『華麗なるギャツビー』で知られるアメリカの作家、F・スコット・フィッツジェラルドさんが、若くして成功した後、作家としての低迷、経済的苦境を経験された中、1936年に発表した『崩壊』での言葉に震えました
曰く、
「一流の知性があるかどうかは、相反する二つの考えを同時に心に抱きながら、それでもなお行動する能力を保てるかどうかで試される。」
「たとえば、物事が絶望的であると理解しながら、それでも、それを違うものにしようと決意できなければならない。」
私は思いました。
1、絶望の中、なぜ希望を持てるのか?
2、行動が、希望をつくる
3、困難が、新たな自分をつくる
1、絶望の中、なぜ希望を持てるのか?
なかなかにハードシングスなご経験をされたとのことなのですが、なぜ絶望の中でも行動できるのか、希望を持てるのか、という問いが気になりました。
カンザス大学の心理学者C・R・スナイダーさんらが、1991年、希望を心理学的に捉える「希望理論」を提唱し、「希望尺度」を開発しましたという話があります。
スナイダーさんが考えた希望は、単なる「きっとうまくいく」という楽観論ではなく、希望には理論的に二つの力があると言われています。
一つは、目標へ向かおうとする意志。
もう一つは、そこへ至る道筋を考える力。
つまり絶望の中の希望とは、
「きっとうまくいく」と信じることではなく、「まだ自分にできることがある」と具体的な道筋を思い描くことができることなのかと思いました
フィッツジェラルドさんは、晩年になっても、決して書くことは諦めなかったそうです。
それは、絶望していても、「書く」という意思と、自分にできる道筋があったからこそ、希望を持つことができた
どんな状況でも、自分の目標へ向かう意思と、そこへの道筋を考えること。
それが絶望から抜け出す一つの秘訣かと思いました
2、行動が、希望をつくる
心理学者トレバー・マズケリさんらは2009年、「まず行動する」ことを重視する、<行動活性化>について、34の研究、合わせて2,055人のデータを統合して分析したそうです。
その結果、抑うつ症状のある人に対して、行動を増やしていくアプローチには、何もしない場合などと比較して、統計的に大きな改善効果があることが示されました。
大切なのは、
「まず行動することで、心や環境との関係が変わっていく」
ということです。
フィッツジェラルドさんは、絶望がなくなるのを待って書いたのではなく、絶望の中で、まず書く、という行動をとった。
「希望理論」と合わせると、目標への意志とそこへ到達すべき道筋を思い描くこと
そしてさらに、それに基づいて「まず行動する」ことが、実は、希望を生み出す原動力になる。
そんなことを思いました。
3、困難が、新たな自分をつくる
そして、その後はどういう道筋を辿るのかについても、興味深い話に出会いました。
心理学者リチャード・テデスキさんとローレンス・カルフーンさんは、大きな危機や困難を経験した後、人が以前の状態に戻るだけではなく、新しい変化を経験することがあるとして、「心的外傷後成長」を研究したそうです。
1996年には、その変化を測る21項目の尺度を開発し、そこで捉えられた変化は5つ
・新しい可能性を見つける。
・他者との関係が変わる。
・自分の強さに気づく。
・人生への感謝が深まる。
・精神的・実存的な価値観が変わる。
会社の中でも、昔は「若手には修羅場の経験も必要だ」とよく言われた気がします。もちろん、困難を与えれば人が成長するという単純な話ではありません。
ただ、避けることのできなかった困難と格闘する中で、人がそれまでとは違う自分を発見することがある。そういう変化を、経験的に感じていたのかもしれないなあと思います。
フィッツジェラルドさん自身も『崩壊』の中で、
「人はそこから元に戻るのではない。別の人間になり、やがて、その新しい人間が、新しく大切なものを見つける。」
と書いています。
絶望は、その時には、人にはいくら説明しても、本人の思いは理解されないほどに、辛い体験だと思います。
しかし、そこから、時間がかかるかもしれないけれども、立ち上がる方法はあるということ
自らの目標への意志を思い出し、そこへの到達の道筋を思い描くこと
どんな状況でも、自分の目標へ向かう意志。これは、私がいつも大切にしている「パッション」にも通じる気がします。
そして、思うだけではなく、まず行動に移すこと
その絶望や困難の中での行動が、いつしか自分を変え、これまでとは違う、新たな自分をつくっていく。
そういうことがあると、知っているか知らないかで、絶望への向き合い方が、変わるのかもしれないなと思いました
絶望とは、人生が終わる場所ではなく、新たな自分、新たな人生が始まる場所なのかもしれません。
ということで、一言で言えば
絶望から始まる人生ノベーション
そんな話をしています
参考:
F・スコット・フィッツジェラルド「崩壊」『エスクァイア』1936年
C・R・スナイダーほか「意志と道筋――希望の個人差尺度の開発と検証」『パーソナリティと社会心理学誌』1991年
トレバー・マズケリ、ロバート・ケイン、クレア・リース「成人の抑うつに対する行動活性化療法――メタ分析とレビュー」2009年
リチャード・テデスキ、ローレンス・カルフーン「心的外傷後成長尺度――トラウマがもたらす肯定的変化の測定」『心的外傷ストレス研究誌』1996年
感想
まだ感想はありません。最初の1件を書きましょう!