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相手がカッコよくいて欲しいノベーション(1994回)
2026-10-12 15:50

相手がカッコよくいて欲しいノベーション(1994回)

歌手・俳優の松たか子さんの言葉に、人と一緒に何かを創り出すことの本質について、深く考えさせられました。


曰く、


「お芝居もその作品で出会ってバイバイ出会ってバイバイ、のなんか繰り返しですけど、


やっぱりなれ合いではなくこう、あ、わかるとか、思える相手というのは必ずいて


やっぱり組むと、相手の人がかっこよくいてほしいというのは常に思うし


なんかそしたら、自分も良くあれてるはずだっていうのは、どんな方とご一緒しても、まず思うことだなと」


私は思いました。


1、相手をカッコ良くする

2、自分もカッコ良くなる

3、互いをカッコよくする関係から、イノベーションが生まれる


1.相手をカッコ良くする


松たかこさんの演技は、テレビや映画、舞台でも観させて頂き、ときには大笑いをさせて頂き、ときにはめちゃくちゃ感動をさせていただいたり、本当に素晴らしい俳優さんだなあと思っていましたが、こんな素敵な考え方をされているんだということに、さらに感動させて頂きました


自分が表に出て、何かを表現しなければならないとしたときに、まず自分であれば、どうすれば自分自身の力を精一杯発揮できるか、ということにしか、頭がいかないなと思います。


松さんが最初に考えているのは、相手がカッコよくいられることを思う、というのは、とても謙虚な松さんらしいと思うと共に、そこに松さんの参加されるプロジェクト全体の表現の素晴らしさにつながる秘訣があるのかもしれないとも思いました


1999年、心理学者のドリゴタスさん、ラスバルトさんらが発表した「ミケランジェロ現象」という研究があって、次のように報告されています。


「パートナーから肯定的に受け止められているという認識と、理想の自己に近づくこととの間に、強い関連が認められました」


これは、4つの研究から明らかになったことだそうです。


つまり、人が自分のなりたい姿に近づいていくことには、本人の努力だけでなく、パートナーがその人をどう捉え、どう接するかが関係しているということです。


まるで彫刻家ミケランジェロが石の中から人物を彫り出すように、相手が本来なりたい姿を、その人との関係の中から引き出していくという考え方です。


私は、この研究の面白いところは、相手がカッコよくなることに、自分自身が実際に貢献できる可能性がある、ということだと思いました。


もちろん、この研究は主に親密なパートナー関係を対象にしたものですが、俳優同士の共演でも、相手の力を引き出すような働きかけによって、その人がさらに素晴らしい演技を発揮できるということが、もしかしたら起きているのではないかと思いました。


相手の得意なことを見つけ、その力が最も発揮されるように、自分が何をできるかを考えることは、実は相手の可能性を、引き出すことに大きく貢献できる


これは作品を作る上ではとても大切な考え方だし、俳優の仕事に限らず、誰かと一緒に何かをやるときに、自分がその気持ちで接することによって、相手がさらなる能力を発揮できるということは、全体として、とても良い効果を生み出す考え方だなあと思いました


2.自分もカッコ良くなる


2008年、組織心理学者のアダム・グラントさんは、仕事の意義と成果についての論文で、次のように報告しています。


「仕事の意義を実感する働きかけを受けた寄付募集の電話担当者は、他の条件の担当者や、働きかけを受ける前の自分自身と比べて、仕事の成果を高めました」


さらに、救助員を対象とした実験についても、


「仕事の意義を実感することで、仕事への献身や他者を助ける行動が増加しました」


と報告しています。


つまり、自分の仕事が誰かの役に立っていると実感することが、自分自身の力を引き出すことにもつながるということです。


これは松さんが、共演者をカッコよくすることが、ひいては、自分も良くあれてるはず、と言われている言葉にとても通じる話だなあと思いました


共演者が一番輝く働きかけをすることによって、作品全体も輝くことになり、それはひいては観てくれる人たちにとっても、喜んでもらえることになり、そしてそのこと自体が、自分自身の意義と成果にもつながっていく


ということを感じられているのではないかなあと思いました。


これは、イノベーターリップルモデルにおける、3つの鍵である、パッション、仲間、大義の中の、特に大義として、誰かが喜んでくれることをやることが、自分自身のパッションにも火をつけるし、さらなる価値を生み出すことができる、ということとも、とても符合しているような気がしました


3.互いをカッコ良くする関係から、イノベーションが生まれる


今回の話を聞いて、自分がカッコよくなる、ためには、まず、相手をカッコよくする、ことから始めるということが、とても素敵なやり方だなあと思いました。


一方では、厳しい世界の中で戦っていくためには、まずは、自己主張が大切ということもあるかと思います


そういうやり方もありますが、その自己主張の矛先を、相手がカッコよくなる方向へ向けていくということで、全体として、みんなが、みんなをカッコよくする方向に回り始めるという、イノベーションが巻き起こるのではないか、そんなことを思いました


イノベータリップルモデルは、最終的には、誰かに、なんらかの価値を提供するという大義が大事になります。


そのリップル(波紋)を拡大していくためには、まずは、仲間がカッコよくなってもらう、そんな関係性を目指して動いていくことが、自分のパッションにさらなる火をつけて、素敵な大義という価値を生んでいく構造が作りやすいのではないか


そんなふうに思いました。


誰かを何かをやるときには、まずは、その誰かにカッコよくなってもらう


そこから始めることが、全体を良くして、ひいては自分自身も輝ける。そんな秘訣を教えていただいた気がしました


ということで、一言で言えば

相手がカッコよくいて欲しいノベーション


そんなことを話しています


参考


  • NHK『ビストロボイス』「歌手・俳優の声談議『矢野顕子×松たか子』EP2」2026年10月10日放送

    https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-Y3RNJ33LW6

  • ドリゴタス、ラスバルトほか「理想の自己を彫刻する親密なパートナー:行動による肯定とミケランジェロ現象」『Journal of Personality and Social Psychology』1999年。

    https://doi.org/10.1037/0022-3514.77.2.293

  • アダム・グラント「仕事の意義の重要性:仕事の成果への影響、関係性のメカニズムと成立条件」『Journal of Applied Psychology』2008年。

    https://doi.org/10.1037/0021-9010.93.1.108


引用についての確認事項: 学術論文の引用は、原論文の要旨に記載された文章を日本語に訳したものです。ドリゴタスらの論文は4つの研究で、パートナーの肯定的な働きかけと理想の自己への接近の関連を示しています。 グラントの論文は3つのフィールド実験に基づいています。


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