組織行動学の研究者、ウェイン・ジョンソンとブライアン・J・ルーカスの研究に、イノベーション担当の承認者の在り方について、めちゃめちゃ考えさせられました。
曰く、
「マネジャーが従業員のアイデアを承認することをためらう理由の一つは、アイデアの承認が、成功しても失敗しても、ステータスを失う可能性を生み出すからである。」
「マネジャーは、失敗したアイデアを承認したことで失うステータスの方が、成功したアイデアを承認したことで得るステータスよりも大きい」
「成功したアイデアを承認したことでマネジャーが得るステータスは、そのアイデアを生み出した従業員が得るステータスよりも小さい。」
「アイデア承認の意思決定がマネジャーに与える重みを、他者へ分散するインフラをつくる。」
「アイデアの結果にかかわらず、創造的なアイデアを承認したマネジャーを積極的に評価する。」
ここから私は思いました。
1、承認者はハイリスク・ローリターン
2、承認リスクを一人に背負わせない
3、挑戦を承認したことを評価する
1、承認者はハイリスク・ローリターン
最初のアイデアは上司には相談するな、というのが、冗談も含めて、イノベーションにおける定説としてありますが、
しかし、この話を聞くと、承認者にはなかなか辛い責任があるんだなあと、改めて思いました。
承認者というのは、実はハイリスク・ローリターンな世界にいるのだと。
そう思うと、接し方も変わってくるなあと思います。
上司や承認者は、決して自己保身のための腰抜けなのではなく、実は構造的問題がそこに潜んでいる。
ということに気づかせていただきました。
2、承認リスクを一人に背負わせない
この構造的問題を解決するために、承認リスクを一人に背負わせない方法を取るというのが、一つの方向性であることに、目から鱗が落ちました。
一見、責任の所在の不明確化につながるのでは?と思いますが、実行責任者は明確化しながら、承認プロセスを分散化していくというやり方なのかと思いました。
これはある意味、ビジネスコンテストなどのスクリーニングで、複数の有識者に入ってもらって決めるやり方がありますが、それに近い方法を、イノベーティブな案件には採用していくことなどが考えられるかもしれないなと思いました。
ただし、単なる多数決にする危険性もあると思います。
全員が賛成する無難な案だけが残るのでは、イノベーションにならない。
ある意味、選考委員の中で、
「これは何としてもやるべきである!」
というようなパッションが炸裂した場合には、その強い支持を拾って採用の方向へ進めるような、定量ではなく定性的な部分も必要な気がしました。
承認リスクは分散する。
しかし、責任まで曖昧にはしない。
そして、多数決だけにも委ねない。
ここの仕掛け作りが、実は組織において、イノベーティブな案件がせっかく生まれているのに実現化しない、大きな理由の一つを解決できる鍵なのかもしれないと思いました。
3、挑戦を承認したことを評価する
そして最後に来るのが、評価の仕組みとの一体化だと思います。
先日お話しした「失敗予算ノベーション(1959回)」では、失敗を予算計画に組み込んでしまって、どれだけ失敗予算を使ったかを評価に入れ込んでしまう。
そんなお話をしました。
それと同じような思い切った評価の仕方を、承認する人にも取り入れていく。
いかに挑戦的な案件を承認したのか。
結果として、うまくいかなかったかもしれない。
それでも、その挑戦を承認したことが評価されていく。
こういう逆転の評価の発想が、承認者においても必要となる。
そんなふうに思いました。
もちろん、何でもかんでも通すことを優先する、ということではないところには注意が必要だと思います。
ある意味、どのように挑戦を評価して、承認して、支援していったのか。
そのプロセスの内容を、きちんと見る仕掛け作りが必要となると思いました。
ということで、今回のお話は、これまでは挑戦する人だけに焦点が当たっていましたが、
実は、挑戦を承認する人にこそ、イノベーティブな仕掛け作りが必要になってくる。
「中間管理職がイケテないんですよ」みたいな声を聞くことも多かったので、実は、そこには構造的な問題があり、仕掛けとして対応する必要があると言うことがよくわかりました
これは、組織が重点的に取り組まなければならないものだなあと、改めて思わせていただきました。
一言で言うと、
アイデア承認者のジレンマノベーション
そんな話をしています。
参考論文:
ウェイン・ジョンソン、ブライアン・J・ルーカス「アイデア承認者のジレンマ――ステータスの力学はいかに創造的アイデアの承認を阻害するか」『Organizational Behavior and Human Decision Processes』第190巻、2025年、104439。
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