ミュージカル『民王』を観て、めちゃめちゃ笑って、そして素晴らしい音楽に感動し、最後には涙していました。さらにプログラムに掲載されていた別所哲也さんの言葉に、めちゃめちゃ心を動かされました。
曰く、
「魅力が満載の作品ですが、『民が王だ』という強いメッセージがあることも大きいと思います。
樟太郎君と僕が演じる翔を通じて、特に若いお客さんに、自分が総理大臣になったつもりでこの国や社会を見ていこうという気持ちになってもらえたら。
思いっきり笑ったあとに、そんな気持ちになったり、『♪民よみな王となれ』というテーマ曲を口ずさんでもらえたりしたら嬉しいですね。」
ここから私は思いました。
1、圧倒的当事者意識
2、責任の分散
3、王として動ける仕組みをつくる
1、圧倒的当事者意識
この言葉を聞いて、私はリクルートで有名な「圧倒的な当事者意識」という言葉を思い出しました。
リクルートでは、長く大切にしてきた価値観の一つとして、「自分はどう考え、何をすべきだと思っているのか」を常に問う姿勢を「圧倒的な当事者意識」と表現しています。
これ、まさに別所さんの言葉と同じだと思いました。
国でも、会社でも、部活でも、サークルでも、バイトでも、その時「自分ならどうするか」。これを、まるで責任者のように自分に問えるかどうかが、自分のためにも、組織のためにも、本当に必要なことだと思います。
組織行動論のモリソンさんとフェルプスさんは、「自ら変化を起こす行動」という考え方を、
「組織にとって有益な変化を起こそうとする、役割を超えた自発的な行動」
として研究されています。
その後の研究では、こうした行動が、組織のイノベーションや業績、変化への適応と関係することも示されています。
つまり、「圧倒的当事者意識」とは、ただ「これは自分の問題だ」と思うことではなく、自分が変える側に立ち、本当に何かを変えにいくこと。
そこまでいって初めて、組織に新しい動きが生まれるのだと思いました。
2、責任の分散
心理学には「責任の分散」という考え方があります。
心理学者のダーリーさんとラタネさんは、
「他の傍観者がいることで、個人が感じる責任感は低下した」
と報告されています。
さらに、人は、
「誰かほかの人が、何かしているはずだ」
と考えることで、自分が動かないことを合理化してしまうことがある、とも言われています。
これはなかなか切実な心理学的課題だなあと思いました。
ではどうすれば、その壁を越えることができるのか?
その仕掛けづくりも重要かもしれないとも思いました。
3、王として動ける仕組みをつくる
そこで、Adobeの「Kickbox」というイノベーション制度を思い出しました。
これは、社員に「アイデアを出してください」で終わらずに、社員に、アイデアを考え、顧客に試し、検証していくための、初期の実験に使える予算まで渡す、というやり方をされているそうです。
Kickboxを考案したマーク・ランドールさんは、その設計思想について、
「まず、人を信頼することから始めます。」
と語っています。
そしてさらに、
「彼らは、自分のアイデアのCEOなのです。」
と語っています。
つまり、ある意味、小さなアイデアの王となる権限を与えているということになるなあと思いました。
「当事者意識を持とう」では終わらずに、
「先に、当事者として動ける立場と予算を渡してしまう。」
これによって、アイデアを出した者は、実際に自分でやらなければいけなくなってしまう。
つまり、当事者にならないと、これはできない仕組みを作っているということかと思います。
王として、経営者として、意識を保つべし、と言う前に、王として、経営者として、小さく動ける領域と権限を渡してしまう。
素晴らしい仕掛けだなあと改めて思いました。
そんな仕掛けをセットにして作って提供、実装することによって、
一介の社員や民が、王としての当事者意識を持つことができるようになる。
一言で言えば、
民が王ノベーション
そんな話をしています。
参考
ミュージカル『民王』公演プログラム 別所哲也さんコメント
株式会社リクルートホールディングス「圧倒的な当事者意識」に関する人材マネジメントの考え方
エリザベス・W・モリソン、コーリー・C・フェルプス
「職場で自ら変化を起こす――組織変革を始めるための役割を超えた行動」
『アカデミー・オブ・マネジメント・ジャーナル』1999年
ジョン・M・ダーリー、ビブ・ラタネ
「緊急時における傍観者の介入――責任の分散」
『パーソナリティと社会心理学ジャーナル』1968年
Adobe コーポレート・コミュニケーションズ
「箱の中で考える――マーク・ランドール氏へのインタビュー」2014年
感想
まだ感想はありません。最初の1件を書きましょう!