LEGOを世界的な存在へと成長させ、「LEGO System in Play」の基礎をつくった二代目オーナー、ゴッドフレッド・カーク・クリスチャンセンさんの言葉に、改めてLEGOの凄さを思い知らされた気がしました。
1955年、クリスチャンセンさんはLEGOについて、こう語っています。
曰く、
「私たちが目指したのは、生涯にわたって価値を持つ玩具をつくることでした。
子どもの想像力に訴えかけ、すべての人間を動かす力である『創造したいという衝動』と『創る喜び』を育む玩具です。」
そして、LEGOのシステムについて、
「シンプルで丈夫でありながら、無限の多様性を生み出せること。」
という考え方を掲げました。
ここから、私は思いました。
1、創造したい衝動
2、シンプルで無限のルール
3、生涯使えるデザイン言語
1、創造したい衝動
実は、私はLEGOで育ったわけではないので、なぜ数ある組み立て玩具の中で、LEGOがこれほどまでに創造性と結びつけて語られるのか、あまりよく分かりませんでした。
でも、クリスチャンセンさんの言葉を知って、これほどまでに愛されている理由が分かった気がしました。
「創造したいという衝動」と「創る喜び」が、すべての人間を動かす力である。
これは、ハーバード大学の広中先生の「誰もが創造者である」という言葉を思い出します。
進化研究には「ニッチ構築」という考え方があります。
生物は環境に適応するだけではなく、自ら環境をつくり変え、その環境がまた自分たちに影響を与えていくという考え方です。
人間も、道具をつくり、家をつくり、都市をつくり、制度をつくり、自分たちが生きる環境そのものを変え続けてきました。
そう考えると、人間は与えられた世界に適応するだけではなく、世界に働きかけ、つくり変えていく存在なのかもしれません。
LEGOは、そんな原始的ともいえる人間の「創造したい」という欲求を、最もプリミティブに発揮できる道具の一つなのではないかと思いました。
2、シンプルで無限のルール
イノベーションには、制限があった方が面白いイノベーションが生まれるとよく言われます。
LEGOは、基本的な2×4ブロックをたった6個使うだけでも、組み合わせは9億通り以上になるといいます。
極めてシンプルなのに、無限に広がるルールをつくった。
これが秀逸だと思います。
これは簡単そうに見えて、非常に難しいことだと思います。
シンプルだからこそ、小さな子どもでも容易に使うことができる。
そして、無限の可能性があるからこそ、大人になっても使いたくなる。
何をつくるかを決めすぎないからこそ、使う人が創造性を発揮できる圧倒的な余白がある。
まるでコード進行だけが決まっているジャズのように、その上でどんな即興が生まれるのかを楽しみにしている。
思わず創造性を発揮したくなってしまう。
そんな設計と仕組みづくりが優れているなあと、つくづく思いました。
3、生涯使えるデザイン言語
そして、「生涯にわたって価値を持つ玩具をつくる」という宣言通りの展開をしているところも、本当にすごいと思います。
幼児向けのLEGO DUPLOから始まり、成長すればLEGO CityやLEGO Creator、さらに複雑な機構を創るLEGO Technic、そして大人向けのLEGOへと、創造の世界を広げていくことができます。
しかも、LEGO Systemは基本的な接続の互換性を長く大切にしてきました。
新しいブロックが加われば、昔のブロックまで新しい使い方ができる。
成長するほど、創れる世界が広がっていく。
私は、LEGOは一種の「デザインの言語」なのではないかと思いました。
言語には文字があり、文法があります。
文字や文法そのものは限られています。
しかし、それを組み合わせれば、無限の文章や物語をつくることができる。
LEGOも同じです。
ブロックが単語。
接続のルールが文法。
組み合わせが文章。
そして、完成した作品が物語。
だからLEGOは、完成した世界を子どもに与えるのではなく、自分の世界を創り、表現するための「言語」を渡していると言っていいのではないかと思いました。
人間の中にある「創りたい」という衝動を信じる。
誰でも理解できるシンプルなルールをつくる。
そして、そのルールを使って、一人ひとりが自分の世界を一生涯創り続けられるようにする。
究極のイノベーションとは、まるで言語のように、一度身につければ、一生涯にわたって使い続けることができ、そこから無限に新しいものを生み出していけるものなのかもしれないと思いました。
人が生涯にわたって創り続けられる「言語」をつくる。
そして、その言語を手にした人たちが、つくった側さえ想像していなかったものを創り始める。
一言で言えば、
生涯のプラットフォームノベーション。
そんな話をしています。
参考
ゴッドフレッド・カーク・クリスチャンセン
LEGO Group「LEGO System in Play」
LEGO Group「The Stud and Tube Principle」
ケビン・レイランドほか
『Niche Construction: The Neglected Process in Evolution』
Princeton University Press、2003年
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