今のコンピュータメモリ、通信、デジタル技術につながる「誤り訂正符号」の基礎を作った人物の一人である数学者リチャード・ハミングの講演「You and Your Research」を通じて、イノベーションのあり方について考えさせられました。
曰く、
“If you do not work on an important problem, it’s unlikely you’ll do important work.”
「重要な問題に取り組まなければ、重要な仕事をすることはまずない。」
しかしハミングは、単に大きな問題に挑戦しろと言っているわけではありません。
“It’s not the consequence that makes a problem important, it is that you have a reasonable attack.”
「結果の大きさが問題を重要にするのではなく、合理的な攻め方があることが重要なのです。」
ここから、私は三つのことを思いました。
1、重要な問題とは何か?
2、合理的な攻め筋とは何か?
3、なぜ重要な問題に取り組めないのか?
1、重要な問題とは何か?
我々がイノベーションへ取り組む際に、この問いはとても重要だと思いました
果たして、我々が取り組んでいる問題は、重要な問題なのか?
それを考える時に大切なのは、もしその問題が解けたとして、どんな素晴らしいことが待っているのか、それをあらかじめ考えておく、ということなのかもしれないなと思いました
よくあるのは、まずはやってみなければわからないじゃない
みたいな話で、目の前の課題を解決することから、行動することが大事、という話を聞くこともあります
とにかく行動してみる、ということは、悪いことでは全くないのですが、その先のゴールがなんなのか?を最初に考えておくことがとても大事だと思います
我々が目指している世界は、こういうことなんだ、これができたら、こんなに素晴らしい世界が生まれるんだ、そしてそれは、たくさんの人たちを喜んでもらえるものになるはずだ
ということを、少なくとも、どんな世界が開ける、その第一歩をやっている、というように考えておくことがとても大事だと思います
私がいつもお話しする、イノベータリップルモデルにおける”パッション”から始まって、”仲間”と共に、誰かが喜んでもらえるものを作る、という最後の”大義”があるかどうか
実は、そこまで考えて、自分自身が今やっていることを、意識している人というのは、少ないような気がしました
自分がとくべき重要な問題はなんなのか?常に問い続けることが大事だと思いました
2、合理的な攻め筋とは何か?
しかし、重要な問題なら何でも取り組めばいい、というわけでもありません。
ハミングは、タイムトラベルやテレポーテーション、反重力などを例に挙げています。
実現すれば、とてつもないインパクトがあるけれども、そこに合理的な攻め方がなければならない。
これは、言い方を変えれば、それは解ける問題なのか?(今ではなくとも)という問いなのかもしれないなあと思いました
社会課題と言われているものが、10年前も変わらずにあり続けるというのは、実は、合理的な攻め筋が見えていないのかもしれないなあと思います
イノベーションや、何かのテーマの時に、自分として取り組む際に、とても大きな問題なのだけれども、果たしてそれは解ける問題なのか?という問いを自分にすることも、とても大事だと思います
永遠の社会課題や、引用にある通りの、今の技術から考えて、到底実現できると思えないもの、道筋が見えていないものは、
だからといって、道筋が完全に見えていなければ取り組むべきではない、ということではないと思います。
大切なのは、「この方向からなら何かが見えるかもしれない」という、自分なりの攻め口、仮説を持てるかどうかなのだと思いました。
だとすれば、それを、最初に見抜くことが大事だと思いました。もしろん、正解である必要はなくて、この攻め口なら、ヒントが見つかるかもしれない、そんな仮説が立てられるものではないといけないと思いました
3、なぜ重要な問題に取り組めないのか?
ハミングさんが調べたところによると、実は、重要な問題に取り組んでいる人ばかりではなかった、というところに、イノベーションや研究の難しさがあるのかもしれない、と思いました
イノベーションで言えば、実は、それが重要な問題なのかどうかでさえ、わかっていない、ということがたくさんあるのではないかと思いました
つまり、目の前にある解きやすい問題についつい取り組んでしまう、それは裏を返せば、重要な問題を突き止められていないから、そうせざるを得なくなってしまっている、ということも言えるかもしれないと思いました
重要な問題を突き止めるということが、実は、最も重要にもかかわらず、そう簡単にはできないこと、だからだと思います
だからこそ、ジョンキーツさんが言われるところの、ネガティブケイパビリティのように、重要な問題がわからなくとも、とにかく、真の課題が突き詰められるまで、問い続けることができるか
それは、特に、期限が決まっているプロジェクトなどだと、本当に苦しい戦いになります
まずは、小さな成果でもいいから、成果を見せないと、何をしていただんだということになってしまう
しかし、それを繰り返していたのでは、本当のイノベーションや研究は起こすことができない
最後は、自分自身が、納得して、これは、とても重要な問題なのだ、と言えることを目指すということなのかもなあと思いました
それは、本当にとくべき問題なのか
これは、ある意味、一生を左右することもあるかもしれない
それほど、重要な問いであると、思いました
一言で言えば、
解くべき問題ノベーション
そんな話をしています
参考:Richard Hamming「You and Your Research」(1986年3月7日、Bell Communications Researchでの講演)
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