって挟むものでしょう?
そうそう。あれ、指挟んだら一発ですよね。
いや、そりゃそうでしょ。イカせんべい列車よ。
そう。特に昔の工場はその事故多くて。
あ、そうなんだ。
今でもチャッピーにさっき調べてもらって、ざっくり年50件くらい指がイカせんべいになっちゃってることがあるらしいのね。
で、そこに対してエンジニアたちがどんな解決策を考えたか。
作業員に気をつけさせる、でもなくマニュアルをしっかり読め、でもないんですよ。
答えはボタンを2つにした。
両手で同時にボタンを押さないと機械が動かないように設計したのね。
そういうことね。仕組みというか、これをデザインしたのですね。
その通りなんですね。
手が動かないようにね。
物理的に手が機械の中に入らないようにしましたというのが、よくあるフールプルーフの例題で言われるお話でして。
フールプルーフって何?フールってどういう意味の?
これ、要は日本語で言うと、愚か者でも壊せない設計。
ああ、そういうことね。
これね、一部表記揺れというかあるんだけど、対馬鹿性というワードもある。
どんなに馬鹿な人がいるんです。
そう、フールプルーフですね。英語で分けるなら。
フェイルセーフとフールプルーフっていうのがあるんだ。
そう、近接外であるね。
フェイルセーフっていうのが何を対象に安全を確保するか。
そう。
フールプルーフは人の操作ミスを防ぐと。
というとこで今回は、個人的に感じた残酷なフールプルーフについて話していきたいと思います。
お願いします。
身近なフールプルーフの例
まずフールプルーフなんですけど、要するに馬鹿でも安全に使えますよっていう。
あくまで安全のための概念なんだね。
そうです。安全に作業するため。
これ日本語だと、現場だとポカヨケってよく聞いたことあるかな。
Wikipediaに書いてあるわ、ポカヨケって。
多分ね、あれだと思うのは、機械系にいるからより使うんだろうね。
そうね。
あまり化学とかだとフールプルーフっていう、いわゆるそういう大きい機械を使うことが少ないから、あんまり俺知らないわ。
そうだし、設計で何とかするっていうアプローチがあんまり化学だとしづらいじゃん。
そうね。
ボタン二つっていう化学ないからさ。
もしかしたら工場レベルになればたぶんいっぱいあるんだろうけど、RDだとそこまでそういうものはないかもしれない。
しかもこれポカヨケって、一昔前だとバカヨケっていうワードになってて。
さすがにそれは人権上まずいっていう話でポカヨケに変わったっていう言葉の繊維があるんですけども。
これも設計思想でさっき話したとおり分かりやすくて、人権ミスるから、だからミスできないような仕組みを作っちゃおうっていう。
制約説じゃないけどね。
そうですね。結構構造的に厳しめな制約説を信じたところになります。
例えば本当に身近な例を出すと、トマトさんの家の電子レンジ最後に使ったのはいつですか。
電子レンジ?電子レンジ2,3日前とかかな。
ドア開いてる状態で動かしたことはあります?
いやいやいやいや、動かないでしょ。
そう、それなんですよ。
ドア開けっぱなしで電子レンジ回す危ないやつ、いないとは思いつつも、ドア開いたら動かないようにしてるんですね。
いやでも、やりかねないよね。だって同じ、特に何の概念もなかったらさ、オーブントースターと同じように開けちゃうよね。
そう。で、やってしまう可能性もあるし、もう少し大きい話をすると、例えばホテルに行った時に、ホテルの部屋の木ってちょっと特殊な形してるじゃないですか。あれあれ。
それはカードキーではなくて。
そう、キーの先っちょになんか長い棒みたいなのついてるタイプのあるじゃん。
そういう風なホテル、旅館とかやったらしいね。
そうそうそうそう。あれを入口横のね、あのところにぶさげさせると電気つきますよっていう。
あれ目的何ですかっていうと、節電とかって言いたいところなんですが、お前らちゃんとキー持ってけよと。
電気とか消し忘れずに退出してくださいねみたいな、そういう意味合いもあって、人間の忘れること前提で設計しちゃってるんですよ。
大事だよね。そういうのなんかさ、いいよね。なんていうか、機能美というか感じるよね。
やっぱね、そういう設計はいいとされてて、特にトヨタはもうこういう思想がいいぞと。このポカヨキの仕組みとかカラクリはもう大好きなのはトヨタ。
そんなイメージが分かれば面白いけど。
いやーそうなんですよ。もうね、この辺調べるとね、トヨタの有名人が出てくるからね。
いやーエグそうだな。なんかもう人間性が、いや俺はちょっと怖いわ。
そう。で、これが究極のところまでいくとどうなるかっていうと、これ多分原子力発電所なんですね。
究極のフールプルーフと重力の活用
あー、そういうことね。確かに。
要は原子力発電の方法の話は一旦置いておいて、その原子炉の中に制御棒が入ってますよねと。
で、制御棒が中に押し込まれると回復反応が止まって、安全に停止させることができますよという棒なんですけども、
エンジニアたちは制御棒どうやって設計したでしょうかっていう。
確かにどうしたんだろう。全然分かんないわ。
両手でボタンも押せないし、センサー張ってもセンサー壊れたらしょうがないしっていうところで、多分答えが重力なんですね。
要は何かしらが起こったら重力を介して制御棒は落ちていきますと。
最悪、人間が全員気絶しても制御棒落ちます。
あー、そういうパターンね。
確かにな。だってちょっと似た概念で言うと、あれのイメージが湧いたわ。
リチウムイオン電池から、セパレーター?非極と非極の間の膜があるんだけど、
あれ確か、あえて熱で溶けやすいプラスチック、比較的溶ける温度が低いプラスチックが使われてて、
あれは焦燥とかで発熱したときにプラスチックが溶けることによって、電気の流れを遮断してプラスチックが溶けることで、
暴走を防ぐみたいなとしか思想があったはずで、それと似てるわけですよね。勝手に自発的に負の役がかかるっていう。
そういう設計はね、世の中本当にいろいろあってね、個人的にはね、プールフループ賞を毎年選定してあげたいくらいね。
確かにね、いいね、そういうの。
フールプルーフと啓蒙思想の対比
そうなんだけど、確かに設計としては面白いなっていうところで、ここからが今回のちょっと気づきポイントなんですけども、
やっぱね、さっきから感じた設計思想の話って、これ人文学とか哲学にある啓蒙の考え方とは逆すぎるよなっていう。
わかる?
