スタジオジブリのプロデューサー、鈴木敏夫さんの著書『禅とジブリ』の中の、玄侑宗久(げんゆうそうきゅう)さんの言葉に、めちゃめちゃ心を動かされました。
曰く、
「仏教は物事が起こるメカニズムを『因果』と『縁起』で考えます。
『因果』とは『原因』と『結果』という関係で見る考え方。しかしそれは筋道を付けて納得しているだけで、なぜ起こったのかの説明にはならないのではないか、という見方もあるんですよ。
一方『縁起』は、あらゆる物事の網目のような関係性の中で、思いもよらないことが生起すると考える。この世の複雑さを説明するのに、縁起以上の考え方はないと思うんです。
ジブリ作品はその考えをものすごく取り込んでいるな、と。『何が起こるかわからない。それでも行く』。ああ人生そのものだな、と思いますね。」
ここから私は思いました。
1、因果を求めすぎない
2、縁起を信じて飛び込む
3、何が起きても行く
1、因果を求めすぎない
この話は、めちゃめちゃイノベーションの話に通じるなあと思いました。
ロジカルシンキングで、なぜその現象が起こっているのか、因果関係を徹底的に洗い出す。
そしてクリティカルシンキングで、本当にその判断は正しいのか、その因果関係そのものは正しいのか、前提から疑っていく。
さらに、それだけでは説明できないことが必ず出てくるので、ラテラルシンキングを使って、今までとは違う視点から論点を探っていく。
私たちは、そんなことをやっているのかもしれないと思いました。
そしてもう一つ、人間は物語化することによって、複雑な出来事を理解しやすいストーリーにしていきます。
それは、複雑な問題を理解して次の手を打つための、とても優れたやり方だと思います。
でも一方で、人間にわかりやすい形にすることで、本当の本質的な課題が埋もれてしまうこともあり得る。
因果や物語化は、とても重要なやり方ではあるけれど、それに全てを委ねてはいけない。
そんなことを教えていただいた気がしました。
2、縁起を信じて飛び込む
全ての事柄は網の目のように何らかの関係性を持っていて、その関係性の中から、思いもよらない結果が生まれる。
この「縁起」の考え方は、一方で、イノベーションにおけるセレンディピティにも通じる話なのかもしれないなあと思いました。
全ての出来事が、「AだからB」という単純な一対一の因果関係だけでできているのではない。
無数の人や出来事、環境やタイミング、そして偶然の出会いが重なり合って、思いもよらない何かが生まれる。
だからこそ、発明では全く想定していなかった結果から大発見が生まれたり、偶然の出会いから新しいイノベーションが生まれたりするのだと思います。
そういう意味では、イノベーションプロジェクトにおいて、「絶対失敗する」という因果関係からの議論があったとしても、
起業家が自らのパッションで、それでもやってみる。
そこに、とてつもない意味があるのだろうなあと思いました。
縁起を信じるとは、何かが起きるのをただ待つことではない。
何が起こるかわからない関係性の中へ、自分から飛び込んでいく。
そこから、想像もしなかった未来が生まれるのかもしれません。
3、何が起きても行く
しかし、縁起の世界では、良いことが起きる可能性もあれば、悪いことが起きる可能性もある。
その時に、どんな行動が取れるかが、最後は試されるのかもしれないと思いました。
『千と千尋の神隠し』では、千尋は、自分がこれからどうなるのか全くわからないまま、異世界に放り込まれます。
両親は豚になり、自分自身も消えそうになり、何をすれば元の世界に戻れるのかもわからない。
そんな中で、ハク、釜爺、リン、カオナシと出会う。
その一つひとつの出会いによって、思いもよらなかった次の道が開かれていく。
まさに、ジブリは縁起の世界なのかもしれないと思いました。
考えてみれば、ジブリの主人公たちは、『風の谷のナウシカ』も、『もののけ姫』も、『天空の城ラピュタ』も、未来がわかったから前へ進むわけではないなあと思います。
何が起きるかわかってから行くのではない。
何が起きるかわからなくても行く。
そして、何が起きても、また前へ行く。
その決断と勇気が、因果だけでは説明できない縁起の世界を味方につけて、前へ進ませてくれるのかもしれないなあと思いました。
何が起こるかわからない。
それでも行く。
その一歩から、次の縁が生まれるのだと思いました。
ということで、一言で言えば、
それでも行くノベーション
そんな話をしています。
参考
鈴木敏夫『禅とジブリ』株式会社淡交社、2018年
電子書籍制作:大日本印刷株式会社、2018年7月30日
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