そうね、まあそうね。
人文学にとって啓蒙ってさ、人間は無知だから、正しい知識を与えれば正しく行動できるようになるよ、みたいな信念あるやん。
個人で向かっていく感じがするよね、やっぱりね。
啓蒙っていうところ、分かってもらうことが解決策です、が啓蒙のスタンスだけど。
一方エンジニアリングってさ、いやもう信じませんって、人間絶対失敗しますからみたいな。
それだけで人間性を排除するかっていうところに行くわけだもんね。
そう、だからさっきの最初のプレス機の話になったらさ、プレス機動いてる時は手を中に入れてはいけません。
が、啓蒙じゃん。で、ボタン二つ押して絶対入りませんが、エンジニアリングじゃん。
で、この後の話のオチとしては、だいたい片方のボタンをテープでぐるぐる巻きにして、片手で押せるようにして、バカほど怒られるっていう。
こういう話のオチがよくあったりするんだけども。
仕組みを破壊してくれますね。
そうなんだけど、基本的にフールプルーフっていうのは、人は変えられないんで環境を変えますっていう。
実際は人間には期待してませんっていう、そういうメッセージ性もあるよなっていう。
怖いよね。機械的に働く、機械になれたら一番良いっていう世界観だもんね、やっぱりね。
そうなんですよね。
想像を超えるフールとSFの世界
フールプルーフについて、最後面白い話してるやついねえかなと思ってちょっと調べたんですよ。
ありがとうございます。
締めがね、難しくて。
で、ちょっと面白いの見つけまして、銀河ヒッチ廃空ガイドって大人気本なんだけど。
銀河ヒッチ廃空ガイド。
ダグラス・アダムスっていう人が書いたCFなんだけど、イーロン・マスクとかが好きって言ってるCF界だと、まあぼちぼち有名なやつ。
なんか見たことある、確かに。この絵は見たことあるよな。
わかる、そう。有名なCFは、宇宙の答えは42ってやつですね。
そう、全然知らん。
で、その人が完全なフールプルーフなものを作ろうとするとき、みんな一つのことを忘れる。
世の中には想像を超えるレベルのフールがいるってことっていう。
っていうね、この入れ子構造みたいなね、話したっていう。
やっぱ設計者が完璧だと思った時に、もう設計者も人間なんでね。
やっぱ漏れますよっていうところで。
まあ、いたちここでさな。
このSFの中でもスーパーコンピューターが計算して答えを出したら42なんだ。
そう、42です。何42ってなるけど。
そうね、だからどうなるんだろうね。
いや、むずいよな、いろいろな。今そういうのいろいろ考えさせられるタイミングだよな。
機械、人間、AI。
いやー、まさに笑えるんだけど笑えない話というかさ。
まあ、そういうところで啓蒙の夢を工学が否定して、工学の夢をフールが否定するっていう。
こういうね、なかなか厳しい世界が待ってるなーって思った次第ですね。
いやー、むず。
人間への期待か、仕組みへの依存か
というところで、最後に聞いている皆さんに一つ問いかけを投げて終わりにしたいと思うんですけども。
あなたは人間に期待しますか?それとも仕組みに任せますか?
この答えがどっちが正しいかとは言いません。
ただ、あなたが設計者の立場に立った時、その選択が世界決めちゃいますよねって。
急になんかすげえ動作みたいになってる。
信じるか信じないか、あなた次第です。
確かに。
というところで、今回のテーマは乱酷なフールプルフでした。
ではまた次回。ありがとうございました。
ありがとうございました。
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